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覚え鹿  作者: 輝野 和己
戦争編
21/34

村の警備

 村の生活にも慣れてきた。

 今日は、朝からアレンが村の見張り当番らしく、興味があったので俺も付き合うことにした。


 この村の防衛体制を考える。

 村は周囲を木の柵と堀で囲まれている。堀には水路から水が流れているが、水位はそれほど高くない。

 唯一村に出入りできるのは、村の西側にある門だけである。

 門には、常に二人の門番が配置されており、昼と夜の二交代制のようだ。

 その他、村の東、北、南にそれぞれ見張り台があり、見張り役が監視している。

 この見張り役は、門番同様に交代制のようで、今回はアレンに当番が回ってきたらしい。


 アレンは村の西側にある門の方へ歩いていき、近くにある建物に入っていった。

 俺がアレンに続いて建物に入ると、武装した男性が数人おり、アレンと何かしゃべり始めた。

 その内の一人は筋骨隆々とした壮年の男で、見るからに強そうな気配を漂わせている。


 俺がその男を凝視していると、アレンが気を利かせたのか、俺のことを紹介してくれた。

 しゃべっている内容はわからなかったが、男の名前がサリオンというのは把握した。

 サリオンは壁に貼ってある村の地図を示しながら、アレン達に何かを指示している。

 彼が警備隊長的な役割で、警備の配置を説明しているのかもしれない。


 説明が終わると、アレンは建物を出て歩き始める。

 俺はアレンと並走するように歩く。

 門は村の西側にある。アレンはそこから村を囲む木の柵を左手に見つつ、時計回りに歩いていく。

 どうやら北の見張り台に向かっているようだ。


 しばらく歩くと北の見張り台に着く。見張り台では、弓矢を持った男性が村の外を監視している。

 アレンが声をかけると、疲れた顔をして見張り台を降りてきた。

 彼が夜の間の見張り番なのだろう。アレンと軽く雑談すると、村の中に立ち去って行った。


 見張りを開始して、特に異常もないまま時間が経過する。

 俺は近くの草を食べたり、浅く睡眠を取ったりと悠々自適に過ごす。


 夕方近くになった頃だろうか、ふと、風に乗って嗅いだことのある匂いがした。

 急いでアレンのいる見張り台に上がると、匂いのする方向を見る。

 かなり注意深く見ないと気づけなかったが、茂みに隠れてこちらを窺うゴブリンの姿が見える。


「ピャッ」

 と俺が警戒の声を上げると、アレンもゴブリンに気づいた。

 アレンは風を両手に纏わせると、手を重ねるようにして、ブオーという音を発生させた。

 恐らく、風の術で空気を振動させて音を出し、危険を村に知らせたのだ。


 アレンの出した音で、気づかれたことを悟ったのか、茂みからゴブリンがぞろぞろと出てきた。

 数えると五匹のゴブリンだ。それぞれ武器を持っており、中でも弓を持っているのが一匹いるので注意が必要そうだ。

 逆に考えると、弓持ちさえ倒してしまえば、後は見張り台から一方的に攻撃できるということだ。

 アレンもそう考えたのか、弓に矢をつがえると、風の魔術を使って、弓持ちのゴブリンへ矢を放った。

 矢は一直線に弓持ちのゴブリンに飛んでいったが、盾を構えた別のゴブリンに遮られた。

 矢は盾に刺さったが、かなり分厚い木の盾らしく、貫通することはできなかった。

 

 弓持ち以外のゴブリンは盾を持っており、弓持ちゴブリンを守るような陣形を組んでいる。

 俺は、口を開けると炎の玉を放った。盾で防がれるが、この術は着弾後もすぐには消えない。

 木の盾は炎に包まれ、ゴブリンは持っていられなくなったのかその場に投げ捨てた。


 応戦するかのように弓持ちゴブリンが矢を放つ。

 だが、木の柵を超えるように山なりに撃ってきたので、避けるのはたやすい。


「〇△△〇×!」

 弓を持った男性が二人、見張り台に上がってきた。

 先ほどアレンが出した警報を聞いて 駆けつけたのだろう。


 俺が炎の玉で盾を燃やし、アレン達が盾を失ったゴブリンを矢で倒していく。

 最後に弓持ちゴブリンだけになると、状況不利と悟ったのか森の奥に逃げていった。


 こちらに被害も出さずに防衛できたとほっとした時、西の方からブオーという音が響き渡った。

 どうやら戦いはまだ続くようだった。

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