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覚え鹿  作者: 輝野 和己
森人編
20/34

情報の整理

 午前中は、図書館で文字を勉強し、午後からアレンと狩りに出かける。

 そういった日々をしばらく過ごした。


 文字の習得は遅々として進まないが、分かったこともいくつかある。

 アレン達は森人という種族名らしく、耳が細長いのが特徴のようだ。

 図鑑によると、彼らとは違って耳が普通の形状の人間もいるようだが、その絵を見ているときのアレンの表情が苦々し気だったのを見ると、森人達とは敵対的な関係なのかもしれない。


 それから、俺が小鬼と名付けていた緑色の肌の種族はゴブリンといい、角兎を助けた際に倒した猪人間はオークというようだ。


 ジェスチャーについても、村人達を観察することで把握できたことがある。

 日本と同様に、肯定は首を縦に振り、否定するときは首を横に振るようである。

 これが把握できたので、地面に絵を描くことと合わせれば、だいぶ意思の疎通ができるようになった。


 この村のことも多少は把握した。

 村では農業や森での採取や狩り、川での漁によって、食料を確保しているようだ。

 村の外との交流は無いようで、今のところ村人以外の人がやってくるのを見たことがない。

 この森に森人の村はここだけなのか、交流がないだけなのかはわからないが……。


 経済面で言うと、店や獲物の販売などで木片を用いた通貨が使われているが、村人同士で物々交換しているのを良く見かける。


 尚、この村に来た初日に、地面に文字を書いてくれたお婆さんは、メルロスという名前で、この村の長老的なポジションにいるらしい。彼女が中心になって、広場で話し合いが行われるのを何度か目撃した。

 

 それから、重要なことが一つ。

 どうやらこの森には、俺の同族はいないらしいということだ。

 この森以外の場所には生息しているそうなのだが、この森はそうとう広いらしいので、探しに行くのは覚悟がいりそうだ。


 今日は、アレンが門番を務める日のようで、狩りはお休みとなった。

 門番は、小柄なヒューや長身のギルが専属というわけではなく、持ち回りで行っているようだ。


 村の中を歩いていると、畑にヒューの姿が見えた。

 何をやっているのかと近づいて見ると、手から水を出して畑に撒いているようだ。

 術は戦闘に使うだけではなく、生活に利用できるものもあるようだ。

 

 自分は農業することはないからなと、その術を見ていたが、よく考えたらとても便利な術なのに気づいた。

 近くに水場がない場合に飲み水の確保ができるし、あのウナギガエルがやってきたように敵を攻撃するのにも使えそうだ。


 俺は風を体に纏うと、ヒューが水を撒く方向に飛び出した。

(冷たい!)

 体に水を受け、ぶるっと身を震わせる。


「〇△△×〇!」

 水やりの邪魔なのだろう。ヒューがしっしと追い払うような身振りをする。

 俺はすごすごと畑から歩み去るが、目的は達成した。


 水路の近くまで来ると、片足を前方に向けて、水路に向かって水を放った。

 ビシャっと水が放出される。水圧は制御できるようで、ちょろちょろと出すこともできるし、高圧洗浄のように勢いよく放水することもできた。


 俺は、思いがけず便利な術を習得してニンマリするのだった。

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