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覚え鹿  作者: 輝野 和己
森人編
18/34

森人の狩り

 アレンに連れられ、森を歩く。

 とりあえず同行したものの、アレンが危なくならない限り、手出しをするつもりはなかった。

 今日は、彼らの狩りがどういうものなのかを見学させてもらうつもりだ。


 しばらく歩くと、上空に気配がする。木々の合間から見上げると、大きな白い鳥が上空を旋回している。

 以前、俺を襲ってきた白い鳥だ。

 アレンも白い鳥に気づいたようで、弓に矢をつがえる。

 不思議なことに、彼の手元から風が起こり、放たれた矢は風を纏ってものすごい速度で飛んで行った。

 矢は外れることなく、白い鳥の胴体を打ち抜いた。鳥は力なく地面に落下する。

 

 見事なものである。それにしても、彼は風を操る術を使えるのだろうか?

 狩人にとっては、とても便利な術だと言えるだろう。


 アレンは、落下した鳥に歩み寄ると、ナイフを取り出して喉を切り、血を流した。

 止めを刺すと共に、血抜きをしたのだろう。

 続いて、フックのようなものを使って、鳥の肛門付近から腸っぽいものを引き抜いた。

 

 後処理が終わったのか、アレンは、鳥を紐で吊るして背中に背負うと、誇らしげな顔で俺を見る。

 俺も同居人がポンコツ狩人じゃなくて良かったと安心した。


 かなり大きな鳥を仕留めたため、アレンは村に引き上げることにしたようだ。

 確かに、持ち運びながら狩りを続けるのも大変だし、腐敗する前に捌く必要があるだろう。


 村に帰ると、洗い場に併設された建物に入る。

 建物の中には、水路が通っており、数人の村人が動物の解体や加工をしている。

 アレンは、受付のようなところに狩ってきた白い鳥を出す。

 受付の男は、アレンが出した白い鳥の状態を確認すると、いくつかの木片を出してきた。

 どうやらここは、狩ってきた獲物を販売する場所らしい。

 作業中の人達は、物珍し気に俺のことを見ていたが、どういう存在かは周知されているようで、特別騒ぎ立てることはなかった。


 木片を受け取ったアレンと建物を出る。

 アレンは再び狩りに出かけようとしているが、俺はそんな彼の服を引っ張った。

 地面に蹄で、俺の絵を描くと、体の周りにつむじ風のような絵を付け加える。

 あの矢に風を纏わせる術を俺にかけて欲しいと考えたのだ。


 感の鋭いアレンは、俺のして欲しいことが分かったらしく、右手に風を纏わせると、俺の体に触れる。

 すると、俺の体に風が纏わりつく、試しにその状態で動いてみると、いつもよりも素早く動くことができた。

 纏わりついた風は、一分ほどで効力を失った。

 だが、俺の場合は、それだけでは終わらない。一度受けた術を学習できる能力があるからだ。


 さっそく感覚を頼りに、風を纏ってみる。

 すると、アレンに触れられた時と同様に、風を纏うことができた。さらに、風を纏った状態を持続させることもできるし、纏った風を放出することもできるようだ。

 試しに、近くの大木に向かって纏った風を放出させてみると、ズドンという音と共に大木を揺らした。

 空気砲とでも呼べばよいのか、十分に武器になりそうだ。


 突然、風の術を使い始めた俺に、アレンはあっけに取られていたが、すぐにうんうんと頷くと納得したような顔になった。

 アレンには、昨日から色々な術を披露しているので、使える術が増えたところで今更なのかもしれない。


 俺は便利な術を習得してご機嫌になり、この日は一日、アレンの狩りに付き合ってあげるのだった。


 

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