村の風景
眠りから目を覚ます。
周囲を確認すると、ござの上でアレンが寝ていた。
俺が立ち上がって家の外に出ようとすると、物音に気付いたのかアレンが目を覚ました。
「〇△△△〇」
おはようとでも言っているのだろう。俺は、アレンが起き上がるのを待って、一緒に外に出た。
時間はまだ早朝で、朝日が昇りかけのタイミングだった。
アレンについて歩いていくと、共同の炊事場らしきところに着いた。
炊事場のそばには、水路が伸びており、桶で水をすくえるようになっている。
アレンは、いくつかおいてある桶の一つを取ると、水路の水を汲んで、俺の前に置いてくれた。
俺が遠慮なく、桶の水を飲んでいると、炊事場に近づく気配がする。
見れば、長身のギルが歩いてきた。
ギルとアレンは、軽く声を掛け合いながら水を飲む。
二人が雑談している隙に、近くの草をむしゃむしゃしていると、徐々に村人が集まって来た。
村人達は、それぞれ具材を持ち寄って、大きな鍋に入れると、薪に火をつけて調理を始める。
当番制なのかどうかわからないが、共同で料理をするようなシステムなのだろう。
過酷な環境のため、村人同士で助け合って生活しているようだ。
やがてできあがったごった煮のようなものを木製のお椀に取り分けて、ワイワイと食べ始めた。
ギルやアレンも食べている。
門番らしきことをしているギルはとにかく、アレンは具材も持ち寄っていないのに、ただ飯ぐらいにならないかと心配である。
村人は、鹿である俺にもお椀を持ってこようとしたが、俺は顔を背けることで、遠慮した。
基本的に葉っぱや草を食べていれば十分だからだ。
村人達は、食事が終わると、三々五々と離れていった。
アレンとギルも炊事場を離れて歩いていくので、二人の後ろをついていく。
しばらく歩くと畑が見えてきた。畑の近くには建物があり、二人はそちらに入っていく。
匂いからして、どうやら共同トイレのようなものらしい。
二人はトイレから出てくると、今度は、洗い場のような場所に行き、水で体を洗い始めた。
今の季節は、日本でいうところの春ぐらいだろうか? 暑くも寒くもないちょうど良いぐらいの気温である。それでも、早朝から水浴びするには寒そうなものだが、二人とも平気そうである。
水浴びが終わると、ギルとは別れる。門番の仕事に向かうのかもしれない。
そういえば、アレンは何の仕事をしているのだろうか? 昨日は弓を背負っていたので、狩人だろうか?
引き続きアレンの後をついていくと、お店のような場所に着いた。
店の中を覗くと、お爺さんが椅子に座って店番をしている。
品揃えは雑多で、弓や金属製の剣などの武器があると思えば、鍋や野菜などもある。
驚いたのは、紙とインクが置いてあることだ。
紙といっても、さすがに、二十一世紀の地球にあるような品質ではない。
とはいえ、紙や金属製品があるということは、それなりに文明は発達しているようだ。
アレンは木片のようなものを店番に渡し、弓の矢を数本購入したようだ。
木片は、通貨の役割をしているのだろう。
お店を出ると、アレンは、目的を達したのか家に戻るようだった。
家に戻ると、購入した矢を矢筒に入れ、立てかけてあった弓を持つ。
狩りに出かけるのだろうか?
アレンは、ついて来て欲しそうに俺のことを見る。
(しかたないな……)
俺は、アレンについていくことにしたのだった。




