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覚え鹿  作者: 輝野 和己
序章
11/34

強敵

 俺は再び川まで戻ってきた。

 周囲にあの牙猿達の気配はない。

 安心して川の水を飲んだ後、横たわってしばらく休む。

 いざという時に術を連発できるように体力を回復させておく必要がある。


 軽い睡眠を取った後、起き上がって下流へと歩を進める。

 昨日からだいぶ歩いているが、一向に森を抜ける気配がない。

 かなり広い森だ。地球で例えるならアマゾンの奥地のような場所に転生したのかもしれない。

 仮にアマゾンの森林ぐらい広かったら歩いて森を抜けるのは困難だろう。

 

 そういえば、森の中には危険な生物がいるが、ここの川は比較的安全だなと思った。

 アマゾン川で言えば、ピラニアなどの危険生物が生息している。

 今のところそういう魚は見当たらない。そもそも、もしいたら最初に気を失って川に流された時に俺の体は骨だけになっていただろう。


 そんなことを考えていたのが良くなかったのか、水しぶきを上げて川の中から何かが飛び出してきた。

 それは、体長一メートルほどで、ナマズのような顔にカエルのような体をした生物だ。

 そいつは、カエルのようにぴょんと飛び跳ねると、俺の進行方向に立ちふさがった。


 友好的な雰囲気は微塵も感じないが、見たところそれほど強そうには見えない。

 体格的にも大きくはないし、爪や牙などの武器もない。

 水中から一気に飛び出してきたジャンプ力は驚異的だが、一対一ならどうにかなりそうに思えた。


 だが、そんな楽観的な考えを嘲笑うかのように、目の前のナマズガエルは、ぶるっと身を震わせると、バチバチっと帯電を始める。雷雲の下の稲光のように青白い光が全身を包むと、口から舌を出して攻撃してくる。

 帯電した長細い舌が足元に伸びてくるのをなんとかかわす。

 足元をかすめた舌は、しゅるしゅるっと巻き戻ってナマズガエルの口の中に納まる。

 威力自体は大したことはなさそうだが、巻き付かれたら感電してしまいそうだ。


 俺は、耳を前方に向け、目つぶしの光を放つ。

 相手の視界を奪ってから逃走しようと考えたのだ。

 だが、ウナギガエルは目を見開いたまま微動だにしない。

 すかさず口から舌を出して攻撃してきた。

 目つぶしが効かなかった動揺からか、一瞬反応が遅れ、長い舌が鞭のように足に巻き付いた。

 足元からビリっとした感覚が昇ってくる。なんとか舌を引き剝がそうとしたところで意識が途切れた。


(痛い!)

 次に意識が戻ってきたのは腹をえぐられるような激しい痛みが原因だった。

 慌てて状況を確認すると、自分は横ばいに倒れており、腹にウナギガエルの口が吸いついてる。

 奴は既に帯電状態を解いており、今はじっくりと食事しようという腹積もりらしい。

 自分がディナーにされるのはまっぴらごめんと、俺は起き上がって身をよじる。

 しかし、吸いついた口は離れない。相手は、離すまいとぐりぐりと口を腹に食い込ませてくる。


 俺は気力を絞ると、口を開け、至近距離から炎の玉を放つ。

 炎の玉は、ウナギガエルの胴体に命中し、ぬめっとした体表を焼く。

 さすがにこれは効いたのか、俺の腹から口を離すと、ぴょんと川の中に飛び込んだ。


 腹の傷を確認すると、鋭利な刃物でえぐられたようになっており、血がどくどくと流れ落ちている。

 すぐに回復の術を使う。しかし、かなり深い傷のためすぐには治りそうにない。

 ウナギガエルは、川の中に潜って姿を見せない。


 俺はふと、例の感覚があるのに気づいた。今回は、ウナギガエルが使った帯電の術だ。

 これを使って、電流を川に流せば、ウナギガエルを感電させられるのではないかと考えた。

 だがどうだろう? 電流を使いこなすような生物が感電するだろうか? 望み薄な気がする。


 ここは森の奥に逃げようと、川から後ずさる。

 すると、動き始めるのを待っていたかのように、川の中から水の塊が飛んでくる。

 十分に警戒していたため、横にステップしてかわす。

 自分の横を通り過ぎた水の塊は地面を深くえぐる。

 明らかに普通の水の塊ではない。水を超高圧で吐出すような技なのかもしれない。

 背中を見せて逃げ出していたらかわすこともできなく、体を貫かれていただろう。


 水場で戦うのは圧倒的に不利だ。

 相手は水中に身を潜めて奇襲でき、こちらは頼みの綱の炎攻撃が防がれてしまう。

 俺は、じりじりと後ずさる。時折、川から水の塊が飛んでくるが、距離が離れるにつれてかわすのも容易になってきた。

 ついには、木の生い茂る森の近くまで到達すると、相手の射線を切るように木の背後に身を隠す。


(ふう)

 一息つく、再び回復の術を使いながら、相手の気配を窺う。

 焦れて川から飛び出してくるかと思ったが、慎重なようで水中に潜ったまま姿を見せない。


(それなら今のうちに距離を離そう)

 俺は、川沿いを歩くのを諦め、森の奥に進んでいくのだった。

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