表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/65

遭遇 その2

 すごい光景だった。


 廊下を散り散りに歩いていた生徒たちが、波が引くかのように、一斉に左右の廊下の端に寄った。そして、誰もいなくなった廊下の中央を、悠々と歩いてくる一団がいた。


 左右に分かれた生徒たちは、その一団の様子を身動きもせず、目だけで追っている。


 ロイもその一人であった。


 エリスは、ロイに聞きたいことがたくさんあったが、肝心のロイは、他の生徒と同様、固まってしまったかのように動かない。


 そこでエリスは、自分の目から入ってきた情報のみで状況を判断する必要があった。


 廊下の中央を歩いているのは三人。


 この三人が身に纏っている制服は、他の生徒たちのものとは異なった特徴があった。


 内二人は、ロイと同じスカラーのジャケットを着用しているが、中央を歩いている生徒は、どの生徒とも異なるテイルコートを身に付けていた。


 だが、ベストだけは三人とも同色であった。


 生徒会長の姿をよく見ようと、人垣の隙間から身を乗り出した。


(あれは……!)


 あることに気がついたエリスは、すぐに体を引っ込めた。


(どうしてあの人が?)


 同じ学校の生徒なのだから、いつかは出会う機会が来るのだろうと、エリスは漠然と考えていた。


 しかし、その機会がこんなに早く、このような形でやって来るとは思いもしなかった。


 気恥ずかしさから、エリスは隠れるように他の生徒たちの背後で身を屈めた。




 ロイが、エリスの袖を軽く引っ張り、エリスに何かを知らせようとしていた。


 エリスがロイの視線の先を辿ると、


「また会えたね、レディ」


 と微笑みかける人物がいた。


「あ、あの……試験のときはどうも……」


 やっとの思いでそれだけ言うと、エリスは目を伏せた。恥ずかしくてまともに目を合わせられない。


「まずは入学おめでとう。君とは時間をかけてゆっくりと語り合いたいのだが、あいにく今日はこれから生徒会の用事があってね」


「生徒会……」


 エリスが、何か思いついたように小さく呟いたとき、


「会長、もう時間が……」


 という声が聞こえた。


(え? 今、『会長』って言った……?)


 エリスは『会長』という言葉に即座に反応した。


「わかった……というわけだ、レディ。名残惜しいが、次の機会に期待しよう。困ったことがあったら、いつでも生徒会室においで」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ