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にゃんと奇妙な人生か!  作者: 朝那月貴
小さな少年の武器屋
95/159

朝日の依頼

「充分な光を……集める?」


 ナリが聞き返した。朝日は頷いた。


「はい。詳しくご説明致しますと……ピアリデイ・ストーンは先程もお見せした通り、自然の光を集めると魔法に変換して保存するんです。光を集めきったピアリデイ・ストーンは、従来の宝石の効果に加え、属性攻撃が可能となる……らしいです」


「らしいです?」


 零が聞くと、朝日が「僕も細かいところは知りません」と言った。


「武器に属性が加わる……と言った方が語弊がないですね。その武器でさらに属性攻撃をすれば、威力が倍増!という訳です」


「なんだよそれ!もっと早く言えよなー!」


 亥李がカウンターに手をついて訴えた。朝日は困ったように頭をかいた。


「しょうがないでしょう、師匠に教えて貰えなかったんですから……集めて欲しい光は4種類。日の出、真昼の太陽、夕焼け、月の光です」


「なんだか、月以外あまり変わらない気がするんだけど……」


「光の色と時間が違うでしょう。当然、光の種類によって加わる属性は変わります。確か……日の出は土と火、真昼の太陽は風と水、夕焼けは火と水、月の光は風と土……だったかな」


「へえ、2種類あるのか!面白そうだな」


「そう言っていただけて嬉しいです。なお、集め方や集める場所は予め僕の方で決めてあります。お引き受けして頂けるなら、それをお教えします。どうですか?」


「報酬、もっかい教えてくれるか?」


 亥李が尋ねた。朝日は頷き言った。


「はい。光を集めたピアリデイ・ストーンで、僕が武器をお作りします。当然、持ってきて頂いた方の武器です。例えば、ケルベロスアイのナリが日の出の光を集めたなら、そのピアリデイ・ストーンを使ったグローブを作ります」


「わぁ……!それ、すっごくいいかも!」


「ただし」


「ただし?」


 千里と陽斗の声が重なった。朝日は続けた。


「この魔法は、先程も言った通り師匠に教えて貰ったことがないので、失敗するかもしれません。また、ピアリデイ・ストーンを使っても属性なんて無くて、威力が低下してしまう、なんてこともあるかもしれません。それでもいいなら、という感じです」


 朝日が話し終わると、すぐに「俺はやるぜ!」と亥李の声が上がった。


「元々武器改造して貰おうと思ってたしな。面白そうだからやってやるぜ!」


「集める場所指定なんだから、引きこもりには辛いんじゃないの〜?」


 詩乃がからかうように笑った。亥李が「任せろ!すぐに終わらせてやる!」と胸を張る。その様子を見て、参華も笑った。


「任せなくても外に出てちょうだい……あ、私もやるわ。楽しそうだし」


「あ、めるもやるよー。丁度武器欲しかったからね!」


「僕もやる。ピアリデイ・ストーン……凄く興味が湧くし」


 千里がまじまじとピアリデイ・ストーンを見つめて言った。彼の興味はもう既にその鉱石にあるようだ。


「あ、私も!ロザリオを変えるなんてほとんどしないから……楽しみなんだ!」


 美波が自分の金のロザリオを握りしめ、笑った。その隣で陽斗が「俺もやるよ」と笑った。


「皆参加するんだったら、万が一粗悪品でも皆でデモ起こせるからね」


「なんだその理由……あ、俺もだからな、朝日。武器が強くなるなら、それに超したことはねぇ!」


 零が笑って答えた。全員の目が、ナリに集まった。


「……え?わ、私?」


 そんなに見られても……と思いつつ、ナリは「うん、皆やるならやるよ」と答えた。朝日がその答えを聞いて「分かりました」と言った。ナリはそれを聞いて少し安堵した。


「では、方法と集める場所を説明しますね。ピアリデイ・ストーンはただ光を集めるのではなく、光を最も集めやすい場所で集めなければなりません」


「え?どういうこと?」


 ナリが首を傾げると、朝日は答えた。


「この町だけでも、光の当たり方にばらつきがあるでしょう?時間帯によってもそうですし、場所でも変わります。なので、時間と場所をこちらで指定させていただきます。そこから、どこに行きたいか話し合って決めてください。1つの場所に2人ずつです」


 朝日は山風町近辺の地図を取り出すと、指で示して説明した。


「まず、日の出。5時15分にこの山の頂上に登って下さい。そこで日の出の光を石に集めます」


 朝日が町外の最も高い山を指さした。そこは標高が1000メートルを超えており、とても岩ばっていた。


「5時15分!?早過ぎないか!?」


 零が声を上げた。朝日がむすっとした声で「この時間じゃないと日の出の光は集まらないんですよ……」と呟いた。そのまま彼は話を続けた。


「次に、真昼の太陽。こちらは正午にこの海で集めてください」


 朝日が町外にある海を指さした。この海はサーファーが多いことで有名だった。


「この海……鉱石なんて持ち歩いてたら目立つんじゃないの?」


 参華が呆れた声で聞いた。


「大丈夫です。集めに行く時は鉱石そのままじゃなくて、ちゃんと武器にはまる形にしてお渡ししますから」


「あ、よ、良かった……武器にはまるサイズなら持ち運べるね」


「はい。それで、次は」


 朝日の指が、するすると山風町の中へ動いていった。彼の指は町の中心地にあるビル街を示した。


「夕焼けは、この当たりで18時に集めてください」


「この当たりって……雑過ぎだろ」


 亥李が肩を竦めた。


「いや……ビルの合間に見える夕焼けが綺麗だったので」


「そんなテキトーな理由かよ!」


「綺麗な光っていうのも重要なんですよ。ムードというか……他もそんな感じで決めてます。この石、どうも人の感情によってまた色合いが変わるようなので」


 “生命のスゴイで効果が変わる……まるで僕達みたいだ”


 エラが杖の先から飛び出し、そう呟いた。詩乃が「確かにね」と相槌を打つ。


「最後に、月の光。これは、24時にここの草原で集めてください」


「24時……そんなの誰が行くの?」


 千里が呟いた。朝日は面倒そうに「行かなきゃ行かないでどうぞ」と言った。千里が少しムッとしたところで、朝日が「さて」と呟き、地図を閉じた。


「それでは、誰がどこに行きますか?」


 朝日がそう聞くと、全員すぐに話し始めた。属性のことや行きたいかどうかなどを話し合った結果、しばらくしてからやっと決まった。


「朝日!決まったぜ!」


 零が声をかけた。朝日が立ち上がり、カウンターから出てきた。


「それでは教えてください」


「ああ。まず、俺と陽斗が日の出だ」


「うん。よろしく頼むよ」


 零と陽斗が笑って言った。


「で、私と美波が真昼の太陽。海、楽しみね」


「うん!参華ちゃん、頑張ろうね!」


 参華と美波がお互いに頷いた。


「光集めるだけだろ?そんな頑張んなくてもいいって。あ、俺と詩乃が夕焼けだからな」


「そそ。ちゃちゃーっと集めてちゃちゃーっと帰ろー」


 亥李と詩乃が余裕そうに笑った。


「で、最後に私と千里が月の光だよ。だけど……」


「……猫と一緒はまだいいとして、夜の0時に起きてなきゃいけないなんて……」


 千里がぶつぶつと呟くのを、ナリは呆れて見ていた。


「いいじゃんか、めるも中三の時は0時くらいまで起きてたし。あ、お子ちゃま千里くんは0時はもう寝てるかー!」


「うっさい詩乃!詩乃が遅いだけだもん!」


 千里が詩乃に向かってギャンギャンと吠えた。ナリが「にゃはは!寝てるもんね」と笑い、また千里が怒り出した。全員が笑ってその様子を見る中、朝日だけは大丈夫だろうかと心配していた。



 全員が帰った、その日の夜。

 店内でただ1人、朝日は鉱石を加工していた。


「ロザリオは、はめる穴が小さいから……大胆かつ繊細に削って……っ!」


 手が滑り、鉱石を削り過ぎた。綺麗な半円に加工しようとしたのだが、完成した宝石は上が少し削れていた。


「ああ……これは失敗かな」


 捨てるのも勿体ない。彼はその鉱石を自分の棚にしまい込んだ。

 しばらく作業しているうちに、段々と慣れてきた。5つの宝石を加工したところで、朝日は息をついた。


「ふう……」


 天井を見上げ、汗を拭う。そろそろ喉が渇いたと思い階段を見たが、下に行くのも面倒だった。この時間では、もう誰も起きていないだろう。朝日はまた作業を開始し始めた。

 機械の音が鳴り響き、ようやく8つの宝石を切り出した。朝日がまた息をついた、その時。


「こんな遅くまで何やってんのさ。ばーか」


 隣から眞昼の声がした。振り向くと、頬に冷たいものが当たった。ひゃっと小さな悲鳴を上げる。よく見ると、それはビール缶だった。朝日が受け取ると、眞昼は近くの椅子に座って、もう1つのビール缶を開け、飲み始めた。ゴク、ゴク、という音が店内に響いた。


「ぷはー。上手い。朝日もどう?」


「いや、僕は別に……」


 転生前はおろか、ソルンボルにいた時でさえ飲んだことはない朝日は、それから先が何も言えなかった。


「ほんっとさー、前と違って全然飲んでくれなくなったよね。何?魔剤でも欲しいの?我が家では現在品切れだからね」


「いや、いらないよ。というか魔剤があったことがあるの?」


 朝日は頭の中で「魔剤ってあれなはず」と思いつつ聞いた。


「サークルでオールする時にいるんだって」


「サークル……なんだったっけ」


「川鞍ロボット研究会。前にも聞いてなかった?」


「え?いや……聞いてないよ」


 朝日は内心ヒヤリとしながら答えた。朝日の記憶では聞いたことは無かった。


「そーか……まあ、ウチ結構忘れっぽいっしなー。んでさ、酔ったついでに聞くんだけどさー」


 彼女の言う通り、眞昼の首元が赤くなっていた。朝日は眞昼の首元をなるべく見ないようにして聞いていた。


「なんで、今更じいちゃんのつがねを継ぐって決めたの」


 朝日は固まってしまった。眞昼は続けた。


「前はさ、じじいのつがねに拘り続けてる家が嫌いだとかなんとか言って、ずっと断ってたじゃん。眞昼に押し付けるのは申し訳ないと思うけど、俺は継がないって決めたからって、言ってたじゃん。ウチはじいちゃん大好きだったし、全然良かったけどさ?でもなんで急に継ぐ気になった訳?」


 昔の朝日と今の朝日は別人である、なんて言えなかった。朝日が黙っていると、眞昼はまた缶を煽った。


「なんか言ったら?」


「……なんとなく、じいさんの遺産を大事にしたくなって」


「だったらさ、なんで武器なんて作ってんの?セイヨー風?宝石なんて買っちゃってさ……なんでそんなに本気になれるの?たかだかコスプレ用に」


「……大事に使う人がいる。それだけだよ」


「ふーん、あっそ」


 眞昼は缶を手に取り、階段へと向かった。そして最後に振り向き、こう言った。


「ね……なんでそんな真剣に武器を作ってるの?」


 眞昼はそれだけ残して、下に降りてしまった。


(……なんで武器を作ってるのか、か。師匠にしごかれたからやってる?いや、違う……それが理由だったら、僕はここまでやってない……)


 朝日はそう考えながら、自分の布団に潜り込んだ。目をじっとつぶり、何回も深呼吸した。


(今日は、もう寝よう……なんで武器を作るかなんて、今まで考えたこともなかった……)


 朝日はすぐには眠れなかった。だが寝息を数えているうちに、彼は眠りについた。

じいちゃんの話がどこにあったかわからない人は、38話「兄弟の絆」をお読みください。約60話ぶりの伏線回収。

次回は4月1日です。

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