表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃんと奇妙な人生か!  作者: 朝那月貴
小さな少年の武器屋
94/159

光を集める宝石

 時の回廊から突如として帰還して、1週間が経過した。

 ナリは周りに幸野満咲や鍵本立花、鬼宿しのベルの話をしたが、誰一人として信じてくれなかった。かろうじて零だけは信じてくれたが、零が実際に出会った満咲のこと以外は半信半疑、という感じだった。

 満咲の家も調べた。満咲は閑静な住宅街に住んでおり、そこは朝日の店の近くだった。彼女は大きな一軒家に祖父母、両親と暮らしていた。だが、何回訪ねても満咲はいないと言われてしまった。

 また、満咲と出会った時に起きたのを境に、3日に1回程度意識を失うようになってしまった。前は2時間ほどで意識が戻ったが、近頃は3時間も空くようになった。ナリは満咲がこの現象に何かしら関わりがあるのではと思っていたが、肝心の満咲に会えないままだった。


 そうして落胆して帰ってきた、昼間の道。


「はぁ……満咲、本当にどこにいるんだろ……」


 人間状態のナリがげっそりとしながら住宅街を歩いていた。


「なあ、本当に満咲に会ったのか?」


 隣にいる零が聞いてきた。今日は2人でまた幸野家を訪ねたが、両親に追い払われてしまった。


「会ったんだってー……信じてよ」


「いや、信じてねえ訳じゃねえけどさ……いつあったんだ?」


「えっと……1週間前?」


「1週間前?1週間前って言ったら、お前散歩の時ぐらいしか外出てねえじゃねえか。その時に会ったのか?」


「いや、あの、えっと……」


 あなただけにしか見えていない。ナリは満咲が自分に言った言葉を思い出していた。その場面は周りに何度も否定され、自分でも現実かどうか分からなくなっていた。

 ナリは気まずさから目を逸らした。目を逸らした先に、鍛冶屋つがねがあった。


「あっ!ね、トビー商店行こうよ!朝日なら何か知ってるかもしれないし!」


 ナリは返事も聞かずに、鍛冶屋つがねに向かっていった。「あっ、おい!」と零が慌てて追いかける。

 中に入ると、朝日の妹の1人、眞昼が1階で店番をしていた。相変わらず気だるげだった。


「どもー。あ、朝日なら上にいますからねー」


「あ、眞昼さん。今日は店番してるんですか?」


 ナリが聞くと、眞昼は答えた。


「そっすよー。まだ大学休みなんで。大学忙しいと店番出来ないから怒られるんですよねー」


「なんか……前に、家は継がないって言ってなかったか?」


 零が尋ねると、眞昼は「んー、そこまで言ったっけ……」と呟いてから、言った。


「家は継がないですけどー、つがねは好きなんすよー。ぶっちゃけ、家を継ぐとか鍛冶するとかどうでもいい。じいちゃんの遺産を守れればそれでいいんですよ」


「おじいさんのこと、好きなんですね」

 

「にひひ、まあね」


 眞昼が誇らしげに笑った、その時。


「だから、そんな理由が通る訳ないでしょうがっ!」


 上の階から朝日の声が聞こえてきた。


「あー……そういえば先客がいたなー……朝日めっちゃ怒ってる。日を改めた方がいいかもしんないすわ」


「先客?誰か来てるのか?」


「はい。あのー……ウチのことまっひーって呼ぶ変わった女の子っす。自分のこと変なあだ名で呼んでる」


 ナリはそれが誰だかすぐに分かってしまった。


「ああ、うん……今その人知り合いだって分かったから、会いに行きます。ありがとう、眞昼さん」


 ナリが手を振り、階段を登り始めた。失笑を浮かべ、零も着いていった。


「お茶ー、あとで持っていきますからねー」


 階下から眞昼の声がした。礼を言ってから階段を登り切ると、そこには笑顔の詩乃と激怒している朝日、そしてふわふわと飛んでいるエラがいた。朝日はエラを指さして怒鳴った。


「土の精霊には土の精霊の、闇の精霊には闇の精霊の宝石があるんです!自分が契約している精霊にマッチした宝石じゃないと力を出せないの、知ってますよね!?」


「知ってるけどさー、める闇も土も使いたかったんだって。それに、エラがこれでいいって言うし。ね?エラ」


 “僕、正確には闇の精霊じゃないから……自分の宝石、ないんだ。詩乃が好きな宝石でいいよ”


「ほらー、エラもこう言ってるじゃん!ね?」


「闇の精霊が何言ってるかなんて知りませんが、そういうことは早めに言ってください!」


 朝日が詩乃を睨みつけた。やがて階段のところで戸惑っているナリを見つけると、「ああ、いらっしゃいませ」と疲れた顔で言った。


「冷やかしならお断りしてますので、どうぞお帰りください。僕は今見ての通り、精霊人のメルヴィナのせいで疲れてますので」


「ご、ごめんって……いや、朝日にちょっと聞きたいことがあって来たんだ。満咲って子を探してて……」


「はぁ……満咲?誰ですか?」


 朝日にそう言われ、ナリはたじたじになって話し始めた。零と詩乃は興味深そうに聞いていた。


「えっと、昔の同級生で、今は風ノ宮高校の三年生なんだけど……この前会ったんだよね。聞きたいことがあるから探してるんだけど……家に行ってもいなくて」


 立花のこと。彼女とした約束のこと。自分しか満咲が見えていないということ。満咲と話した直後に意識が途切れ、気が付くと家にいたこと。聞きたいことは山ほどあったが、周りが覚えていない以上、説明が出来なかった。


「それで……僕に聞きたいこととは?」


「うん。満咲の家、この近くだから……何か知らないかなって。あと、出来れば見つけたら教えて欲しい。黒い髪のロングで、綺麗な顔立ちだよ」


 ナリの話を聞き、朝日は腕を組んで考え始めた。そして、首を振り「いや、知らないですね」と呟いた。


「そっか……うん、ありがとう。朝日」


「お役に立てずすみませんね。見つけたらお教えしますよ」


 朝日とナリの話が終わったのを見計らって、詩乃が口を挟んだ。


「あ!あのさ、さっきの話に戻るんだけど……める、新しい武器が欲しいんだよね。オレンジと黒が混ざってる宝石とか無いの?」


「ある訳なっ…………!」


 朝日がそう言いながら、何か思いついたように後ろを見た。彼の後ろにあったのは、精霊と契約する魔法陣が書かれた部屋だった。


「…………少し待っててください」


 朝日が立ち上がり、その部屋に入っていった。入れ替わるようにして、階段を上がる音が聞こえた。眞昼だった。


「ありゃ、朝日居ませんでした?せっかくお客さんまた来たのに」


 コーラとコップをトレーに載せた眞昼が、「さーせんすわ」と言って後ろを向いた。眞昼の後ろには、亥李がいた。


「お!お前ら、奇遇だな!」


「お、やっほー、亥李!まっひーもやっほー☆」


「う、こ、こんちは……ウチ、下にいるんで」


 眞昼は嫌そうな顔をして、そそくさと下に降りてしまった。亥李は眞昼が下に行ったのを確認してから、《魔源収納(マナシェルター)》を握って剣と盾を取り出した。彼の腕にはライフブレスレットがかけられ、ビーズが光で照らされていた。詩乃はそれを見て顔がほころんでいた。


「亥李、何しに来たの?」


「いやな?最近新しい技を閃いて、それの為に武器改造しに来たんだ。《絶対命中(ラッキーヒット)》より威力が高いんだぜ?名前は――」


「《必殺命中(ラッキングヒット)》?」


 ナリが聞くと、「お、おう」と亥李が答えた。顔が引きつっていた。


「なんで名前知ってるんだ?」


「え?えっと……か、勘……かな」


 ナリが誤魔化していると、朝日が帰ってきた。朝日の手には、真っ黒の鉱石が握られていた。


「朝日、その石どうしたんだ?」


 零が尋ねたが、朝日はそれを無視して言った。


「ああ、ケルベロスアイのダンバー。来てたんですか。あなたも武器を?」


「おう!改造しに来たぜ!もっと盾を重くして、攻撃を防げるようにしてぇんだ!あと、盾の上に俺が足をかけられるような場所を――」


「じゃあ、ケルベロスアイと精霊人、全員集めてくれますか。今、いいことを思いついたんです。あなた達は強いですし……何より、モデルは多い方がいい」


 朝日がそう言いつつ、鉱石をカウンターの上に置いた。ナリ達は顔を見合わせたが、朝日が口を緩めるのを見て、全員スマートフォンを取り出した。そしてそれぞれが連絡のつく仲間に連絡を取り出した。



 しばらくして、全員がトビー商店に現れた。他の客は居ないというのに、店内はがやがやと騒がしかった。全員が集まったのを見て、朝日が立ち上がり、「静かにしてください」と説明し始めた。


「今日はお集まりいただきありがとうございます。早速お話し始めると……皆さんの武器は僕が作っていますが、今回は新たな商品をご案内させて頂きたいんです」


「……商売モードじゃない……」


 参華が呆れたように呟いた。その隣にいた陽斗が苦笑いを浮かべ、「新たな商品?」と聞いた。


「はい。まずはこちらを見てください」


 朝日がそう言って見せたのは、先程持ってきた黒い鉱石だった。


「これ、さっきも持ってたよね。真っ黒ー」


「ええ。前に精霊人のアッシュやアルケミスに話したことがありますが……これは、ピアリデイ・ストーン。光を集める宝石です」


 全員が面白いものを見るかのように近付いた。だが、すぐに千里が言った。


「光を集める?確かに前に言ってたけど、なんで真っ黒なのさ。それに、どうやってこれを見つけたの?」


「流石、質問が多い……これは、普通の水晶の鉱石に僕が特殊な魔法をかけたものです。人工の光では何も起きませんが、自然の光……例えば、太陽の光にこれを当てると……」


 朝日がそう言いつつ窓を開けた。太陽の光が部屋の中に差し込む。すると、太陽の光が当たった部分が、青と緑に輝いた。黒と色が混ざっていき、グラデーションになっていた。朝日が窓を閉じカーテンを閉めると、すぐに鉱石は黒に戻ってしまった。


「わあ!凄い……!」


「でしょう?《捕魂産吹(コレクターズ)》……術者に指定されたものを集め、それを魔法に変換して保存するという、僕の師匠が生み出した魔法です。教えてもらったことが無かったので見様見真似でやってみましたが……まさか、これが光を集める宝石のトリガーになっていたとは。思いもしませんでした」


「それで、これがどうしたんだよ?」


 零が聞くと、朝日は待ってましたと言わんばかりに答えた。


「はい。それでは、今回の依頼について説明します。僕からの報酬は、新しい武器の製作。内容は、このピアリデイ・ストーンに、充分な光を集めることです」

幕間ラジオは少し待っててください。

次回は3月28日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ