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にゃんと奇妙な人生か!  作者: 朝那月貴
ネバーランドの姫君
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傷つけない

 一方その頃。

 立花戦っていた参華は、槍を自分の前でくるくると回し、迫ってくる蔓を払っていた。蔓は太くしなやかで、立花の手足のように動いていた。


「さっきから何してるの?早く私に攻撃してきなよ。舐めプしてるの?」


 立花が机の上から参華を見下ろして言った。参華は何も言わずに、蔓が戻っていく先を見守っていた。


「か……か、《天災雷撃(カラミティサンダー)》!」


 隣から愛の声が聞こえた。目をつぶる愛の手にはロザリオが握られ、それは立花の方へ向けられていた。黄色の光がロザリオの先に集まり、それが雷の形をかたどって立花へ飛んでいく。だが、それは立花ではなく、立花が操る蔓に当たっていた。


「ひゃっ……!ごめんなさい参華さん、やっぱり私には魔法なんてとても……!」


 愛が泣き顔で謝った。参華は「大丈夫よ」と言いつつ、内心とても安心していた。


(愛……こう言っちゃ悪いけど、今私、愛の魔法が下手でとても感謝してるわ。もし立花に当たってしまったら、いくら弱くても重症は間逃れない……このまま、外し続けてくれれば、大丈夫なはず……!)


 参華がそう考えていると、太い蔓が4本、参華へと向かってきた。蔓は、ナイフを構えて迫ってくる立花を囲むように参華を狙っている。参華は1本1本の蔓を槍で弾き、突き出してきたナイフを柄で受け止めた。ギギギ、という音が会議室の中で響いた。


「さっきからずっと防戦ばっか……またそうやって逃げるの?私との戦いも逃げる訳?」


 立花が呟いた。参華は何も言わなかった。

 立花は後ろに引き、机の上で参華を睨んだ。蔓が彼女を守るように囲っていた。白いアネモネがまた咲き始めていた。


「何か言ったらどうなの?遠谷参華。ずっと舐められてるみたいで、腹が立つ。余計に殺したくなる」


「…………私が、攻撃をしてしまったら……逆に、私があなたを殺してしまうから……」


 参華が立花から目を逸らして言った。立花が腹の底に溜まったものを掠めとるような声で「は?」と呟いた。


「何それ。私を殺すから攻撃しないの?大した自信だね。ああ、もしかして、自分が殺される前に私の心配してくれてるの?それはそれはご苦労様。死ね」


「まっ……待ってよ……!私はそんな嫌味っぽく言ってない!ただ、私は転生者で、立花は一般人だから、もし槍先が立花に当たってしまったら、大怪我は間違いないのよ……!」


「転生者?だから何?お前も私も、人間であるうちは変わらないでしょ」


「変わるわよ!私は転生した先で、魔物を殺す訓練をしてきた。今は護身用として槍を持っているに過ぎないし、この槍も刃がある訳じゃないけど……先が尖っているでしょう?もしこれで突き刺したら……!」


 参華が槍の先にある穂の側面を手で触って言った。立花は参華を睨みつけた。


「ねえ……私がここまでして、どうしてまだお前は本気じゃない訳?私の本気を、どうしてお前は踏みにじるの?」


 立花が言った。参華はハッとした表情で立花を見つめた。


「さっきのことだってそうだよ。大人になる?それだけで私が納得すると思ったの?私が過去今未来全てを賭けた計画を、亥李さんが来たからって全部台無しにしやがってさ。私が賭けた分、お前も人生を賭けてよ。ねえ?それが大人のすることなの?」


 立花の声が涙声になってきた。参華は静かに言った。


「……本気を出して戦わないのも、私が立花の計画を全て台無しにしてしまったのも、今日まで真実を知らずに呑気に生きてきたのも、全て謝るわ。でも……私は、どっちかが死んで終わる結末なんて、迎えたくない!だからお願い。まだ16歳なんだから、これから変われるチャンスがある。だから、こんなところで死なないで……!」


 立花はそれを黙って聞いていた。そして、またナイフを構え、蔓と共に走ってきた。参華は槍で弾き、下から刺そうとするナイフを槍で止めた。立花の顔が参華に近付いた。


「……見れば見るほど、過去で見た父さんに似ててムカつくなあ。目尻の尖り方、鼻筋のライン、唇の上がり具合……鏡で見る私よりそっくり。私の人生を狂わせた女が、私より父さんに似てるなんて、酷い皮肉だよね」


「立花……」


「こんなところで死なないで?まだ変われるチャンスがある?じゃあ教えてよ。私はこれからどうやって生きていけばいいの?私は父さんと母さんと一緒に暮らすのを、ずっと夢見てきた。8年間ずっとだよ。なのに、それを諦めろって?犯罪歴も増やして、唯一の肉親で親仇の姉を殺しかけて……もう人生無茶苦茶だよ。それでも私に生きていろって?もう私は何の為に生きていけばいいの?

 私は、何の為に生まれてきたの?」


 立花のその言葉に、返す言葉が見つからなかった。

 参華が俯いたのを見て、立花は「大嫌い」とだけ言葉を吐き捨てた。



 ベルの異形の姿に、全員が声を失った。

 ベルは新たに生えた腕で鎌を振った。鋭い鎌鼬がナリ達の方へ飛んでいく。ナリ達がそれを避けると、ベルは笑って手招きした。


「余裕だからって挑発しやがってよ!《必殺命中(ラッキングヒット)》!」


 亥李が盾を使って飛び上がり、剣先をベルに向けた。ナリも走り出し、「《狼牙人手(ウルフバイト)》!」と唱えた。ナリの手と足から狼の鋭い牙が生え、ナリはそのまま近付き、飛んだ。

 彼女は新たに生えた腕に向け左足を出し、内側から蹴った。太い腕がナリの蹴りを受け止める。その間に亥李が剣をベルの心臓目掛けて突き刺した。だが、亥李の剣は交差したベルの鎌に止められていた。


「――だぁ、くそ!」


 亥李が叫んだ。そのまま彼は着地し、剣を横に振った。ナリも着地すると、ベルの新しい腕に向けて6回殴り、内側から回転しつつ蹴った。


「《有為転変》!」


 ナリが叫んだ。亥李の剣がベルの鎌に止められていた。そんな中、必死な顔で腕を止めているナリは、その止めている腕が動いた気がして、もう一度腕を見た。黒い腕はムクムクムク、という音と共に、倍の長さに伸びていた。


「ナリ、そのまま止めてろ!《魔力魔撃(エナジー)》!」


 零が叫びながら、白いオーラを纏った剣を構え走ってきた。ナリと同じ方向から二の腕に切りつける。その太い腕は、零に切りつけられても伸び続けていった。そして、太い腕の鎌がナリと零の方向を向いたところで、亥李の剣が払われた。


「うわっ!」


「お試しって奴だぜぇ。おらよっ!」


 ベルが叫んだ。その声に反応したのか、3本の鎌から至近距離で鎌鼬が飛び出してきた。1回振られる度に2本の鎌鼬が放たれ、合計6本の鎌鼬がナリ達を襲った。ナリと零は飛んで避けたが、亥李は鎌鼬が近くて対応出来ていなかった。亥李は慌てて、両腕で顔を守った。

 3人とも足や腕をかすってしまった。血の流れる腕や足を引きずるようにして、走って詩乃の元へ帰っていった。


「皆大丈夫?《精霊回復(フェアリーヒール)》!」


 詩乃が杖を3人に向けた。杖の先から白い光が現れ、3人の傷を回復していった。血は止まったが、まだズキズキと傷んだ。


「なぁ、どうすんだよ亥李!あいつさっきと比べてパワーアップしてるぞ!?」


 零がそう言う間にも、鎌鼬が4本飛んできた。他3人が避ける中、零がまだオーラを纏っている剣で、鎌鼬の1本を両断した。切られた鎌鼬は消えてしまった。


「鎌鼬の性質自体は変わんないっぽいね。だとしても、だよ」


「だな。この性質をどうにかして生かせれば、叩けるチャンスが出来ると思うんだが……」


 亥李が困ったように呟いた。亥李の腕には切り傷が残っていた。


(亥李の傷、見てて痛くなる……詩乃の魔法だって有限じゃない。零は回復魔法使えなかった筈だから……チャンスを逃しちゃダメだ。逃したら、皆が傷ついていくだけなんだ……!痛みなんて知らない。踏ん張るんだ、ナリ!)


 ナリが心の中で叫んだ。また鎌鼬が飛んでくる。本数が倍以上になった分、避ける場所は少なくなっていた。


「《旋風の雛鳥(ストップアングリー)》!」


 ベルが叫んだのが聞こえた。鎌鼬が何層にもなってナリ達の方へ向かっていく。ナリは《肉体烈火(マッスルハッスル)》を唱え、右の拳を鎌鼬に向けた。


「《朝有紅顔》!」


 ナリはそう叫んで飛び上がり、上から鎌鼬を叩き潰した。ナリが着地し、拳を床に叩きつけながら、ベルを睨んだ。


(鎌鼬が飛んでくるだけで大変なんだ。何とかしなきゃ……!)


 ナリはそう思いながら、じっとベルの鎌鼬を見つめていた。

震災から11年。今日は、私が小説を書く原点の1つとなった「私の小説で被害に遭った皆を笑顔にしたい」と思った日です。復興が進むことを祈っています。

次回は3月14日です。

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