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にゃんと奇妙な人生か!  作者: 朝那月貴
渚のシンデレラ
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写真

 水族館の駐車場に首尾よく車を停め、歩いて中に入った。全員でサンゴの海の展示を見つつ、チケット売り場に向かう。そして、零は《異形》で人間状態になったナリと自分の分を、それ以外は自分の分のチケットを購入し、薄暗い水族館の中に入った。


「よし!じゃあ、これからは自由行動ね。2時間後集合で。亥李!イルカショー見に行くわよ!」


 参華がそう言って、亥李の腕を無理矢理掴んだ。


「お、おま、自分で歩くから!自分で歩けるから!だから引っ張んなーっ!」


 亥李が引きずられるようにして、参華に連れられていった。


「詩乃、案内してよ。パンフレット見たんでしょ?」


「見たけどさー、そんな覚えてないよ?千里の期待に添えられるかどうか……あ!ヒトデとナマコ!触りに行こ!」


 詩乃が先導して、千里と詩乃は近くの体験コーナーに走っていった。


「危ないなあ……美波、一緒にどう?」


 陽斗が苦笑して、美波の方を見る。


「…………いいよ!」


「なんだい、その間は……じゃあ、行こうか」


 陽斗と美波が歩きながら話して行った。


「ナリと一緒に行きたかったんだろ?分かりやすいな、美波は」


「バレた?だって、ナリちゃんがお魚を見て喜ぶ姿!想像しただけで可愛い!ね?」


「はいはい。ほら、可愛くない俺と行くよ」


「ご、ごめん、拗ねないでよ〜、陽斗くん……」


 陽斗と美波の声が、遠くに向かっていった。


「……2人だけになったな」


「……2人だけになったね」


 零とナリが顔を見合せた。近くを、背中をまるごと覆い隠すリュックを背負った小さな男の子が通り抜け、その親であろう女性が「走らないの!」と叱りつけていた。


「俺と行くか?……それとも、1人がいいか?」


「1人で回るのは嫌だよ。行こう?」


「……お、おう。行くか」


 ナリと零が、肩を並べて歩いた。その身長差は、零の頭分の差があった。薄暗い水族館の中で、2人はゆっくりと歩き始める。水槽を一つ一つ見て回るナリは、目を輝かせていた。


「ねえ、零!この魚、なんて言うんだろう……可愛くない!?」

「サンゴが綺麗だね……あ!ちっちゃい魚!」

「零!零!サメの展示だって!」


 だが、水槽をじっくり見るにも関わらず、水槽と水槽の間を走るようにして歩くので、時間を気にしなくていいほど速かった。


「ちょ……ちょっと待てって……」


「え?なんでそんな息切れてんの?」


「お前な……いっつも走って攻撃するからって、そんな慌てることねえだろ。ほら、ここのサメの歯の展示とか、すぐ抜けるらしいし、カッコイイじゃ」


「零!次、あっち行こう!」


 ナリが、次の水槽に向かうため、階段を降りた。零は溜息をつき、「はいはい」と追いかけていった。

 次の水槽は、ただひたすらに大きかった。客も一際多く、席まで用意されていた。


「わあ……!」


 ナリが声を上げる。水槽の中には、悠々と泳ぐジンベエザメや、群を成して水槽を彩るイワシ、翼を広げたように泳ぐ大きなエイが、大きな水槽の中で、自由に泳いでいた。上から注がれる光が、海の底まで照らす太陽の光のようだった。


「零!水槽の近くまで行こうよ!」


「ああ、そうだな……!」


 2人でワクワクしながら、水槽に近寄った。ジンベエザメが、巨体をうねらせて近付いてきた。ぐるん、という水の音が聞こえるような気がした。観客から、歓声が聞こえた。


「わあ!すごい!ねえ零、あれがジンベエザメ?」


「そうだ。で、腹にくっついてるのが、コバンザメ」


「コバンザメ?すっごく可愛い……!」


 水槽に触れ、ジンベエザメとコバンザメになるべく近付こうと、顔を寄せる。ジンベエザメとコバンザメを目で追う彼女は、とても楽しそうだった。


「……コバンザメみたいだな」


 零がボソッと呟いた。


「え?何が?」


 ナリの耳にも届いていたらしく、彼女は不思議そうに零の方を見た。


「別に。連れてきて良かったなって思っただけだよ」


「へ?な、何言ってるの、零……」


 ナリは、零が顔を少し赤らめたのに、全く気付かなかった。水槽以外の光源が少なく、薄暗いのが原因だろう。零は慌てて、誤魔化すように指を指した。


「ほ、ほら!エイとかイワシとか、すげえ綺麗だしさ、見てみろよ!俺見てないで!」


「ええ?う、うん……」


 ナリが不審に思いつつ、ジンベエザメに目を移す。途端に、彼女の目はすぐにパッと輝き、魚達を目で追っていた。

 その時。


「あれ?ナリと零じゃーん!」


 ナリ達の後ろから声がかけられた。詩乃だった。隣には千里がおり、水槽の中の魚達に釘付けになっていた。


「あ、詩乃!」


「やっほー。やっぱここ来るよね!さっき陽斗と美波がいたの見たよ」


「あの2人は、そこの先を向かって行ったよ」


 千里はそう言って、近くにあるトンネルを指さした。トンネルは床以外が全てアクリルパネルとなっており、上を魚が通り、時にはジンベエザメが通っていた。その先は、天井がアクリルパネルとなっている部屋のようだった。


「わあ!ねえ、零!次あそこ行こうよ!」


 ナリがトンネルに向かおうとすると「待ってよ。せっかくだし、ツーショット撮ってあげるよ?」と、詩乃がカメラを取り出し、笑った。


「あ、いいかも!詩乃、お願い!」


「ええ!?お、俺とナリの……!?」


「ほらほら、ジンベエザメと一緒に撮るよ!並んで並んで!千里、あんたは後ろに行って!」


「分かったよ」


 ナリと零が水槽の前に立った。2人でポーズをとる。


「んー、逆光かなー……あと、もう少し引きがあればいい感じ……」


 詩乃がそう呟き、後ろずさった。その時。

 後ろにいた人物と、詩乃がぶつかった。詩乃は「わっ!」と小さく叫び、持っていたカメラを落としてしまった。


「ご、ごめんなさい!」


 詩乃が後ろを見た。後ろに立っていたのは男性で、彼もまた、詩乃と背中合わせに立っていた。


「ごめんなさい、写真撮るのに夢中になってて……」


 お互いに謝り、足元に落ちていたカメラを拾った。そしてそのまま、「はい、チーズ!」と写真を撮った。


「よし!帰ったら現像して渡すね!」


「サンキュー」


「ありがとう!詩乃!」


 そうして、ナリ達と詩乃達は分かれ、ナリと零はアクリルパネルの部屋に向かった。詩乃と千里は残って、そのままジンベエザメを堪能した。



 その後、1時間が経過した。

 陽斗と美波はペンギンを見に、亥李と参華はジンベエザメを見に向かった。ナリと零は、まだ見ていない深海魚の方へ向かっていた。

 そんな中、詩乃と千里は、土産店にいた。


「どれも映えっていい感じ!千里、どう思う?」


「どう思うって言われても、それお菓子だし」


 詩乃と千里は、一緒に土産を見ていた。缶の中に入ったキャンディや、ジンベエザメの形のクッキー、人形など、様々なものがあった。


「んー、カメラに映してもいい感じだね。これにしよっかなー、大学の友達へのお土産」


「母さんの分も買っておいてよ」


「断る」


 詩乃が千里と話しながら、カメラの電源を切った。だが、いつも彼女が使っているカメラとは、別の位置に電源ボタンがあった。


「……あれ?」


 詩乃が、声を上げる。千里が詩乃を見た。


「どうしたのさ」


「いや、なんか……いつもと違うカメラ?なような……」


「そんな訳ないでしょ。ほら、カメラにそんなシールばっか貼ってんの、詩乃しかいないし」


 千里がカメラに貼ってあるシールを指さした。それは、レンズにかからないようにして、コスモ戦隊ホシレンジャーのイエローのシールが、所狭しと貼ってあった。たまに、レッドと一緒に写っているシールが貼ってあった。


(……あれ?()()()のカメラ、マーズレッドのシールなんて貼ってあったっけ?あたしの……ああ、ええと、()()のカメラは、ジュピターイエローしか貼ってないはずなんだけど……)


 詩乃は疑問に思いつつ、カメラをカバンにしまい、会計を済ませた。その詩乃を誰かが見ていたのを、千里は勘づいていた。だが、詩乃にはそれを伝えず、さっさと歩いて、土産店を後にした。



 そして、約束していた時間になった。


「よし!全員揃ったわね!」


 水族館の入口にある、ジンベエザメの大きなモニュメントの前で、参華が確認した。

 参華に振り回され、疲れてへとへとの亥李や、ジンベエザメの人形を大量に購入した美波以外は、モニュメントの前にいた。


「せんせー、亥李と美波がいませーん」


「私は先生じゃないわよ、詩乃。2人とも、先に車に乗ってるって。私達も行きましょ!陽斗、交代ね!」


「ああ、分かった。鍵、美波が持ってるのかな?」


 そんな風に談笑しつつ、皆で駐車場の方へ向かった。


「あ、ねえ、零!千里とめるの写真、撮ってよ!」


 詩乃がそう言って、零にカメラを渡した。零は不快に思いつつも「いいぜ」と言った。


「なんでそんなに嫌そうなの?」


 ナリが零に聞いた。零は電源を入れつつ、「このカメラ、トゲトゲしてて持ちたくねえんだよ」と答えた。その間に、駐車場に向かおうとしていた千里を無理矢理引っ張り、モニュメントの前に嫌々立たせた。


「ほーら!ぶすったれた顔してないで、早く笑って!ほら!」


「……はあ……」


 詩乃が、美しい笑顔でピースサインを作り、千里と目線を合わせた。営業スマイルのようだった。千里は溜息をつき、やがてピースサインを作って、微笑んだ。


「よーし、行くぞー。はい、チーズ!」


 カシャリ、と音を立て、写真を撮った。


「ありがとー!零!」


「どうも」


「どういたしまして。ほら、行こうぜ」


 その風景を見て、ナリは微笑んだ。


(やっぱ、精霊人って仲良いよね……協調性ないけど)


 そんなことを考えつつ、駐車場に向かった。

 そうして、全員駐車場に停めてある車に乗り込んだ。美波がトランクに突っ込んだ人形が揺れ、亥李がいびきを立てて寝る中、車は陽斗の運転で、次の目的地に向かった。

今回ナリ達が行った水族館は、美ら海水族館をモデルにしています。

ジンベエザメがとにかく大きいのと、そのお腹で必死に泳ぐコバンザメがとにかく可愛かったのを、よく覚えています。


それと、ワクチン打ちましたが、1日だけ熱が出たくらいで、あとは大丈夫でした。ご心配おかけしました。

次回は9月24日です。

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