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にゃんと奇妙な人生か!  作者: 朝那月貴
渚のシンデレラ
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食事

 ナリ達は空港で荷物を受け取り、近くにあったレストラン街で、昼食を食べることにした。大半の者がキャリーケースを押していたが、ナリと陽斗は大きめのバッグを、千里はリュックサックを肩にかけ、ゆっくりと歩いていた。


「ねえ、あれ何?」


 千里が、ある郷土料理店のショーウィンドウを指さした。それは、丼の中に豚のあばら肉の入った蕎麦の、食品サンプルだった。箸が持ち上げられた状態で固まっており、それはナリ達の食欲をそそっていた。


「あれは、この県の郷土料理ね。冷めたいのと暖かいのがあるわよ。暖かい方が主流らしいけど」


 参華が千里に教えた。「ふーん……」と呟いた。


「ここにしない?この蕎麦食べたい」


 千里が指さした。


「いいねー!めるもうお腹すいちゃった〜」


「早く入ろうぜ。すみませーん、8人なんですけどー」


 詩乃と零が先導して、中に入った。荷物を店員に預け、4人ずつに別れて座った。


「せっかくだし、ケルベロスアイと精霊人で座ろうよ!」


「お、いいな、それ!じゃ、美波、陽斗、ナリ、こっちの席な!」


 ナリの提案を受け入れ、亥李が足早に座った。精霊人の4人も、隣の席に座る。亥李はそのままメニューを開き、「何にすんだ?」と3人に聞いた。

 

「私はさっき見たやつの、暖かい蕎麦にしようかな……美波は?」


「私はね、最近ダイエットしてるから……ゴーヤチャンプルーにしようかな?陽斗くん、ちょっと食べてよ!」


「え?ああ、うん、いいよ。俺は……そうだな、冷たい方にしようかな。亥李はどうするんだ?」


「俺?俺も冷たい蕎麦だな!そっちは何にすんだ?」


 亥李が、隣のテーブルの方を見た。最初千里がメニューを独占して見ていたが、隣の席の零が無理矢理メニューを取り、最終的に机の上に広げて、皆で読んでいた。


「んー……俺も冷たい蕎麦かな……」


「零ってはぶなーん。めるはー、苦いの嫌いだからー、ゴーヤじゃなくてー、冷たいのでもなくてー、暖かい蕎麦にしまーす!」


「詩乃も零とあまり変わらないじゃない。私は冷たい方にしようかしら、これ食べたかったし」


「僕も。じゃあ土屋美波以外全員蕎麦だね」


 千里のその言葉を聞いて、美波は急に顔を赤くした。


「え、わ、私だけ……?私も蕎麦食べようかな……」


「別に、変える必要はないんじゃないかな」


「そ、そう?じゃあ、変えないけど……すみませーん!」


 美波が店員を呼んだ。若い女性の店員がメモ用紙を持って近寄ってくる。亥李が店員を見て固まったのは、言うまでもない。


「ええと、暖かい蕎麦2つに、冷たい蕎麦5つ、ゴーヤチャンプルー1皿、お願いします!」


「かしこまりましたー!冷蕎麦5丁入りました!」


 店員の声が店の中に響いた。他の客が楽しそうに話し、嬉しそうな顔で店を出ていくことが多い、活気のある店だった。

 しばらくして、7人分の蕎麦と、1皿のゴーヤチャンプルーが届けられた。美波は少し陽斗にゴーヤチャンプルーを分け、それ以外は全員、自分の分の蕎麦を、箸を持ってつるつると食べ始めた。


「いただきます!」


 全員の声が揃った。詩乃が料理の写真や、食べている仲間の写真を、詩乃が飛行機で見せたカメラで、パシャリと撮った。

 暖かい蕎麦は、豚のだしが出ている鰹だしのスープに、少し硬い麺が絡み合っている。そこに、溶けるような柔らかさの豚のあばら肉が、濃厚な旨みを作り出していた。白いかまぼこ、刻みネギがトッピングされており、食べても飽きない、口に優しい味になっていた。

 一方、冷たい蕎麦にはスープはなく、噛みごたえのありそうな細い麺が、皿の上に盛り付けられていた。その上に、薄くスライスされた豚肉や、ゴーヤ、人参、玉ねぎなどの野菜が盛り付けられ、中華スープが全体に合えられている。爽やかな蕎麦だった。


「こ、こんなまともな料理食べるの、何年ぶりだ……?」


 亥李がそう呟きながら、麺をすすった。汁が、目の前にいるナリと美波の方に飛んでいった。


「うわっ!亥李くん、いっつも言ってるけど汚いって!もっとゆっくり食べなよ!」


 美波が顔をしかめた。だが亥李はそれでも気にせず「うめぇ……うめぇ……」と、蕎麦を食べていた。

 美波が食べているゴーヤチャンプルーは、ふわふわの卵とゴーヤが絡み、さらに人参や豚肉、揚げ豆腐がゴーヤの苦味を打ち消すようにしており、とても美味しかった。分けられた皿には、もうゴーヤチャンプルーは入っていなかった。


「亥李ってば、いっつも居酒屋でポテトとか食べるし、家でもカップラーメン食べてるから、普通の食べ方知らないんでしょ。美波、許してあげなよ」


「いやでも、さ、参華ちゃん〜……」


 美波が半泣きで参華を見る。参華は肩を竦め「ドンマイ」と笑った。


「……なんで豚肉ばっかなの」


 蕎麦を半分ほど食べ終わった時、千里が呟いた。独り言に近かった。


「ん?ああ、それはな、ここの人達が皆好きだからだよ。昔から豚肉料理が好きだから、食べてんだって」


「月島零、そうじゃなくて。なんで好きになったのかな、って」


「それはー、める調べちゃうよーん!」


 会話に割り込んできた詩乃が、箸を止め、スマートフォンで調べ始めた。


「分かった!昔の人が、貿易するために養豚増やしたんだって。それでソウルフードの材料になったんだって!」


「へー……豚肉、結構美味いかも……」


「栄養豊富だからな。やっぱここにきたらこれだよなー!」


 零が蕎麦を頬張った。

 そして、しばらくして、全員が食べ終わった。


「ご馳走様でした!」


 会計を出し合い、参華が代表で払った。自分の荷物を持ち、空港の外に出た。


「眩し……!」


 ナリが思わず手で日差しを防いだ。さんさんと照らす太陽は、山風町よりもじんわりと暑くさせていた。空港の前にアコウの木が生え、「リゾート地」という感覚を味わせた。詩乃が写真を撮り、そのまま、近くにいた美波と陽斗のツーショット写真も撮った。


「このまま、ヒューズリゾートに直接行くリムジンバスに乗るわよ。この近くにあるらしいけど……あった!」


 参華の案内で、丁度やってきたバスの中に入った。そして、市内の道路を走り抜け、「ヒューズリゾート」と看板のある旅館に辿り着いた。


「ここだ!へへ、荷物預けて、早く観光しようぜ!」


 亥李が笑う。参華の先導で中に入った。中は広く、美しいシャンデリアが、エントランスを照らしていた。大浴場のある地下が、ナリにとって輝いて見えた。


(あ、あれって……お風呂!?わあ、すっごい楽しみ……!)


 ナリが目を輝かせる中、亥李と参華が荷物を預ける約束をしに行った。亥李は、「あっ……に……えっと……」とばかり呟いていたが、参華が手早く手続きした為、事なきを得た。


「……本当に、参華がいなかったらどうなっていたか……」


 全員分の荷物を預け、旅館を出たところで、亥李が言った。


「全くね。じゃ、これからレンタカー借りに行くわよ。行きましょ!」


 近くのレンタカー屋に行き、予め予約していた車を借りた。8人乗りが可能な赤い車で、運転席に参華、助手席に陽斗が座り、真ん中の列に、左から零、美波、ナリが座り、1番後ろの列に、左から亥李、詩乃、千里が座った。


「よーし!じゃあ、カーナビ入れて……しゅっぱーつ!」


 参華がその声に合わせ、エンジンをかけた。


「ナリちゃん、窓閉めてるから、《異形》、していいと思うよ」


「え?ほんと?じゃあ……《異形》!」


 美波に教えられ、獣人族の状態になった。ナリの尻尾や耳を見て、「可愛い……」と、小さく美波が呟いた。


「せんりー、君もしていいんだよ?《異形》」


「うるさい詩乃。僕は猫と違って、人間が1番やりやすいんだっての」


「はあ!?うっさいにゃ、千里!そりゃ確かに、1番過ごしやすいのは猫だけどにゃ……!」


 ナリと千里が睨み合う。バチバチという音が聞こえてきそうだった。


「お前ら、せっかく旅行来てんだから喧嘩すんなよな……ふわぁあ……」


 亥李が生あくびをした。そして、すぐに寝てしまった。


「まじかよこいつ……飛行機でも寝てた癖に……」


 零が呆れたような声を出した。


「まあまあ、亥李は亥李なりに頑張ったんだよ。労ってあげなって」


 陽斗が、ガイドブックを片手になだめた。


「こいつの頑張りって、朝早く起きただけだろ?それが普通なんだけどな……」


「零。人にはその人なりの難しさがあるんだよ」


 そう言って、陽斗は「若いね、やっぱり」と笑った。

 こんな風に、ナリ達は外の景色を見たり、寝たり、陽斗の持つガイドブックを借りて読んだりと、思い思いに過ごした。そして、


「誰か、亥李起こして。そろそろ着くわよ!」


 14時を過ぎた頃、ようやく車は、水族館の駐車場に辿り着いた。

書いていて物凄く旅行に行きたくなりました。

旅行先は、私が2年前に行った沖縄と、3年前に行った北海道をモデルにしています。基本的に沖縄です。

今回ナリ達が食べていたのは、モデルはソーキそばです。どんな味かは忘れましたが、とにかく美味しかったです。


次回は、9月20日です。ただ、土曜日に2回目のワクチンを打つので、もし投稿されてなかったら、副作用が酷かったと思ってください。


追記

ヤシの木じゃなくてアコウの木でした。

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