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にゃんと奇妙な人生か!  作者: 朝那月貴
渚のシンデレラ
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飛行機の中で

 離陸してから、1時間が経過した。

 遥か下に日本列島があるにも関わらず、分厚い雲に覆われて見えなかった。だが、淀み一つない雲海の上では、美しい太陽が輝いていた。

 その太陽の光をカーテンで遮断した乗客達は、比較的静かに過ごしていた。時々トイレに立ち上がるだけで、音楽に癒されたり、睡眠を取ったり、映画を聞いたりと、めいめいに旅に思いを馳せていた。


(……見えなくなっちゃった。日本)


 そんな中、ナリは窓際の席で、ずっと窓の外を見ていた。だが、いつまでも雲海が広がるだけで、陸地は見えなかった。


「……ナリちゃん、何してるの?」


 ナリの隣の席で映画を聞いていた美波が、ナリにそう聞いた。身を乗り出し窓の外を見ているナリが、彼女にとって気になったのだろう。


「いや……空からなら日本が見えるかなー、と思って……山風町、もう見えないのかな。今どこだろう」


 ナリのその言葉を聞いて、美波は「ふふふ」と笑った。


「ナリちゃんは可愛いなあ……山風町はもう見えないと思うよ。飛ぶ方向と逆だし……今、3分の1くらい進んだかな?」


「そうなの?」


「そうだよ。あと2時間くらい。映画聞いたら?最近有名な映画もあるんだよ!」


「うーん……そんなに興味無いかなあ……」


 ナリは向きを直してから、座席に配られていた番組表を見て呟いた。


「なら、これから行くところがどんなところか、見たらどうかな?参華ちゃん!今日、どこ行くの?」


「んー?ああ、行き先?」


 後ろの席で、イヤホンで音楽を聞いていた参華が、片手でイヤホンを取った。


「今日は到着したら、空港で昼ご飯を食べてから、旅館に向かうわよ。それで、荷物を預けたらレンタカーを借りて、水族館に行くの。その後は少し観光して、旅館で休むわよ。でしょ?亥李」


 参華が後ろを振り向いた。だが、亥李は腕を組んで寝てしまっていた。音楽を聞いていた陽斗が参華に気付き、「おーい、亥李」と体を揺すったが、起きないようだった。


「……まあいいわ。陽斗、私とあんた、先にどっちが運転する?」


「そうだね……じゃあ、先に参華に頼もうかな?帰りは僕が運転するよ」


「あらそう?じゃあ頼むわね。ええと、この一本木の丘に行きたいんだけど……」


 パンフレットを後ろの席に見せた。陽斗はそれを見てから、自分の座席にあったパンフレットの地図を見て、行き先を調べ始めた。返ってきたパンフレットを、参華が受け取る。隣にいた千里、零も顔を寄せた。


「へえ、ここ何がいいの?」


「千里、そんなこと言うなって。ここは澄んだ空気と潮の匂いがしていい観光名所なんだ。丘の上に一本だけ木が生えてるから、一本木の丘って言うんだぜ」


 零がそう説明すると、「ふーん……」と呟き、千里はまた、本を読み始めた。世界的に有名な、魔法学校で危機を乗り越える少年の物語だった。


「あ、それ読んでるんだ。この前欲しいって言ってたよね!いっつも難しい本読んでる千里が読むなんて、とっても珍しいけど……」


「うるさい詩乃。別にいいでしょ、読みたくなったんだから」


 千里が嫌そうに顔をしかめた。本を抱き「邪魔しないでよ」と言って、腕の中の本を守るようにしている。


「ごめんって。水族館ってあそこでしょ?ジンベエザメがいるところ!」


 詩乃が手を合わせてから、参華に聞いた。参華は「そうよ」と答えた。


「……ジンベエザメ……?」


 ナリが、小さく呟いた。それを聞いて、ナリの後ろにいた零が「え?」と聞き返した。


「え?」


「いや、こっちのセリフだよ。お前、ジンベエザメ知らねえの?」


「い、いや……ジンベエザメって、最近の旅行じゃトレンドなの?」


「ナリちゃん……ジンベエザメは、珍しいんだ。だから、皆見に行くんだよ?可愛いし!」


 美波の口から出た言葉が、ナリを驚愕させた。


「そ……そうなの?」


「そうだよーん。今から行くところが代表格なのだ。いやー、楽しみだね!」


 詩乃がまたイヤホンをつけた。「あ?これどうなってんだろ」と、映画に対して疑問を抱いているのが聞こえた。それを見て、千里は本を読みだし、零はイヤホンから流れる映画を見始め、参華と陽斗は音楽を聴き始めた。


「ナリちゃん、ジンベエザメ、本当に知らなかったの?」


 美波は、イヤホンを付けずに、ナリに聞いた。


「いや……そんなに有名なものなの?」


「うん。見たら驚くと思うよ。でも、なんで知らないのかな?テレビやニュースで話題になったりすると思うんだけど……それに、今から行くところ。リゾート地だけど、行ったことない?」


「リゾート地……うん、ないよ。お父さんの実家に帰省したことがあったけど、その時はほとんどうちで遊んでたし……昔、旅行には行ったことあるけど、その時は寒いところ行ったかな」


「うん……前から、思ってたんだけどさ、ナリちゃん」


 美波は、ナリの方へ体ごと向けた。そして。


「ナリちゃん……昔、結構貧乏だった?」


 美波が恐る恐る聞いた。ナリの唾を飲む音が、美波の耳に聞こえた。


「あ、あの、嫌なら聞かなかったことにして……」


「貧乏ではなかったよ」


 ナリの落ち着き払った声は、美波にしか聞こえなかった。美波の額から、汗が浮き出た。


「ただちょっと、忙しかったんだ。昔は……こういう遊びの場所に行けたんだけど、私が死ぬ間際くらいは、遊びに行けなくてね。まあ、介護みたいなことしてたから」


「介護?」


「うん……介護みたいなこと」


 それ以上は、怖くて聞けなかった。

 8人はそれから、無言の時間を過ごした。美波は音楽を聴き始め、ナリは、代わり映えのない景色に飽きてしまって、寝てしまった。

 そして。


「ナリちゃん!ナーリーちゃん!」


 美波の声で目覚めると、彼女は楽しそうに、窓の外を指さした。

 ナリがそちらを向くと、そこはもう、雲の下だった。色鮮やかな青と、美しい緑に覆われた島が、窓の外から見えていた。


「わぁ……!」


 ナリが歓声を上げる。他の乗客達も、窓の外を見たり、降りる前の最後のトイレに向かったりとして、騒がしくなってきていた。


「おーい、亥李。起きろって、そろそろ着くよ」


「んん……ああ……」


 約束通り起こした陽斗と、寝起きの亥李の声が、ナリの後ろから聞こえた。


「そろそろ着陸するから、座って座って!」


「座らないの?詩乃ちゃん」


「めるはポシェット取ってから座るのだ!中に重要なものが……!」


 詩乃が立ち上がり、笑った。意気揚々とトランクを開け、詩乃のポシェットを取り出した。


「ほら!める、今回カメラ持ってきたんだ〜。あとで空港で写真撮ろうよ!」


 詩乃が楽しそうにカメラを見せた。普通のデジタルカメラだったが、レンズにかからないところに、数々のシールが貼られていた。


「詩乃ちゃん、そのシールって……」


「よくぞ聞いてくれました!コスモ戦隊ホシレンジャー、不動のヒロイン!マーズレッドの幼なじみにして、包容力で味方全体をサポートするけど、実は天然!煌星優(きらぼしゆう)、ジュピターイエロー!その写真やイラスト、変身ベルトのシールをカメラに貼っているのです!いやー、イエローはやっぱ最高に可愛いね!変身ベルトも綺麗で優しい感じがしてさ!そう思わない?美波!」


「あ、あの……」


「基本的に皆ヴィーナスピンクが好きなんだけど、めるはジュピターイエローが1番いいと思うんだよね!ヴィーナスは完璧に美しいけど、どこか抜けてるところがあって、それを何とかしようと日々努力してる、っていうのに皆食いつくんだけど、めるは食いつかないよ!ジュピターイエローが1番可愛い!特に34話の、マーズレッドが父親に裏切られてショックを受けてる時……」


「し、詩乃ちゃん!」


「なに、どうしたの!?これからいい所だってのに……!」


 詩乃がそう言って、気付いた。詩乃以外誰も、立ち上がるどころか、話もしていなかったのだ。

 詩乃の後ろで、キャビンアテンダントが「お客様、そろそろ着陸しますので、お席にお戻り下さい……」と、優しく言った。詩乃のヒートアップは、そこでようやく冷めた。


「…………早く教えてよ……」


 詩乃は頭を抱えて座った。その顔は真っ赤だった。どこからか、笑い声や「ホシレンジャー好きなんだってー」と、小さな男の子の声が聞こえてきた。


「とりあえず、シートベルト、付けて。ね?」


 美波が優しく声をかけたが、詩乃は恥ずかしそうに、「うう……オタク晒した……」と呟いていた。


「馬鹿だなあ、詩乃」


「うう……追い討ちかけないでよ、千里……」


 こうして、8人が乗った飛行機は、無事に着陸した。

 そして。


「つーいたー!!」


 荷物を受け取り、8人の旅行はようやく、始まったのだった。

星野啓太の父親が、人々を襲うダスターズを操っていた!

啓太は父親と戦うことを恐れ、戦いを止めてしまう。あいつなんていらないと思っていたホシレンジャーだったが、煌星優は、マーズレッドこそ、ホシレンジャーを繋ぎ止めるリーダーなのだと気付いた。星野啓太を探すため、彼女が向かった先とは?そして啓太に放つ、彼女の秘めたる思いとは……?


次回!第34話!「啓太に届け!優の熱い思い」

次回も絶対、見てくれよな!


【追記】

少し内容を変更しました。

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