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にゃんと奇妙な人生か!  作者: 朝那月貴
山風町の笛吹き
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笛の音

 奏太は、千里が詩乃の隣で杖を構えているのを、黙って見ていることしか出来なかった。いつの間にか、千里以外の子供たちが、建物の中に隠れていた。奏太は周りを見回し、少し悲しそうに笑った。


「……はは。まさか、あんな説得で千里くんが説得されるなんて。彼はもう大人なんだ、自分が知りたいことも自分で管理できるさ。何も知らない君達が、関わらないで欲しいかな!そうだろう、千里くん!」


 奏太はそう叫び、少し屈んだ。千里は、それを聞いて、また悲しそうな、そして悔しそうな顔をしていた。彼がが左手を軸に反時計回りして、右の方に落ちている銃を拾い、叫んだ。


「彼の知識欲の充実の邪魔を、しないで欲しいな!」


 そして、銃をナリ達に向けて乱射した。

 ナリはそれに驚きながら、後ろにジャンプして回避しつつ、叫んだ。


「零!参華!行くにゃ!」


 2人も「おう!」「了解!」と相槌を打ち、銃のリロードをしている間に、零は《魔力魔撃(エナジー)》の剣を、参華はくるくると回した槍を、ナリは《肉体烈火(マッスルハッスル)》をした拳を、奏太に向けて放った。


「おっと!このぐらいなら……!」


 奏太は、3人が奏太の胸を狙った攻撃を、しゃがんで避けた。そして、3人が慌てて後ろに下がるのを見て、手を草原につき、回転しながら足で蹴った。



「それなら……!」


 それを見てナリが呟いた。そして、他2人が武器で自分を守る中、ナリは少し後ろに跳び、奏太の蹴りを避けると、そのまま奏太に向かって突進した。


「おっと……っ!」


 奏太の腹に頭突きし、そのまま左手で、腹を殴った。奏太はその攻撃に気付かず、「危なっ……!」と呟いて、這う這うの体で飛び上がった。


「にゃっ!?」


 ナリが呆気に取られる中、その状態を待っていた千里と詩乃が、杖を奏太に向けて振った。


「《氷風白煙(ブリザード)》」

「《岩壊精霊(ストーンブラスト)》!」


 ナリ達が伏せる中、空中にいる奏太に吹雪が当たり、鋭い岩が地面から現れ、奏太にぶつかった。空中で受身を取った奏太だったが、彼の体には、氷と岩の破片が当たっていた。


「こんな所で負ける訳にはいかないんだよ……!」


 奏太が苦し紛れに、銃弾を、参華と零のいる方へ放った。それを、参華が槍を勢いよく回し、


「銃弾は無理かも……だけど!避けた先で当てられるくらいなら!」


 と呟き、銃弾を槍の回転で吹き飛ばした。1つ参華の足に掠ったが、参華は苦い顔をして、「零!よろしく!」と叫んだ。参華が苦笑いをして膝をつき、ナリが慌てて怪我の具合を見る中、零は「《魔力魔撃(エナジー)》!」と叫び、白く光る剣を奏太に向けて放った。それを、奏太は跳んで避けた。零はまた、何回も切りつけた。


「仲間を見捨てて僕を攻撃するなんて、随分薄情だね。零くん」


「そうかもな。でも!仲間が何とかしてくれるから!俺は戦える!ナリ!詩乃!頼む!」


 零がそう叫び、剣を振り回した。


「もう!ほんとめるのパーティは、めるだけに回復頼むんだから!《回復精霊(フェアリーヒール)》!」


 詩乃が叫び、白い光の精霊を呼び出すと、精霊は真っ直ぐに、参華の傷跡の近くを勢いよく飛び始めた。その精霊が回復をしているのを見て、ナリはまた、奏太の方へ走った。

 そして、奏太がナリへ銃口を向けたのを見て呟いた。


「今度こそ……にゃ!」


 奏太がナリの右側に銃弾を放ったのを、左に避け、そのまま頭突きした。


「おっと、さっきのか。それなら……!」


 左の拳が来ると考え、前に出た。それを、ナリは待っていた。


「にゃあ!」


 ナリは、右足だけを着地させ、左足で奏太を蹴った。奏太は初めて、ナリの攻撃を喰らった。


「ぐはっ……!」


「これが《有七種技(ナリセブン)》が5つ目!《有無創生(うむそうせい)》!本当は左手で殴るけど、派生系にゃ!」


 ナリはそう言って両足で着地し、「次はこれにゃ!《有為転変》!」と叫んで、6回殴りつけた。そして、左足でもう一度蹴ると、奏太は銃で、自分を守った。銃が蹴られ、その拍子でどこかに飛んでいってしまった。

 奏太は、銃が遠くに飛んでいくのを、何をどうすることも出来ないまま、見つめていた。


「これで!銃で撃つことは出来なくなったかにゃ?」


「そうだろうな。あとは、回避されない攻撃を繰り出せば……!」


 ナリと零が息を切らして言った。奏太は、じっと笛を見つめていた。その笛は、土埃で少し汚れてしまっていた。


「……ふう、回復したわね。どう?精霊人、結構強いのよ?ケルベロスアイのナリもね!私だけなにもしてないと思われそうだけど……これから見せてあげるから、覚悟しなさいよ?」


 参華が槍を草原について立ち上がり、笑った。詩乃と千里もまた「ぜんっぜんいけるよー!」「まだまだ、戦えるから」と、奏太を煽った。


「……チ?いや……」


 奏太が呟いた。ナリが「にゃ?」と聞き返した。


「……ピンチなんかじゃない。これはチャンスだ。君たちを復讐の種(カード)にして、あいつらに復讐するんだ。そうしなければ、誰が報われるんだ?ああ、誰も報われない!あいつら大人の醜さを、私が改心させてやるんだ!復讐は何も生まないけど、奴らの改心を生むことは出来る!

 いくよ、千里くん達……私は、こんな所で終われないんだ!」


 奏太がそう叫び、「《踊り子の(ダンス・ミュー)舞踏曲(ジック)》!」と宣言した。ナリ達の心が踊るような、軽快な音楽だった。それを聞いていたナリ、零、参華は思い思いに踊りだした。


「にゃ、にゃ、にゃ、っと。せい!」


 だが、ブレイクダンスを踊りながら近付いたナリが、演奏中の奏太を蹴った。それは避けられてしまったが、演奏は途切れ、零達は踊りを踊りから解放された。


「恥ずかしー……っと、今度は私の番ね!」


 1人で社交ダンスを踊っていた参華は、我に返り、槍をくるくると回し、叫んだ。


「《槍の風船華(キキョウ咲き)》!」


 そして、槍をくるくると更に回し、風船を割るように、奏太の方へ槍を突いた。風圧と空気抵抗の激突による、大きな破裂音のようなものが聞こえた。

 奏太はその音に怯みつつも、風に当たらないように左に避けた。


「分かってるのよ、左右に避けるっての!《槍の大輪華(ヒマワリ咲き)》!」


 それを見ずに、参華は叫んだ。そして、参華が槍で前方に低くジャンプし、奏太が先程居たところまで思い切り踏み込むと、風で視界の悪い中、思い切り槍で薙ぎ払った。



「これで決めるよ……!《呼吸忘れる(チョーク・)練習曲(エチュード)》!」


 慌てて奏太がジャンプし避け、笛を吹き始めた。だが。


「お前をここで倒したら、息なんて……要らねえんだよ!《魔力魔撃(エナジー)》!」


 と、奏太の背中から零が斬りかかった。息をしておらず、少し苦しそうだった。それすらも、空中で体を逸らして避け、演奏を続けた。


「これで決められるといいんだけど!《地震精霊(クエイク)》!皆避けてね!」


 その着地するところで、詩乃が叫び、杖を振った。また局所的な地震が発生し、参華が零の腕を引っ張って避けていた。奏太は驚いた顔をしつつも、飛び上がって避けた。

 それを待っていたかのように、ナリが叫んだ。


「空中じゃ……避けらんないにゃ!」


 そして、ナリが奏太の背中から蹴った。奏太は地震に気を取られ、それに気付かなかった。蹴り飛ばされる奏太の耳に「千里!いけにゃー!」という、ナリの声が聞こえた。

 全員の息の音が、聞こえなくなった。零と参華は、立ち上がることも難しそうだった。


「ごめん……稲子谷奏太。《天災雷撃(カラミティサンダー)》!」


 いつの間にか、ミニチュアダックスフンドの茶色い耳と細長い尻尾を生やした千里が、飛ばされた奏太の目の前に現れていた。

 そして、雨雲がどこかにある訳でもなく、雷が奏太を貫いた。

 草原に落ちた奏太は、もう演奏していなかった。

雨が凄いですね。土砂災害に遭った方、避難を余儀なくされている方、日本中の方、十分お気をつけ下さい。

今週の金曜日は、リアルで忙しいのでお休みします。

次回は8月23日です。

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