表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にゃんと奇妙な人生か!  作者: 朝那月貴
山風町の笛吹き
37/159

Ballet of Ragnarok

 次の日。

 うだるような暑さの中、ナリは午前10時頃に起きた。自分用の猫の柄の茶碗にご飯を盛り、インスタントのお茶漬けの素をご飯にかけた。ナリの好きな干したしらすと鰹節を載せた状態のご飯に、お湯を注いだ。


「お前、ほんと好きだよな……それ」


 自分の部屋から出てきた零が、呆れたようにそう言った。そしてそのまま、ソファの上に座って、テレビをつけた。


「今日の最高気温は32度。熱中症に十分お気をつけください」


 そう言う気象予報士の声が聞こえた。


「いいじゃんかにゃー、これうまいし。今日零はなんか用事あるのかにゃ?」


「いや、ねえよ」


「にゃ、じゃあ今日もゆっくり出来るにゃんね」


「ああ。大学2年って忙しいはずなんだけどな……」


 零と他愛もない会話をしつつ、ナリの猫柄の箸を並べた。そして、冷蔵庫の中の冷えた麦茶をコップに注ぎ、「いただきますにゃ」と手を揃えて、お茶漬けを食べ始めた。


「大根おろし、いらねーのか?」


「あ!忘れてたにゃ……」


「にゃにゃん」と鼻歌を歌いながら、冷蔵庫に向かった。そして、大根おろしとポン酢を取り出すと、お茶漬けの上に垂らした。


「それ……毎回聞くけど、美味いのか?」


「美味いにゃー!暖かいご飯と、冷たい大根おろしがマッチしてて美味しいんだにゃ!それと、大根おろしとポン酢が、しらすとも合ってて……!」


「はいはい。あ、そうだ。ナリ」


 零がテレビを消し、ナリの方に近付いた。そして。


「お前さ、水着、やっぱ欲しいか?」


 零はそう、何も気にしていないかのように聞いてきた。


(あー……やっぱ気にしてたかな……)


 ナリはそう思いつつ、食事をやめ、「気にしなくていいにゃ」と真っ直ぐ零を見た。それを聞いた零は少し悩んだように頭を掻いてから「今週の日曜、暇だよな?」と聞いた。


「え?そりゃ暇だけど……何すんだにゃ?」


「それは当日のお楽しみ。楽しみにしとけよ?」


 零はそう笑って、自室に戻っていった。「スマホ取ってくるわー」と呟いて、扉を閉じた。


「……零っていっつも教えてくんないよにゃ……」


 ぶつぶつと不平不満を零しながら、ナリはソファに座り、ゲーム機を起動した。「Ballet of Ragnarok」のカセットをゲーム機に差したところで、零が帰ってきた。


「お?「Ballet of Ragnarok」だっけ?」


「そうにゃ!今日はやろうと思ってたんだにゃー、バレラグ!」


「バレラグって略すんだな……んで、お前のID覚えてんのか?」


「覚えてる訳ないにゃ!操作も覚えてないし、最初からやるにゃ」


「そんなことでいばるなよ」


 零もソファに座った。テレビに「Ballet of Ragnarok」というタイトル画面が映し出された。丸ボタンを押して、「ニューゲーム」ボタンを押した。


「なあ、これどういうストーリーなんだ?俺全然知らねえんだけど」


「見てればわかるにゃ」


 2人の短い会話の最中、テレビ画面には、緑豊かな大地や飛び交う小鳥達、美しく咲き誇る色とりどりの花が映し出されていた。


『世界はまだ、美しかった。誰もが平和を愛し、誰もが幸せに暮らしていた。』


 と、茶色のフィルターのかかった画面に、ナレーションと文字が映し出された。画面は変わり、のどかな村の風景が次々と映し出された。


『人間、エルフ、ドワーフ、獣人族、機械族……神に愛された種族達が、それぞれの村で暮らしていた。彼らは幸せだった。』


 ナレーションがそう言った。「混血種はないんだな……」という、零の悲しそうな独り言を無視し、ナリは画面を見つめた。


『けれどその幸せは、長く続かなかった。』


 黒い画面の上に、ナレーションの文字が映し出された。


『死神の手先である魔物達が、一斉に村を侵攻した。神は、祝福をもたらした人類を、助けることが出来なかった。』


 村に火が放たれ、魔物達が人類に襲いかかる場面が映し出された。逃げ惑う人類が森に集まっていき、カメラが引いていく。森にも火の手が上がった。人類が、わらわらと集まり、森の奥にそびえ立つ塔を目指していく場面が映し出された。


『生き残りは、何が起きたかも分からぬまま、塔を目指した。神の降り立つと言われた塔は、魔物達からの災害を逃れる唯一の場所だった。』


 そのナレーションの後、塔の頂上にカメラが移動し、


『その災害を、人々はラグナロクと呼んだ。塔に住み始めた人類は、種族の垣根を越え、ラグナロクを終わらせる為の兵士を、集め始めた。』


 というナレーションが流れた。兵士長と思われる人物が、カメラの中心に現れた。無機質な感じのする塔の頂上で、兵士長は言った。


『お前が新しい兵士か。神がなぜお前を選んだのか全く検討がつかないが……とりあえず、自己紹介してくれ』


 ここでようやく、カーソルと5つの種族の男女の画像、そして「新兵の種族は?」というメッセージが映し出された。


「ここから操作出来るにゃ」


「ふーん……何族にするんだ?」


 零が尋ねると、「獣人族にしようかにゃー……」と呟いて、カーソルが獣人族の方に動いた。


「これ、種族ごとになんか違いあんのか?」


「いや、見た目の違い以外なんも無いはずにゃ」


「なら、獣人族でいいんじゃねえの?」


 零のアドバイスを聞いて、ナリは獣人族を選んだ。次に性別を選ぶ画面が表示された。


「女にするにゃ」


「即決だな……」


「自分の性別の方がやりやすいに決まってるにゃ!」


「それ、一部に喧嘩売ってるぞ」


 女を選ぶと、次に見た目を決める画面が出てきた。骨格、頭、目、髪、耳、鼻、口など、その項目は多岐にわたった。その中には「種族」という項目があり、そこで尻尾や耳、髭などが調整出来るようになっていた。


「これ、全部微調整出来んのか?」


「そうだにゃ!ケルベロスアイのナリっぽくするにゃ〜」


 1時間かけ、ナリはようやくキャラクターを完成させた。装備は初期装備の「新兵の服」を着ているので変えることは出来なかったが、それ以外はかなりケルベロスアイのナリに近い姿をしていた。違うところは、黒い髪に白い髪の束が混ざっており、尻尾も白い部分がかなり多いところだった。


「出来たにゃー!」


「なんか……微妙にお前っぽくなくね?白いところとか」


「いいじゃんかにゃたまには違っても!」


「決定」という場所にカーソルを動かした。そして、最後に「新兵の名前は?」というメッセージと共に、五十音のひらがなが表示された。


「ナリ、か?」


「いや、でも前にその名前使っちゃったしにゃー……他の人と被らないようにしてくださいって、書いてあるし」


 ナリの言葉を聞いて、零は画面の隅にある、「他の兵士と被らない名前にすること」という文字を見つけた。


「じゃあひらがなとか」


「なんかそれはにゃー……」


「じゃあアルファベットか?」


「うーん……」


「なり」や「Nari」と打ち込んだが、すぐに消した。そして、5分ほど悩んだところで、「ナリユウ」とつけた。


「よし!これなら被らないにゃ!あ、でも……」


 ナリがすぐに「ナウリュ」とつけ直した。「よし!」とガッツポーズをとり、決定ボタンにカーソルを移動させた。


「なんでナウリュなんだ?」


「有の文字は(ゆう)って普通読むにゃん?だから」


「割とテキトーだな……」


「テキトーでいいの!」


 それでキャラクターの制作が終わり、次にチュートリアルに移った。銃を使って、発砲、魔弾装填、回避などの操作を確認した。

 そしてそれが終わり、兵士長から「訓練が終了した者への義務」として、8種類の弾丸が用意されていた。ナリは1番左端にあった、「アタッカー」の弾を選んだ。


「これ、職業選択とかねえの?」


「ないにゃ。でも、銃ごとに出来ることが限られてるにゃ。今私が持ってるのはアタッカーで、例えば……」


 ナリは最初のバトルフィールドである「キープ草原」に出てきた。敵も弱いものしかおらず、初心者が戯れていた。その中で、ナリはあるキャラクターを発見した。


「あのキャラは、ヒーラーの弾っぽいにゃ。アリス……可愛い名前にゃんね」


 アリスを一瞥し、ナウリュは経験値稼ぎの作業をし始めた。たまにストーリーを閲覧し、経験値を稼ぎつつ、周りのプレイヤーの様子を見ていた。そして。


「…………」


「どうしたよ、そんな驚いた顔して雑魚狩りして。そろそろ大丈夫だろ、次のエリア行けよ」


「いや……さっきのアリス、近付いてきてるにゃ……?」


「え?」


 実際、アリスはナウリュに近付いてきていた。よく見ると、アリスは序盤に手に入らない装備を着ており、その姿は異質だった。


「な、なんでこんなところ来てんだかにゃ?ここ通らなくても高レベルエリア行けるのに……というか、やっぱ私に近付いてきてないかにゃ?」


「PKされんじゃねえの?」


「ぴー……けー……?」


「プレイヤーキル、まあプレイヤーがプレイヤーを殺すことだな」


「や、やばやばにゃあ!ど、どうすれば……!」


 ナウリュが慌てながら弾を装填していると、ついにアリスは、ナウリュと話すことが出来るほど近付いていた。アリスは可愛らしい機械族の女の子で、長い金髪に赤いリボン、そして大きな鎧を身にまとっていた。


「さすがに勝てないにゃー!ヒーラーだとしてもー!」


「終わったな……」


 2人が諦めていた、その時。

 アリスは、フレンド申請をしてきた。


「……え?」


 2人の声が重なる。アリスの手が、ナウリュに差し出された。アリスはレベル180の、この世界で言うなら凄腕のプレイヤーだった。「配信してます!」というショートメッセージが、キャラクターの横に表示されていた。


「え、ええと……とりあえず、フレンド申請受け取ろうかにゃ?」


「まあ……心強いし、いいんじゃね?アリスって名前の配信者か、調べてみるか……」


 零がスマートフォンの画面に夢中になる中、ナリは「フレンドになる」というボタンにカーソルを合わせた。丸ボタンを押すと、アリスは「ありがとう!」というメッセージを送り、サムズアップポーズを取った。ナリも慌てて、アリスと同じことをした。


「んー……バレラグ生声配信で使われてる名前っぽいか?でも多すぎて分かんねえな……寅垣内涼(とらがいとすずめ)三國葛葉(みくにくずは)、あきひとgames……とりあえず、今どこも配信してねえな」


 零がスマートフォンを見ながら呟いた。


「なら大丈夫かにゃ?とりあえず、ストーリーするって言わなきゃにゃ……」


 ナリは「ストーリー進めるので失礼します」とメッセージを送った。だがアリスは「お手伝いするよ!」とナウリュの後を離れなかった。

 その日、ナリは零と買い物に行くまで、「Ballet of Ragnarok」を進めた。アリスのサポートのお陰で、レベルは30になり、操作も上達していった。

 ナリは零に言われるまで、夢中になって遊んだ。やめる時、アリスは「また遊ぼうね」と手を振ってくれた。

しらすのお茶漬けは書いていて非常に食べたくなりました。

Vtuberは見たことないので、名前はかなり適当です。

次回は8月6日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ