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最終話 自由と準備は整った!

2章最終話






 組合拠点、よし。組合登録金、よし。常駐守備隊員、よし。組合職員の雇用、よし。


 所属冒険者五名、四名……四名!?



「馬鹿なッ! 一人足りねぇじゃねぇか!!」


「えぇ……分かってた事だろ?」


「色々あったから忘れていた。あの展開ならゴールインのはずなんだ」


「どんな展開だったのか知らないが、どうすんだよ?」



 どうすると言われても、どうしよう。


 あと一人なのに、あと一人が遠い。他の組合からの引き抜きはまず無理だろう……いや、いけるか?


 冷静に周りを見渡すと、美女揃いだ。


 冒険者のエミレアにルルゥ。組合職員のアイシャにミレイナ。常駐守備隊員のレイシィ。


 俺というイケメンもいる。シューマンはいない事にしよう。


 女どもは未だにグチグチと言い合いを続けているが、容姿だけ見たら完璧だ。男の一人くらい寄ってきてもおかしくない。



「ふふふ、男はいつの時代も馬鹿なのよ」


「……どうした急に? いい案でも見つかったのか?」


「ああ、ちょっと冒険者をハンティングしてくる。シューマンは掃除でもしといて」



 汚れた雑巾をシューマンに渡し、急いで組合を出た。


 目指すは最大手の冒険者組合。神の恩寵は除いて……自由な片翼と天啓、そして強欲な天使だ。


 まずは自由な片翼! 案外、ガイエン辺りが心変わりをするかもしれない。アイシャがいるってだけで、かなり揺れ動いていた感じだからな。



 ――――――――

 ――――

 ――

 ―



「――――マジかよ……」



 不発。ビックリするほど誰も靡なびかなかった。あのガイエンにすら、怪しんだ目を向けられてしまった。


 美人を前面に押し出し過ぎたようだ。そんな美人ばかりの組合があるかと、何か裏があると思われてしまったようだ。


 一度戻って、映像の輝石を使って組合の女性達を撮影するか? 流石に映像で見せられれば、本当の事だと分かるはずだ。


 馬鹿な奴らだ、こんなに素晴らしい組合は他にないというのに。



「戻る前に一応、強欲な天使にも行っておくか……」



 少しだけ遠くにある強欲な天使を後回しにしていたため、念のためという思いで強欲な天使に足を運んだ。



「――――だから、本当なんだって!!」


「うそつけよ! そんな楽園みたいな場所があるかよ!」

「全ての女性が美人だぁ? 夢見てんじゃねぇぞ!!」



 醜態を付き去っていく冒険者達。本当に愚かだ、女大好きって顔をしておいて、自らチャンスを手放すとは。


 やはり、戻って映像を撮影するか――――



「――――おや? サージェスさんじゃないですか!」


「……ん? おお、ジャスパーじゃねぇか!」



 そこにいたのはエミレアの騒動で世話になった、商人のジャスパー。


 相変わらずの人懐っこい笑顔で、ゆっくりと俺に近づいてきた。



「先日はありがとうございました。お陰様で大儲けでございます」


「そりゃ良かったな。少しくらい分けて欲しいもんだ」


「ふざけるな」


「すみません……」



 ほんと金が絡むと人が変わる奴だな。コイツには二度と貸しは作らねぇ、マジで毟り取られそうな気がする。



「今日はどうしてこちらに? 強欲な天使に冒険者登録でもされるのですか?」


「いや、移籍してれる冒険者がいないかなって探してたんだよ」



 ジャスパーに詳細を話した。俺が冒険者組合を作ろうとしている事、冒険者の数が足りない事などだ。



「貴方様が組合を……金の匂いがしますね」


「金の匂いどころか、マジで貧乏組合だぞ」


「貴方様の実力は、あのリステアさんが認めていました。そんな実力者が作る組合……興味がありますねぇ」



 どこまで行っても商人か。まぁ組合を作れば、色々と商人に頼る事も出てくるだろう。


 コイツの事は信用している。贔屓にしてやるのはやぶさかではないが……今の会話で、一つ思いだした。



「リステアだ……リステア・カーマインだ!」


「ど、どうしました? リステアさんが何か?」



 そう、アイツとは決闘の約束をしていたな。


 負けた方は勝った方の言う事をなんでも聞く。つまり俺がリステアを負かせば、強制的に俺の組合に移籍させる事ができる。


 約束は守ってもらうぜ? リステア・カーマイン。



「ジャスパー、リステアはどこにいる?」


「えっと……リステアさんを誘うつもりですか? あの方は強欲な天使の黒色冒険者ですよ?」


「それが何だよ?」


「黒色冒険者の移籍なんて聞いた事がありません! 黒色ともなれば専属契約を結んでる場合もありますし……」


「契約は破棄する為にあるんだぜ? 契約より約束だ」


「普通は約束より契約だと思いますが……」



 ごちゃごちゃうるさい奴だ。どうしても移籍できないと言うなら、白猫になってもらうだけだ。


 いいやそれだけじゃ足らんぞ? その白い下着すらも剥ぎ取って、快楽に溺れさせてやる!!



「それに今リステアさんは、今この国にいませんよ?」


「ははは、蕩けた目を見るのが楽しみ…………なんだって?」


「だから、この中央諸国にはいません! 依頼で、しばらく東方諸国に行っていますから」


「なん……だと」



 それから強欲な天使で粘ったが、俺の組合に移籍してくれる冒険者は見つからなかった。


 頼みの綱のリステアは、いつ戻るか分からない。分からないのを待っていられるほど、俺は我慢強くない。


 トボトボとした足取りで、俺は皆が待つ組合に戻るのだった。



 ――――

 ――

 ―



「どうするのですか?」


「どうするのかな?」


「どうするんですか?」


「どうするのかしら~」


「どうするのでしょうか?」



「うむ……どうしようね?」



 女性陣の呆れた目が刺さる。シューマンは我関せずと、一生懸命にテーブルを磨き上げている。


 こんなはずではなかった。今頃は組合設立を記念して、みんなで大騒ぎのパーチーを行っていたはずなんだ。


 たった一人いないだけで頓挫してしまうとは。



「誰かさ、誘える知り合いはいないか?」


「「「「う~ん……」」」」


「シューマン、誰か誘える奴いない?」


「知り合いは……来ないと思う。新人を捕まえるとかはどうだ?」


「それは厳しいでしょう。現在の状況は、四大組合一極集中です。中堅規模の組合ですら、新人の確保が難しくなっております」



 アイシャの言う通り、冒険者は自分で好きな組合を選択できる。


 しかし新人のほとんどは、四大組合の門戸を叩く。中堅や小規模に回るのは、身内がいたり何かしらの思い入れがあるからだとアイシャは続けた。



「あーーもう!! どうすんだよ! リステアを待つしかないのか!?」


「お、落ち着けよサージェス!? あと一人くらい、なんとかなるって!」


「なんともならねぇからこうなってんだろ!! クソ!! 一人くらいいねぇのか!!」



「――――いますよ」



 ギギィっと、立て付けの悪くなった組合の扉が開かれた。


 コツコツと靴音を鳴らし、誰もが見惚れるほどの凛とした歩き姿に皆、目を奪われた。


 整った容姿をしている者は、ゆっくりとサージェスに近づいて行く。



「お……お前!?」


「この組合の冒険者になりにきました」



 綺麗な翠眼、靡く金髪、スッと通った鼻筋。まるで絵本の世界から飛び出した、お姫様のようである。


 ――――男だが。



「レゾート!?!?」


「先輩、来ちゃいました」



 まるで遠距離恋愛でもしているかのような言い回し。なによりその焦がれた表情が、色々と間違っている気がしてならない。



「いや、でもお前!? 神の恩寵は!?」


「あ・の・女・に引き継いできましたので、大丈夫です」


「いやそうじゃなくて! 神の軌跡が許すのかよ!?」


「さぁ? 分かりません」


「わ、分からないってお前な……」


「僕、考えたんです。神の恩寵に先輩を入れられないのなら、僕が先輩の組合に所属すればいいのだと」


「お前……俺が組合を作ろうとしている事を……?」


「もちろん、知っていましたよ?」



 なんて奴、まさかバレていたとは。バレた以上、俺にアドバンテージはなくなった。


 ここでレゾートを突っぱねれば、間違いなく再び邪魔をする。組合連合会を押さえているレゾートの方が一枚上手。


 神の軌跡の幹部と言う爆弾を抱える事にはなるが……背に腹は代えられんか!?



「よ、よろしくな? レゾート」


「ええ、末永く……宜しくお願いします、先輩」



 こうして、冒険者の数はそろった。


 やっと組合を作れる訳だが、全く不安がないと言えば嘘になるな。


 ともあれ、ついに俺は冒険者になれるのだ。随分と長かった気がする。


 目の前にいるこの金髪男のせいな気がするが、最後はコイツのお陰で冒険者になる事が出来るとはな。


 一つの到達点。自由の体現者である冒険者。


 先生。俺は自由になったよ。自由を手に入れたよ。


 やりたい事をやりたいだけ、やりたいようにやっていくよ。


 だから待っててくれよ、先生。俺は自由になったから、次は先生の番だろ?


 待っててくれ。必ず…………先生を生き返らせてみせる。



 ――――



「宜しくお願い致します、レゾートさん」


「……犬耳種の組合長……駄犬」


「は?」


「よろしくお願いします! レゾートさん!」


「……人間の冒険者……雌豚」


「め、めすぶた!?」


「よ、よろしくお願いします」


「……兎耳種の冒険者……ちびウサギ」


「ち、ちびウサギィィィィ!?!?」


「よろしくお願いするわ~」


「……人間の組合職員……ババア」


「ばっ……ストレートねぇ……」


「宜しくお願い致しますね」


「……人間の守備隊員……黄色髪」


「黄色ではなく金です!」



「宜しくお願い致しますね? 先輩に依存するクソ女ども」


「「「「「…………」」」」」


「お……俺はシューマンだ! よろしくな! レゾートさん!」


「ええ、こちらこそ宜しくお願い致します」


「え……お、おう! 俺にはなにも言わないんだな……」



「言っておきますが……先輩は僕のものですので」


「「「「「は、はぁ!?」」」」」


「うおっ!? まさかまた修羅場になんのか!? え? レゾートさんって女なの?」


「ある程度の面つらをしているようですが、その面のお陰で先輩の寵愛を受けられているという事をお忘れなく」


「「「「「…………」」」」」


「……俺は不細工だから何も言われなかったのか? 俺、不細工なのか?」


「外面だけの女、内面はどうなのでしょうね? 外面なんて、どんどん劣化していくと言うのに」


「「「「「こいつムカつく……」」」」」


「で? 俺は不細工なのか?」


「精々、面の維持に努めて下さい。では、今後とも宜しくお願い致します」


「「「「「よろしくお願いしたくねェェェェェ!!!!!」」」」」



「どうすのこれ、サージェス?」


「知らね」


「……なぁ、俺って不細工なん?」


「普通」


「そっか! 普通か! 良かったぁ……」


「普通で喜ぶのかよ……」

お読み頂き、ありがとうございます


2章完となります

3章は全話閑話的な話になるので、飛ばして4章をメインに投稿しようかと思います


ある程度、書き上げてから投稿しますので、少し遅れるかもしれません


宜しければブクマや評価など、宜しくお願い致します


ありがとうございました

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