プロローグ
どうもココアです!
久しぶりの恋愛ですが、更新ペースは糞ほどと言っていいです。
よろしくお願い致します。
――その日、両親が離婚をした。
経緯は分からない。当時はまだ俺は小学校低学年で、妹はまだ幼稚園だった。
ただ離婚をする以前からも喧嘩が増えていたような気はする。互いに罵り合い、大声で怒鳴り合っていた。
最初の頃は俺か妹が居れば喧嘩は止めていたけれど、いつしか俺たちがいてもお構いなしに喧嘩をするようになっていた。
そして二人は、限界が訪れたかのように突然離婚をした。
「やだ。お兄ちゃんと離れたくない!やだ!やだ!やだ!」
大粒の涙を流しながら俺の服を引っ張る妹――林檎。もちろん、俺も妹と離れたくない気持ちが強かった。両親はどちらが子供を連れて行くのかという討論を繰り返していたようだが、俺と妹を両方連れて行くことは出来なかった。
母さんは俺に父さんに面影を重ね、父さんは林檎に母さんの面影を重ねていた。
母さんは俺を拒み、父さんは林檎を拒んだ。だから俺たち兄妹が一緒に暮らすことは出来なかった。
「嫌だよ……お兄ちゃん」
泣きじゃくる林檎。力強く俺を引っ張る林檎のことを抱きしめながら言う。
「大丈夫だ林檎。離れていても俺たちは兄妹だ。
いつでも会えるし、何があっても林檎のことを忘れたりしない」
「ほんと?」
すると、林檎の顔にほんの少しの笑顔が戻る。
「ああ……本当だ」
「嘘じゃない?嘘だったら針千本飲ませるよ」
震えて、掠れそうな声のままそっと小指を出す林檎。俺もそれに応えるようにして、自分の小指を重ねる。
「「――指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます。指切った!」」
――これが妹との最後の会話だった。
別れの当日。朝早くにタクシーに乗り込む母。林檎が起きていたら騒ぐと考えたのだろう。起こさないように、静かにキャリーバッグと共に家を出て行った。
見送りをしようと玄関までついて行ったが、そこでゴミを見るような目で睨まれたので引き下がるしか無かった。
こうして俺――神崎優人は父と二人暮らしになり、妹は神崎林檎から日野橋林檎となった。