4話 ざまぁされフラグ貯金に励むわ!
その後も、彼女は散々悪事を働いた。
ある時はベガティーネに水をかけた!
「何故水の入ったティーカップを……? お茶じゃないんですか?」
「貴女には関係ございませんのよ」
不思議そうに問う彼女を無視した!
「ふん、スカートが汚れて哀れね。みすぼらしく見えましてよ。でもまぁ、私が汚したことは謝りますわ」
「いえ! 水ですから! シミにもなりませんから! 乾かせば大丈夫です」
とても上から目線で貶した!
「平民だから、そんなお粗末な服でいられるのね……そんな貴女程度は、私の古着がお似合いよ!」
「えっ? いえ、古着でも高級品ですし、そんなの受け取れな……」
「私が恵んであげてるのよ! 庶民なんだから、つべこべ言わずに受け取りなさいよ!」
「何でもう用意してあるんですか⁉︎ しかもこれ新品では⁉︎」
そう言って高笑いしつつ、自分には似合わない服をグイグイ押し付けた!
ある時は、食堂の値段に戸惑う彼女に!
「庶民は立ちすくむだけが仕事なのかしら? 私の邪魔になりましたわ。お詫びとしてあれを買ってきなさいよ」
「ステラ様! この間はありがとうございます!」
そう言いがかりをつけて、絡んだ!
何故か笑顔でお礼を言われた気がするが!
それは気のせいである!
だから無視した!
「でもここ会員証が必要で……」
「まぁ。そうでしたわ。貴方庶民ですものね。良いわ、私のこれを貸してあげましてよ。あぁ、庶民と違って私のものは、提示したら代金は実家が払いますのよ。そこで払って、恥を晒さないで頂戴な」
「は……はい!」
そうして会員証を押し付け、パシった!
「あの……買ってきました……」
「遅すぎますわ。もうそんな気分ではございませんの。貴女には、残飯処理がお似合いでしてよ!」
家畜に餌をやるように、見下した!
「えっ! あの! そんな! 残飯って普通食べ残しですし、これまだ食べてないですよね⁉︎ こんな高級で美味しそうなお食事、私じゃとても払えないし頂けな……」
「庶民と違って、私には端金でしてよ。貴女が食べないならゴミ溜め行きね」
「た、食べます! ありがとうございます‼︎」
そうして、パシッたのに傲慢に拒んだ!
お礼を言われたのは!
彼女の勝手な気のせいである!
だから無視した!
またある時は、教室で彼女を捕まえて!
「ベガティーネ・ヒーロイン、貴女明日お暇かしら」
「え? 明日ですか? まさか一緒にお出掛けして下さるんですか⁉︎」
突然嫌がらせのために、話しかけた!
何故かルンルンで嬉しがっているのは!
彼女の勝手な気のせいだ!
だから無視した!
……心が少し痛んだのは内緒だ。
「貴女の意見は聞いてないわ。明日は休日ですから、10時にあの木の下に来なさい? いいですわね!」
「えっえっ? 本当に遊んで下さるんですか?」
無理やり都合も聞かずに、呼び出した!
「あと私の恵んだ服を着て来なさいよ! 私に恥をかかせないで頂戴?」
「は、はい! おめかししますね‼︎」
趣味じゃないかもしれない服を、強引に着させた!
本人も何故か気張っているので、しめしめとほくそ笑んだ。
そしてステラはそこに行かずに!
「あれ……アルタイル殿下? ステラ様は……」
「……オレ、あいつに呼ばれたんだけど。……まぁ良いか。2人して騙されたな。つーか、今日可愛いじゃん?」
「これは……ステラ様が下さって……ステラ様……」
「なぁ、オレがいるのになんか残念そうなのは、なんでなんだ?」
約束を破って、2人の共通の敵になった!
ちなみにこの様子は、遠くから覗いている!
すごく悪役的である‼︎
少なくとも本人はそう思っている‼︎
そんな頑張りが認められはじめたのかしら。
私、最近嬉しいことがありましたの。
「『ざまぁ』まで頑張って下さい!」
「婚約破棄応援してます!」
なんて、声をかけられるようになりましたのよ!
嬉しかったから、笑顔で握手に応じましてよ!
やはり、有言実行こそ力なのですわ!
毎回気合を入れるために、拳を突き上げて言っていたのよ。
「私が『ざまぁ』されるのですわー! 『ざまぁ』されフラグ貯金するのですわー!」
これを皆さん、聞いていらしたのね。
心強い味方が、沢山できましたのよ。
最近では『2人を見守る会』が発足されたと、聞きましてよ。追い風が吹いておりますわね!
まぁ、なんで応援してくれるのかは。
ちょっとよく分からないのですけれど。
私は、日夜悪事を働いておりますのにね?
けれど私でも、あれには流石にびっくりしましたのよ。
「んふふ! 順調、順調ですわぁ!」
その日ステラは木の影から、ベンチに並ぶ2人を観察していた。攻略イベントの大事な一幕である。
彼女はその様子に、満足げに笑みを浮かべている。
2人で楽しそうに談笑しておりますわ。
とってもいい感じでしてよ!
頑張った甲斐があったというものですわ!
この後ベガティーネが、第一王子にマフィンを渡すのだが。
第一王子は好感度が足りないと、それを捨ててしまうのである。
今日は意地悪を言って!
無理やり可愛い服を着せましたし!
わざと彼女にぶつかって!
王子との接触も増やしましたし!
王子にそれとなく!
アドバイスもしましたし!
好感度的には、何とかなると思うのですけれど。
「どうかしらね……」
「何が?」
「ふわっ⁉︎」
心配で呟いたステラの横から、いきなり声が聞こえた。
驚いて飛び跳ねつつ振り向けば、なんとそこにいたのは!
「何していらっしゃいますの、カストル殿下⁉︎」
麗しの君が、ステラの横にしゃがんでいた。