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美剣伝  作者: もんじろう
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85

 真紅郎が腰の大小を抜き、大きく両手を開いた。


 その背後では暗闇が渦巻いて、柊姫と八神家臣、鬼庭、酒井、後藤、加藤、猿助、藤巻の顔が浮かんでいる。


 全員の双眸は妖しく輝き、すさまじい憤怒の視線を隼人に投げかけてくる。


 対する隼人は、やや腰を落とし、右手で左腰の白虎の柄を左手で右腰の青龍の柄を握った。


 真紅郎の邪気と剣気を受けても、その身が怯む様子はない。


 隻眼が、ぎらぎらと輝いた。


 ぺろりと唇を舐める。


 隼人の後方では勝負を兄に託した燐子が、その背中を真剣な表情で見つめていた。


 座敷上の蜜柑たちも、庭の両端で立つ二人の護衛も、固唾(かたず)を飲んで勝負を見守っている。


「俺流、バツ斬り!!」


 隼人、前に出る。


 一気に間合いを詰めると左右の二刀が鞘走り、敵に目がけて駆け昇った。


 真紅郎の二刀が、隼人の二刀を受け止める。


 それを見た隼人は瞬時に両の手首を返し、白虎と青龍を外側へと跳ね上げた。


 両手を挙げ、二刀を振り上げた形となる。


 真紅郎がそれを察知し、斬りつけようと動くが、それよりも速く。


「俺流、バツ斬・裏!!」


 隼人の二刀が(はし)る。


 が。


 真紅郎は、この攻撃を左右の刀で楽々と受け止めた。


「ぬるいっ!!」


 真紅郎の両眼が爛爛(らんらん)と光を放つ。


「ぬるいぞ、美剣隼人!!」


 真紅郎が咆哮する。


 両手を開いた真紅郎の二刀を隼人の二刀が左右より押す様相。


 この流れは。


 一度目の戦いで隼人が真紅郎に敗れたときと同じであった。


 真紅郎が、ぞっとする笑みを浮かべた。


「獅子流」


 真紅郎の邪気が一気に爆発する。


「怨霊剣、赤!!」


 真紅郎の背後の柊姫たちが、一斉に笑い始めた。


 隼人の敗北を確信し、嘲笑(あざわら)う。


「美剣、死すべしっ!!」


 またも突然、隼人の腹部が斬り割られるかと思われた、そのとき。


(ビシビシ危険を感じるぜ!!)


 右眼の声が隼人の頭の中に響いた。


(かますぜっ!!)


「マシン(ガン)っ!!」


 右眼の声が高らかに叫ぶ。


 隼人の閉じられた右眼が、かっと開いた。


 右眼の力が真紅郎の「怨霊剣」の姿を克明(こくめい)に映し捉える。


 確かに真紅郎の左右の腕は、隼人の二刀によって押さえ込まれているが。


 敵の腹部の辺りより、透明の小刀を持つ、やはりこれも肉眼では見えぬ腕が出現し、隼人の腹に向かって伸びてくるのが、はっきりと見える。


 この「隠し腕」は敵に到達するぎりぎりのところで霊体から実体化し、斬撃を見舞ってから再び透明に戻るのであった。


 そのあまりの速さに敵は突如、自らの腹が斬られたように錯覚するのだ。


(怨霊剣、見破ったぜ!!)


 右眼が笑う。


「うおおおおおおっ!!」


 隼人が咆哮した。


 瞬時に後方へと跳び、それと同時に、伸びてくる敵の切り札が実体化する一瞬へと、左右の刀を叩き込む。


 真紅郎の「隠し腕」は手首と肘の部分を切断され、あっという間に邪気の塊へと変化し、霧散した。


「がああああっ!!」


 真紅郎が苦悶の声を上げる。





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