表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美剣伝  作者: もんじろう
81/90

81

「やむを得まい…」


 柊姫が言った。


 やはり、不満げではある。


「それでは」


 蜜柑が素早く口を挟む。


「美剣家、美剣燐子と八神家、獅子真紅郎による真剣勝負を二日後の朝、執り行うものとする!! 見届け人は、この小諸蜜柑が(つと)める!!」




 二日後。


 早朝より決闘の準備が行われた。


 燐子はあくまでも単身戦う覚悟で、他の者に危険が及ぶのを嫌がったため、美剣の門弟は誰も道場に来ないよう、きつく指示を出した。


 よって、道場の庭に試合場の陣幕を張る作業は、蜜柑と春馬の護衛の侍二人が引き受けた。


 果たし合いと言っても、お膳立てはその程度しかなく、すぐに作業は終わった。


 屋敷の庭側の戸は全て解放され、一望できる座敷内の中央に蜜柑が陣取る。


 その隣には春馬、陽炎、奇妙斎。


 皆、庭に作られた試合場に身体を向けている。


 陽炎は燐子と真紅郎の真剣勝負が決まり、敵が道場より一旦(いったん)、引き上げた後の話し合いを思い出していた。


 燐子を道場に残し、蜜柑、春馬、陽炎、奇妙斎は外へと出た。


 護衛の侍二人は入口で待たせる。


「蜜柑様」


 道場内の燐子に聞こえぬよう、陽炎は声を落とした。


「獅子真紅郎は柊姫たちを取り込み、もはや怪物そのものです。燐子さんが一対一で勝てる見込みはありません」


「分かってる」


 蜜柑が答えた。


「では?」と陽炎。


「元々は時を稼ぐための方便(ほうべん)。燐子さんが危険なら、すぐに合力(ごうりき)する」


「みっちゃんを呼ぶんじゃろ?」


 奇妙斎が口を挟む。


 口調は軽い。


「そのことですが」


 蜜柑が神妙(しんみょう)な顔つきになる。


「実は隼人のおじいさんは呼べません。燐子さんが真剣勝負の決意を語られた辺りで、霊が姿を消しました」


「な、何じゃとっ!?」


 奇妙斎が大声を出す。


 陽炎が人差し指を口の前に立て「しー」と、(たしな)める。


「それでは、わしらであの怪物を何とかせんとならんのか!?」


 声は弱めたものの、奇妙斎の顔は、明らかに怒っている。


 燐子が勝負すると言ったところで、いよいよ危なくなれば蜜柑が「大剣豪」美剣を呼び寄せ、あっという間に片を付けるだろうと、たかをくくっていたのだ。


 そのあてが外れ、大いに慌て始めた。


「ええ」


 蜜柑が頷く。


「みっちゃんめ、面倒事(めんどうごと)を押しつけおって…」


 奇妙斎は、しつこく怒っている。


「これでは、呼ぶ呼ぶ詐欺じゃな」


「僕の『エレメントシェル』と陽炎さんの『魔祓いの首飾り』、それと奇妙斎さんで燐子さんに加勢しないと」


 春馬が言った。


 春馬の「バックパック」には「未来」国の道具「エレメントシェル」が入っており、敵にぶつければ強力な炎を浴びせることが可能だ。


「それだと、わしが前衛になりゃせんか?」


 奇妙斎が愚痴(ぐち)る。


「最悪の場合の想定は必要ですが」


 春馬が胸の前で腕を組む。


「二日の内に隼人が着けば大丈夫。必ず勝てます」


 春馬が、にこりと笑う。


 かつて共に旅した隼人に全幅(ぜんぷく)の信頼を置いていた。


「何故もっと勝負の日を伸ばさなかったんじゃ! 十日後にでもすれば、確実に隼人が間に合うじゃろ!」


 奇妙斎が蜜柑を責める。


「いやいや、無理ですよ」と春馬。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ