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美剣伝  作者: もんじろう
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(オレの力を使え!! オレなら、敵の刀を全て完璧に把握(はあく)できる!!)


 隼人の頭の中で右眼が叫ぶ。


(一対一の尋常な勝負だぞ!)


 隼人が渋る。


(それを言ったら、あのクソガキも妙な力を使ってんだろうがーっ!! お前も使えるものは何でも使えっつってんだよっ!!)


(………)


「今度こそ、地獄に落ちろ!!」


 黄魔が吼えた。


 空中の全ての刀が、一斉に隼人へ向かって襲いかかる。


(緊急事態だ! 勝手にやらせてもらうぜ!!)


「マシン(ガン)っ!!」


 隼人の頭の中でしか聞こえなかった右眼の声が、現実の声で叫ぶ。


 閉じられた右眼が、かっと見開き、まばゆく光り輝いた。


 その瞬間。


 隼人は四方八方より飛来する刀の位置を全て知覚した。


 それぞれの刃の角度、速さ、あらゆる情報が、瞬時に頭に入ってくる。


「うおおおおおーーーーーっ!!」


 隼人が咆哮した。


 縦横無尽(じゅうおうむじん)に身体を動かし、白虎と青龍で、襲いくる刀たちを迎撃していく。


 一切の迷いなく、寸分の遅れもなく、次々と弾き返す。


 そうして防御しながらも、隼人は黄魔に向かって突進していく。


「なっ!?」


 これには黄魔が怯んだ。


 的確に刀たちを退(しりぞ)ける隼人は、あっという間に黄魔の眼前に立っていた。


 黄魔が慌てて、八相に構える。


 迎撃を受けた刀たちの態勢を立て直し、再び包囲を完了する。


 先ほどとは、やや状況が違う。


 二人の剣士の間に邪魔をするものはなく、周囲を大量の刀が取り囲んでいる。


「そんな…」


 思わず黄魔が、うめいた。


 黄魔の算段(さんだん)では、現在の戦況はあり得ないものであった。


 魔力を実体化させた無数の刀で敵を倒す。


 それが黄魔が甦り、新たに手に入れた能力。


 しかし今、両手に持った弧剣(こけん)のみで、敵の双剣と渡り合わねばならない。


 そもそも、刀の一斉攻撃を隼人が防いだのは異常。


 あれだけの刃の動きを全て見切り、弾き返すなど。


 隼人が右腰の青龍を左腰に差し直した。


 両手で二刀の柄を握り。


 上半身を左側に(ひね)っていく。


 黄魔に隼人の後頭部が向いた。


 この構えに、二人の対決を見守る静香が反応した。


「くくく」


 両眼を細め、薄く笑う。


「隼人め。私の真似とはな」


 背中を見せた隼人から、猛烈な剣気が立ち昇るのを感じ、黄魔は自らが追い込まれていると確信した。


 これは敵が隙を見せた好機などではなく。


 美剣隼人に二度目の死を与えるはずが、こちらが二度目の死に直面しているのだ。


 敵が正面に顔を向ければ、自分は死ぬ。


 黄魔の持つ一刀では、隼人を倒せない。


 もはや、自らの死は(くつがえ)せないのだ。


(それならば)


 黄魔は覚悟を決めた。


 若輩(じゃくはい)とはいえ、八神剣士の一人である。


 二人を囲む刀を全て突進させた。


 自らの身体が串刺しになるのもいとわぬ、相討ち狙い。


(兄者、姉者、黄魔は美剣を倒して死にます!!)





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