表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美剣伝  作者: もんじろう
7/90

7

 柊姫なる、この度の首魁(しゅかい)(くみ)する(やから)は果たして、鬼庭一人だけか?


 どうもそうは思えない。


 すると鬼庭のような死人の敵が徒党を組んで隼人を襲う事態となりはしないか?


 そ奴らが真っ向勝負するならまだ良いが、何か卑怯な策を用いるのでは?


 いくつもの不安が無法丸の頭をよぎる。


(こんなことなら、まだ俺が狙われた方がましだな)


 無法丸は大きくため息をついた。


 優しい男なのであった。




 さて。


 練気を操る名もなき流派の剣士、無法丸にそこまでの心労をかけているなどと、(つゆ)ほどにも思っていない当の本人であるが。


「美剣さん!!」


 早朝、京の魔祓い師組合所を訪れた隻眼の少年剣士の姿を見て、魔祓い師の少女、(かなで)が慌てすぎ、まろびかけつつも走り寄った。


「よ、よう」


 組合所の立派な玄関に立つ隼人は、相手の手放しの喜びように照れてしまったのか、やや顔を赤らめた。


 癖のある黒の短髪。


 右眼には刀の(つば)が眼帯代わりに紐で括りつけられている。


 薄緑の着物に下は山袴(やまばかま)


 十七、八歳というところか。


 少年だが、なかなかの体格。


 着物より覗く両の腕は猫科の獣の如く、しなやかで筋肉質であった。


 両腰にそれぞれ一本ずつ刀を携えている。


 隼人に駆け寄った小柄な美少女、奏も少年剣士とほぼ同年齢か。


 胸元までの真っ直ぐな美しい黒髪。


 前髪は眉上で横一直線に切り揃えられている。


 くりりとした両の瞳が何ともかわいらしかった。


「来てくださったのですね」


 満面の笑みで言う奏に隼人が頷く。


 半年ほど前、二人は出逢った。


 今、二人が向かい合う魔祓い師の組合所が「魔武士」なる異形の者たちに襲われた事件。


 魔祓いの技が一切効かぬ敵に手も足も出ない奏を、突如、現れた「未来」なる国よりやって来た女「ターシャ」が救った。


 その後、魔武士の総大将を倒す魔祓い道具「魔弾」を完成させる旅に出た二人の女は、その道中で「円月(えんげつ)」という魔武士の剣士に生命の危機まで追い詰められる。


 もはやこれまでと思われた、そのとき。


 円月を斬って二人を助けたのが、少年剣士美剣隼人であった。


 その際、奏が自らの素性を隼人に明かし、助けてもらった礼をしたいから、いつでも組合所へ立ち寄って欲しいと約束を取り付けたのだ。


 そして今日、諸国を武者修行している隼人が、どういう流れかは分からぬが、ついに約束を果たすため、奏の元を訪れたというわけである。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ