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「そうじゃ!」
柊姫が声を上げた。
「我らの仇『大剣豪』美剣を見つけたぞ!」
「ええ!?」
黄魔が驚く。
「美剣は死んだのでは!?」
「彼奴を降霊できる女を見つけた」
「おお!」
藤巻の顔が、ほころぶ。
「では直接、恨みを晴らせますな!」
「そうじゃ! これより美剣燐子を追う。小娘の居る場所に降霊術の仲間も居るはず! 早速、参るぞ!」
柊姫の言葉に一同が頷き、一歩を踏み出した、そのとき。
黄魔が首を傾げた。
「待って!」
他の者に訴える。
「どうしたの、黄魔?」と蒼百合。
「この気配…」
黄魔が後方を向く。
「間違いないよ!」
いたずらっぽく瞳が輝く。
「美剣隼人の気配がする!」
「馬鹿を申すな!」
藤巻が笑う。
「あの小僧は真紅郎に斬られて死んだぞ」
「いや、待て」
真紅郎が眼を細める。
「確かに…美剣隼人の気配だ」
「そんな! 生き返ったとでも?」
蒼百合が言った。
「分からぬ。だが、奴は生きている。こちらへ向かってくる」と真紅郎。
「戻るか?」
藤巻が問うた。
「いや」
真紅郎が首を横に振る。
「今は美剣隼人より降霊の女の方が肝要だ。まずは『大剣豪』美剣に意趣返しをせねば。柊姫様も、それを望んでおられる」
「放っておくのか?」
藤巻の言葉に真紅郎が答える前に、黄魔が右手を挙げた。
「はい、はい!!」
「何よ?」と蒼百合。
「僕が美剣隼人を始末するよ。兄者たちは降霊術の女に」
「駄目よ!!」
蒼百合の口調が強まる。
表情も険しい。
「お願い! ちゃんと出来るから!」
黄魔が真紅郎に両手を合わせて懇願する。
「僕も八神剣士の一人だよ! 信用してよ!」
「駄目ったら駄目! 美剣隼人の様子が分からないのよ! 仲間と居るかもしれない」
「大丈夫だよー」
黄魔が拗ねて、頬をふくらませる。
真紅郎が顎に左手を当てて、思案を始めた。
悩んでいた。
いかにするべきか。
「よし!」
藤巻が、ぱんっと手を打った。
「拙者が黄魔について行く。それなら蒼百合も安心だろう?」
蒼百合が眼を細める。
その顔は兄の真紅郎に、よく似ていた。
「姉者、お願い!!」
黄魔が、今度は蒼百合に頭を下げた。
「しょうがないわね」
蒼百合が、ため息をつく。
「藤巻さん、黄魔を頼む」
真紅郎も心を決めた。
「心得た」
藤巻が笑った。
「やったー!!」
黄魔が手放しで喜び回る。
「油断するなよ、黄魔」
蒼百合が早くも、たしなめる。
黄魔が跳び跳ねるのをぴたっと辞めた。
そのかわいらしい瞳が、ぎらりと凄惨な色を浮かべる。
「任せてよ。美剣隼人は二度死ぬ運命さ」




