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自身の新しい力は、何となく分かる。
まずは八神家臣、特に八神城の城門で勇敢に戦って死んだ者たちを生き返らせる。
そして彼らに美剣一族を斬らせるのだ。
それが彼女の思い描く復讐だった。
一度に全員を甦らせようとしたが、上手くいかなかった。
一人ずつに変えてみる。
鬼庭が生き返った。
どうやら、彼らの遺骨を依代として、復活は成されるらしい。
離れていても、頭で念じれば柊姫の意向を鬼庭に伝えられた。
柊姫が尼寺に来てすぐに、仇の大本命「大剣豪」美剣が無法丸なる流浪の剣士に斬られたと聞いた。
対決では、無法丸の手助けをした懇ろな女が美剣に斬られたという。
自らが仇を討てなかったと、そのときは激しく落ち込んだのだが。
それほどの腕前を持つ男なら、味方にするべきではないか?
そう考えた柊姫は魔力によって探知した無法丸の居場所を教え、鬼庭に交渉するよう命じた。
そして、次の家臣を生き返らせた。
酒井が甦った。
やはり、度々襲ってくる意識の混乱のせいか、自らが選ぶ者を生き返らせることは出来ない。
城門を死守した者たちという括りは可能だが、あとは完全に運任せなのだ。
酒井には美剣隼人を襲わせる。
そこで鬼庭の魂が身体を失って、柊姫の元へと戻ってきた。
無法丸の勧誘が失敗し、それどころか戦いとなって敗れ、依代である遺骨を破壊されたのだ。
魔力によって生き返った者の魂は、再び死ぬと依代と分かれ、力を与えた「ネコノミコン」、すなわち柊姫の身体へと帰ってくるようだ。
鬼庭の魂は柊姫と合流し、事の顛末を報告した。
魂が繋がると鬼庭の身に起こった出来事は、まるで自身の体験のように、まざまざと把握できた。
柊姫は無駄丸を味方に引き込むのは諦めた。
これ以上刺激して、こちらの手駒を減らされては、たまったものではない。
もう一人を生き返らせた。
後藤であった。
やはり、生き返る者は選べない。
後藤は美剣燐子へと向かわせた。
ここで美剣隼人に返り討ちになった酒井の魂が戻ってくる。
(おのれ…)
柊姫は憤慨した。
魔力を授けたにも関わらず、ただの人である無法丸と美剣隼人に倒された鬼庭と酒井の不甲斐なさ。
そして強力な魔力を得たというのに、使いこなせぬ自らへの苛立ち。
その両方にである。
意識が混濁する前に、もっと家臣たちを上手く動かしていれば。
未だに仇の一人さえ討ててはいないのだ。
次に甦らせたのは二人。
加藤と猿助。
初めて、複数を生き返らせるのに成功した。
次第に力を制御できるようになっている。




