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美剣伝  作者: もんじろう
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「させぬ!!」


 真紅郎が吼えた。


 こちらの双眸も真っ赤に燃える。


 真紅郎の二刀は、隼人の二刀の隙間へと正確に刺し込まれ。


 突いてくるよりも、さらに速く左右に腕を開き、敵の二刀を外へ外へと押しやった。


 二人の持つ刀の刃が火花を上げ、滑っていく。


 真紅郎が広げた両手に持つ二刀を外側から白虎と青龍が押さえる形となった。


 まだ互角と見た隼人が次なる攻撃に転じようとした、刹那。


 真紅郎の全身より噴出する邪気が、どっと(ふく)れ上がった。


 真紅郎の瞳がぎらりと輝き、口元にぞっとする笑みが浮かぶ。


 隼人の頭の中で、けたたましい警鐘(けいしょう)が鳴り始めた。


 危機が迫っている。


 しかも、すぐそこまで。


 隼人は咄嗟に後方へ跳ぼうとした。


 だが。


 遅かった。


 突如。


 隼人の腹が横にばっさりと斬られ、血しぶきを上げた。


「獅子流」


 真紅郎が笑う。


「怨霊剣、(あか)


 何が起こったのか?


 隼人には何も見えなかった。


 敵の二刀はこちらの二刀を受け、塞がっていた。


 それは間違いない。


 しかし、腹を斬られた。


 それも紛れもない現実。


 真紅郎の不可思議な攻撃について考える暇はない。


 斬られた隼人の隙を真紅郎は見逃さなかった。


 右手の長刀が隼人の左腕を上腕部の半ば程から斬り落とした。


 左手の脇差しが隼人の右眼の眼帯を断ち切り、その下の今は見えぬ眼を斬った。


 どちらも隼人が刹那に身をよじり、かわそうとした動きによって、当初の真紅郎の狙いからは外れていた。


 隼人の身体が、どうっと倒れた。


 右眼、左腕、腹、全ての傷口から流れる鮮血が、地面を真っ赤に濡らす。


 血溜まりはみるみる広がった。


 隼人の動きが止まる。


「美剣隼人」


 真紅郎が言った。


 予想以上の隼人の腕前に、そしてそれに打ち勝った結末に興奮している声だ。


「敗れたり」


 真紅郎は三つの影の元へと戻った。


 四つの影は、その場から消え去った。




「何だ、このクソがきは? もうクソ死んでやがるだろ?」


 一度は遠のいた意識が、大声で喋る女の声で、再び呼び起こされた。


 視界がぼやけたり、戻ったりを繰り返す。


 次第に焦点が合ってきた。


 眼前に自分を覗き込む顔がある。


 真剣な表情。


 知った顔だ。


(中村…さん…?)


 そう、春馬の師、中村であった。


 身体を動かそうとする。


 しかし、動かない。


 全く自由が利かない。


 全身が痺れ、感覚が無かった。


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