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「どういうことだ?」と真紅郎。
「最初に黄魔が生き返った」
蒼百合が答える。
「そして次は私が」
蒼百合が自らを指す。
「黄魔が『必ず兄者も生き返る』と言って。それから二人で待っていた」
「そうか」
真紅郎が納得した。
しかし。
真紅郎は考える。
何故、一度死んだ三人が生き返ったのか?
この疑問である。
(殿は何処か?)
主君の安否も気にかかる。
そのとき。
三人の頭の中に直接、女の声が響いてきた。
(真紅郎…蒼百合…黄魔…)
「これは!?」と黄魔。
三人が顔を見合わせる。
(獅子三兄弟…聞こえるか…)
「このお声!!」
蒼百合が気づいた。
「柊姫様では!?」
確かに。
それはあどけない少女らしさは失っていたが、主君の愛娘の声に違いなかった。
「姫様!!」
真紅郎が呼びかける。
(真紅郎…)
柊姫の声は三兄弟の頭の中に直接、響いてくる。
(父上も母上も…皆…わらわ以外は殺された…)
三人が顔色を変える。
(『大剣豪』美剣は、もう死んでいる…だがその息子、宗章を…孫の隼人と燐子を…全員殺し…美剣家を滅ぼすのじゃ…復讐を果たせ…)
真紅郎の表情が引き締まる。
一度死んで、甦った。
その現象は理解し難く、謎である。
しかし今、主命は下された。
我らの使命とは、如何なる時でも八神家の命を達成すること。
「「「御意」」」
三人は力強く頷いた。
(仇三人の居場所が分かる力をお前たちに与えた。まずは最も近い美剣隼人を討て。すでに加藤と猿助が彼奴に敗れている。ゆめゆめ油断せず、必ず…必ず殺すのじゃ…ううう…あああ!!)
柊姫が突如、苦しげな叫びを上げた。
「姫様!?」
蒼百合が慌てる。
「如何されましたか!?」
(うぐ…うああ…ううう…大丈夫…大丈夫じゃ…お前たちの側に藤巻伝八郎も甦っておる。合流せよ。そして、美剣隼人を討て! 八つ裂きにして地獄へ叩き落とせ!! 美剣家は、けして許してはならぬ!!)
「「「はっ!!」」」
再び三人が頷く。
それきり柊姫の声は聞こえなくなった。
「兄者」
黄魔が兄を見た。
「姫様のお言葉通り、美剣隼人の気配を感じるよ」
「私も」と蒼百合。
真紅郎も頷く。
「姫様の命を果たす。これより美剣隼人を捜し出し、斬る。良いな?」
真紅郎が言った。
二人が頷く。
「行くぞ」