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美剣伝  作者: もんじろう
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30

 加藤の長刀を受け止めた隼人の二刀が、それを押し返す。


 加藤が大上段に構えた。


 隼人をねじ伏せるべく、すさまじい剣気と邪気が混ざり合う闘気を全身から発していた。


「これで存分に戦えるな」


 加藤が言った。


 笑っている。


 美剣の血を引く者を地獄に叩き落とす喜びを隠しきれないのだ。


 一方の隼人は。


 こちらも笑っていた。


 楽しくて楽しくて仕方がないという風に笑っている。


 ぎらぎらと輝く双眸が、微笑む顔と相まって何やら独特な凄絶(せいぜつ)さを生み出していた。


 隼人が、ぺろりと唇を舐めた。


 加藤が先に動く。


「美剣、滅ぶべし!!」


 怒号と共に大上段の刀を渾身の力で振り下ろす。


 先手を取られた隼人も反応する。


「俺流、バツ斬り!!」


 (つね)と違い、すでに抜かれた二刀を下からすくいあげた。


 これでは鞘走らせる居合い式と比べ、威力が足らない形となる。


 隼人の二刀と加藤の一刀が、下からと上から、お互いの丁度中間の地点で激しくぶつかり合う。


 二刀の交差するところへ、加藤の一刀が飛び込む状況だ。


 二人の攻撃の力は互角か?


 否。


 やはり振り下ろす一刀が、すでに抜かれた二刀の振り上げよりも力強い。


 隼人に対して、やや体格的に勝る加藤の腕力と振り下ろす軌道、そして常人は持たぬ邪気による合力(ごうりき)


 これらが一体となり、隼人の斬撃を凌駕(りょうが)した。


「もらった!!」


 加藤が勝利を確信し、ぞっとする笑みを浮かべた、そのとき。


「うおおおおっ!!」


 隼人が吼えた。


 最初から二刀の力が足りぬと分かっていた。


 二刀を振り上げると右脚を上げ、同時に左脚で地を蹴った。


 右足の裏で二刀の刃を後ろから強烈に蹴り込んだ。


「俺流、バツ斬り改!!」


 劣勢であった二刀は援軍を得て、敵の刀身を弾き返す。


 加藤の両手は大きく押し返され、大上段の位置まで戻った。


 正面が、がら空きの状態だ。


 活路を開いた隼人の両手首が翻り、二刀を持ち直す。


 両手を身体の横に構える型。


 そこからの。


「俺流、真覇突(まっはづ)き!!」


 神速でもって二刀が加藤の胴体へと叩き込まれた。


「むううっ!!」


 加藤がうめき声を上げ、口から血を吐く。


「おのれ…美剣…」


 そう言った加藤は地に倒れた。


 隼人は勝利の声を上げない。


 何故なら。


 加藤の死体から黒煙が噴き出したからだ。


 やはり。


 隼人は思う。


(この刀では八神家の者たちは殺せない…)



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