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美剣伝  作者: もんじろう
3/90

3

「美剣家に恨みがあるのか?」


 無法丸が訊いた。


「ああ、ある」


 それまでにこにことしていた鬼庭の顔から、笑みがすっと消えた。


「恨み骨髄というやつよ」


 鬼庭の双眸が爛々と光り、その身の邪気がどっと増す。


 無法丸が顔をしかめる。


「美剣一族とは、具体的に誰だ?」


 無法丸が問う。


 鬼庭が右手の指を三本立てた。


「まずは美剣家当主、美剣宗章(みつるぎむねあき)


 指を一本、折り曲げる。


「そしてその娘、美剣燐子(みつるぎりんこ)


 二本目を折り曲げた。


「最後は『大剣豪』美剣によって美剣流から破門されし、美剣隼人(みつるぎはやと)。こ奴は縁を切られたとはいえ、血の繋がりがあるのは確か。始末せねばならぬ」


 三本目が折り曲げられる。


 無法丸の片眉が、ぴくりと動いた。


「この三人を血祭りに上げ、美剣一族を滅する。どうだ、痛快ではないか?」


 鬼庭が縫の墓を(あご)で指した。


「その女も無念が晴れ、成仏できるだろう」


「あはははは!!」


 突然、無法丸が大笑(たいしょう)した。


「な…何だ?」


 鬼庭が鼻白(はなじろ)む。


「いや、悪い悪い。縫はそういう恨みごととは、一番縁遠い女だったからな」


 無法丸が首を横に振る。


「俺はその話には乗れない」


 無法丸の言葉に鬼庭の両眼が、さらに糸のように細まった。


 先ほどまでとは違う、恐ろしく冷たい視線が無法丸を見つめる。


「おいおい」


 突然、鬼庭の口調がぞんざいになった。


「とんだ情けなさよな。深い仲の女の仇も討たぬとは」


「………」


 無法丸は黙っている。


「そんな気概もない奴の手を借りたとて、何の役にも立たぬ」


 鬼庭が地面に、ぺっと(つば)を吐く。


「さらばだ、腰抜け」


 鬼庭が無法丸に背を向けた。


「待て」


 無法丸が呼びかける。


 鬼庭が再び、無法丸を向く。


「何だ? 腹でも立てたか?」と鬼庭。


 無法丸が首を横に振る。


「いや。俺は心が広いからな」


 無法丸が、にやりとした。


「それより、これから隼人を殺すというのが聞き捨てならない」


「隼人…だと? 貴様、美剣隼人と知り合いか?」


 鬼庭の無法丸の呼び方が「貴殿」から「貴様」に変わった。


「ああ」


 無法丸が頷く。



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