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美剣伝  作者: もんじろう
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 規格外の剣気に反応し、真紅郎たちが一斉に美剣に襲いかかる。


 もはや彼らは眼前の敵を斬り伏せることしか頭にない。


「大剣豪」美剣、死すべし!!


 前方から横並びで迫ってくる真紅郎を中心とした八神家の面々に対して、美剣の闘気が爆発的に膨れ上がった。


「大剣豪斬りっ!!」


 斬っ!!


 神速でもって鞘から抜き放たれた大刀は、真紅郎たちの刃のどれよりも速く敵を捉えた。


 しかも一度で全員をである。


 真紅郎は首をはねられ、他の面々も皆、首を斬られるか胴体を両断された。


 彼らは「大剣豪」美剣の必殺の一刀を受け、討ち死にした。


 あろうことか美剣の剣撃の余勢は衝撃波となって、真紅郎らが決死の覚悟で守っていた城門そのものを真横に両断して見せた。


 轟音を立て城門が崩れ落ちる。


 あまりの凄絶な結末に、しーんと静まり返ったその場を少女の絶叫がつんざいた。


 柊姫の悲鳴である。


 もとより活路無き絶望的な戦いではあったが、城門を守る家来たちの普段の強さを知る少女からすれば、必ずや彼らが冤罪でもって八神家を断罪せんとする輩を退けてくれると信じきっていたところが、かくも無惨な最後を迎えたのだから、その心痛たるやいかばかりか。


 柊姫からすれば悪夢以外の何ものでもなかった。


 真紅郎らが倒された後、八神家は皆捕らえられ、出家する条件で唯一生き残った柊姫を除いては、ことごとく斬首された。


 こうして八神家は滅んだ。




 山中にある美剣道場からは、門弟同士の激しい稽古の声が響いてくる。


 もうすぐ昼飯時になろうかというのに、その声はいっこうに止む気配がない。


 美剣家の所有する領地は、それほど広いとは言えない。


 そもそも将軍家に仕えていた頃より、それは通例であった。


 あくまでも剣術屋であって権力の中枢を担うような政治屋ではないのだ。


 しかしそれでいて八神家討伐のような有事(ゆうじ)には兵をあてがわれ、前線に立たされる。


 なかなかに微妙で難しい立場なのであった。


「大剣豪」美剣が二代前の将軍より、不思議な力を持つ「星の子」探索の命を受けた際、誰もが思いもよらぬ事件が起こる。


 高齢とはいえ、その剣技最強なりとの呼び声高き美剣が「星の子」を連れた流浪の剣士、無法丸によって倒されたのである。




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