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美剣伝  作者: もんじろう
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「俺流」


 低い姿勢のまま、酒井に向かって突進する。


山嵐(やまあらし)っ!!」


 ひとまずの危機を回避したと考えていた酒井の眼前に、一匹の剣獣が肉薄した。


 隼人の身体が跳ね上がる。


 酒井に向かって縦に一回転した。


 その回転の勢いを加えた左右の二刀が、酒井の頭上から振り下ろされる。


 戦いの中でひとつの攻防をしのぎ、そこで一息をついた者と、それを流れの一部と認識し次の攻撃へと繋ぎきった者の差が、はっきりとそこに顕現(けんげん)した。


「ちぃーーーっ!!」


 それでも襲い来る二刀に対して、半ば条件反射的に己の刀を振り上げた酒井の動きは、さすがと言えたかもしれぬ。


 隼人の双撃が横一文字となった敵の刀身を強かに打った。


 酒井の刀は攻撃を受け止めた。


 が。


 次の瞬間。


 二刀の当たった箇所が、甲高い音を立てて折れ飛んだ。


「ぐわーーーっ!!」


 (さえぎ)る物の無くなった双撃は、酒井の右肩と左肩をそれぞれ断ち割った。


 邪気を(まと)った黒剣士は、どす黒い血液を撒き散らしながら、仰向けに倒れた。


「俺の勝ちだぜ!!」


 誇らしげに隼人が吼える。


 確かに隼人の完全なる勝利であった。


 縁側に立つ奏が喜び勇んで、隼人に駆け寄ろうと庭に下りる。


 と。


 その顔が、さっと青ざめた。


「美剣さん!!」


 奏の視線は地面に倒れた酒井に向けられている。


 残りの一同が「何事か?」と、そちらに視線をやると。


 酒井の死体から真っ黒な煙が、しゅうしゅうと立ち昇っていた。


 驚き、ざわめく魔祓い師たち。


 その黒煙からは明らかに「魔」の気配が感じられる。


 隼人は口を真一文字に引き結び、じっと煙の動きを見つめた。


 以前、「鬼道信虎(きどうのぶとら)」なる男と立ち合った際、敵がこのような黒煙と化した覚えがある。


 しかし今、酒井の身体より立ち昇る煙は、そのときのものとは違うように思えた。


 邪悪という大きな括りでは同類だが、種類や系統が異なるのではないか?


 隼人は何とはなく、そう感じた。


 煙の塊が全て浮き上がると地面に古びた人骨が現れた。


 両肩の骨が断ち割られている。


 黒煙の方は骸骨の上で、ぐるぐると渦を巻いた。


 その中心に。


 死んだ酒井の顔が出現した。


「おのれ…美剣隼人…」


 口惜しげに酒井がうめく。



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