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美剣伝  作者: もんじろう
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 それでも一歩一歩、進んだ。


 そして、ついに。


 酒井の足が刀の届く一線を越えた。


 敵の剣気に抗い、ねじ伏せんと「おーっ!!」と酒井が吼える。


 叫びと共に八相構えから白刃が疾った。


 それに呼応し、隼人も動く。


「俺流、バツ斬り!!」


 隼人の左右の刀が鞘走った。


 下から跳ね上がる二刀の刃が、すさまじき速さで突き進む。


「ぬおっ!!」


 酒井は驚愕した。


 先に仕掛けたはずの自分の刀より、敵の刃が速い。


 このままでは斬られるのはこちらだ。


 酒井は自らの剣の行き先をほとんど本能的に変えた。


 すなわち、隼人の二刀へと。


 二刀が交差する辺りに刀を叩きつけ、受け止めんと試みたのだ。


 激しい金属音が響く。


 隼人と酒井を囲んでいた魔祓い師たちと奏が一斉に驚きの声を上げた。


 二人の刀がぶつかり合うのと、ほとんど同時に酒井の身体がぽーんと後方へ跳んだのを見たからだ。


 実際はそこまでの距離ではなかったが、酒井の後ろを囲んでいた魔祓い師たちが衝突を恐れて二、三歩退がった。


 両者の刃が激突した瞬間。


 相手の剣撃の予想よりもはるかに強い圧力に、酒井の背筋がぞっとなった。


(と、止まらぬ!!)


 隼人の二刀を受け止めるのは叶わない。


 このままでは刀を弾き飛ばされ、無防備な姿をさらすのは必定(ひつじょう)


 それでは隼人の次の攻撃で斬られてしまう。


 酒井の預り知らぬことではあるが、実際、隼人の剣技「バツ斬り」には次の派生のひとつに「バツ斬・()」なる技があり、もしもこのとき酒井が何の対処もしなかったなら、その二撃目の刃によって、ばっさりと斬り捨てられていたであろう。


 ぎりぎりで危機を察知した酒井は瞬転、その場から後方へ跳んだ。


 咄嗟(とっさ)の動きで敵の斬撃の威力を弱め、上手くいなしたのだった。


(あ、危なかった…)


 着地した酒井は、まずは安堵した。


 何とか直近の脅威は乗り切った。


 再び仕切り直し、雌雄(しゆう)を決するべし。


 そう思った。


 が。


 酒井が剣士としての経験と勘で後方に跳んだとき。


 すでに隼人は次の動きへと移行していたのである。


 敵の意図を瞬時に見抜き、すっと上半身を前傾させた。


 右手の刀を右肩の上に、左手の刀を左肩の上に担ぐ。


 隼人の双眸が、ぎらりと輝いた。


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