対能力者勢力
ここは見捨てられた通り
人に見捨てられ成長をやめてしまった悲しき場所である
そんな陰の世界の虫しか生息していないようなこの場所に人の声が響き渡る
「私は見つけちゃったのよ! ついについについにアイツらの場所をねぇ!!」
電話越しでもハッキリと女の声が聞こえる
その声は興奮を隠せないと言わんばかりであった
「ついに見つけたのか…」
男が携帯電話を片手に呟く
ボロボロのソファによりかかるようにして座っている
ここは見捨てられた通りにある空き家である
役目を終えたはずの建物に今は人の気配を残している
「お前まさか今施設の中にいるのか…?」
電話の相手に男が問いかける
すると通話相手の女はやれやれと言わんばかりの声で
「そうよ、当たり前じゃない !? 私の力を忘れたわけじゃないわよね?」
ケラケラと上機嫌に笑う通話相手の女に男は怪訝そうに眉を寄せた
「この声から分かるが、趣味の悪いキチガイ女が趣味の悪い力を持っちまったぁてことだな…アイツらに対してじゃなかったらサツに世話どころじゃないな…」
暗闇のなかから心底軽蔑するような言葉が聞こえた
「仲間を悪く言うのはやめろ、アイツはアイツなりの「制裁」があるのだ」
男は通話を切り暗闇に睨みつけるように言った
通話が切れたのとほぼ同時に、闇からは何の声も聞こえなくなった
「ですが野蛮すぎるのも如何なものかと思うのですよ、神はすべての悪行を見ています。ですが制裁もまた罪人からすれば悪行…ワタクシは皆平等に神の思し召しを信じ共に歩めると信じております」
普通の人間が今の言葉を聞いたら優しく柔らかい何かを感じずにはいられないだろう
今現在彼女のしていることを直接見なければの話だが
「共に歩もうねェ…元男のイレギュラーなアタシが言うのもなんだけどさァ、アンタって本当に頭のネジが数本お無くなりよね」
あーヤダヤダ、野太い声の持ち主は顔をわざとらしく背けるように言った
血とカビの臭いのするこの建物を根城にする陰の世界の虫達は今日も自分の目的のために活動をしていた
「まぁ、アイツが侵入できたってことは場所が分かったってことだな…オイ、ブラッド !」
もちろん本名ではない、恐らくコードネームだろう
先程声がした暗闇からの返答はない、そこには気配がない
ただボーッと暗い闇が広がっていた
「アイツも勝手に動いたか…」
ワガママな奴らが多いな、そう悪態をつきながらも彼の顔からは不気味な笑みが溢れていた
「今いないやつにも言えたことだが俺達は仲間だ、仲間のことは大切に思わなければならないのだ。しかし、それぞれにはそれぞれの制裁がある! 制裁は誰にも止める権利はないのだ!」
高らかに声を上げた男の瞳には決意と憎悪が渦巻いていた