少年、歩く。
短いけど、気にしなーい、気にしなーい。
僕は今、自由に歩いている。
あぁ……自由に動けるっていいなぁ。
僕は、今、自由……転んだ。泣いた。怒られた。
はぁ……
「お父さん、本、読みたい!」
僕は執務室で仕事をしている父に、声をかける。
……ちゃんと、休憩するタイミングで声を掛けたから大丈夫。
「本?読めるか?」
「読めるように、なる!」
両手で拳を握りガッツポーズのような形を作り、上目遣いで父を見る。
……上目遣いになるのはわざとじゃない。じゃないったらじゃない。身長的になるだけ……
「おお!そうか、そうか!良し!エミリに言っておくから書斎で読みなさい」
父は嬉しそうに許可をくれた。エミリというのはメイドの一人だ。
「ありがとう!お父さん!」
笑顔でそう言って、走って書斎に向かう。
書斎室の前で待っていると、エミリが来た。
「アル様、もういたのですね。じゃあ、はいどうぞ」
エミリが来るなりそういって、扉をあけてくれた。
書斎室に入るなり、本の匂いがした。この匂いは嫌いじゃない。
いきなりそこらへんの本を見ても分からないから、絵本を読む……が、読めないので読んでもらう。
「エミリ、読んで!」
一冊の絵本を手に取り、頼み込む。
「はい、いいですよ。じゃあ、あの椅子に座りながら読みましょうか」
そう言って体を抱き上げ、窓の近くにある一人用の椅子にエミリが座り、その膝の上に座る。
「じゃあ、読みますね」
本の内容は冒険者と呼ばれる人が、ドラゴンを退治するお話しだ。
絵本ではよくある話なのだが、中々面白く、戦闘シーンでははしゃいでしまい、優しい笑顔を向けられた。
……恥ずかしい。ま、まぁ子どもだし!一歳児だし!
「ーーこうして末永く幸せになりました。どうでしたか?アル様」
「うん!面白かった!違うの、もっかい!」
「じゃあ一度失礼しますね」
エミリは膝から僕を下ろし、先ほどまで読んでいた絵本を棚に戻し、違う絵本を手に持ってくる。
「じゃあ次はこれにしましょう」
そういって持って来たのは、子どもとスライムが友達になる話だった。
それを読み終わるとエミリに質問した。
「ねぇ、スライムって魔物じゃないの?友達になれるの?」
「スライムは魔物ですが、使役術というものがあり、それがあったら友達になれるのですよ」
それはいいことを聞いた。友達ができるか心配だったけど、これなら……しかし、希望はすぐになくなった。
「ですが、使役術を使えるのは魔法使いと同じくらい珍しいので、アル様が使えるとは限らないですけどね」
それを聞いた瞬間、ガーンという効果音が聞こえるくらいショックを受けてしまった。
「ア、アル様!?大丈夫ですか!?」
「う、うん……眠くなって来たから寝るね」
僕の顔色を見たエミリが、心配そうに聞いてきたが、眠いと嘘をついて、体を丸めた。
……が、本当に眠くなってしまい寝てしまった。
前世はぼっちじゃないからね!?友達いたからね!?
ほんとだよ!?