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中央浮遊都市戦・第二幕

 アリセスと竜人(ドラグニル)との戦闘は一方的なものであった・・・

 人間よりも強靭な、屈強な肉体を持っている竜人(ドラグニル)でさえも、魔導六刀の面々と融合したアリセス達に傷一つつけることは出来ずにいた。

 機動力に自信があった竜人(ドラグニル)はエール&ネスクの速さ、手数によって翻弄され・・・

 竜力に自信があり、広範囲殲滅竜法や高威力の竜法で相手を蹂躙していた竜人(ドラグニル)は、アイカ&クチルギによって自慢の竜法は無効化されてしまい、エリカ&ガルの純黒の炎で焼き尽くされ・・・

 遠距離からピンポイントで攻撃しようとしていた竜人(ドラグニル)は、逆にヘルメス&ライフルによって狙撃、砲撃されてしまい・・・

 自慢の接近戦さえも、アリセス&ディライとソイル&ヘルには手も足も出なかった。

 後ろに控えていたマリアティアスとルーシャ、そして天使達であったが、出番が来ることはなく終わってしまった。

 マリアティアスとルーシャ、天使達が竜人(ドラグニル)達を牽制していたからと言っても、犠牲を出さなかったのはやはり実力が上回っていたからなのであろう。

 戦いが終わったアリセス達は融合を解き、元の姿へと戻る。


『何か不調、違和感などは無いですか?』

『うーん・・・ヘルは何も』

『問題無いですね』

『特に、違和感などは・・・』

『感じないかなぁ・・・』

『強いて言うのでしたら、やはり慣れていないからなのか、融合した時は違和感がありましたね』

『まぁ・・・あの右腕ならね』

『エールは大丈夫だった?』

『確かに違和感はあったけど・・・直ぐに慣れた』

『まぁ・・・姿が変わるのですから当然ですね。それよりも今はどうです?』

『今は大丈夫ですね』

『同じく』

『クチルギも大丈夫だよ?他は?』

『なぜ私を見る・・・私も問題は無いが、やはり感覚、考えを共有しているからなのか、中々不思議な感触ではあった』


 元の姿に戻った面々に、不調や違和感が無いか確認するマリアティアス。

 アリセス達と魔導六刀の面々が融合できるのは、マリアティアスとルーシャが融合した時と同じような仕組みを再現することができる魔導具があるからであり・・・それ以外にもマリアティアスはアリセス達や魔導六刀の面々に多種多様な薬品、魔術、呪術を施すことによって本来、一握りの・・・最強の竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジにしか出来ない芸当である竜法秘伝・竜融血装をアリセス達にもできるようにしたのだ。

 オール以外にも、マリアティアスとルーシャが竜法秘伝・竜融血装を扱うことができたから、その真髄を理解して再現できたが・・・実際は竜法秘伝・竜融血装とは似て非なる物となってしまった。

 マリアティアスが名付けた名は『魔導秘伝・六刀融装』

 竜人(ドラグニル)ではないので竜力を扱うことができないアリセス達なのだが・・・魔導六刀は魔力の他にも呪力を使い作り上げられている。

 その魔力と呪力を薬品や、マリアティアスの魔法によってアリセス達にも作用するようにしたことにしたのだが、やはり無理矢理人体の構造を組み換えれば異変が出てしまいかねないが・・・今のところは無事なようだ。

 竜人(ドラグニル)と戦う前にも何度か模擬戦はしてはいるが、実戦は初めて・・・

 マリアティアスとしては乱戦状態での戦闘ではなく、絶対に勝てる状態で、尚且つ一対一で戦って欲しかったのが本音だ。

 その状態であれば直ぐ様にマリアティアス、他の面々がサポートできるからだ。

 しかしながら、そんなマリアティアスの心配はいらなかったようで・・・アリセス達に異常は見られていない。

 ほっと一息ついているマリアティアスに、後ろで戦いを見ていたフルーティア達天使が近寄ってくる。

 どうやら何か言いたいことがあるようだ。


『素晴らしい戦いでした。流石は女神セラフティアスさまがお認めになった方々達ですね』

『それは警戒は解けたと思ってよいのでしょうか?』

『えぇ・・・そうですね。はっきり言いますと私達は貴女方を疑っていました』

『まぁ、その気持ちは理解できます・・・私達と貴女方ではいろいろと違いますからね』


 そう言いながらマリアティアスは天使達の頭に浮かぶ輪や、純白の翼を見つめ・・・フルーティアはマリアティアスの後ろにいるエリカやアイカ、ルーシャを見つめる。

 身体的特徴もそうだが、やはり敵であるルーシャ、竜人(ドラグニル)が警戒されるのは仕方ないことだと言えるが・・・当の本人のルーシャが気にしている様子はない。


『ですが今の戦いを見て貴女方が同士であることを再確認しました・・・あの竜人(ドラグニル)についてはいろいろと聞きたいことはありますが、貴女の配下であるのであれば問題ないでしょう』

『それはどうも・・・』

『しかしながら万が一でも我々に牙を向けるようであれば、その時は容赦無く倒します』

『ルーシャに限ってそんなことは無いと思いますが・・・』

『絶対ではないですよね』

『そ、そうですね・・・どうしても感情という物が存在してしまいますからね』


 フルーティアに言われ、思わず苦笑いをしてしまうマリアティアス。

 こちらから絶対に無いと言っても、確固たる証拠というのは存在していない。

 同族である竜人(ドラグニル)を倒したからと言っても、所詮フルーティア達天使からしてみればルーシャも殲滅対象には変わりなく、ルーシャもまた何時心変わりをして竜人(ドラグニル)側に付くかもわからないのだ。

 まぁ・・・そんな疑心暗鬼の状態ではまともに連携できないのは仕方なく、マリアティアスもまた天使達と連携できるとは思っていない。

 しかしながら、出会った当時よりはわだかまりは無くなったことだけは、双方共に良い方向に行ったと言える。


『さて・・・私達はこのまま竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジを倒しに行くつもりです』

『この人数でですか?』

『戦いは数とも言いますが・・・先ほど目の当たりにしたように私達は強いです』

『そうですね・・・確かに貴女方は強い。ならば貴女方がスムーズに竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジの元にたどり着けるように、我々が一暴れするとしましょうか』

『よろしいのですか?』

『私達の目的は全竜人(ドラグニル)の殲滅・・・貴女方が竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジを倒してくれるのであれば目的に一歩近づけますからね』

『ありがとうございます』


 フルーティアにお礼を言い終えるとマリアティアスはアリセス達の元に戻って行き、この後何をすべきか説明をする。


『私達の目的は以前として変わりないということでよろしいのですね?』

『もちろんです。しかしながら少し派手に暴れてしまったので最初よりも行動人数を絞った方がいいですね・・・』

『賛成です』

『私に異論はありません』

『お母さんどうやって分かれるの?半分?』

『いえ、半分にしても多いですね』

『ならば・・・』


 そう言いながらアリセス達はお互いの相棒に視線を送る。

 本陣とは別の機動隊がいることがわかったのであれば、当然相手は裏を取られないようにするために人員を割くはずだ。

 流石に敵対する本陣よりは人員が少ないからと言っても、索敵されてしまえば増援を呼ぶなり、奇襲されないように立ち回ることによって時間稼ぎされてしまえばいくら強化されたアリセス達であっても、少々難しいであろう。

 疲労や、空腹等は治療液(ポーション)で補えるからと言っても、飲む瞬間は無防備となってしまい、そして魔力は治療液(ポーション)で回復は不可能。

 魔力を機動力に回していれば、魔力の消費と共に機動力は落ち・・・隙を作ってしまいかねない。

 なので気がつかれないように立ち回るのが第一なので、分かれるメンバーは自然に先ほどと同じになってしまう。

 そのことに納得していない者はいなく、何のわだかまりもなく分かれる。

 目的の場所は最強の竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジの住まう巨城・・・当然中には様々な仕掛けが施されているが、マリアティアスはアリセス達であればたどり着けると信じているし、アリセス達もたどり着けると信じている。


『誰が一番最初にたどり着けるか競争しようよ!』

『いいね。クチルギは負けないよ』

『この最速の竜人(ドラグニル)であるルーシャさまに勝てるとでも?』

『速さなら私も負けていませんよ・・・まぁ、あくまでも見つからないことが大前提です』

『そうだよね・・・敵を大勢連れて合流なんて止めてね』

『そんなヘマはしないよ』


 談笑しながらも準備を整えていると・・・遥か上空、女神セラフティアスの住まう黄金世界の優夢都の一部から炎の柱が出現する。

 何事かと思った天使達が目撃したのは、防衛網の一部が突破されているのが視界に入る。


『わ、私達の楽園が・・・』

『そ、そんな・・・』

竜人(ドラグニル)風情が!』


 自らの住まう楽園に被害が出てしまったことでより一層竜人(ドラグニル )への殺意を露にする天使達。

 それは大天使であるフルーティアも例外ではない・・・というよりも天使達よりも殺意が強い。

 しかしながらフルーティアは感情に流されることなく、周囲で殺気立っている天使達を落ち着かせようと試みる。


『皆さん落ち着いてください』

『フルーティアさま・・・』

『皆さんが今此処ですべきことはこの地の制圧です』

『だ、だけど僕達の楽園が・・・』

『確かに私達の住まう楽園が竜人(ドラグニル)に汚されるのは許しがたい・・・いえ、許すことなど到底不可能です。なので信じましょう・・・女神セラフティアス様の力を』



 黄金世界の優夢都・・・

 防衛線が突破され、竜人(ドラグニル)に侵入を許してしまった天使達。

 数で圧倒しようと試みるが・・・竜人(ドラグニル)もまた個々に分かれ、天使達に囲まれないように動く。


『狼煙にしては派手にしたつもりだが・・・天使達が戻ってくる気配が無いぞ?』


 黄金世界の優夢都に侵入することに成功した竜人(ドラグニル)の一体、キンザは天使達が戻って来ないのを疑問に思っていた。

 キンザは自らの所持していた杖を使って大規模な炎で周囲を焼き払った。

 バルエラ竜王国にいる天使達に見せつけるように、炎を見せたのにも関わらずに何故天使達は戻って来ないのか・・・

 普通自らの住まう土地、場所が攻撃されたのであれば、心配して戻って来てもいいというのだが・・・何故か天使達が戻ってくる気配が無い。

 キンザを含む黄金世界の優夢都に奇襲を仕掛けた竜人(ドラグニル)全員は、自らの命を投げ捨てる覚悟での奇襲。

 敵の本拠地に大胆にも目立つように、注意を引くように攻撃することによって、少しでもバルエラ竜王国に侵入した天使達の注意を引ければと思ったのだが、思いの外予定通りには進んではくれなかった。


『此処にいる天使達の実力もあまり強くはないようだが、もしかすればこのまま本丸を狙え・・・』


 黄金世界の優夢都にいる天使達がキンザの予想よりも弱かった。

 このまま本丸である、女神セラフティアスを倒そうと思ったのだが・・・残念ながら天使達に見つかってしまう。


『雑魚どもが・・・杖は失ったとしてもお前ら程度じゃ相手にならないんだよ!』


 キンザが竜力を集め、火炎放射のように放つ。

 しかしながら燃え盛る炎が天使達に当たることはなく、周囲の平原を焼き払う。


『逃げの一手か・・・小癪な!』


 炎を操り、今度は自身の拳に炎を纏わせるキンザ。

 メラメラと燃える拳で一名の天使に狙いを定め・・・そして一気に距離を積める。


『散れ!』


 キンザが拳を繰り出そうとしたその時、無数の夥しい数の魔法陣が出現する。

 すると、瞬く間に魔法陣から土の属性魔法で作り上げられた鎖が出現し、キンザを拘束する。


『させませんよ』


 そう呟いたのは一人の天使なのだが・・・明らかに先ほどよりも雰囲気が違う。

 キンザの攻撃から逃げていた時と比べ、引き締まった雰囲気に凛とした表情。

 まだ、あどけなさが残っていたあの天使はいったい何処に行ってしまったのか?

 そんなまるで別人にでもなったかのような少年の天使。

 その瞳は酷く冷徹で、ゴミでも見るような瞳でキンザを見据える。


『て、てめぇは・・・』


 拘束を破壊しようと試みるも、がんじがらめになってしまっているので指一つ動くことが出来ていない。

 幸いにも身動きが取れないだけであって、五感は正常。

 なので目の前の少年の天使が全く別の・・・竜人(ドラグニル)でさえも畏縮してしまう存在に変わってしまったことが恐ろしいのだ。

 確かにキンザはこの黄金世界の優夢都に来た時既に覚悟を決めていた。

 戦場に出るのだ死ぬ覚悟は出来ているつもりだったのだが・・・目の前で起きた予想外の出来事に困惑し、恐怖してしまう。

 そして、そんなキンザが恐怖する存在・・・それは少年の天使に憑依した女神セラフティアスであり、キンザ程度では絶対に勝てない存在だ。


『この世界に穢れた存在は不要です』


 そう言い終えると女神セラフティアスが憑依した天使が、キンザの上空に魔法陣を展開する。

 その魔法陣に向けてキンザを拘束している鎖ごと飛ばす。

 すると先ほどまで目の前にいたキンザの姿は消えてしまっていた。

 姿が消えたキンザが何処に行ってしまったのかというと・・・


『な・・・なんだとぉぉぉぉぉ!?』


 姿が消えたキンザは先ほどいた黄金世界の優夢都ではなく・・・自らが住まう都、バルエラ竜王国の上空にいつの間にか移動していたのだ。

 キンザが何故バルエラ竜王国の上空に移動してしましたのかと言うと・・・先ほどの魔法陣はセラフティアスが作り上げられた転移の魔法陣であり、この魔法陣を通ると強制的に黄金世界の優夢都の外に出されてしまう。

 重力に抗うことが出来ずに地面に向かって真逆っ様に落ちるキンザ。

 身動きが取れない状態であり、キンザが扱うことができる火の属性魔法ではどうすることも出来ず・・・地面に激突してしまった。

 無論即死なのだが・・・空から落ちてきたのはキンザだけではなかった。

 キンザ以外にも黄金世界の優夢都に特攻を仕掛けた竜人(ドラグニル)全員が、セラフティアスによって転移させられてしまった。

 無論拘束され、身動き出来ない状況でだ。

 次々と地面と激突してしまう竜人(ドラグニル)

 そんな奇妙な状況を、中央浮遊都市にいる天使と竜人(ドラグニル)達は目撃してしまう。

 目撃してしまった竜人(ドラグニル)の中には目を丸くしている者もいれば、口を開け唖然となってしまっている者、思わず奇声を上げてしまう者など、反応は様々。

 天使達の中に竜人(ドラグニル)と同じような反応をしている者もおり、戦場がなんとも言えない雰囲気に支配されてしまう。

 それもそのはず。

 いきなり空から仲間、敵が落ちてきたのだから当然と言える。


『い、意味がわからないぞ・・・』

『な、何で竜人(ドラグニル)が?』

『何がどうなっているんだ・・・』

『・・・夢でも見ているのでしょうか?』


 何がどうなっているのか理解出来ていなくい竜人(ドラグニル)は、突然の出来事に反応することが出来なく地面に落下していく仲間を見ていることしかできなかった。

 どうすることもなく、死んでしまった竜人(ドラグニル)

 女神セラフティアスが支配する領域である、黄金世界の優夢都に攻め込めばどうなるのか・・・

 身をもって教えてくれた竜人(ドラグニル)なのだが、そんなことよりも驚くべきことが起きようとしていた。

 黄金世界の優夢都から巨大な・・・かなり巨大な魔法陣が出現したのだ。

 大きさはバルエラ竜王国の四分の一がすっぽりと覆われてしまうほどの大きさなのだが・・・その魔法陣はまだ未完成。

 魔法陣は作られているが、その中身の魔法の文字はまだ完成していない。

 いや・・・正確に言うのであれば現在進行形で文字は描かれている。


『な、何なんだあの巨大な魔法陣は!?』

『まずいぞ・・・あの規模じゃ竜王国の四分の一が吹き飛ぶ計算だぞ』

『あぁ・・・まずいな。何を放つかは不明だがあの規模はまずい!』

『それにあの魔法陣が向いている方角を考えろ・・・』

『あ、あの先にあるのはまさか・・・』


 そう言って竜人(ドラグニル)が振り向いた先にあるのはバルエラ竜王国の中心部。

 中央浮遊都市にある巨城に魔法陣は向いている。

 まだ何が放たれるのかはわかってはいないが・・・間違いなく、放たれてしまえばオールの住まう巨城ごと破壊されてしまいかねないはずだ。

 いくら巨城に防衛能力があるからといっても限度がある。

 受けきれない攻撃を喰らってしまえば壊れてしまうのが自然の摂理なのだから。


『・・・流石にこれは予想外』

『アイリットの言う通りだな・・・これはまずいぞ』

『どうするのオロ?』

『このままじゃオールさまが・・・』


 竜導六刀の纏め役であるオロと向き合う残りの面々。

 上空に存在する魔法陣は何時完成するのかは不明。

 そしてオールも何時目覚めるのかが不明であるが故に、纏め役であるオロの意見を皆聞きたがっている。

 オールを守るのは最優先事項なのだが・・・『生命リンクの竜呪法』で守られている本殿が、あの超巨大な魔法陣から放たれる魔法に耐えられるのか疑問に思っているからだ。

 どんな魔法か?どんな属性なのか?

 攻撃魔法なのか?それとも防衛魔法なのか?

 何もかもが不明な超巨大な魔法陣に対して何をすべきか必死に考えていたオロであったが・・・答えを出す前に一体の竜人(ドラグニル)が現れる。

 この竜人(ドラグニル)は伝令係であり、周囲の状況をオロ達に伝える。

 突如として出現した巨大な魔法陣もさることながら、今の戦況天使達の攻撃が思いの外激しく、少し劣勢になってしまったている。


『・・・天使達は未だに進軍を続けているのか?』

『はい。その通りです。個々の実力は我々には及びませんが、数が多いのでどうしても被害が・・・』

『その事についてば理解している・・・それよりも天使達が進軍し、目指しているのは此処なのか?』

『断定はできませんが、十中八九此処だと思いますよ』

『なんか妙だね?』

『確かに・・・』

『ど、どういうことです?』

『少し冷静になって考えみてください・・・何故天使達はあの超巨大な魔法陣の範囲内に入ろうとしているです?』

『な!?そ、それは・・・』


 戦況が悪くなってしまっているが故に、この伝令係の竜人(ドラグニル)はわかっていなかったのだ。

 超巨大な魔法陣が形成されているのにも関わらずに、天使達の進軍し続けているということに・・・


『つ、つまり・・・天使達には、あの超巨大な魔法陣から放たれるであろう魔法と共に心中する覚悟があると?』

『君の目撃したことが正しいのであればそうだね・・・進軍速度が衰えている気配はないんでしょ?』

『は、はい・・・お、衰えている気配はないですね』

『あの超巨大な魔法陣自体が囮・・・と考えるのは早計だね。やっぱり情報が足りないよ』

『せっかく気合いをいれて持ち場に行ったのに、この状況じゃねぇ・・・』


 そう言いながらため息を溢すエア。

 超巨大な魔法陣の正体も不明であり、天使達の進軍も衰えている気配がない。

 この状況では・・・守るという選択が愚行になってしまいかねない状況となってしまった。


『我々を誘き出す為の罠にしては大層派手な仕掛けただな・・・』

『派手過ぎだと思う』

『だけど、もう動かない訳には行かないよね?』

『確かにそうだな・・・お前達の意見を聞きたい。これからどうする?』

『どうするも何も・・・』

『決まってる』

『そうだねぇ・・・面倒だけど仕方ないよね』

『選択肢は一つしかないと思うけど』

『どうやら我々の心は同じなようだな・・・』

『まぁ、当然だけどね』


 本来守るべきオールから離れてしまうのは望ましくないのだが・・・そうも言っていられなくなってしまったオロ達。

 どう考えてもあの超巨大な魔法陣を止める、破壊することは六体全ての力を合わせたとしても不可能。

 ならば今すべきことは何か?

 それはオールが目覚めた時に、速やかに行動できるようにすることであり、邪魔立てする天使達の排除。

 オールが先に目覚めるのが先か?あの超巨大な魔法陣が完成するのが先かは誰にもわからない。

 なので、オロ達は今できることをやろうという算段であり、竜導六刀の面々はオロの意見に賛同している。


『全てはオールさまの名の元に・・・』

『邪魔はさせない』

『全員皆殺しにする』

『だけど油断大敵だよ』

『わかっていると思うが無理する必要はないぞ』

『わかってるよ』

『相変わらずの心配性』

『オロこそヘマしないでよ』


 戦闘の準備が整ったオロ達竜導六刀は、それぞれ天使を狩る為に動き出すのであった。



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