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天使VS竜人

 西の浮遊都市・ウェストゲェルの統治者に就任したフィヘインであったが就任してから数ヶ月後・・・突如としてそれは起こった。

 その日は何時もと変わらない朝であった。

 しかしながら西側を警戒していた竜人ドラグニルが血相を変えて飛んで来たのだ。

 その竜人ドラグニルが言うには西側で異常自体が起こったという事なのだが・・・フィヘインも同行して見に行ってみると、すると其処には奇妙な世界が広がっていたのだ。

 世界・・・空を割ったような裂け目が出現しており、其処からは光輝く世界が広がっているのだ。

 流石に意味不明な状況なので接近して確認したわけでは無いのだが・・・その光輝く世界はこの世の物とは思えない光景がいくつか存在していた。

 まず第一に、同時に存在する事がありえない四季折々の花々や木々。

 そして同じように四季を無視した果実。

 更には意味不明な木々も存在していて・・・その中には水晶で出来たような木々も存在している。

 ありとあらゆることが世界の常識からかけ離れた光景なのだが・・・更に驚くべき事は続いていた。

 空の裂け目と同じようにして地上の一部が光出し・・・割れた空と同じような光景が出現したのだ。

 何がどうなっているのか理解できていなかったフィヘイン達であったが・・・光輝く世界はまるで地中に根を張る木々のように西側の人間達の世界を侵食して行っていた。


『フィヘイン様あれを・・・』


 一体の竜人ドラグニルが指差しをしている方向を振り向くフィヘイン。

 すると其処には竜人ドラグニルとは違う空を飛ぶ者が其処にはいた。

 距離が遠いからか、その姿を明確に捉える事はできないが・・・明らかに人間、空を飛ぶ事ができる風の属性魔導師では無いと判断できた。

 何故ならその空を飛ぶ者は純白の翼を持っているからだ。

 竜人ドラグニルの中には美しい純白の翼を持っている存在している事をフィヘイン、と言うよりも大抵の竜人ドラグニルは知っている。

 フィヘインの上司であった北の浮遊都市・ロウェイノースを統べる竜人ドラグニルである、ハッカ・ラフス・ノースルー・ライブエラは誰もが認める純白の美しい竜人ドラグニルだ。

 しかしながらハッカが西の人間達の住まう都市にいるという事はフィヘインは聞いてはいない。

 ハッカが極秘裏に動いていたということも無いが・・・フィヘインとしてはありえないと結論する。


『いったいあれは・・・』


 空を飛んでいる者が何者なのか考えていたフィヘイン。

 嘗てこの世界に居たと言われている鳥人バーディスクかと思ったが・・・文献に乗っていたのと姿形が違うことを思い出す。

 鳥人バーディスクと言われて種族は嘗て竜人ドラグニルと戦い、そして全滅したと言われている種族だ。

 両腕が翼になっており、太ももから下にかけては体毛で覆われて、脚が猛禽類ような鋭く尖っている。

 翼の色や体毛の色はかなり豊富だと言われていたようだ。


鳥人バーディスクの生き残りでしょうか?』


 そう呟くフィヘインであったがその考えは一瞬にして変わってしまった。

 何故ならばその生き残りだと思っていた鳥人バーディスクの他にも合計で十体以上が、割れた空から出てきたのだ。

 数体であれば生き残りだということも理解できるが・・・十体以上となれば話すは別だ。


鳥人バーディスクの生き残りや、変異種じゃない?』

『あの・・・フィヘイン様一つよろしいでしょうか』

『なんだ?何かあれについてわかった事があるのか?』

『確証は無いのですが・・・あの空を飛んでいるのは天使と言われている種族ではないでしょうか?』

『天使?それはいったい何なのですか?』


 天使という者が何なのか理解できていないフィヘイン。

 そんなフィヘインに対して一体の竜人ドラグニルが説明し始める。


『なるほど・・・天使っか』


 説明を聞き終えたフィヘインが納得するように頷く。


(外見的特徴は一致している・・・しかしながら何故今の今まで目撃情報がなかったんだ?いや・・・違う。突然現れたのか?)


『あの空の裂け目と同じように・・・』


 突如として空に現れでた裂け目に、そして其処から表われ出た天使。

 どうあがいても圧倒的に情報が不足してしまっているフィヘイン達であったが・・・どうやら天使達は考える時間を与えてはくれなかった。


『フィヘイン様天使達が動き始めました!』

『何!?』

『奴らこちらに向かって来ています!』

『戦闘準備だ!奴らと一戦交える』

『了解!』

『奴らの力は未知数・・・油断するなよ』


 フィヘインの忠告を聞き頷く竜人ドラグニル

 そして各々の得物を構え、いつでも戦闘できる態勢に入る。

 フィヘイン達に接近してくる天使の数は合計で十三名。

 それに対してフィヘイン達は四名・・・頭数で考えれば三倍以上の差なのだが、フィヘイン達に怯えや恐怖という物はなかった。

 通常であれば怯むかもしれないが・・・彼の種族は竜人ドラグニル

 この大陸の支配者であるという自信もさる事ながら、この場に実力であるフィヘインが居るということも大きい筈だ。


『もし戦況が不利になれば撤退も視野に入れている・・・全員生き残る事が最優先だ!』


 フィヘインが開戦と言わんばかりに爆炎の竜法を解き放つ。

 空気を焼き払う爆炎の竜法は迫り来る天使に向かって行き・・・直撃する筈であった。

 爆炎の竜法は一体の天使が展開して魔法によって防がれてしまった。


『防がれた・・・水の属性魔法か』


 防がれたことに驚いたフィヘインであったが、更に続けて竜法を放つ。

 今度の竜法は範囲を重視した竜法であり、後ろや左右に展開している天使を狙っての攻撃だ。


『範囲攻撃・・・スフレ手助けを』

『わかりましたクリスさん』


 意表を突いたフィヘインの攻撃だったのだが、その攻撃は天使・・・大天使クリスと天使であるスフレの混合魔法によって防がれてしまった。

 クリスが放った水の属性魔法を、スフレの放った風の属性魔法に上乗せして急速に拡げるたのだ。

 勿論それだけではフィヘインの爆炎を防げるはずはないのだが・・・スフレの風の属性魔法の効力によりクリスの水の属性魔法を強化したからできたのだ。


『さて・・・宣戦布告と行きましょう』


 クリスが一呼吸して気持ちを落ち着かせる。

 そのクリスに習うようにして後ろ控えていた天使達もまた動きを止める。


『女神セラフティアス様の名の元に粛清を・・・』

『粛清を・・・』


 クリスが祈るように願う。

 するとその祈りに答えるにして空間に魔法陣が展開していき・・・そしてその魔法陣から数々武器が出てくる。

 大剣から刀、槍に大鎌・・・クリスを含む十三名の天使達に各々が得物を所持する。

 しかもその武器は全て一級品だということを判断することができる。


『さて・・・聖戦を始めましょうか?』

『聖戦だと・・・お前達は何者だ?』

『我々は女神セラフティアス様の使途・・・我々の望みはただ一つ。汚れなき世界の創造ですよ』

『女神セラフティアス・・・その単語にお前達のその姿、天使ということは本当なのか?』

『えぇ、そうですよ。我々汚れなき存在ですよ』


 そう言いながらクリスは武器を構える。

 完全にフィヘイン達竜人(ドラグニル)と敵対する姿勢であり、フィヘインもまた戦う姿勢を貫いている。


『その聖戦というものには子供も含むのですね』


 そう言いながらフィヘインはクリスの隣にいるスフレを指差す。

 確かにフィヘインの言う通り、クリスの隣にいるスフレは見た目は少女であり・・・年齢的に考えれば十五歳前後。

 武器を構えるその姿は痛ましく・・・目をつぶりたくなるような光景だ。

 子供に戦争をさせる・・・それは罪以外のなにものでもなく、子供を動員しての戦いを断じて聖戦とは言わない。

 しかしながらながらその問いに答えたのはクリスではなくスフレであり・・・答えたはこうだ。

『私は自分で考え、自分の意思で戦いに参戦した』っと。


『洗脳ですか?』

『さぁ・・・どうでしょうか?』

『まぁいいでしょう。得体の知れない貴女方は我々が殲滅させていただきますよ!』


 フィヘインが言い切ると同時に今まで貯めていた竜力を一気に解放する。

 先ほどとは比較にならない規模の爆炎だ。


『す、すげぇ・・・』

『け、結界で防いでもこの熱量・・・』

『さすがにこれは死んだかな?』


 付き人の竜人(ドラグニル)でさえも驚く規模の爆炎を放ったフィヘインであったが・・・この爆炎の中から動く者の気配を感じ取る。

 しかも複数。


『お前達油断するな!何か来るぞ』


 フィヘインの発言と同時に爆炎の中から出て来たのは天使達であり・・・その数は八名。

 残りの天使達が何処に行ったのか不明なのだがクリスは健全であり、そしてスフレもまたクリスと共に飛び出していた。


『生き残りか!』

『接近戦を仕掛ける!全員構えろ』


 フィヘインの雄叫びに近い指示を聞き戦闘を開始した竜人(ドラグニル)


『接近戦なら俺達の方が上だぜ!』


 一体の竜人(ドラグニル)が先人を切って飛び出してきた天使に向かって、大剣を攻撃を繰り出す。

 体格に恵まれた竜人(ドラグニル)から繰り出される一撃は鋭く、人間程度ならば太刀打ちできないはずなのだが・・・天使達は違った。

 巧みな技術を使って竜人(ドラグニル)の攻撃を受け流し・・・そして後ろに控えていた天使が斬りかかる。


『おぉ!あ、あぶねぇ・・・』


 間一髪のところで回避することに成功した竜人(ドラグニル)が、反撃するように竜法を放とうとする。

 しかしながらその攻撃を待ってましたと言わんばかりに一名の天使が、竜法を放とうとしていた竜人(ドラグニル)の腕を鎖で拘束する。


『しまっ・・・』


 言い切るよりも早く竜法が自らに炸裂してしまった竜人(ドラグニル)

 敵に放とうとしていた土の属性竜法が自らに直接したことによって竜人(ドラグニル)が大きく吹き飛んで行ってしまった。

『計画通り』っとでもいうように、竜人(ドラグニル)を吹き飛ばすことに成功しらた天使が互いにハイタッチして喜んでいる。


『あの野郎・・・許せ』

『落ち着け・・・』


 仲間である竜人(ドラグニル)が吹き飛ばされてしまったことに苛立ちを覚えた竜人(ドラグニル)が攻撃を仕掛けようとしたが、フィヘインが爆炎によって我に帰る。


『距離を取る・・・ヤレ!』


 フィヘインの指示に従い風の属性竜法を扱うことができる竜人(ドラグニル)が突風を発生させる。

 それと同時にフィヘインもまた、爆炎を発動させることによって天使とフィヘイン達の間に煙幕を展開させることに成功した。


『大丈夫か?』

『油断したぜ・・・』

『フィヘイン様の竜法で数を減らすことはできたが・・・あいつら子供だからと言って油断はするなよ』


 フィヘインの展開した煙幕によって合流することができた竜人(ドラグニル)は攻めてきた天使の力量を改める。

 大人の天使は大天使クリスしかいないのだが、スフレを始めとする天使達の力は大人の人間以上の身体能力を持っていた。

 油断していたとはいえ大人の竜人(ドラグニル)の動きを拘束することに成功しているしているのだから。


『クリス様どうしますか』

『うーん。そうですね・・・あの爆炎を扱う竜人(ドラグニル)は厄介ですね。スフレ殺れますか?』

『勿論です』

『ならば私も行きましょう。私とスフレであの爆炎の竜人(ドラグニル)を殺りますよ!』

『了解です』

『取り巻きの竜人(ドラグニル)は任せましたよ』


 クリスの言葉に頷き散り散りに飛び出す天使達。

 そして同時にフィヘイン達もまた動き出す。


『二体一組の構成か・・・』

『もう油断なんてしねぇぞ!』

『我々の力見せつけてやる』


 各竜人(ドラグニル)が各々の竜法を放ち、二体一組となった天使に向かって攻撃を開始する。

 竜の姿をした土の属性竜法は縦横無尽に空を駆け巡り、天使に向かって襲い掛かる。

 それに対して天使は光の魔法陣から盾を召喚し防ぐが・・・縦横無尽に空を駆け巡ることができる土の竜は召喚した盾諸とも天使を巻き込む。

 蛇が獲物に巻き付くように動き出す土の竜。

 一気に天使を押し潰そうとしていたようだが・・・もう一人の天使がそれを拒む。

 手にしている三股の槍に水の属性魔法を付与させて土の竜を串刺しにしたのだ。

 刺された先から徐々に浸食され、朽ちてゆく土の竜。


『残念だったな・・・その竜に接近戦は悪手だ』


 そう言い終えると土の竜が膨張し始め・・・一瞬にして爆発する。


『フィヘイン様の竜法は効くだろう・・・俺も追撃するけどがな!』


 爆発して土の竜の周囲に無数の岩石が出現する。

 しかもその岩石は先端が鋭く尖っており・・・全ての岩石が天使の方向を向いている。


『喰らいやがれ!喰・竜牙口!』


 竜の牙のように展開した岩石は、全て同時に天使へと喰らいつき・・・そして天使に突き刺さる。

 するとどうであろう。

 普通傷ついたのであれば流れるはずの血は流れず、そのかわりに岩石が突き刺さった天使からは光の泡のような物が出て来たのだ。

 その光の泡は何故か地に落ちる事はなく、天へ上り・・・そして儚く消えてゆく。

 岩石が突き刺さった部分から徐々に光の泡へと変わってゆき・・・そして最後は跡形もなく光の泡へと変わり、そして二人の天使はこの場からいなくなってしまった。

 まるで最初っから天使などいなかったかように・・・


『・・・一体何が?』


 目の前で起きた出来事が理解できなかった竜人(ドラグニル)は呆気にとられてしまっていた。


 各竜人(ドラグニル)が各々の竜法を放ち、二体一組となった天使に向かって攻撃を開始する。

 輝く弓を携えた天使と同じように光輝く弓なのだが、何故かこちらは薄緑色の弓を携えた天使が一体の竜人(ドラグニル)と戦っている。

 竜人(ドラグニル)は武器らしき物は所持していないが、変わりにメラメラと燃え盛る炎を拳に宿していている竜人(ドラグニル)だ。

 しかしながら拳で戦うのではなく、炎を飛ばしての遠距離攻撃だが。


『戦う相手を間違えたか?』


 次々と繰り出される光の矢に苦戦している様子の竜人(ドラグニル)

 双方共に距離を取って攻撃しているが、天使の方は光輝く矢を何処からともなく召還し、そして攻撃を仕掛けてくる。

 先ほどから戦っているが一向に光輝く矢が尽きる様子も感じられない。

 無限ではないと思われるが・・・これまで数百以上放っている計算になる。

 一発一発の威力はそれほど強力ではないが、牽制としては十分過ぎる物量に加え、薄緑の輝きを放つ弓を持っている天使が一向に仕掛けてこないのが不思議なところだ。

 隙を伺っている感じなのだが一向に攻撃する気配がない。

 こちらに何度か攻撃できそうなタイミングは幾度かあったのだが、何故か攻撃してこないのだ。


『埒が明かないな・・・』


 そう竜人(ドラグニル)が呟くと・・・

 両腕の炎が勢いよく燃え上がり、巨大な槍を作り出す。

 かなり巨大であり、振り回すには相当な量の力が必要な筈なのだが・・・この竜人(ドラグニル)は違っていたようだ。


『焼き尽くしてくれる!』


 天使達と距離を取り・・・そして膨大な竜力で作り上げた炎の槍を投げつける。

 大気を熱しながら天使に向かって接近してくる炎の槍は、竜人(ドラグニル)の筋力から放たれたことにより一直線に突き進み・・・そして天使に直撃する。


『逃げることはできなかったようだな。まぁ、この熱量なら生きては・・・』


 炎の槍が天使に直撃したことによって周囲が炎に包まれたのだが・・・その炎はものの数秒で修まってしまった。

 何が起きているのか理解できていなかった竜人(ドラグニル)であったが、薄緑に輝く弓に炎が吸収されているのだと理解する。


(ま、まさかあの天使、この機会を狙って)


 渾身の一撃が吸収されてしまった竜人(ドラグニル)

 吸収されてしまったということはつまり、その炎の槍のエネルギーが吸収されたということであり、そのエネルギーを利用した強力な矢が産み出されていた。


『まず・・・』


 自らが作り出した炎の槍を利用した矢を目撃した瞬間、危険だと判断した竜人(ドラグニル)が逃げようとしたが・・・時既に遅く矢は放たれてしまった。


『回避・・・』


 回避しようとした竜人(ドラグニル)であったが・・・このままでは後ろにいる残りの竜人(ドラグニル)に当たると判断し、突貫攻撃を開始する。

 そして天使の放った矢と竜人(ドラグニル)の竜法が炸裂し・・・周囲が爆発と豪炎が巻き起こる。

 端から見ても大爆発だということがわかる程の威力であり、煙が晴れた後には何も残っていなかった。

 竜人(ドラグニル)も天使も、身に付けていた防具や武器すらもなく・・・辺りには焼け焦げた匂いが漂うだけであった。

 身を挺した先ほどの竜人(ドラグニル)の行動により、何とか爆発に巻き込むことができたが、まだ戦いは続いている。


 各竜人(ドラグニル)が各々の竜法を放ち、二体一組となった天使に向かって攻撃を開始する。

 自らの肉体に更に竜法を纏うことによって強靭な肉体へと変化した竜人(ドラグニル)は、その拳に竜法と自らの持っている武器を融合させ強化している。

 両腕を覆うガントレットは鋭く鋭利に変化し、硬質な輝きを放つガントレットは日の光を浴びて妖艶に輝く。

 その姿は不気味なのだが・・・対峙する天使を萎縮させるのは不可能であったのか動じている様子は一切感じられない。

 何故ならその二人組の天使は竜人(ドラグニル)と真っ向勝負をしているのだから。

 繰り出される拳を同じように拳を繰り出して攻撃する天使。

 双方共に風の属性魔法を扱う事ができ、こちらもまた拳に風の属性魔法を付与させ拳と拳がぶつかり合う度に、金属同士をぶつけているかのような音が周囲に響き渡る。

 二体一という不良な状況ながらも善戦している竜人(ドラグニル)

 何度か天使の拳を喰らっているが、その身に纏う鎧が強力なのであろう・・・


『ひゃっはぁぁぁ!やるじゃねぇかよう・・・おい!』


 歓喜の雄叫びをあげながら天使と殴り合いをしている竜人(ドラグニル)は、一体の天使に向かって重い一撃を喰らわす。

 一瞬気が遠くなる感じに襲われた天使であったが・・・何とか踏み留まる。

 しかしながら何度も竜人(ドラグニル)と殴り合いをしたからであろう、最早ボロボロになってしまっていた。


『その状態じゃもう戦えねぇなぁ・・・まぁ、お前達なかなかいい線をしてたぜ』


 自らの勝利を確認し、笑みを浮かべる竜人(ドラグニル)

 それもその筈、二体一の状況で善戦していたのだからそれが一対一となるのであれば、最早勝ちは見えているのも同然ということになる。


『・・・クリス様に迷惑はかけられない』

『そうだね』


 ふらふらになりながらも飛んでいた天使が、もう一人の天使に近づく・・・そして承諾を得る。

 すると自ら纏っていた魔力がもう一人の天使へと移動して行き・・・受け取った側の天使の魔力が格段に跳ね上がる。


『な!?魔力の譲渡か・・・なかなか面白しろそうじゃねぇか!』


 最初は驚いた竜人(ドラグニル)であったが、自らも竜力を高め迎え撃つ算段に入る。


『行くよ・・・』


 消えそうな声で呟くボロボロの天使。

 もう一人の天使に魔力を譲渡したからなのか、その身体が徐々に光の泡へと変化して行っているのにも関わらず天使は竜人(ドラグニル)へと攻撃を仕掛ける。


『そんなボロボロで何ができる!』


 怒鳴るように叫び・・・そして竜人(ドラグニル)の拳がボロボロの天使を貫く。

 貫かれた箇所から勢いよく溢れでる光の泡。

 そんな光の泡の中で・・・ボロボロの天使は笑っていた。


『腕一本・・・貰っていくよ』


 そう呟くと、ボロボロの天使が砕け散るように光の泡へと変化し・・・そして天使を貫いた拳がボロボロになる。

 まるで何かに潰されたようにぐちゃぐちゃになってしまった拳。

 激痛に耐えきれず竜人(ドラグニル)が叫ぶ・・・よりも速く風の属性魔法を譲渡され、身体能力を爆発的強化した天使の蹴りが襲い掛かる。

 圧倒な速度と、拳をぐちゃぐちゃにされてしまったことによって気が動転してしまっていた竜人(ドラグニル)は天使の蹴りを腹部に喰らい、大きく吹き飛んで行ってしまった。


『い、今の・・・は・・・?』


 驚きながらも空中で姿勢を立て直し、周囲を見渡す竜人(ドラグニル)

 天使の蹴りを喰らった腹部の鎧がボロボロと崩れ落ちているのも気にせず、血眼になってもう一人の天使を探すが・・・


『見当たらねぇ・・・野郎何処に行きや・・・』


 攻撃して来た天使見当たらなく焦る竜人(ドラグニル)であったが・・・何かが接近してくる気配を感じ取る。


『上か!?』


 接近してくる気配が上からだとわかると即座に体勢を変え迎え撃つ。

 一瞬判断が遅ければ先ほどと同じように直撃していたのであろうが・・・一度攻撃を喰らっているのが幸いし、何とか反応できたのだ。

 竜人(ドラグニル)の拳と天使の蹴りが直撃し、周囲に轟音が響き渡る。

 風の属性魔法に更に重力を上乗せしての渾身の蹴りに対して、片腕一本で支えるのには限界があるのか徐々に押され始める竜人(ドラグニル)

 そして数秒間の競り合いの後に竜人(ドラグニル)は砕かれ・・・地面へと叩きつけられる。


『まだ・・・終わらない』


 そう天使が呟くと今度は翼を大きく羽ばたかせ、遥か上空へと飛び立って行ってしまった。


『ぐ・・・ぞ・・・まだ・・・俺は死んでねぇ・・・死んでねぇぞぉぉぉぉ!』


 地面に叩きつけられた筈の竜人(ドラグニル)であったが、未だに生きており戦意もまた衰えてはいなかった。

 鬼のような闘志と殺意が溢れだし・・・竜人(ドラグニル)もまた全身全霊の竜力を使い己の身体能力を極限にまで高める。

 砕かれた拳に変わるように土の属性竜法で拳を作り上げ・・・渾身の一撃を喰らわせる算段だ。

 そしてそのことに答えるように天使もまた魔力を高めていた。

 大きく羽ばたき、遥か上空へと旅立った天使。

 目下には雲海が広がっているが・・・それでもただ一点、怒涛の殺意をこちらに向けている竜人(ドラグニル)に狙いを定める。

 天使もまた自らの魔力を限界まで高め・・・解き放つ。

 先ほどよりも速く、重い一撃となった天使の攻撃。

 それは音の速度を越え地上にいる竜人(ドラグニル)に襲い掛かる。


『いいぜ・・・最高だぜぇぇぇぇ!』


 雄叫びを上げ、再び竜人(ドラグニル)の拳と天使の蹴りが炸裂する。

 すると荒れ狂う魔力と竜力の渦が出来上がり周囲を軒並み吹き飛ばしてゆく。


 ものの数分、数名の天使と数体の竜人(ドラグニル)との戦いで地形が一辺してしまったがのだが・・・これはまだほんの序章に過ぎないのであった。

 何故ならまだ天使達の本陣が動いていないのだから・・・



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