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嵐魔導師の狂信者VS絶土の魔導師

 マリアティアスが女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)の元に向かってから数秒後・・・ヘルメス達はバラバラに行動し、各地で戦いを繰り広げていた。

 そんな中、ヘルメスが戦っている相手は・・・年齢にして七十前後の白髪の老人であるウルガンだ。

 しかしながら年齢にそぐわなく俊敏で、土の属性魔法を使用して縦横無尽に動いている。

 というよりも上手く建物を使ってヘルメスの攻撃をかわせているのは経験からなのか?それとも女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)の能力なのか・・・

 それに対してヘルメスは風の属性魔法を使っているので空中にいる。


『あの乗ってる物・・・何かに似ているような』


 そんなヘルメスの視線の先にいるのは当然ウルガンなのだが、そのウルガンは奇妙な生物に乗っている。

 土の属性魔法で作り上げた魔導生物なのだが、この世界の何処にもいない生物。

 六足歩行で・・・四本指、長い尻尾、眼という物は存在していないが、変わりに髭のような物が六本ほど生えている。

 六足歩行といえば昆虫類なのだが・・・四本指という生物は存在しない。

 空想上の動物だと思われるが、何故ウルガンこのようなデザインにしたのかは謎だ。


『少し面倒だな・・・』


 魔機国最重要区画にあるとある一室にて・・・

 魔機国に存在する最重要区画にはこの国で集められた全ての情報が集結する区画がある。

 そんな区画の最奥の場所には女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)が水晶の玉座に座っている。

 周囲を見渡せば夥しい数の魔方陣がいくつも展開し、目まぐるしく変わって・・・その風景は幻想的にも思えるほどだ。

 しかしながら玉座に座る女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)は憂鬱そうにため息を溢している。


『面倒ですね。私の方はあの化け物を相手をしなければなりませんし・・・』


 数分考えた後に女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)は決定する。


『仕方ない・・・魔法をいったん解いて上書きするしますかね』


 そう言うと女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)はウルガン達にかけられている魔法を解く。


『なっ・・・こ、ここは?いったい・・・』


 意識取り戻したウルガンは自分が今何処にいるのかもわからずに、キョロキョロと周囲を見渡す。

 何処か魔法国と似ているようで、見知らぬ建物も存在するこの場所が何処かもわかっていないウルガン。

 そして今自分が何故このような魔法を使っているのかもわかっていない・・・


『な、何が起こっているんじゃ・・・儂はいったい何を・・・』


 先ほどまで動いていたのにも関わらずに、急に動かなくなってしまったウルガンに対して不信感を抱いたヘルメスだが・・・迷いは一瞬、動かなくなってしまったウルガンに魔法を放つ。


『な、魔法!何故この・・・』


 咄嗟にヘルメスの魔法を防いだウルガンだが、やはり自分が何をしていたのか思い出せてはいない。

 しかしながら攻撃をしてきたのであれば当然反撃、もしくは勝てないと判断すれば即座に逃げる。

 それは至極当然の判断であり、生物として当たり前なことだ。

 そしてウルガンがとった行動は反撃であり、上空のヘルメスに対して岩の礫を生成して攻撃に転じる。


『速い・・・しかしあの魔法何処かで』


 自らの攻撃をかわしているヘルメスに対して、何か思い出しそうになっていたウルガンだが・・・思い出すよりも早く女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)が既に行動していた。

 全部で合計五つの魔法。

 しかもその魔法には特別な呪いを上乗せして発動させる魔法だ。


『魔呪法・・・憎ムベキ仇ヲ前ニシテ』


 魔法を発動させた女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)によって思考を支配されてしまったウルガン達。

 その瞳は憎悪に支配され、溢れでる殺意と共にヘルメスを睨むその姿は、親の仇でも目の当たりにしたように変化する。


『何だ・・・あの殺意?』


 まるで人が変わってしまったように、突如としてその身に纏う雰囲気が変わったウルガンに警戒心を露にするヘルメス。

 しかしながらそんなヘルメスのことも気にせず、女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)は更に魔法を発動していた。

 それは魔呪法・・・『最速最善ノ一手ヲ繰リ出シ』

『完膚ナキ迄二叩キ潰ス』

『己ノ命ヲ引キ換エ二シテマデモ』

『絶対ニ・・・』


 五つの魔法全てを女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)によってかけられたウルガンは、持てる力全てを使ってヘルメスを倒す為に動き出す・・・しかしそれは残りの面々も同じであった。


『確かめて見るしかなさそうですね・・・』


 身に纏う雰囲気が完全に別物へと変化してしまったウルガンに対して、まず様子見の魔法『風弾(ウィンドボール)』を放つ。


『この程度・・・儂を馬鹿にしておるのか!』


 怒号と共にヘルメスの放った風弾(ウィンドボール)を弾き飛ばし、そして周囲に魔法を発動させる。


『叩き落としてくれる!巨人の拳』


 周りにある建物がウルガンの魔法によって巨人の拳のようになり・・・そしてヘルメスに襲いかかる。

 速度はそれほど速くないが、範囲が広い魔法。

 だがしかし・・・速さでヘルメスに勝てないのであればかわすのは余裕だ。

 空中を自由自在に動けるということは、つまり三次元の動きが可能。

 魔法の射程範囲外・・・更に上へと逃げればよいだけなのだから。


『やっぱり届いていない。どんなに強力な魔法でも当たらなければ意味が・・・あの老人は何処に?』


 一瞬眼を離した隙に何処かに行ってしまったウルガン。

 辺りを見回しても何処にもいない・・・何処かに身を潜めているのか?そう思ったヘルメスは辺り一面を一掃することにする。


『風斬りのや・・・』


 しかし、魔法で周囲を一掃するよりも早くウルガンの放った拳が崩れ落ちる。

 そして中から現れ出るウルガン。

 反応が遅れたヘルメス・・・そしてウルガンは既に魔法を発動させていた。


『土界・浮遊地牢!』


 ウルガンによって作り出された土の拳が全て砕け散り、そして空中に針で縫われたように静止してしまった。

 空中には大小様々な岩が散らばらり・・・大きい物では人間の等身大の大きさ、小さい物では握り拳程度の大きさが転々と散らばっている。


『これは・・・』

『風の属性魔導師の強みは自らを浮遊させることによって三次元移動を可能にし、そして他の魔導師の範囲外からの一方的な攻撃・・・しかしこれはその行動範囲を狭める魔法じゃ』


 大きな岩に立ち、悠然と佇むウルガン。

 その姿はまさしく歴戦の戦士であり、並々ならぬ魔力が周囲を圧倒する。


『知らない魔法ですが・・・この程度で私の動きを封じる事が出来るとでも?』

『当然』


 ウルガンが返事をすると同時にヘルメスはその身に、纏う風を更に強化させ・・・この土界・浮遊地牢から脱出しようと試みる。

 周囲には様々な岩が浮遊しているが、それもヘルメスにとっては意味がないことだ。

 こちらに迫っている魔導弾ならいざ知らず、ただ浮遊しているだけの岩などいくらでも対処法がある。


『ほう・・・逃げるのか。じゃが甘いぞ!砂縛錨・球牢!』


 逃げようとするヘルメスの目の前の岩から砂で作られた鎖が出現し・・・周囲の岩に突き刺さる。

 次々と周囲の岩が鎖に繋がれ・・・そしてジャングルジムのように四方八方が砂の鎖で埋めつくされる。


『この程度で止められるとでも・・・風波・高波!』


 空中で拳を降り下ろすヘルメス。

 すると、空中にあるはずのない皹が出現し・・・周囲の空気がまるで海の揺れる波のように揺れる。

 そして波は次第に大きくなり・・・高波へと変化し、周囲の岩やウルガンに遅いかかる。


『こ、これは!?』

『空中にあるはずのない波を出現させ、周囲を高波で一掃する魔法です。まぁ・・・使えるのは私しかいないと思いますが』


 ヘルメスが少し楽しいそうに笑う。

 それは自分にしか繰り出すことの出来ない魔法でウルガンが驚いているからだ。

 無論ヘルメスよりも強い風の属性魔導師はいるはずだ。

 現にヘルメスの仕えるべき主人であるマリアティアスは破格・・・人外、化け物と言っていいほどの膨大な魔力を持っている。

 それに竜王国に存在する最速の竜人(ドラグニル)ももしかすればヘルメスよりも強者かもしない。

 しかし・・・魔法国、今は名前が変わってしまっているが、その魔法技術が最も発達していると言われている国で最高位魔導師として長くいるウルガンが驚くのであれば、それは単純だが凄いということに他ならない。


『このような魔法があると・・・じゃがしかし』

『何故笑うのですか?』


 急に嗤うウルガン。

 その瞳には先ほどの驚きはなく、逆に相手を手玉に取ったような表情に変わる。


『残念じゃがこの魔法を吹き飛ばすことはできぬぞ・・・』


 そう言い終えるよりも早くウルガンの魔法が動く。

 周囲に漂っていただけの岩が全て、ウルガン、ヘルメスを通りすぎ・・・そして球体の檻へと変わる。


『・・・私の身動きを封じる為の魔法ではなかったのですか?』

『お主は儂の想像以上の力を持っていたのでな、あれでは無意味だと思ったのじゃよ。それに今の儂は・・・』


 ウルガンが自らの足元を見る・・・そこには風の魔導石が埋め込まれた靴があり、それにより空中を移動することが出来ている。


『この事を忘れてたのでのう・・・』

『そのまま忘れていればいいものを・・・まぁ、私の邪魔をするのでしたら排除するまでです。別に貴方程度の攻撃など当たる気は毛頭ないので』

『言うではないか小娘が・・・』


 殺意と殺意がぶつかり・・・魔法が空を舞う。


『土隆拳・・・翔拳!』


 自らの両腕に土の属性魔法で作り上げた拳をまるで正拳突きのように拳を前に出す。

 すると土の属性魔法で出来た拳がウルガンからまるで弾丸のように飛ばされる。


『この程度・・・』


 しかしながらウルガンの魔法がヘルメスに当たることはなく空を切る。

 だが、ウルガンの攻撃は一発では終わらなかった。


『既に次の魔法を放って・・・いや、あれは違う!』


 ウルガンの使用した魔法は自らの両腕に土の属性魔導で拳を包み込み、それを打ち出すだけの魔法ではなく。

 それを即座に補給する魔法も両腕の魔導石によって発動していたのだ。

 これによりウルガンはもう一度魔法を発動することが出来る・・・そう両腕の魔導石の魔力が尽きるまで。ウルガンが止めるまで・・・


『連・翔拳!どぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!』


 ウルガンが雄叫びと共に連続で拳を突き出し、土の属性魔法で作り上げられた拳が絶え間なく放たれる。

 それはまさに弾丸の雨のように速く、とても老人であるウルガンからは考えられないスピードだ。


(速い!しかも数が多い・・・これじゃぁ)


 魔導弾並みの速度と広範囲による攻撃により逃げ場を失ってしまったヘルメス。

 今さら逃げようとしても逃げれないことは明白であり・・・ヘルメスは覚悟を決める。


『全く・・・こんなところでこの力を使うつもりはなかったのですけどね!』


 そう言うとヘルメスはどす黒い弓に組み込まれた魔導石を発動させると・・・ヘルメスの後方に無数魔方陣が展開される。


『この魔法は!?』

『いたってシンプル風の矢(ウィンド・アロー)ですよ。ただ・・・その数は通常よりも多いですけどね!』


 ヘルメスの展開した魔方陣から風の矢(ウィンド・アロー)が放たれる。

 しかしながらその数は圧倒的。

 通常であれば十や二十程の数でなのだが・・・ヘルメスの放った風の矢(ウィンド・アロー)の数はおおよそ十倍。

 ウルガンの放った土隆拳・翔拳よりも数が多く、そして土隆拳・翔拳と激突する。

 激突した矢は霞のように霧散し、直撃した拳はぼろぼろに砕け散る。

 そして数分後には・・・双方の魔法は尽き、ウルガンとヘルメスがにらみ合いが始まる。

 一瞬・・・どちらかが一瞬でも隙を見せれば攻撃を繰り出す為だ。

 そして・・・先に動き出したのはウルガンであった。


『水土・・・泥刑昏!』


 ウルガンの展開した魔方陣から泥が出現し、ヘルメスへと向かって行く。

 土の属性魔法とウルガンの装備に埋め込まれた水の魔導石による混合魔法であり、粘液性の魔法だ。

 この魔法は攻撃を目的とした魔法ではなく、相手を拘束するのが目的の魔法だ。


『泥の触手・・・キモい』


 ウルガンの放った魔法が気持ち悪かったのか距離を取り、迎撃する為に風の属性魔法を繰り出す。

 しかしながら魔法が直撃するよりも先に泥の触手は方向転換する。


『感知した?なら・・・』


 攻撃をかわされたヘルメスが次に繰り出したのは先ほどよりも広範囲の魔法であり、泥の触手に直撃しバラバラに飛び散る。

 だが、そのバラバラになった触手から更に魔法陣が展開し・・・ヘルメスに向かって飛んで来る。


『うふぇぇぇぇ・・・増えたよ』


 思わず声に出してしまったヘルメス。

 しかしながら声に出したとしても、ヘルメスに触手が向かって来るのは変わらない。


(魔法で攻撃すると増える?仕方ない・・・)


 迫り来る泥の触手なのだがヘルメスは回避しようとはせず、防御することに変え・・・ヘルメスに泥の触手が巻き付く。


『触れてないけどキモい・・・』


 触手が巻き付いているはずのヘルメスなのだがその言葉からは緊張感が一切なく、まるで全然気にしてい様子だ。

 それもそのはず・・・今のヘルメスに泥の触手は触れてはいない。

 触れているように見えるが、ヘルメスは風の衣服のような物を身に纏っていて触手がまとわりつくのを防いでくれている。

 端から見れば泥の塊が空中に浮いているように見えるだけだが・・・


『風法李球』


 泥が全て自信の身体に巻き付いている事を確認し終えたヘルメスは魔法を発動させる。

 魔法の名前は風法李球・・・それは自らの周囲を風の結界魔法を発動させる魔法だ。

 しかもこの結界魔法は一瞬にして形成され、最早逃げる暇を与えない程であり・・・使う魔導師にもよるが最速で展開する事が出来る。

 そしてウルガンの放った水土・泥刑昏の魔法はあっさりと捕獲されてしまった。


『ほぉ・・・あの魔法をあんな短時間で無効化するのか。流石としか言い様がないのぉ』


 先ほどから魔法を放ってから動こうとしていないウルガン。

 動かないのか?それとも動けないのか・・・

 それを確かめる為にヘルメスは魔法を放つ。


『もう少し時間が稼げると思ったのじゃがのぉ・・・仕方ない少し未完成ではあるが解き放つとしようかのう』


 そう言うとウルガンは魔法を発動させる。

 すると周囲から真っ赤な・・・血のような液体がウルガンの元に向かって集まってくる。

 そして一つになると同時に巨大な・・・竜おも思わせる巨大なドラゴンが出現する。

 しかしながらそのドラゴンの下半身は出来てはいなく、どろどろと融解してしまっている。


『こいつは・・・』

『禁呪法・禁混岩土竜(ドラグニ・ジオアニマ)・・・さぁ喰らいつけ』


 ウルガンの作り上げた禁混岩土竜(ドラグニ・ジオアニマ)がヘルメスに向かって一直線に攻撃を仕掛ける。

 その動きに迷いはなく、声帯があるのか不明なのだが雄叫びをあげている。


『大きさはなかなかですが・・・遅い!』


 ヘルメスに対して、その大きな鉤爪で叩き潰そうと攻撃するが・・・当たることはなくヘルメスにかわされてしまった。


禁混岩土竜(ドラグニ・ジオアニマ)の真髄を味わうがよい!』


 ウルガンが魔力を込めると巨体に似合うだけの翼が大きく広がる。

 その姿はまさに巨城・・・

 土と岩で作り上げられた翼を広げ・・・そして禁混岩土竜(ドラグニ・ジオアニマ)自身が魔法を発動する。

 放たれるのは広範囲の土の属性魔法。

 しかしながらガトリング砲のごとき連射速度で打ち出される土や岩をかわすヘルメスなのだが・・・次第に追い込まれて行く。


『逃げるばかりで精一杯か!』


 ヘルメスが逃げていることで上機嫌になっているウルガン。

 それもそのはずだ。

 こちらが優勢になっているのだから。


(さっきから逃げているけど一向に威力が弱まっている気配がないですね・・・まさかとは思いますがあの巨大で威力が弱くならないのですか?)


 魔導師にとってより大きい物、より威力の強い物、より数の多い物ほど魔力の消費が大きいのは言うまでもない。

 そして魔力は有限。

 眠ったり、休息、食事をしてりしても回復する事は出来る。

 消費すればするほど自身の体力も消耗してしまうのが魔導師であり、魔力が枯渇してしまえば生命に関わってしまう。

 なのでいままで大技を連発しているウルガンであれば、もうそろそろ魔法の威力が弱まってきてもよい頃合いなのだがウルガンにはそのようなことが見られない。

 女神の(オラクリリス・)神眼(ロード・アイ)が技術を集約した結果なのかは不明だが、ウルガンの魔法の威力が衰えていないという事実は変わらない。

 もしかすれば、もっと長く禁混岩土竜(ドラグニ・ジオアニマ)を使用させていれば威力も弱まってくるかもしれないが・・・今のヘルメスにそんな余裕はない。

 それは一か八かの賭けをしなければ攻撃すら出来ない状況になってしまったからだ。


『まずい・・・このままでは』


 次第に追い込まれて行くヘルメス。

 そして遂にヘルメスは射程範囲に入ってしまい・・・集中砲火を喰らってしまう。


『肉片の残らずに消し飛ばしたか?』


 血飛沫が飛び散り、ヘルメスの着ていた聖職者の衣服が飛散してしまう。

 ヘルメスが確実に倒された事を確認する為に、一時的に攻撃を止めるウルガンだが・・・違和感に気がつく。

 その違和感とは血の量が少ないのだ。

 人が死んだのであればかなりの量の血が出るはずなのだが・・・それが見られないということは。


『逃げたのか?あの状況で!?』


 突如として姿を消したヘルメスに対して周囲を見渡すウルガンだが・・・ウルガンが気がつくよりも早く攻撃が繰り出される。


『う、うし・・・』


 いつの間にか後ろに移動していたヘルメス。

 その指には真っ赤な魔導石が嵌め込まれている。


『せっかくマリアティアス様から頂いた魔導石を、貴様ごときに使うのは不服ですが仕方ありません・・・人間では抗うことの出来ない嵐に喰われて朽ち果てろ!』


 そう言うと先ほどの攻撃で動きを封じたウルガンに対してヘルメスは魔法を放つ。

 人間には抗うことの出来ない・・・災害に匹敵するほどの魔法を。


『抗ウコト無キ世界ノ真理!』


 それは魔力の塊となった矢。

 着弾地点を中心に半径2mと攻撃範囲はかなり狭いが・・・その中はまさに地獄。

 圧倒的な風量によって全てが吹き飛ばされる世界がそこには存在している。

 最早息をする事も出来ず・・・そしてその圧倒的な風量の中では豆腐でさえも人を殺せる程の速度に達している。

 そんな人が生存出来ない地獄の中にウルガンが閉じ込められてから数分後・・・ヘルメスの放った魔法は解ける。


『これは・・・?』


 魔法が解け、人が抗うことの出来ない圧倒的な風量の中に閉じ込められていたはずのウルガンであったが、その中から出てきたのは真っ赤な球体であった。

 魔導石のような真っ赤な球体なのだが・・・その大きさが少しおかしいのだ。

 ウルガンが防御魔法で作り出した物にしては小さく、人が入っているとは思えない。


『あいつの魔法か、何かなのか?』


 独り言を呟くヘルメス。

 その言葉に反応したのか、真っ赤な球体は脈動を始める。


『何が起きて・・・』


 ヘルメスが困惑していると、ウルガンが作り出した結界魔法砂縛錨・球牢が崩壊して行く。


『結界が壊れた?』


 周囲の結界が壊れ、ヘルメスを閉じ込めていた魔法がなくなる。

 そして先ほどあった真っ赤な球体も同じくいつの間にか姿を消していた。


『いったい何が起きて・・・』


 困惑しているヘルメスだが、とりあえずこの場を去ることにした。


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