乱戦
女神の神眼とマリアティアスは数秒間見つめた後に、お互いに息を合わせたようにして動き出す。
女神の神眼は最初に各々が使う事が出来る魔法の中でも中位の魔法を放つ。
これは様子見の為であり、強化した彼ら・・・魔法国において四大魔法機関に属する最高位魔導師である彼らの力がどれ程通じるのか確かめる為だ。
相手は未知の・・・規格外の力持つ魔導師なのだから。
『各種四属性魔法・・・それにどれも今までの魔導師より遥かに強力ですね。いや・・・風の属性魔法だけは別ですね』
ふとマリアティアスの脳裏に最速の竜人の姿がちらつくが・・・直ぐ様に戦闘に集中する。
迫り来る四属性の魔法・・・女神の神眼は中位の魔法だと思って放ったそれぞれの魔法は、他の者からすれば高位の魔法であり、人によっては切り札と言っても過言ではない威力の魔法だ。
『炎溶土流!』
『純水なる冥大蛇!』
『土動拳弩!』
『崩城風牙!』
火の最高位属性魔導師であるヴェルピルスが放った魔法は蠢く燃える大地となり、水の最高位属性魔導師であるアクララが放った魔法は大蛇へと変化し、土の最高位属性魔導師であるウルガンが放った魔法はまるで巨人の拳のように変化、風の最高位属性魔導師であるジルータが放った魔法は城壁を破壊するほどの風牙へと変わり襲いかかる。
どの魔法も当たれば即死・・・
防ごうとしても、並大抵の防御魔法であれば防御魔法ごと撃ち破られるのは明らかだ。
そんな強力な四属性の魔法に対してマリアティアスは防御魔法を発動させる。
『根源の守護盾×4』
風と水混合属性魔法による魔法の盾・・・五角形の分厚い盾の正面には女神セラフティアスが描かれている。
そして根源の守護盾×4は四属性の魔法に激突する。
美しき強固な盾は蠢く燃える大地を塞き止め、水の大蛇が盾に激突し・・・ただの水へと変化する。
巨人の拳を思わせる土の拳はお互いに激突した後・・・土の拳は砕け根源の守護盾に皹が入る。
城壁を破壊するほどの大きな風牙と激突した根源の守護盾は、砕かれてしまったが風牙も同時に風となり、霧散してしまった。
『なるほど・・・威力だけなら風の属性魔導師が驚異ですね』
(中位の魔法とはいえ、誰一人として突破出来ないとは・・・やはりあの女をどうにかしないと此方に勝機は無いか)
『マリアティアス様が防がなくてもアイカに任せてくれれば良かったのに・・・』
マリアティアスが視線をアイカに向けるとその手には純白の炎が揺らめいている。
アイカの純白の炎であればどんな魔法でも焼く事が可能だ。
それが火であれ、水であれ、土であれ、風であれ、それが魔法というものであるならばアイカの純白の炎で焼けない理由はない。
しかしながらマリアティアスはアイカの純白の炎を使わせることはなく、自らの防御魔法で防いでみせた。
これには三つの理由がある。
まず一つ目の理由だが、マリアティアスにとって彼ら・・・元に魔法国の四大魔法機関に属する最高位魔導師の四名の今の実力を確かめる為だ。
ヘルメスの情報で少なからずその実力は知っているが、魔法国が女神の神眼によって支配され、魔機国となってから実力はわからないからだ。
それに明らかに違う武装をしているのであれば尚更だ。
戦闘において使っている武装が違えば戦いに差が出ること必然・・・今まで槍を使っていた者が大剣を使うのとは戦い方が違うのだから。
そして二つ目の理由はアイカの力をなるべく温存しておきたいからだ。
アイカの純白の炎は全ての魔法を焼く事が出来る超貴重な魔法・・・多分アイカにしか使う事が出来ずこの世界全てを探してもアイカしかいないであろう。
それはマリアティアス、女神の神眼、最強の竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジでも不可能なことなのだ。
つまりその魔法の事が女神の神眼に知られれば当然格好の的であり、全勢力でアイカを我が物とするために動くことは眼に見ている。
なのでマリアティアスはアイカの純白の炎を使う事を許可していない。
それともう一つ、アイカの純白の炎は強力なのだが・・・燃費が悪いのだ。
魔力消費が激しく、むやみやたらに使ってしまえば魔力が欠乏してしまいかねない。
無論それを補うことは可能だが・・・それは最後の手段。
最初っから倒れる事が前提で行動するのは愚か者のすること。
戦うからには必ず逃走経路を確保する・・・それは戦いにおける鉄則だ。
まぁ・・・そう、うまく事が運ばないのも事実だが。
『確かにアイカであればあの程度の魔法を焼くことは容易いですね。しかしながらその力はいざという時の為に使ってくださいね』
『マリアティアス様こちらからは・・・』
『えぇ、そうですねヘルメス。仕掛けるとしましょうか?』
その言葉を聞き、直ぐ様に魔法の矢を放つヘルメス。
放たれた矢は暴風となり・・・音速を超え、一直線に飛んで行く。
凝縮した風は嵐に、逆巻く風は周囲を斬り刻む真空の刃と変化する。
『音超えの一矢・・・』
静かに呟くヘルメス。
音速超えた矢の一撃・・・それは人では決して抗えない暴風となり、彼らに襲いかかる・・・はずであった。
『な!?ふ、防いだ!?』
声を荒らげ驚くヘルメス。
それもそのはずだ。
自分が撃った一撃は音速を超えた一撃。
例え防ぐ事が出来ても着弾と同時に周囲を暴風に巻き込むのは必然だ、今までもそうであったように。
しかし・・・ヘルメスの攻撃は防がれてしまった。
王国最強の騎士ヴァーミリオンによって。
『マリアティアス様!』
『落ち着いてくださいヘルメス・・・エリカちゃん』
『はい。お母さん』
マリアティアスの問いかけに応じるようにエリカはマリアティアスの横に並び・・・そして純黒の炎をヴァーミリオンに向かって放つ。
燃え盛る純黒の炎は全てを焼き払い、触れる物全てが灰塵となってゆく。
エリカの放つ純黒の炎は絶対に消えることのない炎。
この炎は通常の炎とは違い、別の物質に燃え広がることがない変わった炎だ。
本来炎という物は燃える物が周囲にあるのであれば、必然的に燃え移るのが性であり、それは世界の法則でもある。
しかしながらエリカの放つ純黒の炎は違う。
消えることのない純黒の炎は燃え移ることはなく、触れた対象者を灰塵になるまで燃やし尽くす炎なのだ。
さらにこの炎は鎮火、消火することが出来ない。
そんな特別な、特殊な炎なのだが・・・ヴァーミリオンは避けることはしなかった。
燃え盛る純黒の炎がヴァーミリオンを灰塵にする・・・はずであった。
先ほどのヘルメスの放った音超えの一矢と同じように触れ・・・そして炎がまるで霞のように霧散していってしまった。
『私の炎が・・・』
『なるほど・・・なるほど・・・あの鎧はどうやら超高密度の反魔導物質で出来ているようですね』
『反魔導物質?マリアティアス様それはどういうことですか?』
ヘルメスの問いに対してマリアティアスはヴァーミリオンの着ている鎧を指差す。
マリアティアスの言う通り、ヴァーミリオンの着ている鎧は特殊な鉱石を使用して作られている。
以前マリアティアスは帝国でこの特殊な鉱石で作られた弾丸を喰らったことがある。
あの時の弾丸は、マリアティアスの防御魔法を貫通することができ、マリアティアスにダメージを追わせた弾丸だ。
その弾丸に使われた鉱石と同じ鉱石を使っているのであれば、ヴァーミリオンがヘルメスとエリカの攻撃を防いだのも納得がゆく。
『あの鎧に触れた瞬間魔法が霞のように霧散してしまいます。はっきり言って魔法は一切通じないでしょう』
『つまり物理で倒せば問題ないなということですね』
『もちろんですソイル・・・あの騎士の相手は貴女にお願いします』
『了解ですマリアティアス様』
(さて、あのヴァーミリオンを倒すのはソイルに任せるとして・・・問題はどうやって他の者の介入をさせないようにするかですね。それにあの超貴重な石をあれほど持っているのは驚きですね・・・もともと魔法国にあったのでしょうか?)
反魔導物質と言われている石はこの世界に一つしか存在が確認されていない。
しかもその反魔導物質は大抵が石ころ程度の大きさしかなく、そして見つかった反魔導物質は大抵王族か、貴族の手に渡る事が多い。
何故ならその反魔導物質を持っているということは権力、財力の象徴。
拳ほどの石ころで、三人一家族が慎ましく一生暮らしていけるだけの価値があるのだから。
しかしながらこの反魔導物質には欠点が幾つか存在する。
まず第一に見つけにくいということ、何処にあるかということが完全にランダムなのだ。
地中深くにある場合もあれば、地上に文字通り石ころのようにしてある場合もある。
そして見た目的にはそこら辺の石ころと何ら変わらないので、うっかり見落としてしまうことも数多くある。
一つ一つの石ころに魔法当てて探すというのは酷な話であり、誰もやろうとは思わないのが普通だ。
まぁ、中には一攫千金を夢見て探す者もいるが・・・
そして第二に反魔導物質は脆いのだ。
同じ石ころような大きさの石ころをぶつけようものなら確実の反魔導物質の方が壊れてしまう。
その事から加工というものが難しく、鎧にするということはまずありえない・・・
そもそも数が少なく集めるのすら困難だからだ。
しかしながらそんな困難な事を可能にした者が目の前に存在し、今マリアティアス達の脅威となっている。
ソイルがヴァーミリオンと戦うことは決定したが、それは一対一での戦いだ。
マリアティアスはソイルであればヴァーミリオンと勝てると予想する。
しかしそれは他者・・・他の魔導師の介入が無いことが大前提だ。
彼らの攻撃を完全に防ぐ事が出来るのはマリアティアスとアイカだけであり、女神の神眼もまたヴァーミリオンを主軸にして戦うはずだからだ。
『考え事をしている暇があるとでも?』
ヴェルピルスが一歩前に出る。
その両腕に嵌められた赤色の魔導石が脈動し始め、そして両肩に嵌められている茶色の魔導石も脈動を始める。
『少し地形を変えてしまいますが仕方ないですね・・・』
そう言うと女神の神眼は火と土の混合魔法・・・改変・炎流溶地を。
『この魔法は!?』
マリアティアスがヴェルピルスの使用した魔法に驚くが、直ぐ様に魔法を発動させる。
『極水の道標!』
双方の魔法が炸裂し、地面が・・・変わってしまった。
ヴェルピルスの放った魔法により燃える地面が絨毯のようにして広がり、マリアティアスの放った魔法により周囲が湖のように変化する。
これによって周囲には燃える地面と湖が混同する奇妙な空間となってしまう。
『この魔法も防ぎますか・・・流石ですね』
『周囲の地形が変わってしまいましたね。風による浮遊×4』
『・・・私には地形などどうでもいいのですよ』
そういうとヴェルピルス達の両足に嵌められている緑色の魔導石が発動し、風による浮遊を発動させ、空中へと飛翔する。
既に先に空中へと避難していたマリアティアス達と対峙するように飛び立ったヴェルピルス達。
『・・・なるほど、あなた方の武装には各種四属性の魔導石が組み込まれていて、そして使う事が出来るのですね』
『えぇそうです。素晴らしいでしょう?』
『確かに素晴らしいですね・・・ですが物言わぬ灰人になるのはごめんですが』
『減らず口を・・・貴女方も全員私の一部にしてさしあげますよ!』
『少々情報が足りませんが仕方ありませんね!』
マリアティアスが今までこっそりと溜めていた魔法を解き放ち。
『水蓮華・風凌大樹!』
するとマリアティアスの後方に無数の魔方陣が展開し始める。
『蓮の花?』
マリアティアスが作り出した魔方陣から現れたのは蓮の花であり・・・それは水の属性魔法で作られていた。
しかしながら通常の蓮の花とは大きさが異なりかなり巨大になっている。
花弁の一つ一つが人間の大人ほどの大きさがあり、それは日の光を反射して妖艶に揺らめいているその姿は、なんとも現実離れした光景だ。
(どんな攻撃をしてくるのかは知りませが・・・)
マリアティアスがどんな魔法を使って来ようとも、魔法その物を無効化することの出来る鎧を着ているヴァーミリオンを魔法によって倒すことは出来ず、また結界で隔離することも出来ない。
しかしながらマリアティアスは魔法を繰り出し・・・水蓮華・風凌大樹が襲いかかる。
魔方陣から出てきた水蓮華・風凌大樹は先端が蓮の花のようになっていて、茎に当たる部分が大樹のように太くなっている。
濁流のような速度でヴォルピルス達へと襲いかかる水蓮華・風凌大樹に対してヴァーミリオンが前に出て、盾になるように受けてたとうとする。
『甘いですねぇ・・・経験が足りませんよ』
マリアティアスが妖艶に微笑むと・・・水蓮華・風凌大樹の一部が開花して中からソイルが現れる。
『なに!?いつの間に?』
まさか魔法の中からソイルが出てくることは予想外であったのか驚き、そして慌ててしまう。
動揺してしまった女神の神眼が、指示を出すよりも早くソイルはヴァーミリオンに向かって攻撃を仕掛ける。
その手に持っているレイピアを使っての人智を超えた神速の攻撃・・・
それは周囲の空間を埋めつくほどの斬撃であり・・・その攻撃を喰らってしまったヴァーミリオンの鎧はぼろぼろに砕け散ってしまった。
『散れ!』
鎧を砕き、剥き出しとなった皮膚に攻撃するソイル。
しかし・・・その攻撃は深々と刺さる前にヴァーミリオンによって弾かれてしまった。
だが、ソイルの攻撃でダメージはあったようであり、流血してしまっている。
『鎧が砕けた・・・これなら!』
鎧が砕けた事を確認したヘルメスが弓を構え・・・そして狙い撃つ。
ソイルが近くにいるのにも関わらずにヘルメスは躊躇わず攻撃した・・・
その理由は今この場でヴァーミリオンを倒さなければならなく、今が絶好のチャンスだからだ。
そして放たれた矢がヴァーミリオンに直撃する。
『・・・なに!?』
ヴァーミリオンに直撃した矢であったが・・・ダメージを与えることはなく、先ほどと同じように霧散してしまった。
『これはまずい!』
予想と外れたことによって同様してしまうヘルメス。
それを見たソイルがすかさずヴァーミリオンを倒そうと、空を蹴り・・・近づこうとしたが、急に視界が入れ替わる。
『なっ!?これは・・・』
ソイルが驚いていると、魔法が炸裂する。
魔法が炸裂した場所は先ほどソイルがいた場所であり・・・そこにはマリアティアスがいた。
『入れ替わりの魔法!?やはりあの時は貴女が魔法を使っていたのですね!』
声を荒らげて興奮した様子の女神の神眼。
マリアティアスが発動させた魔法は逆地逆転の次元転移
他の者とマリアティアスとの位置を入れ換える魔法であり、一瞬・・・瞬きする間に場所入れ換える事が出来る魔法だ。
無論無制限で使えるわけではなく、入れ換えれる距離もまた決まっている。
この魔法は一度使っていて・・・その時は容赦なくヴァーミリオンに斬られしまったが、今度は魔法が直撃してしまった。
『ぐっ・・・ああぁ・・・』
魔法の直撃によって意識が飛びそうになってしまったマリアティアスだが、気力を取り戻し・・・ヴァーミリオンに向かって魔法を放つ。
しかしながら魔法が直撃した瞬間、先ほどと同じように霧散してしまった。
『貴女はしぶといですからね・・・殺すつもりで行きますよ!』
今度は女神の神眼に操られたアクララとウルガンの魔法が襲いかかる。
明らかにマリアティアスを殺すつもりの魔法であり、さっき放った魔法よりも殺傷能力を高めた魔法だ。
『激水・斬貫閃!』
『隆起する鋭地!』
圧縮した水を勢いよく発射することによって、城壁すらも貫通する水の属性魔法。
シンプルながらもその威力は凄まじく、そしてその速度もまた音速までとはいかないが・・・動体視力を鍛えた人間でなければ反応できない程の速度だ。
そしてウルガンの放った魔法は、マリアティアスの足元に魔方陣が展開し・・・その魔方陣から鋭く尖った地面が出現する。
これはマリアティアスの死角からの攻撃だ。
『た・・・多少の・・・痛みは覚・・・悟しています・・・よ』
ダメージを追った身体では逃げる事が出来なかったのか、マリアティアスに魔法が直撃してしまう。
殺意込めた魔法はマリアティアスの顔を抉り・・・腹部や太ももを貫通する。
『マリアティアス様!』
マリアティアスが見るも無惨な姿になってしまったことにより、思わず声を荒らげるソイルとヘルメスにエリカとアイカ。
しかしながらアリセスとエールは冷静に観察している。
それはあの程度の攻撃でマリアティアスが死なないことは知っており、そして自らが戦う相手の手札を少しでも知っておく必要があるからだ。
相手がどんな方法で、どんな手段で攻撃してくるのかを知るのは戦いにおいて最重要事項であり、それによって戦い方が違うのは言うまでもない。
『い、いたい・・・です・・・ね・・・ほんとうに・・・ころすつもり・・・ですか?』
『いや・・・死んでくださいよ。既に顔半分が無いのですよ?』
顔の半分、腹部と太ももが貫通しているのにも関わらずにマリアティアスは平然と話している。
かなり不気味であり、女神の神眼もまた想定外であったようで、正直ドン引きしてしまっている。
そんな一瞬の隙を突いてマリアティアスは魔法を発動する。
あまりの現実離れした事が目の前で起きてしまったが為に、反応が遅れてしまった女神の神眼。
ヴァーミリオンを動かし魔法の邪魔をしようとしたが時既に遅く、マリアティアスはアリセス達の元に戻ってしまっていた。
『しまっ・・・』
慌てて魔法を放とうとした女神の神眼だが、マリアティアスの作り出した水蓮華・風凌大樹が行く手を阻む。
そして嫌らしいことに水蓮華・風凌大樹はヴァーミリオンと一定の距離を保ちつつ動いており、決してヴァーミリオンの攻撃範囲に入ろうとはしていない。
魔法で破壊も出来るであろうが・・・それには先ほど以上の上級魔法を発動しなければ破壊出来ない。
(上級魔法で破壊出来たとしてもその後はどうする・・・彼方にはまだまだ余力は十分に残っている。今魔機国にいる魔導兵を集めてしまっては後々の戦いで不利になるのは確実・・・)
女神の神眼は今後の戦いについて考える。
ここでマリアティアス達を倒すことに成功しても、まだまだこの世界には女神の神眼が戦うべき相手が数多く存在する。
世界全てを怨んでいるとされている厄災・・・疫病の狂天使を筆頭に、竜王国の竜人。
その配下の亜人に竜王国を取り巻く各国も殲滅の対象だ。
女神の神眼が目指すのは世界の再構築・・・その世界には人間以外の知的生物は全て根絶やしにしなければならないと考えている。
目の前の敵を倒したからと言って大局で負けてしまっては全てが無意味となってしまうので、女神の神眼は数で攻める事を止め、質で勝負することにしたのだ。
『うそでしょ・・・』
女神の神眼が考え事をしている最中にありえない事が起こりだす。
それは顔半分が無くなってしまったマリアティアスの傷が再生を始め・・・そして数分後には何事もなかったかのように元通りになってしまう。
無論腹部と太ももの傷も完全に元通りになっている。
(あの聖書らしき物が傷を再生させた?あれがあの女の不死身の理由?)
元通りとなったマリアティアスは身体を動かし、異常がないか確かめる。
『少々驚きましたよ・・・まさか身体の中にまで反魔導物質を身体の中に埋め込んでいるなんて』
ヴァーミリオンが何故反魔導物質で出来ている鎧を破壊されてしまったのにも関わらずに、何故魔法を無効化できるのかを突き止めたマリアティアス。
それはヴァーミリオンの体内に反魔導物質が埋め込まれいるからだ。
しかしながら体内に異物である反魔導物質を埋め込むということは・・・寿命を縮めるということに他ならない。
王国最強の騎士であるヴァーミリオンだが、女神の神眼にとってはただの使い捨ての駒・・・数年持てば御の字なのであろう。
『驚いたのはこちらの台詞ですよ。しかしまぁ・・・貴女は直接私が相手をしなければならないのですね』
『貴女は戦えるのですか?』
『当然ですよ・・・ついて来てください、案内しますよ』
そう言い終えると一人の魔導兵がこちらに来るように手招きをしているのが視界に入る。
『こんな見え見えな罠を・・・』
『しかしながら元凶を絶つのが一番の解決方法であることは確かですよ』
『まさかマリア様?』
『お母さん・・・あいつの言う通りにするつもりなの?』
『得策とは言えませんが・・・』
『奴の本拠地に行くということは、奴の最も得意な場所で戦うということですよ』
『そうですね・・・しかし、たとえ罠だとしても私は大丈夫ですよ』
そう言いながらマリアティアスはアリセス達を宥め、魔導兵について行くのであった。




