名もなき偽刀VS廻る忍刀
地下の実験施設から四人の魔導六刀がいなくなってから数十分後・・・
二人の魔導六刀は激闘を繰り広げていた。
最早それは人と人との戦闘ではなく・・・別次元の戦いが繰り広げている。
更に言うなれば魔導師とも竜人とも違う、魔導六刀にしか出来ない常識外れの戦闘だ。
その影響により周囲の壁や床には無数の斬り傷があり、その中には巨大な・・・人が容易に入ることが出来るほどの物も存在している。
周囲の床が切り刻まれてしまったことによって足場が悪くなってしまった地下の戦闘施設。
斬られた床に足を取られ転んでしまえば即刻に攻撃を喰らってしまいかねない状況なのだが・・・ガルとディライはそんな事は関係ない戦えている。
その理由はそれぞれ違うが・・・
ガルは自身の脚から鎌のような刀を出現させ、それを地面に突き刺すことによってバランスを保っている。
ディライの方はというと器用に足を取られる事がないように動いている。
『・・・だんだんわかってきましたよ』
『何が?』
『貴女の魔導六刀としての能力ですがですよ』
そう言うとディライは右手に持っている忍刀をガルの方へと投げつける。
忍刀は一直線にガルへと向かって行く。
投擲と同時に手裏剣のように回転して襲いかかる忍刀は、まさに丸ノコのように高速で回転していて人間の身体程度であれば容易に切断出来ると断言できる。
更に言うなればこの刀は魔導六刀の一振りだ。
つまり並大抵の刀や盾では防げない。
だが同じ魔導六刀であればどうか?
『また同じ事を!』
忍刀と同じ魔導六刀である偽刀であれば防いだり、弾いたりすることが可能だ。
そしてガルはディライの攻撃を何度も防いでいる。今回も同じように防ごうとした瞬間、急に角度を変えてガルのいる方とは違う方向に飛んで行く。
『方向展開?』
急に角度を変えて攻撃してきたことに疑問を持っていたガルだが、その疑問の答えは直ぐにわかる。
ディライの投げた忍刀は更に角度を変え・・・ガルの死角から奇襲を仕掛ける。
『死角からの攻撃・・・でもあまい!』
死角からの攻撃だが、忍刀がガルに当たることはなく、今度は背中から複数の偽刀が出現して防ぐ。
服を着たままであったが為に・・・マリアティアスと同じ聖職者の衣装に大きな大穴が空いてしまう。
せっかくマリアティアスが作った衣装に大穴を開けてしまったことにガルは悲しみも、嘆きも感じなかった。
何故ならガルの能力を最大限に使うのであれば仕方ないのだ。
しかし・・・そんな大穴が空いてしまったガルの衣服だが、驚くべき事が起き始める。
それは衣服の再生と言ってもいいように、空いた大穴が元通りになって行く。
そしてものの数分で完全に、何事もなかったかのように戻ってしまった。
これはマリアティアスがガル専用に作り上げた衣装だから出来ることなのだ。
特殊な素材を特殊な技法で編み、そして魔化して作る。
しかしながらこの衣服にはマリアティアスやアリセスのように防御力は皆無で、防御力としては普通の衣服と何も変わらないのが欠点だ。
『なるほどなるほど・・・貴女の魔導六刀としての能力がわかりましたよ』
そう言ってディライは自らを手元に忍刀を戻し、解答がわかった子供のように楽しそうに笑う。
魔導六刀・・・名もなき偽刀。
その固有能力は身体の至るところから偽刀を出すことが可能な能力だ。
鎌のように内側に刃が付いた刀で、長さはナイフサイズから太刀まで調節が可能。
そして一度に一瞬にして複数の箇所から出すことが出来るという事が最大の強さだ。
身体の何処からでも出すことが出来るという事は、死角からの攻撃にも対応できる。
更に言うなればただの拳や蹴りから一瞬にして偽刀が出てくるという事は、間合いを取ることも詰めることも可能だ。
最初に偽刀を出現させ、攻撃が当たる直前になかった事にすることによって空振りにさせる事も、ただの蹴りから偽刀を出すことによって相手のガードをすり抜けて攻撃することも出来る。
つまりガルは全身凶器と言っても過言ではない。
ただし出せない箇所も存在するのも事実だが・・・
その事に気がついたディライに対して正解と言うようにガルは右手を突き出し・・・多数の偽刀を出現させる。
その箇所は二の腕から指先、掌までを一瞬にして展開し、元にもどす。
『貴女の刀はその手裏剣のような物なのですか?』
『えぇ、そうですよ。貴女とは違い遠距離から攻撃が可能ですよ』
そう言うとディライは手に持っている忍刀を回転させる。
やはりその回転は風の属性魔法で加速しているような高速回転だ。
(自由自在に動かせる回転する刀・・・それに動かせる範囲はクチルギよりも広範囲)
ガルはディライの持っている忍刀の攻撃範囲が、今まで戦闘でこちら側の魔導六刀の誰よりも広範囲に攻撃出来ると判断する。
しかしながら比較対象はクチルギしかいないが・・・
(間合いに入れば勝機はあるけど・・・そう簡単に距離は縮ませてくれないよね)
ガルが一歩前に出る。
すると直ぐ様にディライの忍刀が飛んで来る。
その忍刀を的確に攻撃して弾くガル。
(さっきとは攻撃方法が違う・・・私の魔導六刀としての能力がバレた途端にあっちからは攻め込まなくなるなんてね)
ガルも同様にディライの魔導六刀としての能力を探るが・・・ディライの攻撃は最初っからあまり変わってはいない。
『考えても答えは出ないか・・・』
そう呟くとガルは獣が獲物を狙うように体制を低くする・・・
その眼光は鋭く一点・・・ディライを見つめている。
『何か仕掛けてくる・・・』
ディライもまたガルが構えた事によって警戒心を露にし、忍刀を自身の手元に戻す。
達人と達人との戦闘は一瞬で終わる事がある。
その一瞬の隙を伺っていた両者だが・・・最初に動いたのはガルであった。
『斬速!』
ガルの両手両足に偽刀を出現させ・・・地面を蹴る。
引き伸ばされた矢のように一直線に飛んで行くガルなのだが、これはガルにしか出来ない移動方法だ。
両手両足に硬い偽刀を出現させることによって、地面を蹴るのに必要な力を最大限に発揮出来るようにする寸法だ。
これは陸上のスパイスピンと同じ要領であり・・・この世界では誰も知らない技術だ。
そう、マリアティアス以外は・・・
無論この技術、技法はマリアティアスから伝授されたものだ。
『速い!?だけど・・・』
ディライとガルとの距離がガルの偽刀の攻撃範囲に入ろうとした瞬間・・・ディライは不敵に微笑む。
その理由は・・・
『がぁ・・・何が・・・起きて・・・』
ガルの偽刀の攻撃範囲に入る直前に地面が爆発したのだ。
全く考えていない角度、死角からの攻撃を喰らってしまったガルだが、ディライは更に追撃をしてくる。
その追撃に紙一重で回避することに成功したガルであったが、更なる追撃を恐れてディライから遠退く。
『逃がしませんよ!』
ディライは忍刀を後方へと逃げたガルに対して思いっきり投げつける。
『ぎぃぐっ・・・ちくしょうがぁぁぁぁ!』
ガルは痛みに耐えながら起き上がり、両手に偽刀を展開して防ぐ。
しかしながら勢いを殺す事が出来なかったようで後方へと飛ばされ、後ろの壁へと激突してしまった。
(あの程度の攻撃で倒されるとは思えませんね・・・)
まだ死んではいないと判断したディライは次の策を巡らせる為に懐からある物を取り出す。
それはビー玉程の大きさの真っ赤な宝石のような物であり、これはディライの作り上げた火の属性魔法の魔導石だ。
だがこれは普通の火の属性魔法を使えるようになるのではなく、ディライの魔法によってその中に込められた魔力が一気に膨れ上がり爆発する仕掛けになっている。
爆発の威力としては大したことは無いが、牽制や脅かすのには十分な威力をもっている。
ディライは元々この国魔法国の貧民街というところの出身だ。
いわゆる落ちこぼれの家系であり、ディライもまた自身が使用出来る魔法は弱い火の属性魔法しか使えていなかった。
実力主義の魔法国において魔力の低い者は最初っから・・・生まれた時から不利なのだ。
無論貧民街から上まで上り詰めたという者も少なからずいるが・・・彼女はそうではなかった。
生まれ持った才能も、類い稀な頭脳も持ち合わせていなかったのだ。
本来であれば彼女は上に立てる者ではなかった・・・女神の神眼と出会うまでは。
そして彼女は女神の神眼と出会って変わってしまった・・・自らの望みを叶える為に。
自由に、そして身勝手に行動して今この場にいる。
『さて・・・動きませんね。ならば打って出ましょうか!』
壁に叩き込まれ、その壁が崩れてしまった事によって瓦礫に埋もれてしまったガル。
そんなガルに対してディライは手元の魔導石を投げつけ・・・そして爆発する。
だが爆発した場所にガルはいなかった・・・
『なっ!?いない!?』
本来いるべき場所に場所にいなかったガルの事を不審に思っていると・・・瓦礫が崩れ、そして地面の下に落ちてゆく。
『地面に穴・・・まさか地面を掘って逃げた?』
地面に穴が空いていた事に気がつくディライ。
そしてその穴に向かって魔導石を投げ入れるが・・・反応はない。
『土竜ですかあの人は・・・』
地面に潜ってしまったガルが、何処に行ってしまったのかわからないディライは周囲を警戒する。
周囲の音を警戒しているディライだが、考えるよりも先に地面が動く。
『せっかく地面に潜ったのに不意打ちをしないのですね!』
そう言うとディライは動いた地面に向かって忍刀を投げつける。
丸ノコのように高速回転する偽刀は地面を砕きながら蠢く地面にぶつかる・・・よりも速く地面からガルが飛び出しその攻撃をかわす。
『縦横無尽に動かせるとしても、攻撃する方向を限定出来ればかわせる!』
攻撃をかわされたことに気がついたディライは直ぐ様に、忍刀を動かしガルに再び攻撃しようとするが・・・間に合うかどうかは微妙だ。
(仕方ない・・・)
このままでは斬られると判断したディライは懐から魔導石を取りだし・・・そしてガルの攻撃が直撃する直前に爆発させる。
『ぐはっ・・・これであちらも少しはダメージを負ってはず』
『また・・・ばく・・・はつ・・・いったい何個持ってるんだよ!』
爆発したことによって双方共に後ろに後退してしまう。
ディライは比較的に軽症なのだが、爆発が直撃してしまったガルは咄嗟に偽刀でガードしたが火傷を負ってしまっている。
衣服の焼け焦げた臭いがしてくるが、ガルの聖職者の衣服は先ほどと同じように元に戻る。
それに対してディライは爆発した箇所が悪かったようで、上着が焼け焦げてボロボロになってしまった。
『・・・そんな大きな物ぶらせげているからダメージ喰らったんじゃないの?』
少し羨ましそうに、そして妬ましそうにボロボロになってしまっている衣服・・・特に胸の部分を指摘するガル。
確かにガルの言っている通りディライの上着は爆発の影響でボロボロになってしまっていて・・・特に胸の部分がボロボロだ。
しかしながらディライは気にしている様子はなく・・・おもむろにボロボロとなった上着を脱ぎ捨てる。
脱ぎ捨てた上着の下から出てきたのは鎖帷子であり、爆発の影響なのか少し焦げた色をしている。
『残念ながらこの鎖帷子のおかげでダメージは少しですみましたよ。それにこれは別に邪魔にはなっていません』
そう言いながらディライは胸を強調するようなポーズをとる。
『そうですか・・・まぁ別に私には不要な物なのですけどね』
そう言いながらガルは殺意と共に偽刀を両腕に出現させる。
それに対してディライもまた忍刀を手元に戻し・・・ガルに狙いを定める。
『今度こそ倒してあげるよ』
『それはこっちのセリフだよ!』
ガルが駆け出し、ディライが忍刀を投げようとしたその時・・・突如としてガルに火の属性魔法が襲いかかる。
その攻撃の正体はディライの魔法ではなく・・・別の角度からの攻撃だ。
『伏兵!?』
不意討ちを喰らってしまったガルは、傷つきながらも後方へと後退して魔法から逃れようとする。
この攻撃がしてきた方向は、ガルがこの地下の実験施設に入る為に開けた天井の穴からであり、ディライが振り向いた先には今まさに降下してくる魔導兵がいた。
数にして総勢十二名の魔導兵はそれぞれに魔導銃を持っている。
しかしながらその中でも一番最初に降下してきた者と、二番目に降下してきた者は他の者とは違う・・・全くもって別の装備をしている。
最初に降下してきた者はその両腕に光輝く赤色の魔導石をガントレットに嵌め込んでいて、二番目に降下してきた者は茶色の魔導石を嵌め込んでいる。
そして中央に嵌め込まれている真っ赤な宝石もまた通常装備の者達と比べると大きくなっている。
『・・・お前達何故此処にいる?』
降りてきた魔導兵に不機嫌そうに質問するディライだが・・・その問いに答える事はなくディライを無視してガルへと攻撃を仕掛ける。
魔導銃の集中砲火によって逃げ場を失ってしまったガルは、そのまま直撃してしまった。
『おい止めろ貴様ら!』
ガルとの一騎討ちを邪魔されたディライは魔導兵に怒鳴るが・・・その言葉が通じることはなく無情にでも火と土の属性魔法や、 魔導小銃が襲いかかり、そして 炸裂型魔導銃が狙いを定めるている。
いくら魔導六刀の一振りだとしても 炸裂型魔導銃の爆撃を喰らってしまえば無事にはいかない。
そんな 炸裂型魔導銃を持っている魔導兵がガルへと攻撃をしようとしたその時・・・その魔導兵は一刀両断されてしまった。
何事かと思って振り向いた魔導兵達が目にしたのは迫り来る忍刀であり、ものの数秒で後方にいた四名が死亡する。
突如として魔導兵達を襲ったのはディライの裏切りであり、いくら女神の神眼の共有能力があるからと言っても誰も見ていない方向からの攻撃を防ぐ事は出来なかったようだ。
『止めろと私は言ったはずだが?』
殺意に満ちた表情と共にディライはもう一度魔導兵に攻撃を仕掛ける。
すると茶色の魔導石を嵌め込んでいる魔導師が、土の属性魔法を使用してディライの身動きを封じようと魔法を発動する。
まるで土で作り上げた蛇のように変化した魔法はディライに巻き付こうとするが・・・ディライが忍刀を戻したことによって数歩手前で止まってしまった。
『何故邪魔をする廻る忍刀。』
『こいつはお前の敵だろ?』
『私が与えてやった恩を忘れたのか?』
『理解不可能な行動だ・・・』
『まとめて話せよ・・・女神の神眼。』
次々と質問してくる女神の神眼に対して、憂鬱そうに答えるディライ。
直ぐ様にでもディライが動けば身動きを封じる為に動くように展開し始めた魔導兵。
ガルを倒そうと魔導銃を構える魔導兵と、ディライの身動きを封じる為に動く魔導兵。
ディライによって三分の一の魔導兵を失った女神の神眼だが、それはほんの一部であり、女神の神眼にとっては雑兵の一部でしかない。
その事を表すように、既に女神の神眼はガルを倒す為に魔機国内にいる魔導兵を動かしている最中だ。
『女神の神眼・・・こいつは私の獲物だ。手を引け・・・さもなくば』
そう言い終えるとディライは手に持っている忍刀を高速で回転させる。
これは邪魔立てするのであれば攻撃するということの表れで、手を引かなければ殺すという事を表している。
『すみませんでした。なら貴女にお任せします。よろしいですね?』
『問題ない。もとより私がこいつを倒す』
その言葉に納得した女神の神眼は魔導兵を下げらせる。
『さぁ、戦いの続きを・・・』
ディライがガルとの戦闘を開始しようとしたその時・・・ディライに凶弾が襲いかかる。
しかしそれはこの地下の戦闘施設に降り立った魔導兵の攻撃ではなく、更に別の・・・天井の上から長距離狙撃用魔導銃での狙撃。
当たる直前に回避した事によってなんとか死なずに済んだが・・・ディライはその場に倒れ込んでしまった。
『ぐがっ・・・あぁぁ・・・』
地面に倒れた込んでしまったディライに対して茶色の魔導石を嵌め込んでいる魔導師が近づき・・・ディライを踏みつける。
殺さないように、ゆっくりとじっくりと徐々に力を加えてい行く。
『いっ・・・ぎぃゅ・・・』
思わず悲鳴を上げそうになるディライであったが必死に痛みに耐える。
血も徐々に流れ出て来てしまっていてこのままでは気絶しかねない状況なのだが・・・女神の神眼はそれすら許さなかった。
『きゃぁぁぁぁあぁぁぁぁ・・・あっ・・・あぁぁ・・・』
踏みつける事に飽きたのかおもむろにディライを無理矢理立たせ・・・そしてディライの傷口に火の属性魔法が襲いかかる。
しかしながらこの魔法は攻撃ではなく、治療・・・荒治療である焼灼止血法だ。
だがしかし、麻酔無しであるがゆえに、苦痛を伴うのは必然。
魔導六刀といえどもその痛みは想像以上であったようで、治療が終わったディライはぐったりとしてしまっている。
土の属性魔法で身体を固定されていなければ地面に倒れているような状況だ。
そんな俯いている状態のディライを、魔導兵の一人が無理矢理顔を上げらせる。
『私の力が通用しないからと言って調子に乗るなよ廻る忍刀・・・私にかかれば何時でもお前程度容易に殺す事ができる。それに変わりはいくらでもいるんだからな』
言い返す気力もないディライは虚ろな瞳で魔導兵を見つめていると・・・魔導兵が拳を降り下ろそうとしているのが視界に入る。
『殴られてしまう・・・』そう思ったディライだが、その身体は動く事が出来ず拳が直撃する・・・はずであった。
ディライを殴ろうとした魔導兵の拳はなくなってしまっており、変わりに拳があったところからは鮮やかな鮮血が溢れ出していた。
何があったのか確認しようとする魔導兵だが・・・時既に遅く、その魂は既にいなくなってしまっていた。
『お、お前は!?』
『この人は私の獲物ですよ!』
魔導兵の腕を斬り落としたのは、先ほど魔導兵の攻撃を喰らったはずのガルであった。
ガルは自身が魔導銃によって倒された事を偽装したのだ・・・自らの左腕を犠牲にする事によって。
地面を掘ることによってその姿を消して、崩れた瓦礫の隙間からわざと自らの左腕を出すことによって女神の神眼に気がつかれないようにディライの元までたどり着いた。
戦場において倒した・・・つまり殺したと思った者の事を気にする者はまれであり、そしてそれは女神の神眼も例外ではなかった。
しかもその持っている力が強大であるのならば尚更だ。
『ですがこの状況から逆転出来るとでも?』
女神の神眼が問いかけるが・・・それよりも早くガルは動く。
ガルは密かにその手に持っていた魔導石を地面に叩きつけ発動させる。
するとその場に煙が出現し、そして瞬く間に広がってゆく。
『煙!?しかもこれはただの煙ではないな!?』
女神の神眼が指摘した通りに最初に使用した魔導石の他にもう一つ、ガルは煙に対して風の魔導石も使用していたのだ。
これによって煙はガルを中心に渦を巻くようして漂っている。
(・・・仕方ないか)
巨大な水晶を背に玉座のように変形した椅子に座っている女神の神眼はため息を溢し、そして残念そうに決定を下す。
ガルとディライを今この場で倒すことを・・・
女神の神眼の指示の元に操られている魔導師、魔導兵は煙の中でから脱出すると、未だに残っているガルとディライに向かって魔法、魔導弾を叩き込む・・・よりも早く行動する者達がいた。
それは魔導六刀が一振り・・・名もなき偽刀と廻る忍刀だ。
ディライは忍刀を使用して魔導師、魔導兵の死角になるように攻撃を繰り出し、ガルは彼らの注意を引くために真っ正面からの突撃攻撃。
『厄介な上から倒します!』
『了解!』
ディライに対して楽しそうに答えるガル。
迫り来る魔導弾を偽刀によって防ぎ、ディライは天井の上から狙っている長距離狙撃用魔導銃を倒す。
続けてそのまま魔導師と魔導兵に向かって迫り来る忍刀。
しかしながら女神の神眼も甘くはない。
迫り来る忍刀に対して土の属性魔法を発動させ壁を展開する。
突撃攻撃をしてきたガルに対しては火の属性魔法を発動させ返り討ちにする・・・はずであった。
左腕を失ってしまったのにも関わらずに、ガルの突撃スピードはディライと戦っていた時と同等・・・いやそれ以上のスピード。
更に火の属性魔法が直撃したのにも関わらずにガルの進撃は止まる事はなく、前衛の魔導兵を斬り伏せ、そして火の属性魔導師に迫り・・・斬り伏せる。
『化け物が・・・』
『あら?貴女が言うのですか?』
火の属性魔導師を斬り伏せたガルは、張り詰めた糸が切れたように急に地面に倒れ込み・・・動かなくなってしまった。
気力だけで動いていたのか?
確かめるよりも先に魔導銃を撃とうとした魔導兵だが、ガルとディライの放った忍刀に注意がいってしまい気がつくのが遅れてしまう。
既に自分達はディライの罠に嵌まっていたことに。
『魔導石!?いつの間に?』
『共有する能力を持っていても不意討ちには弱いようですね!』
ディライは魔導石に魔力を送り爆発させる。
女神の神眼は咄嗟に土の属性魔導師だけは逃がすことに成功したが・・・逃げた先に待っていたのはディライ本人であった。
手に持っている短刀で一突き。
それによって土の属性魔導師は呆気なく絶命してしまった。
(全滅・・・さすがに魔導六刀、女神を討ち滅ぼす為に産み出されたことはありますね)
女神の神眼が考えているが・・・今は戦闘中。
とりあえずガルとディライのことは後回しにして、今目の前にいる最大にして最強の敵であるマリアティアスに集中する事にする。
『・・・生きているか?』
『生きてるよ。私はまだやりたい事がいっぱいありますからね』
『何故あの時私に治療液を渡した?』
身体は動かすことは出来ないが、ディライの問いかけに答えるガル。
そんなガルに対して攻撃することもなく、ディライは見下ろすようにして近くに立つ。
『別に貴女と同じだよ。私も全力で戦いたかった。ただそれだけ・・・』
『なるほどね・・・だったら戦うかい?』
『い、今は止めてほしいな・・・もうマリアティアス様から貰った治療液が一つしかないし』
『使えば?』
『さすがにそれは死にそうな時に使うよ・・・』
『今は?』
『いや・・・死にそうじゃないよ。かなり苦しいけどね』
『ハハッ』っと枯れたように、疲れたように笑うガル。
そんなガルに対してディライもまた疲れたのか、ため息を溢すのであった。




