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朽ちゆく奪刀VS沈みゆく鎖刀

 地下の戦闘施設から別れたクチルギとライフルは先ほどとは違う階層に来ていた。

 しかしながらまだこの階層も地下なのであろう。

 廊下には一つも窓という物が無く、魔法によって作られた光が廊下を照らしている。


『クチルギの事を怨んでいるわりには不意打ちとかしないんだね?』


 今まで黙っていたクチルギだが、沈黙に耐えられなくなったようで不意にライフルに問いかける。

 確かにライフルはクチルギのことを怨んでいる。

 ・・・それも親の仇のように。

 クチルギによってエルピーラ王国の国王、そしてその家族や名のある貴族は軒並み殺されてしまった。

 自らが仕える主を失ったライフルだが、だった一人・・・ クチルギの魔の手を逃れた少女、ダイヤ・ゴルディエムス・ニガラスを守る為に戦っている。

 たった一人取り残されたあの子を守るために、ダイヤがもう一度笑って笑顔で暮らしていける世界を作るために。

 だが、ライフルはクチルギのことを不意打ちで殺そうとは思わなかった。

 いや・・・不意打ちで殺しては意味が無いのだ。

 何故なら・・・


『あなたには心の底からダイヤ様に謝罪させてあげますよ。その為に不意打ちなどは使いません』

『へぇ・・・それはクチルギよりも強い自身があるから?』

『当然ですね』

『自身たっぷり・・・貴女はクチルギの大っ嫌いな王国や貴族じゃないけどムカついてきたよ』


 そんなことを話しながらクチルギとライフルはとある場所に到着する。

 その場所は戦闘施設だった場所よりは狭く、物置のような場所だ。

 クチルギにはよくわからない物が複数存在しているが、どれも乱雑に置かれている。

 中には生物の死骸・・・骨のような物まである。

 そんな場所でクチルギとライフルは今まさに戦おうとしていた。

 クチルギは自らの左腕を細長い槍へと変化させ、ライフルもまた自らの右腕を五本の鎖に変化させる。


『さぁ・・・はじめようか』


 最初に攻撃を仕掛けよう走り出したのはクチルギだ。

 それは当然の判断だ。

 クチルギの槍の間合いとしては、おおよ3メートルであり近づかなければ攻撃出来ないからだ。

 そんなクチルギに対してライフルは五本の鎖を自在に操り薙ぎ払う。

 鎖の先にはクナイのように鋭くなっていて、当たれば致命傷である事は確実なのだが・・・それ以上に気をつける事がある。

 それは魔導六刀である沈みゆく鎖刀(ライフル・ザ・ロック)の能力だ。

 魔導六刀・沈みゆく鎖刀(ライフル・ザ・ロック)の能力とはこの刀で切った対象・・・生物の動きを鈍くするという能力を持っている。

 その能力は対象を傷つけなければ発動しない能力なのだが・・・それともう一つその能力を強化、補うようようになっている。

 刀は五本、全部の先端にクナイのような形が付いており、それに繋がれている鎖は10メートルまで伸ばす事が出来る。

 無論縮ませる事もな可能だ。


『おっと危ない!?』


 薙ぎ払い攻撃を自らの槍を地面に突き刺し、攻撃の届かない上空へとジャンプして回避する。


『なかなかの身体能力ですね・・・』


 人間では到底出来そうにない動きをして回避したクチルギに称賛の声をかけるライフルだが、攻撃の手を緩めることなく攻撃を仕掛ける。


『空中なら逃げられない!』


 空中という身動きのとれない状況になってしまったクチルギに対してライフルは五つの鎖を一つにまとめ・・・大きな槍を作り上げる。

 まるでライフルの殺意を具現化したような槍だ。

 本来であれば一発でも刺さってくれればそれで勝てる能力なのだが・・・

 ライフルは殺意を抑える事が出来なかったようだ。


『まとめて・・・』

『喰らえ!そして沈め!』


 迫り来るライフルの攻撃を真正面から細長い槍・・・奪刀で迎え撃つクチルギ。

 五本の鎖を一つに束ねたライフルの鎖・・・鎖刀は奪刀よりも大きく、到底クチルギの奪槍では受け止める事が出来なさそうなのだがクチルギとライフルの刀がぶつかり合い金属音がこの部屋に響き渡る。


『こちらと互角!?』

『見た目に騙されちゃったのかな?』


 ライフルの攻撃を見事に防ぎ、地面へと着値するクチルギ。

 思わず攻撃するのも忘れて油断してしまっていたライフルに対して、クチルギは地面に着地すると同時に狙いを定め・・・引き縛られた矢のようにしてライフルに放つ。


『速い・・・だけど!』


 クチルギの攻撃を受け流し、そして一旦距離をとるように鎖刀で薙ぎ払う。


『うぐっ・・・』


 鎖刀での攻撃が直撃してしまったクチルギ。

 咄嗟の判断で鎖刀のクナイ部分に触れる事はなかったが、思わず握っていた奪刀を手放してしまい後方へと吹き飛んでしまった。


『攻撃が単純なんですよ』


 ライフルは近くに落ちている奪刀を拾い、クチルギとは全く違う方向に飛ばす。

 これは攻撃手段を奪うためだ。

 本当ならへし折ってしまいたいところだが・・・あの刀をへし折るのにどれ程の力が必要なのかわからないので、このように遠くへと飛ばしてしまうのが最適なのだ。


『クチルギの奪刀が・・・』

『これで貴女の脅威は無くなった・・・さぁ!思う存分痛め付けてあげます』


 そう言いながら殺意を露にするライフル。

 それは先ほどのとは比較にならないほどの殺意であり・・・その殺意にクチルギは当てられてしまった。


『ひ、ひぃぃぃぃ!?ご、ごめんなさい!』

『・・・謝って済むとでも?』


 一歩踏み込むライフル。

 そんなライフルに対して殺意を当てられて、そして攻撃手段を失ってしまったクチルギは逃げるようにして後退りする。

 怯えるようにして逃げるクチルギだが、思うように身体が動かず・・・腰が抜けてしまっているような状況になってしまう。


『い、いやぁぁぁぁ・・・こ、来ないで、来ないでください!』

『・・・そうやってお前も脅えていた者達を手にかけたんだな』

『や、やめてください・・・お願いします』

『心の底から懺悔しろ!』


 ライフルが鎖刀で攻撃しようとした時・・・何かが近づいてくる音が聞こえてくる。


(この音は!?)


 咄嗟に音のした方を振り向き・・・ライフルは鎖刀で迎え撃つ。

 飛んで来たのは先ほど弾いたクチルギの奪刀であり、どういう仕掛けなのかは不明だがライフルに向かって来たのだ。

 しかも奪槍の矛先はライフルへと向けられている。


『危ない!』


 奪刀での攻撃を鎖刀を使って回避することに成功したライフル。

 しかしながら全く警戒していない方向からの攻撃を完璧には回避することが出来なかったようで、脇腹をかすめてしまった。

 そしてその隙を突かれてしまう。

 ライフルがクチルギから目を離した瞬間・・・クチルギの蹴りがライフルの頭部へと直撃してしまった。


『隙だらけだよ!』


 頭部を蹴られてしまったライフル。

 気が遠くなる感じが襲いかかるが・・・ライフルは意外な方法で打破する。


『ぐがっ・・・』

『な、なにぃ!?』


 思わず叫び声をあげてしまったクチルギ。

 その理由はライフルが自らをの太ももを持っていたナイフで突き刺し、薄れる感覚を痛みによって持ちこたえたのだ。

 しかしこれは最悪の事態を回避する為の行動であり、現にライフルは気絶する事はなかった。

 気絶してしまうという事は無防備になるということに他ならず・・・考える事も、身体を動かす事も出来なくなかってしまうということだ。

 それはつまり容易にライフルを捕らえる事ができ、そして容易に殺す事も出来る。

 痛みに耐えながらもその目は見開かれ、しっかりとクチルギに狙いを定め・・・攻撃を放つ。


『あ、危なぁ・・・まさか自分でナイフを刺すなんて』


 ライフルの五本の鎖刀を回避し、距離をとるクチルギ。

 その手にはしっかりと先ほど手放した奪刀が握られており、ライフルの間合いに入らないようにしている。


『な、何なんだ・・・その槍は!?』


 苦痛に耐えながらライフルは傷を癒すための治療液(ポーション)を飲む。

 回復しているのに攻撃を仕掛けないのは鎖刀が邪魔しているからで、鎖刀は防御に専念しているからなのか攻撃しようとはしていない。


 朽ちゆく(クチルギ・)奪刀(アークエイク)・・・魔導六刀の一振りで、左肩から細長い槍へと変化する刀だ。

 まぁ・・・見た目が槍であるのにも関わらずに刀というのはなんとも不思議な感じなのだが、刀なのだ。

 そして魔導六刀である以上並大抵の攻撃で傷つくことはありえない。

 先ほどライフルの集結させた鎖刀と対抗できたのが、何よりの証明となっている。

 硬度、耐久度、そして切れ味共に最高の一振りである魔導六刀・・・そのまま扱っても強いことには変わりはないが、それ以上に刀自身が持っている能力も脅威だ。


 魔導六刀にはそれぞれ固有の能力が存在している。

 それが何故あるのかというのは分かってはいない。

 既にその秘密を知る者達はこの世界から数百年前に死んでしまっているのだから・・・

 魔導六刀の最初に生け贄となった者であれば知っているのかも知れないが・・・それも無理な話だ。

 物に記憶が宿り、その記憶を呼び覚ますことが出来たとしても、数百年前の話を全て覚えているという事は無理だからだ。

 人間でさえも今から十年前の事を全て覚えているという無理なのだからだ。

 そして魔導六刀朽ちゆく(クチルギ・)奪刀(アークエイク)の固有能力は傷つけた相手の水分・・・体液を奪い取るという能力を持っている。

 かすり傷程度では意味がないが、深く刺さればその瞬間から奪う事が可能だ。

 人間の身体・・・動物から体液を奪えばどうなるのか?

 それは死と同じだ。

 決して致命傷ではない傷だったとしても、奪刀を通して体液を奪われてしまい死んでしまう。

 人間であれば全体の三分の一の血を失えば生命の危機に陥り、そして二分の一で死んでしまう。

 無論奪刀は血液だけではなく、体液等も共に奪うが。

 そしてもう一つ・・・朽ちゆく(クチルギ・)奪刀(アークエイク)には遠隔操作をすることが可能なのだ。

 何故そのような事が出来るのかというと・・・クチルギにとって奪刀は左腕その物だからだ。

 ライフルが自身の鎖刀を自在に操れるのと同じように、クチルギもまた奪刀を遠隔操作出来る。

 遠隔操作出来る範囲は限定的ではあるが・・・

 そんな槍を持っているクチルギだが・・・その表情はあまりすぐれていない。

 その理由は先ほどの攻撃で殺せなかったからだ。

 不意討ちと一撃必殺・・・必中の攻撃でなければならないからだ。

 不意討ちであれば自らよりも格上の相手でも殺す事が可能であり、そして形勢を一気に逆転させる一手にもなりえる。

 しかし、その不意討ちも外れてしまえば意味がない。

 もう二度と同じ攻撃が通じるとは思えないからだ。


(あの槍の能力か・・・予想以上に血が抜けた感じだ)


 治療液(ポーション)を飲み終えたライフルが攻撃された場所を擦る。

 傷口は完全になくなってしまってはいるが、奪刀の能力によって体液を奪われてしまったライフルは少し倦怠感を覚える。

 治療液(ポーション)で傷を癒す事は出来ても、奪われた体液を回復する手段をライフルは持っていない。


『あのまま気絶していればそれで終わってたのに・・・』

『・・・不意討ちが失敗したのにずいぶんと余裕ですね』

『まぁ、手段の一つが無くなっただけだからね』


 そう言いながらクチルギは懐からビー玉程の赤い魔導石を取りだし・・・奪刀で砕く。

 すると砕かれた瞬間、魔導石に込められていた魔法が炸裂し、ライフルに襲いかかる。

 しかしその魔法はまるで濁流のようであり、明らかに込められた魔法以上の威力の魔法になっている。


『水の属性魔法も使えるのか!?』


 魔法が迫り来る中でライフルは鎖刀を使用して回避する。

 鎖を壁に突き刺し、身体を強制的に動かすこと成功したライフルだが・・・異常な事に気がつく。


『なに・・・溶けたのか?』


 ライフルに向かって放たれた魔法は、火の属性魔法ではなかったのにも関わらずに魔法が直撃した場所は炎が直撃したように溶けてしまっている。


『酸・・・いや・・・なんだこの違和感は?』


 水の属性魔法だと思った攻撃は、火の属性魔法のように直撃した物を融解させた。

 しかし酸性の液体であれば溶け出した箇所から異臭が立ち込める筈なのだがそれが無く、そして液体であれば必ず存在する水滴という物が無いのだ。

 一瞬にして蒸発したのか?

 しかし・・・『そうではない』っとライフルは即座に判断する。


『残念ながらまだ弾はあるよ!マリアティアス様から沢山貰ったからね!』


 そう言いながらクチルギは更に懐から先ほどと同じ大きさの青、茶色、緑色の魔導石を取りだし・・・薙ぎ払うようにして砕く。

 すると再び中に込められていた魔導石が炸裂してライフルに襲いかかる。

 先ほどとは違い薙ぎ払うようにして放たれた魔法をライフルは回避する事が出来なく、直撃してしまった。

 だがライフルもまた無防備に喰らったわけではない。

 避けられないとわかった途端ライフルは鎖刀で防御を固めて耐える事に専念したのだ。


『これは!?』


 あることには気がついたライフルだが、魔法を喰らっている最中にクチルギは移動して・・・背後に周り込んでいた。


『なっ!?何処にいっ・・・』


 後方に周り込んでいることに気がついていなかったライフルは、クチルギの奪刀を喰らってしまった。

 しかし・・・クチルギもまたライフルの攻撃を喰らってしまっていた・・・

 クチルギは油断してしまったのだ。

 完璧に背後からの奇襲であり、ライフルも気づいていない、反応出来ないと思っていたのにも関わらずに反撃してきた。

 それはライフルが今まで王国で敵を殺してきたという経験であり、相手が次にどのような行動をしてくるのかという予想が出来ていたからだ。

 だがライフルと違い、クチルギは帝国ではいざという時にしか戦う事が許されていなかったが為にライフルが反撃してくるとは予想出来なかった。

 経験の差という物は能力でも、アイテムでも埋める事が出来ない物であり、それを知らなかったクチルギは攻撃を喰らってしまった。

 どちら共致命傷ではないが・・・ライフルは奪刀によって体液を奪われ、クチルギは鎖刀によって思うように動く事が出来なくなる。


『くっ・・・そっがぁぁぁ!』


 動きが鈍くなってしまったクチルギは、迫り来る残りの鎖刀を振り払う為に奪刀を引き抜き、奪刀を遠隔操作して後方へと距離をとる。

 あのまま奪刀でライフルの体液を奪いさればよかったのだが・・・クチルギは恐怖してしまったのだ。

 クチルギは今までどんな相手一撃で葬り、自らが傷ついたことは一度もなかった。

 それほどに今までクチルギが相手をしていた者達は取るに足らない存在であり、クチルギの奪刀は強力だったのだ。

 つまり今まで傷つく事も、当然死ぬという恐怖もなかった。

 今はじめて死ぬという恐怖の感情を知ってしまったクチルギは、倒せるはずの戦いで攻撃よりも撤退を優先してしまった。


『はぁ・・・はぁ・・・』


 肩で苦しそうに息をしているライフル。

 だがその目は見開かれ、しっかりとクチルギの挙動を観察している。


(まさかあの刀・・・奪う・・・くそ!確かに奪ったのならそれを出すことも可能なのか)


 刺した者の体液を奪い取る刀・・・それが朽ちゆく(クチルギ・)奪刀(アークエイク)であり、奪うという事はその奪った体液を放出することが出来る。

 その放出量は選べる事ができ、水滴のように滴らせることも、濁流のように一気に放つ事も可能だ。

 無論前者のように使うのであれば、奪い去った体液の少量で済むが、後者であれば大量の体液を一気に使うので貯めるのに時間が必要になってしまう。

 今回クチルギが使ったのは後者の方であり、放出する体液に対して各種の属性魔導石を砕く事によってそれに対応した魔法を放つ事が出来るのだ。

 それは放出した体液に各種の属性魔法を上乗せして放つという技法で、根本的には体液・・・つまり水分を含んでいるが、水だと思って防御を怠ると思わぬ大ダメージを負ってしまう。

 なので水のように思えるが触れれば大火傷を負うような事も、岩ように硬質な事も、風の属性魔法のように触れた瞬間に吹き飛ばされてしまう事もある。

 もちろん濁流のような威力を放つ事が可能だ。

 しかしながらこれは本来であればあまり・・・というよりも今のクチルギが初めて使用した能力であり、今までは奪うだけであった。

 刺した者の体液を奪い取るという事でも相当強力なので、そればかりかが目立ってしまった結果だ。

 まぁ、通常の魔導石を砕いたとしてもあれほどの威力を放つ事は不可能なのだが・・・それはマリアティアスが用意した濃縮された各種属性魔法の魔導石だから可能なのだ。

 そして貴重な魔導石を使っての魔法も可能だ。


『・・・よくもクチルギを傷つけてくれたね』


 距離を取ったクチルギが、懐から治療液(ポーション)を飲む・・・はずであった。

 クチルギが飲むはずであった治療液(ポーション)は、ライフルの投擲したガラクタによって容器が破壊されてしまった。

 肩で息していて、最早後一、二回同じように刺されば動けなくようなライフルなのだが、気力か?それとも意地なのかは不明ではあるがその瞳には未だに衰えず覇気を放っている。


『・・・それほど相手にして欲しいのなら相手になってやるよ!』


 自身の持っていたも治療液(ポーション)を破壊されてしまったことによって、口調が変わるほどに激昂したクチルギ。

 溢れでる殺意と共にクチルギは懐から先ほどの四種類の魔導石とは違う色の魔導石を取り出す。

 それは黄色の魔導石と、先ほどよりも更に濃い緑色の魔導石、酷く濁った赤色の魔導石だ。


『心臓さえ動いていればマリアティアス様がなんとかしてくれるから大丈夫だよね』


 そう呟くとクチルギは魔導石を砕き、中に込められていた魔法が炸裂する。

 黄色の魔導石は光輝く雷に変わり、濃い緑色の魔導石は暴風へ、そして濁った赤色の魔導石は流れ出る炎の液体になりライフルに襲いかかる。

 三つの魔法によって壁や床は溶け初め、暴風によって逃場がなくなり、雷によって灰塵となってしまう。


(化け物が・・・申し訳ございませんダイヤさま)


 薄れゆく意識の中でもライフルが思うのは自らの主であるダイヤであった。


『・・・生きてる?』


 衣服は既にぼろぼろで、はっきり言って着ていても意味のないほどに朽ちてしてっていて、地肌が見えてしまっている。

 そしてその地肌にはところどころに火傷のような後や、斬られた後・・・打撲しているような後が出来てしまっている。

 最早動く事は出来ないであろう程にぼろぼろになってしまったライフル。

 そもそも生きているのかすら微妙な感じだ。

 そんなライフルだが、辛うじて生きている。

 しかしながらこのまま放置すれば確実に死んでしまうのは目に見えてしまっている。

 魔導六刀の一振りである沈みゆく鎖刀(ライフル・ザ・ロック)だとしても、死ぬという事はある。

 ただ普通の人間に比べて身体の作りが特殊なだけなのだ。

 傷つきもすれば、病気にもなる、ただ普通よりも頑丈になってしまうのだ。

 それは魔導六刀になってしまった者の宿命であり、避けることは出来ない。


『・・・マリアティアス様に見せる前に死なせないようにしないと』


 クチルギは懐から治療液(ポーション)を取りだしてライフルに飲ませる。

 敵であるクチルギに治療液(ポーション)を飲ませられているのにも関わらずにライフルは反撃してくる様子はない。

 今のライフルは手足を動かすのも出来ない程にぼろぼろにされてしまっているからだ。


『うっ・・・ぐがぁ・・・』


 クチルギの治療液(ポーション)によって意識を取り戻したライフル。

 その見開かれた瞳には憎悪の炎が燃えていて、鬼の形相でクチルギを睨み付けている。


『はぁ・・・はぁ・・・お、お前・・・何故・・・助けた!?』

『おぉ!?喋れるほど回復したんだ・・・まぁ、でも動けないよね?』


 意識を取り戻したライフルは即座に鎖刀でクチルギを攻撃しようとするが・・・身体が動かないことに気がつく。

 痛みは無いが、動く事が出来ないライフル。

 クチルギの飲ませた治療液(ポーション)の効果で多少傷は治り、そして痛みに関しては完全になくなってしまっている事に驚くが、それ以上にライフルの心は憎悪によって支配されてしまっていた。

 確実に倒されたと思っていた。

 殺されたと思っていた。

 しかし・・・現実は違い、ライフルはクチルギによって生かされ、そして今は言葉を発する事が出来るほどに回復している。


『こ、殺して・・・やる。殺し・・・て・・・やる!』


 言葉を発する事が出来ても身動きする事が出来ない身体を怨み、そしてそれ以上にクチルギを怨むライフル。

 倒せなかったという事実も、そして敵であるクチルギによって生かされたという事実も、今のライフルには関係ない。

 ただ倒すべき相手が目の前にいる。

 それだけが動けないはずのライフルの身体を動かし・・・そして絶望する。

 動けない身体を必死に動かし、倒すべき相手であるクチルギに攻撃しようとするが、その攻撃はあまりにも遅く、あまりにも力のない一撃。

 そんな一撃を赤子の手を捻るように容易にあしらうクチルギ。


『動けない筈なのにすごいね。でも・・・もうお仕舞い』


 そう言ってクチルギはライフルに奪刀を突き刺すのであった。


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