風が嵐に変わる時・・・
スヴァ都市国・・・北区
北区に出現した疫病の狂天使に影響なのか北区の住居では火災が多数出現し、炎をもろともしない疫病の狂天使によって対峙している人間達も苦戦を強いられていた。
まず北区出現した疫病の狂天使は中央区、西区とは異なり比較的に小柄だ。
しかし問題はこの疫病の狂天使の状態・・・そして使える魔法が問題なのだ。
『ぐあぁぁぁ・・・熱い!助けてくれー』
『くそっ!?誰か水の魔法を使える者はいないのか?』
『こいつに接近戦は無理だぞ』
『だがこいつを止めなきゃ被害は広がる一方だぞ』
疫病の狂天使からの攻撃を必死に耐えている者もいれば、弓矢で攻撃している者もいるが、残念ながらこの場には水の魔法を使う事が出来る者がいないので被害が広がる一方なのだ。
何故この疫病の狂天使に対して水の魔導師が必要かと言うと・・・この疫病の狂天使は燃えているのだ。
中央区に出現した疫病の狂天使は上半身が異常に発達し、西区に出現した疫病の狂天使は下半身がタコを思わせるような十本の不気味な触手が蠢いていたが、この疫病の狂天使は全身が燃えていて炎の魔法を使える事が出来るのだ。
全身が燃えているのでその顔色や表情を伺う事は出来ない。
体型的には子供のように思えるが、それ以前にこの疫病の狂天使は周りに対して無差別に攻撃するだけではなく、明確に狙っているとしか思えないように攻撃してくるのだ。
弓矢を使って攻撃してくる相手対しては狙ったように炎の攻撃魔法、火弾を放ち、攻撃を防いだりしているのだ。
『きぃぃぃぃやぁあぁぁぁ』
全身が燃えている疫病の狂天使が燃えているのにも関わらずに、その悲痛な叫び声を上げて周りを取り囲む人々に対して炎を鞭のように扱い薙ぎ払う。
炎に対して何も防御する方法が無い人々はその炎によって焼かれ、悲痛な叫び声がこの場に木霊する。
ソレを見ていた人々、その叫び声を聞いていた人々の心を蝕み、攻撃しようと周りを囲んでいた人々の戦意が目に見えて薄れてゆくのが感じられる。
当然である。目の前で今まで一緒に生活していた者、一緒に仕事をしていた者がものの数秒で命の灯火が消え去ってしまったのだ。
別れの挨拶もする事が出来ずにこの世を旅立ってしまった者達を見て、一人の男性が悲鳴を上げながらこの場を去ろうと逃げそうとするが・・・この疫病の狂天使はソレを許す事はなく、火弾を放つ。
必死に逃げようと手足を動かすが、放たれた火弾が無慈悲にも男性に直撃する。
燃え盛る炎に呑まれた男性もまた悲痛な叫び声を上げてこの世を去る。
『逃げようとしたニゲルから先に殺した・・・やはりこの疫病の狂天使には意志があるぞ!?』
『だから何だって言うんだよ!こいつに命乞いをしたら許してもらえるのかよ』
『怒鳴らないでくださいよ』
『この疫病の狂天使には意志がある』と確認したは良いがそれ事態がこの場の、絶望的な状況を打開する手立てになるわけでないと分かっている男性が怒りの矛先を指摘した青年に向ける。
醜い内輪揉めをしているのにも関わらずにやはりこの疫病の狂天使は様子でも見ているのか、疫病の狂天使を囲んでいる者達を攻撃しようとはしていない。
何時でも殺せるという余裕からなのか?それとも何か別の理由があるのかは不明だが・・・観察していた疫病の狂天使が突如空に向かって火弾を放つ。
突然の奇行に呆気にとられた人々であったが、疫病の狂天使が火弾を放った先に空中で爆発したのを目撃し一斉に視線を向ける。
空に向かって火弾を放ったのであれば当然その火弾は遥か上空へと飛んでゆき、目視することが出来なくなるはずだ。
しかしこの疫病の狂天使が放った火弾は遥か上空へと向かう事はなく、空中で爆発したということは空中に火弾を妨げる何かがあったということなのだが・・・空中の煙幕が晴れた後に出てきたのは魔導師のローブを身に纏い、箒に股がった少女ヘルメス・T・アレイスティアである。
風の魔法によって障壁を展開していたヘルメスは火弾の直撃を免れただけでなく、その右手には風の魔法・風弾を放つ準備をし・・・疫病の狂天使に向かって放つ。
『ヴァァァァ』
疫病の狂天使が再び叫び、ヘルメスの放った風弾に向かって火弾を放つ。
ヘルメスの風弾と疫病の狂天使の火弾が直撃し、辺りに炎と突風が吹き荒れる。
相性的に考えて風の魔導師は火の魔導師に弱い。魔力量が等しいのであれば風弾と火弾を撃ち合いした場合、火を魔導師に軍配が上がるが・・・今この場の戦いに軍配が上がったのは不利な属性の魔導師、ヘルメスに軍配が上がったのだ。
その理由は至ってシンプル。距離と奇襲である。
どんなに相性が悪くても放った魔法の位置、そして真っ向からの撃ち合うではなく奇襲をした場合であれば結果が違う。
『きぎぃぃぃ』
風弾によって傷ついた疫病の狂天使がヘルメスを睨みつける。
炎に包まれているのでその表情を伺う事は出来ないが、溢れでる殺気は隠しきれていない。
『おお!?すげぇ・・・』
『増援だ!増援が来てくれたぞ』
『皆さんどうにか時間を稼いでください』
『何か策はあるのか?』
男性の問いかけに頷いて答えるヘルメス。
その答えに賭けた人々は時間を稼ぐ為に再び武器を構え、その瞳には戦意が見られる。
ヘルメスという希望がこの状況を打開してくれると信じて。
再び火弾でヘルメスを撃ち落とそうとしている疫病の狂天使に向かって男性が武器を振り下ろす。
途中で魔法の中断をされてしまった疫病の狂天使は、激怒したのか攻撃してきた男性に向けて炎の槍を造りだし串刺しにしようとするが・・・途中で別の男性が攻撃し、またしても疫病の狂天使の攻撃が止められてしまう。
疫病の狂天使を取り囲む男達は、一定の距離を保ちながら攻撃してきては離脱を繰り返し、疫病の狂天使が攻撃しようとするとソレを中断させる為に攻撃するように立ち回りをしている。
先ほどの疫病の狂天使への恐れは未だに消えてはいないが、それでも圧倒的に不利な状況から脱出することが出来たためか男達の瞳には再び燃えあげる戦意を感じる事が出来る。
『お前達その場を離れろ!』
突如この場に響き渡る声に反応した男達はこの場から離れる。
すると疫病の狂天使に向かって矢と魔導弾が直撃し、矢は一部が燃えてしまってが魔導弾が直撃したことによって疫病の狂天使が吹き飛ばされ、家屋の壁を破壊して瓦礫に埋もれてしまう。
疫病の狂天使を吹き飛ばしたのは増援で駆けつけてくれた警備兵であり、人数は合計で七名だ。
疫病の狂天使相手では警備兵七名程度では勝つことは不可能だが・・・何とか時間を稼ぐことには問題ない筈だ。
しかも警備兵の中には魔導銃を持っている者が二名、魔導剣と魔導盾を持っている者が一名、弓兵が三名、そして治療薬剤師の一名がおり、特に負傷した者を治療してくれる治療薬剤師はありがたい存在だ。
『遅くなってすまない』
『気を付けろ!こいつは他の疫病の狂天使とは違い火の魔法を使う事が出来るぞ!』
『どうやらそのようだな・・・』
増援に来た者達は吹き飛ばした筈の疫病の狂天使が、瓦礫を爆発によって爆散させ這い出てくる姿を見て驚愕する。
燃え盛る疫病の狂天使は新たに増援に来た者達を確認すると、火弾で攻撃するが・・・魔導盾を装備した警備兵によって防がれてしまう。
そしてすかさず弓兵による追撃が行われ、疫病の狂天使に命中する。
この疫病の狂天使は全身が燃えているが、鉄を溶かすことは出来ないようなのだが・・・再び攻撃しようと矢を放ったがその矢は疫病の狂天使に命中する事はなく、疫病の狂天使が操る炎によって撃ち落とされてしまう。
『おいおい・・・なんだあの疫病の狂天使?こっちの攻撃を迎撃した?』
『不味いぞ!俺の魔導盾も無限に防げる訳じゃないんだ。接近戦を仕掛けようにもあの炎じゃ、こっちが耐えれそうにないぞ』
『魔導弾だって無限じゃないんだぜ・・・どうする?』
炎を操る疫病の狂天使の攻撃を防いだ魔導盾の耐久力が減ってしまったのか、魔法の輝きが薄れてゆく。
弓兵の矢の残弾数は残り合計十本、そして魔導弾の残弾は残り六発となってしまった。
この疫病の狂天使に後どれ程攻撃したら倒れるのか検討もつかない状況では心もとない残弾だ。
『まだなのかアレイスティア?』
増援に来てくれた治療薬剤師に回復してもらった男性がヘルメスに問いかける。
ヘルメスは詠唱をしているので答えられないが、問いかけにはジェスチャーで指を三本立てる。
つまり後詠唱には残り三分必要なのだ。
『残り三分・・・耐え凌げるか』
疫病の狂天使の攻撃を耐え凌いでいた魔導盾に皹が入る。
微々たるものだがこれは限界が近いことの証明であり、後あの疫病の狂天使の火弾を四発程度凌げれば壊れてしまう可能性がある。
(よし・・・背後を取ったぞこれなら・・・)
疫病の狂天使から血が吹き出る。
全方の魔導盾を持った警備兵に注意を削がれていた疫病の狂天使は、後方へと注意が散漫していたようで強襲され背中から貫かれてしまう。
いつの間にか魔導盾と魔導剣を持っていた警備兵の手には魔導剣は無くなっていて、疫病の狂天使の背中に刺さっている。
この魔導剣の効果は切れ味を上げる能力であり、鉄をも容易に切断することが可能だ。
しかし鉄をも容易に切断する魔導剣だが、この疫病の狂天使は知恵が回る。
即座の刺された魔導剣を触り炎の熱を与える。
『ぐあぁぁぁ・・・き、貴様』
魔導剣を持っていた警備兵から苦痛に苦しむ叫び声が聞こえる。
警備兵達からは見えないが、警備兵の持っている魔導剣が熱せられ、高温になり警備兵の皮膚を焼いているのだ。
対火の魔法が付与されたガントレットを装備しているわけではない警備兵では、一秒でも触っていられないほどの高温になっているが、警備兵は魔導剣を手離そうとはしない。
そして・・・
『今だ!俺ごとこいつを倒せ!』
そう言い終えるやいなや警備兵が疫病の狂天使に掴み掛かり、動きを止めるが・・・掴んだ瞬間、警備兵が炎に包まれる。
叫び声が聞こえるが、まだ生きているようで疫病の狂天使も振りほどこうと必死に悶えている。
この機を逃せば疫病の狂天使に致命傷を与える事は出来ないかも知れない。そう理解してはいるが・・・人間という者は咄嗟に仲間を切り捨てて攻撃するのは躊躇してしまうのだ。
しかし彼女は違った・・・
『真空圧縮風爆砲!』
魔法の詠唱が完了したヘルメスは躊躇なく警備兵ごと疫病の狂天使に向かって魔法を喰らわせる。
動けない疫病の狂天使に直撃し、魔法が炸裂する。
決して派手ではないがヘルメスの放った魔法の効果は絶大であった。
『す、すげぇ・・・』
『こんな魔法があったのか・・・』
『早く!今の内に魔導弾の準備を!』
ヘルメスの放った魔法、真空圧縮風爆砲は着弾地点を中心に半径5m前後を真空状態にする魔法だ。
この魔法はヘルメスがマリアティアスから教わった魔法であり、ヘルメスの切り札的な魔法だ。
真空状態にすることによって相手の酸素を奪うだけではなく、人間相手では非常に凶悪な魔法で・・・ほぼ即死の魔法だ。
何故ならこの魔法の効果範囲では息をすることは出来ない。
動いて脱出しようにも酸素濃度の低下によって身体が思うように動かず、脱出も、防御も不可能な魔法だ。
しかしこの魔法には弱点がある。
まず呪文の詠唱に時間が掛かるのと、この魔法の効果はおおよそ五分程度であり、何より射程距離が10m前後と非常に近距離でなければならない。
それにこの魔法は非常に多くの魔力を使うのだ。マリアティアスほどの魔力量の魔導師なら大丈夫だが、ヘルメスでは荷が重かったのか必死に倒れまいと箒で支えている状況だ。
それを見て驚愕していた警備兵が持っている全ての魔導弾を魔導銃に詰め、魔法の効果が切れた瞬間に叩き込める準備をする。
『そろそろです!』
ヘルメスの合図と共に魔導弾が疫病の狂天使を直撃する。
今までは疫病の狂天使が身に纏っていた炎によって迎撃されていたが、今はその炎はヘルメスの放った魔法によって消えているので直撃した魔導弾が炸裂する。
『やったか!?』
魔導弾が直撃した疫病の狂天使から悲痛な叫び声が聞こえてくる。
全弾を撃ち尽くしてしまった警備兵、そして残り魔力が少ないヘルメスには残りの攻撃手段がない。
魔導銃で殴る事は出来るが、別にそこら辺の鈍器と変わらないのであの疫病の狂天使にダメージを与えられるのかは微妙だ。
『ぎぃぃぃがぁぁぁ』
疫病の狂天使の雄叫びと共にヘルメスに向かって火弾が飛んでくる。
悪い予感は良く当たると言わているが、どうやら本当に当たってしまったようだ。・・・つまり今だに疫病の狂天使は健在だということだ。
『アレイスティア!』
疫病の狂天使の火弾が直撃しようとした瞬間、魔導盾を持っていた警備兵がヘルメスの前に飛び出し魔導盾で防いだが・・・火弾を防いだ魔導盾が砕ける。
すかさず疫病の狂天使に向かって警備兵が矢を放つ。
『ぎ、ぎ・・・あぁぁ』
悲痛な叫び声共に魔導弾の爆煙で見えにくくなっていた煙幕の狂天使の姿が露になる。
その姿は身体半分以上が吹き飛んでしまっている。疫病の狂天使の顔の右半分が無くなっていて、右肩から下、左足も無くなっていて、更には左肩と腹部に矢を受けてしまっている。
しかしこの疫病の狂天使は一目で致命傷だと分かる傷を負っているのにも関わらず、その狂った瞳は狂気で濁ってはいるが今だに戦意は衰えてはいない。
狂天使の能力を発動したからなのか、その身体は宙に浮いている。
この現象はよく確認されているが、どの疫病の狂天使も不思議なことにどんなに負傷しても撤退する事はなく、力尽きるまで暴れ狂うのは変わらない。
『この化け物がぁぁぁ!』
一人の警備兵が手に持っている単刀で斬りつけるようとするが・・・再び放った火弾が直撃する。
それを見て、戦意が薄れてしまった警備兵達がジリジリと後ろに後退してゆく。
一人で全力で逃げないのは逃げた瞬間に火弾で攻撃されないようするためだが・・・残念な事に人間というのは非常なのだ。
『すまないアレイスティア・・・』
『え・・・』
そういい終えると魔法盾を持っていた警備兵はヘルメスを殴ると、その場から一目散に逃げ出す。
腹部を殴られ、堪らずその場に踞るヘルメスが見たのは先ほどまで一緒に戦っていた警備兵、男達が一斉にして逃げ出す光景であった。
『そ、そんな・・・どうして』
過ぎ去りゆく警備兵、男達を見ていたヘルメスの後ろで魔法が放たれ、逃げ去った警備兵、男達が紅蓮の炎に包まれる。
明らかに先ほどの火弾より強い魔法、火炎弾と言われる魔法であり、この魔法は単純に火弾の上位互換で威力、攻撃範囲、射程距離共に強化される魔法だ。
欠点なのは連発する事は出来ず、火弾より魔力を消費してしまうのが欠点だ。
火炎弾が直撃した警備兵、男達はその命の灯火が完全に消え去り、その場に残ったのは人間の姿をした黒い物体だけとなってしまった。
(か、勝てない・・・そんな私はここで死んじゃうの?仲間に裏切られ、誰も救えず、誰も守れず・・・)
動く気力も、体力も残っていないヘルメスは涙を流す。
必死に手足を動かそうとするが力がはいらない、魔法で逃げようにも魔力は尽きてしまって飛ぶことも叶わないヘルメスは涙を流しなら祈る。
死んでも地獄には行かず、マリアティアスと同じように天国へと行ける事を夢見て・・・
疫病の狂天使がヘルメスの元まで移動し、その手に魔力が宿る。
『マリアティアスさま・・・』
涙を堪え、瞳を閉じたヘルメスだが・・・一向にヘルメスに攻撃してくる気配がない。
何故なのか?
疑問に思ったヘルメスは好奇心半分、不安半分にその瞳を開くと、そこにはヘルメスをじっと見つめる疫病の狂天使がその場にいたのだ。
(何で攻撃しないの・・・やっぱりこの疫病の狂天使は普通とは違うの?)
様々な情報により困惑するヘルメスに更なる衝撃的な出来事が起こる。
『ヘル・・メス・・・・お姉ちゃん?』
『え?・・・喋った!?』
今まで確認されている疫病の狂天使は意志疎通が出来ないのが当たり前であり、疫病の狂天使は狂ったように暴れ回る。それが一般常識であったのにも関わらずに、この・・・炎を操る事が出来る疫病の狂天使は意味のある言葉を喋ったのだ。
しかもこの疫病の狂天使はヘルメスの事を知っているようである。
(私の事をお姉ちゃんと言うのはこの世界でたった一人・・・まさか!?)
嫌な予感がした・・・しかしどうしても確認しなければと思ったヘルメスはその言葉を口にしてしまう。
『メリー・・・ちゃん?』
恐る恐るその言葉を口にするヘルメス。そして頷く疫病の狂天使。
ありえない。合ってはならない事実を突きつけられたヘルメスはあまりの衝撃に言葉を失ってしまう。
どうして?
何故?
何で?
様々な情報がヘルメスを襲い、耐え難い事実から目を背けようとした瞬間・・・疫病の狂天使が狂ったように苦しみ始める。
困惑しているヘルメスをよそに疫病の狂天使から膨大な量の魔力が放出され・・・この地をヘルメス諸共爆発が襲い掛かる。
『どうして・・・』
ヘルメスの悲痛な嘆きが爆発によって掻き消えてしまった。
スヴァ都市国・・・北区上空
この悲惨な状況の中でも聖女、マリアティアス・V・ヘリエテレスとアリセス、エールは観察を続けている。
まるでこの国で起きていることが全ての予測通りであるかのように。
『さて・・・後はあの子次第でしょうね』
その言葉を口にしたマリアティアスの手には白書の聖書が開かれていた。