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禁断の扉の向こうには・・・

 王国の影として裏の世界で今までずっと暮らしていた影の守護者(シャドウズ)

 王国の為になるのであればどんな汚れ仕事もしてきた面々であり、時には他国の重鎮をそして時には王国の貴族も抹殺してきた。

 その影の守護者(シャドウズ)の面々が代々王家より受け継いでいる特別な仕事がある。

 影の守護者(シャドウズ)を動かせるのは歴代の国王だけなのだが・・・その時代、時代において仕事内容も異なることは必然的なのだが、この特別な仕事は決して変わることがない。

 噂によればエルピーラ王国建国以前よりも前からこの特別な仕事をしていたと言われているが・・・その真偽は不明だ。

 その仕事とは・・・王国内にいる子供の拉致だ。

 月に一度・・・決まった時期に国王直伝に命じられ子供を王国内から拉致し、そして王城内に存在する地下へと移送させる仕事だ。

 王城の地下に何があるのか?何故子供達だけなのか?そんな疑問は抱いたことは無かった。

 しかし・・・今になって影の守護者(シャドウズ)の面々は疑問に思う王城の地下に何があるのか?

 そしてその答えは今此処に現れる・・・開けてはいけない禁断の扉の向こうから。


『嘘・・・だろ?』

『王城の地下にこんな・・・こんな化け・・・』

『何あれ・・・』

『動い・・・生きて・・・いる!?』


 まだ無事な影の守護者(シャドウズ)とそしてまだ無事な王国の兵達が目にしたのは・・・鼓動する肉塊であった。

 その大きさは王城と同等の大きさ・・・かなり巨大だと瞬時に判断する事が出来る。

 鼓動しているその姿は異形の化け物と言うほかは無く、そのただならぬ雰囲気、そして周囲に立ち込める異様な気配は目で見なくても感じ取れるほどだ。


『どうして王城の地下にこんな・・・まさか俺たちが行なっていた仕事は!?』

『でも・・・あれ・・・何なんだよ?あの・・・化け物は!?』

『とっても不気・・・』


 影の守護者(シャドウズ)と王城の兵達が話していると・・・その話を聞いていたかのように鼓動する肉塊が脈打ち、地面の中から人間の腕ほどの大きさの触手が出現する。

 その触手はまるで人間の血管のような赤々しさに、生々しさがあり、そしてこの鼓動する肉塊はよく見ると人間の心臓のような姿をしている。

 突如として現れた触手に驚き、戸惑い、そして恐怖から動けなくなる者また一目散にこの場から逃げる者など一斉に、蜘蛛の子を散らすようにして逃げようとしたがその場にいた者達全員が触手に絡め取られる。


『は、放せ・・・』

『な、なんて力だ!』

『振りほどけ・・・』

『ちょっ!?ど、どこに絡み付いて・・・』

『や、やだっ・・・どこに・・・』

『ま、待って・・・そ、そこはだっ・・・め・・・』


 触手に絡め取られた者達が必死に抵抗しているが・・・残念ながら振りほどく事は出来ないようで誰一人として抜け出せていない。

 そして絡みついた触手は・・・影の守護者(シャドウズ)、王国の兵の命を枯らす。

 そして命を枯れた影の守護者(シャドウズ)、王国の兵の身体は徐々に灰になっていき・・・そして誰も居なくなった。

 その場に残っていた触手は再び獲物を探すように地面に戻ってゆく。



 ベリアス城にて金と銀の薔薇の結界を作りあげたマリアティアス。

 この結界は魔法国の魔導師、王国の兵の攻撃を完璧に防いでおり展開してから一度も攻撃を通してはいない。

 と言うよりも結界を張ってから数分もしない内に魔法国の魔導師、王国の兵の攻撃が止んでしまったので今は攻撃を受けていないが・・・

 そしてそれよりも問題なのはこの異様な雰囲気だ。

 幸いな事にマリアティアス達のいる場所は地面が揺れただけで何も問題は無かったが・・・他の場所は悲惨な状況になっているところもあるようだ。

 その事を象徴するようにマリアティアス達と戦っていた魔法国の魔導師、王国の兵が退却して行ったのだから。


『マリアティアス様今のは・・・』

『あの軍勢が一斉に動きを止めるとは・・・どのような意思疎通をすればあれほど綺麗に止まる事が出来るのでしょうね?』

『それよりも問題なのはこの異様な気配ですよ何か良くない事が・・・』

『えぇ・・・ヘルメスの言う通りです何かとても嫌な予感がします』

『でしたら私が偵察を』


 腹部を貫いている傷が癒えたマリアティアスを庇うようにヘルメスが偵察を志願するが、マリアティアスによって止められてしまう。


『貴女達を危険に晒すような事はしたく無いですよ。それにこのような未知の状況で無闇に、無策に動くのは得策ではないですよ。それに・・・偵察なら目視は出来ませんがこの魔法なら!』


 そう言い終えるとマリアティアスは広範囲探魔法『誰が為に(ウィンエアー・)風は吹くのか(ヘミィグウェイ)』を発動される。

 この魔法はマリアティアスのオリジナル魔法であり、その効果は周囲に風を発生させる魔法だ。

 だがこの風はただの風では無い。

 マリアティアスの魔力を乗せた風はその風に触れた者の感触をマリアティアスに伝え、そしてその触れた者がどのようにして動いているのか把握する事が可能にさせる魔法だ。

 広範囲を魔法で探すので特定の人物を把握するのには特殊なアイテムを必要になるが・・・人の流れを把握するのにはもってこいの魔法だ。


『これで何が起きているのか・・・だいたいは理解できっ!?』

『マリアティアス様?』

『顔色がよろしくないですよ?何かございましたか?』


誰が為に(ウィンエアー・)風は吹くのか(ヘミィグウェイ)』を発動させ、周囲の状況を確認していたマリアティアスだが、何かを見つけたのか一瞬にして顔色が悪くなってしまった。


(まずい・・・まずいまずいまずいまずいまずい!?なんなんだこの生物は!?化け者か?それにこの位置にいるという事はまさか・・・)


『まさかあれが王国の・・・女神の・・・』


 マリアティアスが体調を悪くして塞ぎ込んでいると地面に亀裂が入り・・・地面が割れる。


『まずい!?』


 マリアティアスが声を上げた瞬間、割れた地面から無数の触手が出現する。

 意思を持った触手はマリアティアス達のことを見つけたらしく、一目散にその触手で絡め取ろうと動き出す。

 しかしその触手を間一髪で防ぐ事に成功したマリアティアス。


『早くこの場から逃げ・・・何をして?』


 この場から撤退させようと指示を出そうとしたマリアティアスよりも早く動く者がいた。

 その者の名前はダイヤ・ゴルディエムス・ニガラス。

 まるであの触手に会いたそうにマリアティアスの結界に触れ・・・そして結界をすり抜ける。


(馬鹿な!?ありえない!結界をすり抜けた!?結界を破壊する事は出来ても、すり抜けるという事はその結界を作り上げた者にしか出来ないはず・・・なのに何故!?)


 マリアティアスの結界をすり抜けたダイヤはそのまま触手に絡み取られ・・・地面へと引きずり込まれる。


『ダイヤ様ぁぁぁぁ!』


 ライフルは離れ行くダイヤに駆け寄ろうとするが・・・マリアティアスの結界によって阻まれる。


『落ち着いてくださいライフル』

『落ち着け!?落ち着けだと!?貴様は何を言っているんだ』

『だから落ち着い・・・て?』


 ダイヤが自分に元から離れて事によって狂乱状態になってしまったライフルは、躊躇なくマリアティアスの心臓を自身の変化した鎖で貫く。

 その事により結界に綻びが出来てしまい・・・ライフルは結界を破壊してダイヤを探す為に自らも地面の中へと突入していく。


『くそ!あいつマリアティアス様を!』

『マリア様結界は・・・』

『大丈夫です。もう修復は終わっています』


 心臓を貫かれたのにも関わらずに平然としているマリアティアスに驚いているクチルギとヘルメス。

 貫かれた最初は驚き、焦った様子だったが落ち着いた様子のアリセスに、まるで気にしていない様子のエール。

 そして何より平然としているマリアティアスを見てクチルギは槍を、ヘルメスは弓を構える。


『マリアティアス様追いますか?』

『周囲の魔導師を排除した方が良さそうですね・・・どうしますか?』


 やる気満々のクチルギにヘルメスを宥め、マリアティアスは次にどのようなことをすべきか考える。


(ただでさえ、魔法国からの襲撃で非常に厄介な状態なのに、あれが動き始めたなんて・・・まさか!?私のと反応して?)


 マリアティアスが考え込んでいる間状況は刻一刻と変化していく・・・マリアティアスが気がつかないうちに。



 エレメンティア魔法国首都トゥルーマキナに存在する地下施設・・・

 膨大な量の情報を集め、応用し、そしてその情報、技術を次世代に残す為に作られた大図書館に一人佇む少女は、驚きの表情と共に今まで閉じていた瞳を開け世界を見渡す。


『まさか・・・王国の地下にあんな物があるなんて』


 先ほどまで驚いていた少女の表情は、とても晴れ晴れとした清々しい表情になっている。

 頬は紅葉に、瞳は潤んでいるその表情は、待ち望んだ玩具が自身の手元きた子供のように無邪気で純粋な表情だ。


『そうだね・・・アレのテストも兼ねて出撃させよう!手に入れてみせるよ・・・私の願いの為に!』


 そう言いながら少女は楽しそうに命令する・・・『女神の(オラクリリス・)神眼(ロードアイ)の名のもとにこの世の全てを手に入れろ』っと。


 エルピーラ王国地下・・・

 異形の化け物の触手に絡め取られたダイヤは真っ暗闇の中にいた。

 上も下も右も左も何も、何処にいるのかすらわからない真っ暗闇・・・光すら拒絶する真っ暗闇は人々が安らぎを求めるようにダイヤの心を癒してくれる。


『・・・世界には安寧を求めている』


 真っ暗闇の中で一人呟くダイヤ。


『私が・・・世界に安寧を・・・人々に安らぎを・・・』


 ダイヤの願いに応えるように異形の化け物が動き始める。


 大きな地鳴りと共に、異形の化け物を中心に多数の・・・夥しい数の魔法陣が展開される。

 更にその魔法陣は幾重にも重なり・・・強大で強力な魔力を帯びた魔法陣が出来上がる。


『全てを薙ぎ払う!』


 真っ暗闇の中でダイヤが叫ぶと、魔法陣が反応して・・・辺り一面に向かって魔力の塊を解き放つ。

 最早それは熱線・・・高魔力を高濃度で圧縮した事により誰の眼からでも見える程に濃厚になった熱線は王城の壁に直撃し、そして上空で様子を伺っていた魔法国の魔導師、王国の兵に直撃する。

 すると熱線が直撃した魔法国の魔導師、王国の兵は見るも無惨に・・・直撃した箇所がこの世界から無くなったように抉られる。

 ある者は上半身全てを、またある者は腹部を中心に・・・またある者は頭部を、熱線によって貫かれた魔法国の魔導師、王国の兵は苦痛すらなく一瞬にしてこの世を去る。

 この世を去った者の中には防御魔法を展開していた者や、盾を構えていた者もいたのだが・・・全員、熱線が直撃した者達は全て、全員が抵抗虚しく消え去ってしまったのだ。


『この力・・・素晴らしい!実に素晴らしいですね!』


 運良く熱線の射線上に入らなかった魔法国の魔導師が楽しそうに跡形も無くなってしまった王城の壁、熱線が直撃した者達を見ている。

 その中には無論自身の仲間も入っているが・・・関係ないような感じだ。

 そして魔法国の魔導師はあろうことか熱線によって腹部を貫かれ・・・両腕両足しか残っていない王国の兵の腕を拾い、まじまじと観察し始める。

 どのようにして熱線が人体を消滅させたのか?どれ程の威力なのか?

 観察し終えた魔法国の魔導師は満足気に頷きその腕を自身の懐へと入れる。

 異常としか言えない魔法国の魔導師の行動だが、それには理由がある。

 その理由とは・・・


 王城内金と銀の薔薇の結界にて・・・


『彼ら・・・いえ、アレらは全てを一つはなのです』


 マリアティアスの発した言葉が上手く理解出来なかったアリセス、エール、クチルギ、そしてヘルメスは頭に疑問を浮かべ、首を傾げている。

 先ほど異形の化け物が放った熱線は幸いな事に、マリアティアス達のいる金と銀の薔薇の結界には直撃することはなかった。

 運良く射撃上にいなかったからなのか?それとも距離が離れていた為に当たらかったのか?それとも何かもっと別な理由が合ったのかは不明だが、とりあえずマリアティアス達は無事だ。

 しかしながら残念な事にダイヤと、ダイヤの後を追って地面の中に入ってしまったライフルの生死は不明だが・・・


『すいません。マリア様ちょっと言っている意味が・・・』

『申し訳ございませんマリアティアス様。我々程度の頭ではマリアティアス様の言っている事を理解出来ないようで・・・』

『もうちょっとクチルギに対しても分かりやすくお願いします』


 アリセス、エール、クチルギからよく分からないと言われてしまったマリアティアス。

 ヘルメスはマリアティアスの言ったことの真意を探る為なのか考え中だ。


『そうですね。分かりやすく説明しますと・・・私達に先ほど攻撃を仕掛けてきた魔法国の魔導師、そして魔法国の魔導師と対立していたはずの王国の兵は全員私達の敵です』

『それはわかっています』

『私達に攻撃して来ましたからね』

『そうです。しかし問題なのは王城を奇襲してきた魔法国の魔導師が、王国を守る筈である王国の兵と手を組んだ・・・まぁ、表現としては適切ではないですが、敵である者同士が何故一緒に、息を合わせたように攻撃してきのかということです』

『説得・・・するにしては時間が早すぎますね』

『そもそもそんなに直ぐに和解が出来るとは到底思えないのですが・・・』


 アリセスの意見に同意するようにエール、クチルギ、ヘルメスが頷く。

 マリアティアスは全員が今までの事を理解出来ているのを確認すると再び話始める。


『そうですね。どんなに人格者でも、どんなに利害が一致したとしても個人なら話は別ですが、あの数が短時間で和解できる筈がありません・・・しかし説得や和解等という手段を取らずとも彼らを洗脳すれば可能です』

『洗脳ですか?』

『いったいどんな方法で?しかもあの数を短時間に?』

『注目もくすべきはコレですね・・・』


 マリアティアスはそう言いながら自身の眼を指差す。


『眼ですか?』

『確かにあいつらと戦っている時に気がつきましたが・・・あれは何なのですか?魔法陣的な・・・』

『私が魔法国にいた時には見かけませんでしたが?』

『そうです。あの眼には洗脳の呪術の他に多数の魔法や呪術が組み合わせた物で・・・あの眼を見た者は大抵の人物であればものの数秒で洗脳されてしまうという物です』

『なるほど・・・一瞬であれば見たとしても問題はないのですか?』

『えぇ。その人によりますが・・・』

『マリアティアス様でも抵抗は出来ないのですか?』

『いえ、私は例外です』


 マリアティアスのその一言にアリセス、エール、クチルギ、ヘルメスからほぼ同時に『流石です』っと言い感心しているが・・・どうやら別にマリアティアスは誉めてほしくはないようで直ぐ様に話を戻す。


『なのは基本的にあれらとの戦闘は控えるように・・・まぁ、仕組みさえわかりましたから後は対策を取れば問題ないのですが・・・どうやら非常事態なようですね』


 その言い終えるよりも早くマリアティアスはこの場の全員に浮遊の魔法をかけて一斉に空中へと緊急避難する。

 すると、数秒後にはマリアティアス達のいた場所が熱線によって薙ぎ払われ・・・跡形も、瓦礫さえも一瞬にて消し飛ぶ。


『マリアティアス様あれは!』

『あれは王国の・・・』


 マリアティアスが話をしようとした瞬間、周囲で情報収集でもしていたのか、今までの大人しかった魔法国の魔導師達が逃げようとしたマリアティアス達に向かって魔法を放つ。

 マリアティアスに攻撃を仕掛けてきた時よりも数が減っているのを見るに、どうやら魔法国の魔導師も熱線の餌食になってしまったようだ。


『彼らも必死ですね・・・マリアティアス様私達は』

『今は撤退を最優先に、そして彼らはあの眼によって視界共有をしています』

『視界共有?マリアティアス様クチルギにもわかるようにしてお願いしますよ』

『彼らの眼に映る物は全員全て、共有する事が出来るのですよ』

『何故そのような事が?』

『それは彼らを操っている女神の(オラクリリス・)神眼(ロードアイ)の力によるものです。その力により操られた者の視界だけでなく、五感全て・・・そして今までの培ってきた知識すらも共有出来るのです』


 魔力に余裕が無くなってきたマリアティアスは懐から魔術札を展開し、魔法による攻撃を誘導させ少しでも数を減らす事に成功する。

 そして確かにマリアティアスの言う通り、彼らは先ほどよりは効率よく、双方の威力を高めるような魔法を使ってきているが・・・マリアティアスの防御魔法もなかなかの硬度を誇っているので並大抵の魔法程度では破壊することは不可能だと断言出来る。


『知識を共有してもそれを生かせる設備が整っていないと意味がないですね・・・とりあえず時間は十分稼げました!』


 マリアティアスは自身の魔力を一点に集中させ・・・『祝福された者が通る道(ウェディング・ゲート)』を発動させる。

 空間に亀裂は出来上がり、そして砕けてるとそこにはまるで別の空間・・・金色に輝く世界が広がっている。


『先に行っていてください』

『あら?マリア様は来ないのですか?』

『えぇ・・・少し王国でやり残した事がありますので』

『・・・マリアティアス様が言うなら文句はありません。しかし、無理はなさらないでくださいね』

『残念ですがエール。それは無理ですね』


 気軽にまるで当然のように答えるマリアティアス。

 そんなマリアティアスに対して『やれやれ』っと頭を抱えるエールに、『クスクス』っと隣で笑っているアリセス。


『マリア様はよく無理をしますからねぇ・・・』

『アリセス他人事ではないのですよ。マリアティアス様にもしもの事があったら・・・』

『今までそのような事がありましたか?』

『今までなかったから、今回もないとは限らないですよ』

『エールは心配性なのですね』

『アリセスは心配しなさすぎなのですよ』

『心配するのもよいですが・・・マリアティアス様を信じましょうよ』

『なっ!?私もマリアティアス様の事は信じていますよ!』


 その光景を微笑ましく見守っているマリアティアス。

 アリセスとエールが言い争っているのを他所にクチルギとヘルメスは既に祝福された者が通る道(ウェディング・ゲート)を通ってしまっていた。


『さぁ、アリセスもエールも祝福された者が通る道(ウェディング・ゲート)を通ってくださいね』

『わかりましたマリア様』

『了解ですマリアティアス様・・・無事で帰って来てくださいね』


 アリセスとエールもまたクチルギとヘルメスと同じように祝福された者が通る道(ウェディング・ゲート)を通ってゆく。

 アリセスとエールが通ったのを確認し終えると、マリアティアスは祝福された者が通る道(ウェディング・ゲート)を閉じ飛び立つ。


『これが・・・王国に存在する物なのですね』


 ついにマリアティアスは王国に存在する、この世にありえない物を目の当たりにする。

 鼓動するように動いている異形の化け物は周囲の空間が淀む程に、高濃度の魔力が漂っている。

 異形の化け物が地上よりも下・・・王国の地下に存在しているので異形の化け物を中心に水溜まりのように魔力が溜まってしまっているのだ。

 そしてその高濃度の魔力は結晶のように徐々に地面を侵食し始めている。

 割けたアスファルトに水が染み込むように、ゆっくりとではあるが眼に見える形で侵食している様子は興味深い・・・安全に観察できるのであれば。


『なるほど・・・このようにして』

『観察するのもいいですが・・・この状況を理解出来ていますか?』


 観察しているマリアティアスを取り囲むようにして複数の魔法国の魔導師と、王国の兵が武器を構えて展開している。

 全員、魔法国の魔導師も王国の兵も同じ眼・・・魔法陣が描かれた眼であり、マリアティアスの行動を監視するように動いている。


『貴殿方もこの状況は手に余しているようですが?だからこちらに来る筈である部隊が来ないのでしょう?』


 図星なのか黙ってしまった魔法国の魔導師。

 何も喋らないのはマリアティアスが何処までこちらの情報を得ているのか不明だからであり、そしてマリアティアスがどんな手段、方法を使ってくるのかが不明だからなのか・・・

 いずれにしろ数秒の空白が空き・・・考え事をしていた魔法国の魔導師は触手に絡め取られる。

 運良く触手が来なかった魔法国の魔導師や、王国の兵が触手に向かって攻撃を仕掛け、事なきを得たが・・・


『ほら今も襲われてしまってますし・・・どうです。ここは手を引いてみては?』


 マリアティアスは『クスクス』っと笑っていて、楽しそうなその姿はまるで純粋無垢な少女のようだ。

 この状況でなければの話だが・・・


『貴女だって魔力は無限では無いはずですが・・・化け物と言っても過言ではい魔力を所持していますよね?』


 魔法国の魔導師の問い掛けに驚いた様子を見せたマリアティアスだが、驚きは一瞬で終わりそして先ほどまで笑っていたのとは裏腹に目付きが鋭くなる。


『やっぱりその瞳は特別なのですね・・・いったい今の貴女に何が見えているのですか?』

『それは教えられませね・・・貴女もいろいろと隠しているのでしょう?』

『秘密は女性を美しくするのですよ。ミステリアスな女性はお嫌いですか?』

『そうですね。嫌いでは無いですが・・・秘密というものは知りたくなるのが人の性というものですので。しかも絶世の美女の秘密ならば尚更ですね。なのでその秘密教えてくださいよ!』


 魔法国の魔導師がマリアティアスに向かって複数の属性魔法を放つ。

 どの魔法も並みの魔導師より強力で、一発一発でも数十人・・・密集していれば数百人でも殺す事が出来る魔法を防ぐマリアティアス。


『貴女の魔力も無限ではないですからね。見す見す貴女のような人物を逃がす訳にはいきませんよ!』

『ですが、貴女の・・・今の戦力では私の防御魔法を破壊出来ないでしょうね?』

『・・・確かに、今の戦力では不可能ですね。しかし・・・あれならどうでしょうか?』

『あれ・・・まさか!?』


 マリアティアスが振り返るとそこには魔力を一点に集中させている異形の化け物が、マリアティアスに向かって狙いを定めているのが見て取れる。

 数多の魔法陣全てがマリアティアス、そして上空にいる魔法国の魔導師に狙いを定め・・・一斉に放つ。


『自爆かくっ・・・』


 防御魔法を展開していたマリアティアスだが、その防御魔法が紙切れのように破壊されてしまい・・・そして消し炭となってしまった。

 誰もいなくなってしまった上空に向かって虚しく魔法を放つ異形の化け物。

 その近くには闇に溶け込むように人影がいることにマリアティアス達は気がつけずにいた・・・

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