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薔薇騎士の狂信者

 マリアティアスがべリアス城に来てから数日後の昼下がり・・・マリアティアスは待ち人を待つように自身の窓から外を眺めていた。

 すると扉がノックされマリアティアスの待ち人・・・ソイルが入ってくる。


『お待ちしていましたソイル様!』


 ソイルが部屋へと入ってくるなりいきなり抱き付くマリアティアス。

 最初は驚いた感じだったソイルだが・・・日に日にマリアティアスの行動にも慣れて来たようであり今では驚くような事は滅多になく、抱き付いたマリアティアスをそっと抱き締め頭を撫でる。


『ただいまマリア・・・』

『今日は少し遅かったのですね』

『えぇ・・・今日は少し会議が長引いてしまったので』

『なんの会議なのですか?』


 マリアティアスの問いかけに対してソイルは口元に指を当てて答える。

『マリアが知る必要はない』っと。


『マリアは何も知らなくていいのですよ・・・何も難しい事は知らなくても』

『そう・・・ですか』


(まぁ、大体何がどうなっているのかは知っていますが・・・もう少し時間は必要ですからねぇ。時間稼ぎは・・・)


 マリアティアスは内に秘めた感情を表に出さないまま演技を続ける。

 自身の目的の為なら何だって実行し、そしてどんな演技もこなす・・・それがマリアティアスなのだから。


(あぁ、マリア様・・・あの日以来この館から出さなくて正解ですね)


 マリアティアスを抱き締めるソイルが不敵に笑う・・・

 マリアティアスを抱き締めているのでマリアティアスからは表情を伺う事は出来ないが。


『少し早いですが・・・おやつにしましょうか?』

『いいのですか?』

『今日来るのが遅くなってしまいましたからね』


 そう言いながらソイルは手に持っているカバンから今日のおやつであるドーナツを取り出す。

 カバンから出して直ぐにドーナツの甘い、美味しそうな香りが辺りに広がりマリアティアスの表情が柔らかになる。

 ドーナツは全部で十種類。

 どのドーナツも美味しそうで、油で揚げた物から少し変わった焼いたドーナツ、パン生地のドーナツもある。

 生地にこだわったふんわりモチモチ食感のドーナツであり、塗した砂糖がキラキラと輝いているドーナツ。

 ドーナツの上にかかっているチョコレートの種類も豊富で、普通のチョコレートやイチゴチョコレート、ホワイトチョコレート等の種類がある。

 女性二人に対して十個のドーナツは普通に考えれば多いが・・・それはマリアティアスが大喰らいなので仕方ないが・・・


『わぁ!美味しそうですね』

『マリアの為に美味しそうなのを頼みましたので』


 ソイルはドーナツを机の上のケーキスタンドに綺麗に並び付けた後、一緒に飲む紅茶をいれる為に移動する。

 今マリアティアスのいる部屋・・・と言うよりもこの館には生活に必要な全ての物が揃っている。

 食事に必要な食材、衣服、そして風呂も完備している館なのだが・・・この館にいるのはマリアティアスとソイル二人だけである。

 何故この館にマリアティアスとソイルだけなのかというと・・・ソイルの財力、そして権力を用いて改装した館なのだ。

 ネズミ一匹通さないように改装したこの館には多数の迎撃用の魔導石に防御用魔導石を組み込み、そして入り口には厳重な堅牢な扉。

 この扉特定の行動でしか開く事が出来ないような仕組みになっていて、その解除方法はソイルしか知らない。

 つまりその解除方法を知らないマリアティアスはこの扉開く事が出来ないのだ。

 更に言うなればこの館の八割以上の扉は閉じられていて開くことはない・・・

 幽閉と言ってみ過言ではないこの状況だがこれは仕方ないのだ・・・マリアティアスを守る為に。


(やっぱり大金、貴重な資源を使ってでもこの館を改装した甲斐がありましたね。マリア様にはずっと・・・ずっと・・・このまま)


『永遠に一緒に・・・』


 紅茶入れながらつい独り言を呟いてしまうソイル。

 紅茶を入れ終え、そしてマリアティアスに会うために上機嫌に向かって行く。


『あ、あの、ソイル様・・・』


 マリアティアスの元まで戻ってきたソイルだが異変に気がつく。

 その異変とは・・・


『あらあら・・・またですか』

『ご、ごめんなさい・・・つ、つい美味しそうだったので』


 ソイルの見ている方向・・・その先にあるのは十個あったはずのドーナツの内の一つがなくなっている。

 そしてマリアティアスの口元にはそのドーナツにかかっていたチョコレートがついている。

 つまりマリアティアスがつまみ食いをしたということだ。


『これはこれは・・・お仕置きが必要はようですね』


 そう言いながらソイルはマリアティアスへと近づき・・・頬を撫でる。



 べリアス城にあるとある部屋・・・

 べリアス城にあるこの部屋には数名が集まっており、その面子は・・・貴族スペード・ワルビエルムス・ニガラス公。

 そして聖薔薇騎士団の参謀フレル・ナイクロウヌ・ナイトノアだ。

 接点のない二人なのだが・・・今回ある事を相談する為にこの部屋、スペードが使うことが許されている部屋の一つに集まっている。

 スペード、フレル両名共に護衛は最低限しか連れておらず、更にその護衛は特別な・・・信頼のおける騎士だ。


『さて、私に話があると言っていたが・・・とりあえずお茶でもどうかね?』


 スペードの問いかけに対してフレルは首を横に振り拒否する。


『貴方とお茶をする気はないです』

『つれないなぁ・・・君から私に話がある言っていたのに』

『お話だけです・・・それよりは』

『君が言おうとしていることはわかっているよ・・・噂は聞いているからね』

『なるほど・・・しかし事は噂よりも酷いですよ』


 スペードとフレルの言っている噂、それはソイルに関わる噂だ。

 噂の内容はこうだ。『第二王女ソイル・ネロクリリス・ラック・エルピーラはある女性の虜になってしまている』っと。

 その女性とはマリア。

 ソイルが自らの恩人だと豪語し、そしてその女性、マリア専用に館を改装したのだ。

 マリアがこのべリアス城に来てから、いや、ソイルがマリアに出会ってからというもの日に日にマリアと会う時間が長くなっているのだ。

 今では朝の聖薔薇騎士団の会議に出た後・・・次の日までその館から出てこないという日もあるのだ。

 正に異常・・・

 しかも未だに行方不明な聖薔薇騎士・・・フレルと双璧をなす聖薔薇騎士サリア・クロードウィーン・カシスファイルを含む三人の聖薔薇騎士の捜索を行おうとしていないのだ。

 今までのソイルであれば絶対に捜索を行おうと自ら提案したはずだが、それがないのだ。

 それだけではない・・・ソイルはマリアが来てからというもの今まで行っていた疫病の狂天使の討伐に行こうする気配がないのだ。


『なるほど・・・正にそれは異常だな。まさかとは思うがソイルにはそっち系の趣味があるのか?』

『それについては分からないですね。ただあの館で何が行われているのかは誰も・・・ソイル様とあの女しか知らないですからね』


 マリアに対してあまり良い印象を持っていないフレル。

 しかし問題はソイルの性癖ではない。問題なのはソイルが聖薔薇騎士団を蔑ろにしているという事であり、ソイルには言っていないが少なからず部隊からは不満が出てきている。


『それで・・・本題はなにかね?別に俺に愚痴を言う為に来た訳ではないんだろう』


 スペード問いかけに頷き話始める・・・フレルの目的について。

 フレルの目的・・・それはマリアをソイルから引き離す事であり、そしてより正確に言うのであればソイルをマリアと出会う前の正常な判断が出来ていたソイルを取り戻したいということだ。

 とても今のソイルが物事を正常に判断出来ているとは言い難く、どう考えてもマリアを中心に物事を考えている感じであり・・・このまま行くとソイルの立ち上げた組織、聖薔薇騎士団が解体されかねないからだ。

 ただの憶測でしかないが・・・それでも今の状況が続くのは望ましくない。

 現に部隊から不満が出てしまっているこの状況では皆不安なのだ。


『なるほど・・・しかし俺にとってのメリットが見当たらないなぁ。それに今この事をソイルに知らせたら貴様はどうなるか?』


 スペードがフレルとその護衛の聖薔薇騎士に向けて嫌味な笑みを浮かべる。

 確かにスペードの言った通り、今ここでフレルが話した事をソイルに話せばどのような反応が返ってくるのか・・・当然スペードとフレルが合うのは非公式であり、公にはしていない。

 この場にいる六名しかしらない事であり、国王も知らないはずだ。

 しかしその事がソイルに知れた場合・・・フレルの立場が危うくなるのは必然であり、もしかすれば聖薔薇騎士を解任させられてしまう可能性だってある。

 しかし何故フレルがそんな危険を犯してまでもスペードに相談したのかと言うと・・・


『構いませんよ。別にソイル様に言っても』

『ほぉ・・・この会談の内容をソイルに報告してもよいと?』


 スペードの問いかけに対するフレルは『別にどうぞ』っと答える。

 自分の立場が危うくなってしまうのに何故フレルがそのような態度がとれるのかというと・・・


『貴方の話をソイル様が信じればですが・・・』


 ソイルとスペードの仲が険悪になっているのは聖薔薇騎士団、王城内でも噂になっており、その事を気にしているからなのかソイルはスペード達、貴族達とは最近会わないようにしている。

 なのでそんな険悪な状態なスペードの話を本気にして信じるのか疑問だ。

 敵対している人物からの話を信じるというのはリスクが当然あり、そして仲間でもない人物の話を信じろと言われても信じられないのが人間だ。


『う・・・まぁ、その事・・・』

『そんな事よりも・・・あの女性。魅力的ではないのですかね?』


 フレルの問いかけに対して言葉を詰まらせてしまうスペード。

 確かにマリア・・・マリアティアスは魅力的な女性だ。

 何といってもその整った顔立ちだ。

 王族、貴族の出身だと言われても過言ではない美しさ、長く艶やかな黒髪は黒曜石を思わせるかのようであり対照的に、服を来ているので見えにくくなっているが雪のように白い肌。ルビーを思わせるような魅力な瞳。

 更にスタイルの良さもあって、公にはしてはいないが求婚を迫る者も多いはずだ。

 実際のところスペードもソイルがいなければ我が物としたいと思う程に魅力的であり、そして欲望を掻き立てられる。


『確かに魅力的だ。だがあの厳重な館から連れ出すとなると・・・骨が折れるぞ?』

『そうかもしれませんね・・・しかし、不可能ではないです』

『ほぉ・・・何か策があるとでも?』

『なければこうしてお話しに来ませんよ』


 そう言いながらフレルは話始める・・・マリアティアスを連れ出す策について。



 フレルがスペードの部屋から出ていってから数秒後・・・スペードに使える騎士がおもむろに口を開き、質問している。

 内容はもちろん先ほどのマリアティアスを連れ去るという計画に関してであり、リスクの方が大きいというものだ。

 その事に同調するようにもう一人の騎士も頷く。

 しかし・・・スペードの意見が変わることはなかった。


『お前にも働いてもらうからな・・・それに褒美はちゃんと準備している。お楽しみもな』


 そう言いながらスペードはグラスに注がれたワイン口にする。



 昼過ぎのべリアス城を楽しそうに歩いて行くソイル。

 その手にはマリアティアスの為に用意した食事が入ったカバンを持っており、近づくだけでいいに良いがしてくる。


『さて・・・扉の解除・・・!?』


 扉に触れ、解除しようとしたその時・・・異変が起きている事に気がつく。

 その異変とは・・・


『扉が開いている!?』


 ソイルしか解除方法を知らない扉が開いている。

 それはつまり・・・


『マリア!?』


 ソイルはいても立ってもいられずにカバンをその場に投げ捨てマリアティアスの元まで走り出す。

 しかし・・・館全てを探したがマリアはおろか人の気配がない。

 その代わりに・・・荒らされた形跡だけがあった。


『マリア・・・私の、私の大事なマリアぁぁぁぁ!』


 マリア・・・マリアティアスが館にいないとわかると辺りにある机を叩き割り、そして壁に穴を開けてしまうソイル。

 普段のソイルならばありえない剛力であり、机を凹ませる事が出来ても机を叩き割り、更には壁に穴を開けるなどは出来ない。

 しかし・・・怒りで割れを忘れたソイルは肉体の限界を越えた力を発揮したのだ。


『許さない許さない許さない許さない許さない!絶対に許さない!』


 マリアティアスがいないことによって半狂乱となってしまったソイル。

 煮えたぎる感情を抑えきれず周りに置いてある物等を破壊してしまうソイルだが・・・ある程度時間が経つにつれて冷静になる。


『・・・誰がどのようにマリアを拐ったのかは後に考える事にしましょう。それよりも何か手掛かりは』


 ソイルがマリアティアスの手掛かりがあるのか探して周り・・・いつもマリアティアスと食事する部屋へとたどり着く。

 最初は慌てていたので一瞬しか見てはいなかったが・・・ある事に気がつく。


『何でしょうかこれは・・・先ほどまでには何もなかったようですが』


 そう言ってソイルは机に置いてあった折り鶴を手に取ると・・・折り鶴が元の紙へと戻ってしまった。

 何事かと驚いていると折り鶴だった紙に文字が浮かびあがる。

 文字に書かれていたのはこの館の浴場であり、ソイルは文字に書いてある通りにタイルに呪文を唱える。

 するとタイルの一部に施された結界魔法が解除され・・・中から奇妙な物が出てくる。

 見たことのない奇妙な形の物は何やら機械質な感じで、手で触ると少し硬い。


『何でしょうかこれは・・・』


 そう言いながら手に取って見ていると・・・不意に光始める。


『これは・・・!?』

『・・・もし・・・もしもし・・・聞こえ・・・ますか?』

『この声!?マリア様!』

『み・・・耳に・・・入れてくだ・・・さい』

『耳に・・・?』


 マリアティアスの指示の元にソイルは恐る恐る奇妙な形の機械を耳に入れる。

 この奇妙な形をした機械。それはイヤホンマイクと言われているものであり、この機械はこの世界には存在しない物なのだが・・・


『聞こえますか?』

『は、はい。先ほどより正確に・・・聞こえます。あの・・・マリアですよね』

『はい。そうです。私マリアです』

『何故この機械から声・・・いえ、今はそんな事はどうでもよいのです。マリア今何処にいるのですか?』

『・・・すみません。今、何処にいるのかはわからないです』

『な、何故です!?』

 

 ソイルの問いかけに対して今自分がどのような状況、状態にいるのか説明するマリアティアス。

 今マリアティアスがどうなっているのかというと・・・目隠しをされた状態であり、更には両手両足を拘束されている状態なのだ。

 しかし・・・何故ソイルと会話が出来ているのかというと、先ほどソイルが耳にはめたイヤホンマイクが原因であり、そのイヤホンマイクはマリアティアスが作り上げた物で当然魔化もされている。

 このイヤホンマイクの特性はマリアティアスと会話出来るという事であり・・・通話距離は強力でエルピーラ王国にいれば通話が可能だ。

 無論地下でも・・・


『なるほど・・・わかりました。マリア今すぐ私が探します!』

『で、でも・・・すみませんソイル様。私はいったい誰に誘拐されたのかわからないのです・・・もしかすればソイル様に対して敵対している組織なのかもしれません。ソイル様が動けばソイル様の立場が悪化してしま・・・』

『そんな事はどうでもよいのです!』


 強い口調でマリアティアスの言っている事を拒否するソイル。


『私・・・私はマリアの為に剣を振るいます。どんな相手、どんな強敵でも、それがたとえ肉親、王でも・・・』


 その言葉を聞き思わず笑みがこぼれてしまうマリアティアス。

 ソイルからは知ることは出来ないが・・・


『でもソイ・・・』

『何を独り言を言っているのだい?』

『ひっ!?』

『つい寂しくて独り言を言ってしまう・・・でも独り言を言っている暇はなくなるぜ』

『な!?マリア!いったい何が・・・マリア!マリア!どうしたのですか?』


 ソイルの問いかけに対して何も答えないマリアティアス。

 何度問いかけてもマリアティアスから答えが返ってくることはなく・・・ソイルは怒りに身をませて扉を破壊して館を出る。


(あの声の口調からするに男・・・それも下品な)


 マリアティアスを救出するために自身の鎧を身に纏い、帯刀して準備をしている最中のソイル。

 しかしその準備最中に扉が開かれ、聖薔薇騎士団の面々と共にフレルが入ってくる。


『ソイル様何故会議に来ないのです』


 フレル率いる聖薔薇騎士団がソイルの部屋に入ってきた理由は、今日やるは予定の会議に出席していないという事だ。


『お前達・・・邪魔だ』


 とても味方に向けるべきではない殺意と、覇気を放つソイル。

 その殺意に圧されて一歩後ろに下がってしまう聖薔薇騎士団の面々。

 フレルもまた少し、半歩後ろに下がってしまうが・・・意を決してソイルに意見を言おうとしたその時。


『邪魔だと言ったはずだぞ・・・』


 そう言いながらフレルを斬り捨てるソイル。

 こうしてフレルのソイルをマリアティアスと会う前のソイルに戻すという目的は叶えられぬままこの世をさってしまう。

 続けてソイルは驚いているのか、それとも恐怖で動けないでいるのかはわからないが、残りの聖薔薇騎士団の面々を次々と斬り倒してしまう。

 そして騒ぎを聞きつけてきたマリアティアスに仕えていた二人のメイドと、ソイルに仕えているメイドも斬りつけられこの世を去る。


『私の邪魔をする者は全て排除する・・・』


 ソイルは血の付いた剣を振り払うい館を後にする。


『こっちだ!こっちから悲鳴が・・・』


 ソイルが王城内を歩いていると目の前から鎧を来た男達が近づいてくる。

 その男の名前をこの王国で知らない者はいない・・・立派なフルプレートの鎧を身に纏い、その鎧の色は朱色で胸に輝く王国の紋章、両肩には獅子を模様した装飾に、背中に羽織る真紅のマントにも王国の紋章。

 そしてその背中には身の丈にあった大きな刀・・・

 そう。この男の名前はヴァーミリオン。

 王国最強戦力である『朱星の導き』の隊長であり、その部下が数名ヴァーミリオンと共にソイルを目撃し、動かなくなってしまう。


『ソイル・ネロクリリス・ラック・エルピーラ第二王女様・・・』


 ソイルの姿を見て唖然としてしまうヴァーミリオン。

 それもそのはずだ。

 今のソイルはフレル達を斬り殺したことにより反り血を浴びてしまい、その身に纏う鎧が血でべっとりと付着してしまっているのだ。

 とても第二王女の格好ではなく、王城を彷徨くような格好ではない。

 そして何よりも・・・その身に纏うどす黒い殺意はあり得ない程に濃厚で、幽鬼のような形相は歴戦の猛者であるヴァーミリオンでさえ危機感を抱かせるには十分なほどだ。


『ヴァーミリオン・・・貴様も私の邪魔をするのか?』


 そう言いながらゆっくりとヴァーミリオン達に近づくソイル。

 ヴァーミリオンは本能で帯刀している刀を抜き・・・抜くと同時にソイルが斬りかかるが、その攻撃を間一髪で受け止めるヴァーミリオン。


『ソイル様何を!?』

『私の邪魔をする者は全て敵だ!何であれ、誰であれ!』


 突如として王城内に響き渡る剣撃とこ剣撃がぶつかり合う音。

 ソイルの王国最速の剣撃を受け流す事ができなかったのかヴァーミリオンの鎧が傷ついてしまう。

 しかしながら王国最強と言うだけはのことはあり、致命傷となる傷は一切負ってはいないヴァーミリオン。

 ヴァーミリオンがソイルの剣撃を受け止めている最中に他の朱星の導きの面々はソイルを囲むように展開し、隙を伺っている。

 そしてソイルとヴァーミリオンとの戦いが始まってから数分後、騒ぎを聞きつけた国王エルレド・ファングラッツ・ロメテウス・エルピーラ国王によって取り押さえられてしまうソイル。



 王都内に存在するとある地下室にて・・・


 王都内に存在する裏の組織が蔓延る地下室においてマリアティアスは拘束されている・・・はずであった。

 既にマリアティアスを拘束していた手枷や目隠し等は取られ、そしてマリアティアスを拘束したであろう人達は既に床に転がっている。

 全員が全員何故か干からびてしまったかのように、枯れ枝のようになってしまっているが・・・一応生きてはいるらしく声をあげようとしているが、声が出せていない。


『さて・・・マリアティアス様これで全員?』

『そうですね。もうこの地下室にいるのはこれで全員・・・残りは』

『ところでマリア様。マリア様が言っている我々の仲間になるであろう人物は今大丈夫なのですか?』


 楽しそうのマリアティアスと会話する二人の女性。

 一人は深緑色の長髪に褐色の肌、緑の瞳のまだ十代後半の女性だ。

 左肩から下が無いようであり、その右手には枯れ枝のような槍を手に持っている。

 もう一人は奇妙な形をした杖を手に持った金髪三つ編みの女性だ。

 そして二人の女性は同じような服装、聖職者が着るような服に身を包んでいる。


『少々不安はありますが大丈夫でしょう・・・それよりもそちらは順調ですかアリセス、クチルギ』


 マリアティアスに問われ笑顔で答えるアリセスとクチルギ。


『ではアリセスとクチルギは作戦通り裏からお願いしますね』

『了解です』

『わかりました』

『それとクチルギ・・・貴女達と同じ魔導六刀の内の一振りは貴女に任せますよ』

『我らの同胞・・・必ず救ってみせます』


 今度はマリアティアスに対して丁寧にお辞儀をするクチルギ。


『竜王国では思うように事が進みませんでしたが・・・王国では必ず成功させますよ』


 そう言いながら不適に笑うマリアティアスであった・・・


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