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エルピーラ王国第二王女

 エルピーラ王国、第二王女ソイル・ネロクリリス・ラック・エルピーラによって編成された組織・聖薔薇騎士団の面々は王国に侵入してきた疫病の狂天使を討伐する為に王国と帝国との国境沿の村に陣地を構えていた。

 この村は疫病の狂天使に襲撃されると懸念されており、村の住民は全て王国内の領内に避難して今この村に残っているのは数名しかいない。

 その数名の村人達は自らの意思によって残っていて彼女達、聖薔薇騎士団の面々の世話をしている。


『朝早くからご苦労だな』

『こ、これは聖薔薇騎士様!』


 残った村人の一人・・・エルは朝早くから聖薔薇騎士団の面々が 使う為の水を最中に一人の聖薔薇騎士に話しかけられる。

 いつもは組織に属しているが故に、一村人であるエルに対して話しかけて来たことなど殆どなかったのだが・・・どうやら今日は違うようだ。

 いつもは堅牢な鎧を身に纏っている聖薔薇騎士なのだが、今はその鎧を脱いでいてラフな格好をしている。


『この水はいつも君が用意してくれていたのかい?』

『え、はい。そうです・・・いつも私が・・・』

『君の他には?』

『私以外には他には、誰も・・・私にはそれしか出来ないので・・・』


 そう言いながらエルは自身の片目を覆う包帯を摩る。

 何故エルが包帯で片目を覆っているのかは聖薔薇騎士団の面々はその理由を知らない。

 しかし噂では聞いた話なのだが・・・どうやらエルはその片目が原因で母親に捨てられたという噂だ。

 その為かこの村では忌み嫌われているのか誰も・・・エルに対して助けたりしていないらしい。


『そうか・・・いつもありがとう君のお陰で我々は助かっている』

『そ、そんな・・・私はただ・・・出来る事を・・・』


 褒められている事に慣れていないのかエルは顔を高揚させ、身体をもじもじとさせている。

 そんなことを聖薔薇騎士団とエルが話していると・・・急に遠方から強い衝撃波が伝わってくる。

 地面を揺らす衝撃に身体を支えきれなかったエルが倒れそうになったその時、エルと話していた聖薔薇騎士が身体を支える。


『い、一体何が・・・』

『余程強い衝撃があったようだな・・・君は戻っていなさい』

『は、はい。わかりました・・・』


 そう言いながら聖薔薇騎士は自陣へと戻って行く。



 聖薔薇騎士団簡易駐屯署にて・・・


『それで今朝方この施設に響く渡った衝撃波はこの村より先・・・南東方から聞こえたという事でいいのですね』


 その言葉を肯定するように頷く、エルと話していた聖薔薇騎士。


『私がその衝撃波の正体を調べに行こう』

『ソイル様自らですか?』

『勿論です。この部隊で一番強いのは私です。そして状況把握・・・未知との遭遇に対して一番優れているのも事実』

『そう・・・ですね』


 そう言いながら肯定する周りの聖薔薇騎士の面々。

 確かにこの部隊で一番強いのはソイルだ。

 しかし、だからと言って王国の第二王女であるソイル・ネロクリリス・ラック・エルピーラ自身が赴く必要はないのだ。

 ソイルの組織する部隊、聖薔薇騎士団はソイルを中心として組織されている部隊であり、ソイル自身が先導して戦う時もしばしばあった。

 しかし、今は状況が違う。

 今は自分の王国の知っている場所、地形ではなく未知の場所に、見知らぬ地形・・・つまり何もわからない場所へと行こうというのだ。

 当然危険を伴う行為であり、そのような危険な事にソイルを向かわせたくないのが聖薔薇騎士団の総意なのだが・・・残念ながらその総意にソイルは従う気は全くないようだ。


『では私が向かうという事でいいですね』

『わかりました・・・しかし条件があります』

『条件?それはなんですか?』

『危険だと判断しましたら直ぐ様撤退を』

『わかりました』


 そう言いながらソイルは支度をする為にこの場を後にする。


『ソイル様一体どうされたのでしょうか?』


 そう言ってソイルがこの場を離れて一番最初に口を開いたのは聖薔薇騎士団の双璧の一人・・・フレル・ナイクロウヌ・ナイトノアだ。

 彼女ともう一人・・・聖薔薇騎士団にフレルと同等の力を持っている者がいるが、今はこの場にはいない。

 主に彼女、フレルは軍師として能力を買われてこの地位にいる。

 普通の軍であれば女性の軍師などは煙たがられるのだが・・・この組織、聖薔薇騎士団は女性のみで構成された組織であり、そのような性別などというくだらない事で差別される事がない。

 更にフレルは土の属性魔法を使うことができ、その力でも聖薔薇騎士団に貢献している。


『いつもはもう少し我々の話も聞いてくれるのですが・・・』

『何故か帝国でのあの一件以降、ソイル様は変わられたように・・・』

『言葉を慎んでください。ソイル様も気にかけているのでしょう・・・遠方からではありますが、あのようん惨状を目にしたのですから』


 彼女達がいう惨劇とはスペルオーネ帝国で起きた疫病の狂天使の襲撃であり、遠方からだがその惨劇を目撃してしまったのだ・・・疫病の狂天使に村が襲われた瞬間を。

 それが原因なのかはわからないが、その日以降ソイルの態度が変わってしまったのだ。

 まぁ・・・ソイル自身の実力が変わる事はないので問題はないが。


『ただいま戻りました・・・あれソイル様はいらっしゃらないので?』


 そう言って室内に入って来たのは聖薔薇騎士団の双璧の一人、サリア・クロードウィーン・カシスファイル。

 彼女は聖薔薇騎士団の中で野人レンジャーの職に着いてい、彼女独自の部隊をソイルから与えられている。

 そのため他の聖薔薇騎士団よりも軽装で身を固めている。

 聖薔薇騎士団は主に五つの部隊で構成されていて、その中でも一番多い部隊はソイル率いる強行強襲部隊。

 全員が聖薔薇騎士団の鎧を身に纏い、各々が得意な得物をその手に持っている。

 ある者は両手で扱う大剣、またある者は左手に盾と右手に剣を装備していて、ただ一概に強行強襲部隊に所属する者達は近距離の得物を持っており、主に前線で戦う事を想定している部隊だ。

 次に遠距離攻撃を主体とした遠距離攻撃部隊。

 弓や弩、そして魔導銃を主軸として戦う部隊であり、遠方からの攻撃を想定した部隊だ。

 現在は大分部が、この簡易駐屯所を警備しており遠距離攻撃部隊の部隊長も警備をしているので今この場にはいない。

 次はサリア率いる野人(レンジャー)部隊。

 人数としては五つの部隊でも一番少なくい少数精鋭部隊であり、サリアを含めて十三人しかいない。

 野人(レンジャー)部隊は、サリア以外の十二名は二人一組で主に行動していて、サリアは各地に展開した野人(レンジャー)から送られてくる情報の収集し、それをソイルへと伝える事が役目だ。

 今現在はこの簡易駐屯所に二組、そして偵察に四組出ている。

 そして次は野人(レンジャー)部隊の次に数が少ない各種属性を使う事ができる魔導師団。

 この部隊は主に遊撃部隊であり、誰が何処を担当するかなどは特に決められてはいない。

 その理由は戦闘や、防衛において各々が得意とする魔法を使って戦うスタイルだからである。

 そして最後は全ての部隊を支える救護、援護部隊。

 攻撃力、破壊力、偵察力などはほとんどないが、ソイル部隊を縁の下で支える部隊だ。

 治療薬剤師で主に構成されており、治療液(ポーション)の他にも多数の傷を癒す事が出来る物を持っている。

 この五つの部隊全てを束ねるのがソイルであり、双璧の二人の他にもその部隊を束ねる部隊長が存在している。


『ソイル様は先ほどの衝撃がした場所へと向かう為に準備をしています』

『・・・ソイル様自身が行くのですか?』

『はい。そうです』

『私の部隊で偵察するよりもですか?』

『そうです・・・私も止めましたよ。止めたんですよ!』

 

 少し疲れたようにため息をつきながら自身の髪をクルクルと弄るフレル。

 その言葉を聞き、頭を抱えるようにサリアも困惑しているようだ。

 それもそのはずだ。未知の土地へと行くのに野人(レンジャー)などの索敵能力や、地形把握能力を有している者ならまだ理解できるが、ソイルは生粋の剣士だ。

 まだ野人(レンジャー)部隊のまとめ役であるサリアが来ていないのにも関わらずに、未知の土地へと行こうというのはあまりおすすめ出来ない。


『今この簡易駐屯所にいる私の部隊は二組、その内の一組と・・・私も行くことにします』

『えぇ、そうしてください。私もソイル様が行くと決定してからその方がいいと思ってました』


 そう言い終えるとサリアも自身の部隊を率いる為にこの場を後にする。


『はぁ・・・ソイル様一体どうしてしまったのでしょうか?』


 力無くため息をつきながら机に伏せるフレルであった。



 エルピーラ王国よりも東南・・・


 この場所はエルピーラ王国と、スペルオーネ帝国との国境付近であり・・・東側を見てみれば大陸中央に建国するバルエラ竜王国との国境である巨大な山脈が見える。

 ソイル率いる聖薔薇騎士団の面々は少数精鋭・・・三十名規模の小隊で行動している。

 編成としてはソイル率いる強行強襲部隊が十五名。

 遠距離攻撃部隊は弓兵が五名、魔導銃部隊が一名で構成されていて、弩部隊は編成状除外されフレル達のいる簡易駐屯所を守っている。

 サリア率いる野人(レンジャー)部隊はサリアともう一組・・・合計三名。

 遊撃部隊である魔導師団は風の属性魔法を使える魔導師が一人、土の属性魔法を使える魔導師が一人の合計二名だ。

 そして部隊を支える救護、救援部隊は合計で五名だ。

 少し・・・小隊規模の部隊に救援、救援部隊が五名とは多いかもしれないが・・・それは仕方ないことなのなかもしれない。


『ソイル様そろそろスペルオーネ帝国との国境です』


 小隊の前方にいた野人(レンジャー)がソイルにスペルオーネ帝国との国境に近づいているのを告げ、再び戻って行く。

 現在スペルオーネ帝国は国そのものが機能しておらず、疫病の狂天使が何処にいるのか正確な情報は掴めていない。

 帝国騎士団団長ジュラ・レイジスト・ウルエイオを中心とした連合軍が疫病の狂天使討伐の為に、帝国に赴いているが・・・彼らが赴いているのは主に激戦区の大都市であり、このような村には来ていない。

 確かにより効率よく疫病の狂天使を討伐するのであればその方が効率は良いが・・・どうやらソイルはその事に不服なようでありソイル率いる聖薔薇騎士団の面々は参加していない。


『そうですか・・・それで衝撃音が聞こえた位置までは、あとどれくれらいでしょうか?』

『衝撃音はしましたが爆発音ではないようです・・・それに爆炎や火災も出ていないようですので探すとなると・・・』


 そう言い終えるよりも先に上空にて周囲を警戒していた風の属性魔導師がソイルの元に降り立ち耳元で話始める。


『皆の者聞け!この先に周囲の木々を薙ぎ倒して出来た奇妙な地形がある。先ほど起きた衝撃音と関係があるのか調べる為にその地へと向かう』


 スペルオーネ帝国・・・森林区画にて


 ソイル率いる聖薔薇騎士団の面々は国境を超え、スペルオーネ帝国の領地内へと侵入することに成功し、衝撃音の発信地と思われる奇妙な地形へとたどり着いていた。

 風の属性魔導師が言っていたように木々を薙ぎ倒すように奇妙な地形が出来上がっており、地面は凹んでしまっている。

 しかしながら奇妙な事にば消炎の匂いや、焼け焦げた後等は一切みられない。


『これは一体・・・』

『何かが上空から落ちたのでしょうか』


 何かに気がついた風の属性魔導師がソイルに気がついた事を伝える。


『なるほど・・・これは風の属性魔導師の魔法に似ていると』


 その事を肯定するように頷く風の属性魔導師。

 ソイルはもう一度周囲の状況を上空から把握させる為に、風の属性魔導師を上空へと向かわせていると・・・周囲から何かが動く音が聞こえてくる。

 サリア指示に従うように一組の野人(レンジャー)が音のした方向へと向かって行く。

 他の部隊はソイルを警備するように周囲に展開して警戒している。


『此方へ来い!』


 そう言いながら一組の野人(レンジャー)と共に森林から出てきたのは一人の女性だ。

  整った顔立ちと、長く艶やかな黒曜石を思わせるかのような黒髪。

  ルビーを思わせるような赤い瞳には見るもの全てを魅了するような、そんな瞳の女性だ。

  そんな魅力的な女性なのだが、着ている服はボロボロであり所々が破けていたりしてはいる。

  しかしながら着ている服は破けてはいるが見事な衣装だと判断出来る。

 その証拠に衣装は純白のドレスであり、所々が破けてはいるがそれでも魅力的だ。

 女性が傷だらけなければ更に魅力的なのだが・・・

  そしてこの女性は魅力的なだけではなく、服の上からでもわかるようなボディラインをしている。

 顔だちや、ボロボロではあるが着ている服から考えると何処かの王族、もしくは貴族の令嬢を彷彿させるような女性だ。

  首に嵌められている首輪がなければ・・・


『な!?貴女は!?』


 驚いているソイルを他所にソイルが何故驚いているのか理解出来ない周りの面々。

 それは連れてこれた女性も同じなようで、キョトンとしている。


『貴様今すぐその獲物を手離せ!』


 怒鳴るようにして野人(レンジャー)の持っている獲物を引かせるように指示するソイル。

 しかしながら野人(レンジャー)の方はソイルの言っている意味が分からないのか困惑している様子だ。


『何を躊躇っている・・・私は今すぐ手離せと言ったのだぞ』


 先ほど怒鳴った時とは打って変わって今度はドスの効いた口調に変わるソイル。

 明らかにソイルは怒っている。

 その理由は周りにいる聖薔薇騎士団には分からないが、とりあえず野人(レンジャー)は得物手離す。


『部下が失礼しました』


 そう言いながら女性に謝罪するソイル。

 何故エルピーラ王国の第二王女であるソイルが謝罪をしているのか理解出来ていない聖薔薇騎士団。


『ソイル様このお方は・・・』

『・・・このお方は私が面倒をみる。お前達は先に帰っていろ』

『な!?ソイル様何を言って・・・』

『もう一度言う。お前達は先に帰っていろ!』


 第二王女であるソイルが護衛の一人も付けずにいるという事が、どれ程危険かという事を理解している聖薔薇騎士団の面々がソイルを止めようとするが・・・やはりソイルは言う事を聞いてくれず自身の部下、部隊である聖薔薇騎士団の面々に対して強い口調で言い放つ。

 その間も一体何がどうなっているのか理解出来ていない女性。

 何故ソイルが苛立っているのか理解出来ていない様子だ。


『しかしソイル様の身に何かありましたら』

『何かあったら直ぐに連絡する・・・だから』


 やはり聖薔薇騎士団の面々、そうして聖薔薇騎士団の双璧であるサリアの意見にも聞く耳をもたないようだ。


『・・・わかりました。ソイル様、危険だと判断しましたら直ちに叫んでください』


 そう告げるとサリアはソイルが率いるはずの聖薔薇騎士団を先に帰らせる。

 無論サリアともう一組の野人(レンジャー)はソイルの意見には従わず、息を潜めて隠れているが・・・


『さて・・・私の部隊は帰らせました。改めてお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?』


 ソイルは女性・・・マリアティアスに対して王でも挨拶するようにお辞儀をする。


(うーん・・・先ほどから考えておりましたがこの女性は誰なのでしょうか?心当たりがありませんねぇ・・・)


 先ほどからマリアティアスに対して何か・・・知っているような態度のソイルだが、名前を聞こうとしているあたり、あまり面識はないようだ。

 その証拠にマリアティアスには目の前の女性・・・エルピーラ王国第二王女ソイル・ネロクリリス・ラック・エルピーラとう女性は記憶にない・・・単に忘れているだけなのかも知れないが。


(まぁ・・・この場合は口裏を合わせた方がいいでしょうね)


『わ、私の名前は・・・マリアと申します』


 自身の名前を偽り・・・マリアと名乗ったマリアティアス。


 それに対してソイルも自身のフルネームで答える。


『あ、あの・・・マリア様』


 恐る恐るマリアに対して話しかけようとしているソイル。

 その態度は先ほど聖薔薇騎士団の面々に対して向けていた態度とは打って変わって、なにやら緊張している様子だ。

 その様子、態度はまるで好きな人と二人っきりで話すような感じだ。


『あの・・・お話のもよろしいのですが少し移動しましようか?』


 マリアティアスはこの場から少し離れた、木々が倒れて椅子のようになっている場所へと移動する。


(・・・こちらを監視している人数がに三名。さっきの聖薔薇騎士団の面々ですね)


 マリアティアスはソイル、そしてこちらを監視している三名の野人(レンジャー)に気がつかれないように結界の魔法を展開する。

 この結界魔法は、相手を閉じ込める魔法や相手の動きを阻害するような魔法ではない。

 この結界魔法は中に入った者の気配、そして音等を遮断する魔法だ。


『ソイル様達の気配が消えた!?』

『私にも気配を感じる事が出来ません・・・』

『サリア様もですか?まさかソイル様に何かあったのでは!?』


 ソイルの気配がなくなったことに危機感を抱いたサリア達。

 一瞬躊躇したが、自身の主であるソイルを探す為に行動しようとしたその時・・・ソイル達の目の前に不思議な事が起きる。

 ソイル達を包み込むようにして巨大な泡が発生する。


『な、なんだこれは!?』

『泡?』

『破れない!?なんなんだこれは』


 突如として野人(レンジャー)部隊に襲いかかった奇妙な、全身を多い尽くす巨大な泡。

 何故か破ることも、断ち斬ることも出来ない泡に包まれてしまった野人(レンジャー)に更に不思議な事が起きる。


『な、ちょっ・・・』

『まずい・・・で・・・』

『こ、これは!?』


 サリア達が驚いているのを他に、サリア達を包み込んだ泡ごと遠方・・・更に南へと飛ばされてしまう。

 何処にたどり着くのか?何故吹き飛ばされてしまったのか?

 この泡がなんなのか?何故急に出来てしまったのか分からないままサリア達は飛ばされて・・・そして優しく、優しく地上へと下ろされる。


『こ、ここは・・・』

『既に滅んだ街?』

『いえ・・・ここはスペルオーネ帝国の首都でしょうか』

『そうなのですかサリア様?』

『確定ではないですが・・・そうだと思います』


 サリア達が飛ばされた場所・・・それは嘗ては栄え、繁栄していたスペルオーネ帝国の首都・ダグマオーネであると予想する。

 サリアが自信ない理由としてはこの場所が見るも無惨に破壊されてしまっているからであり、瓦礫が散乱してしまっているからだ。

 そして何よりも・・・


『この叫び声!』

『この雰囲気はまさか・・・』


 サリア達が気がつき、声のした方向に身構えてから数秒後・・・三体の疫病の狂天使が飛来してくる。

 枯れた枝のような真っ赤な翼に、死体のような肌、そして何よりも世界全てを怨むような咆哮が響き渡る。


『疫病の狂天使!』

『しかも三体・・・皮肉にも私達と同じ数ですね』

『・・・サリア様お逃げください』

『そうですね・・・その方が得策ですね』

『貴女達まさか・・・』

『二対三・・・圧倒的に不利ですがサリア様が逃げるだけの時間、数分くらいは稼いでみせますよ』


 そう言いながら手に持っている短刀を構える野人レンジャーの二人。

 とても疫病の狂天使を倒すような装備ではない二人だが・・・引くつもりはないようだ。

 本来、野人レンジャーというものは偵察、不意打ち、未知の土地へと赴いた時に困らないような訓練をしている者が多く、真っ正面からの戦闘を想定してはいない。

 そしてそもそも疫病の狂天使との戦いを想定していないのだ。


『わかりました・・・私は一足早くソイル様の元に戻ります』

『えぇ・・・そうしてくださいあサリア様』

『・・・必ず戻って来てくださいね』

『了解です』


 疫病の狂天使が世界を怨む咆哮をあげて野人レンジャーに向かって突撃を開始し始めるのを他所に、サリアはソイルの元に向かうべく行動を開始する。



『くそ!一体何が起きて・・・』


 サリアが瓦礫が散乱してしまっているダグマオーネを疾走する中・・・ソイルの目の前に二体の疫病の狂天使が舞い降りる。

 しかしその疫病の狂天使は先ほどの疫病の狂天使とは違い片方が純白の翼をしており、そしてその二体の疫病の狂天使には天使の輪のような物浮いている。


『何も・・・』


 驚いているサリアを他所に二体の疫病の狂天使・・・アイカとエリカは魔法を発動させる。

 純黒の炎の魔法を・・・

 逃げようとしたサリアだが時すでに遅く純黒の炎に包まれてしまう。

 苦しみ悶えるサリアだが、必死に純黒の炎を消そうと地面を転げ回るサリアだが・・・純黒の炎が消える事はなく、先にサリアが事切れてしまった。

 既に動かなくなってしまったサリアなのだが・・・純黒の炎は未だに消えてはいない。

 純黒の炎はサリアの皮膚を焼き、肉を焼き尽くし、そして骨すらも灰にしてやっと消える。


『お母さんの邪魔する者は決して許さない』


 アイカとエリカはそう言い終えるとこの場を飛び立つ。

 既に灰となってしまったサリアを他所に・・・

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