表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/109

嵐竜妖精

  ここは帝国東部バルエラ竜王国との境界付近。

  大陸中央に君臨する最強最大国家であるバルエラ竜王国は、国そのものが巨大な浮遊大陸でありその大陸中央から東西南北に各大陸が存在している国だ。

  各大陸には有力な竜人(ドラグニル)が支配しており、全員が全員人間程度では相手にならない程の力を持っている。

  そしてその中の一人・・・浮遊大陸西部を支配している竜人(ドラグニル)ルーシャ・ルビー・イエウエスト・アリードライブは女神セラフティアスが作ったと言われる結界を通り帝国東部の・・・廃墟となっている建物に赴いている。

  帝国東部ではそれなりに大きかったのであろう建物だが、その上部が朽ち果ててしまっており、元々は砦であったのであろうと想像できる。


『あいつから連絡があったんだけど・・・まだ来ていないのかなぁ?』


  ルーシャはその妖精のような四枚の翼をパタパタさせ、鎧のような尻尾でいじけているように、暇そうにしている。

  小柄なその身体に、長い緑色の髪を一本に纏め、金色の瞳と同じく金色の二本角が特徴的な竜人(ドラグニル)なのだが・・・それでもその外形に騙されてはならない。

  幼子のように見えるが、西側を支配する竜人(ドラグニル)の中でも最も強い竜人(ドラグニル)であるルーシャ・ルビー・イエウエスト・アリードライブが、自身の浮遊大陸を離れ帝国東部へと侵入しているのだ。

  明らかに異常であり、もし見かければ大事になるのは必然なのだが・・・廃墟となってしまっているこの都市では目撃する者はいるのか疑問である。


『おや・・・あれは?』


  ルーシャがこちらに向かってくる一つ影を確認すると、翼を広げて飛び立つ。

 

『やぁマリアティアス。遅かったね』

『これでも私の最高時速だったのですけどね』

『遅いなぁ・・・まぁ、マリアティアスが遅いのはその体型のせいなんじゃないの?』


  クスクスと笑いながらマリアティアスの胸を凝視するルーシャ。

  確かにマリアティアスはスレンダーなルーシャとは違い・・・凹凸が激しい。

  まぁ、それはどうすることも出来ないことなのでマリアティアスは何も言えなってしまうが。


『それよりも会えて嬉しいです』

『私もだよマリアティアス・・・最近はあってくれないから心配だったんだよね』


  ルーシャが怒っていると表現するように頬を膨らませている。

  そんなルーシャに対してマリアティアスは小さな子供をなだめるように優しく抱き締め、頭を撫でる。

 

『手紙は送っていたのですけどねぇ・・・』

『それはそうだけど・・・それでマリアティアス。帝国の結界が機能していないのはマリアティアスの作戦が成功したってことでいいんだよね?』


  ルーシャがキラキラした瞳でマリアティアスを見つめ、マリアティアスは肯定するように頷くと更に瞳の輝きがます。


『ねぇねぇ。じゃあさぁ・・・後二ヶ国ももう少しなの?』

『もう少し・・・王国の問題はアレをどうするのか。魔法国においてはあの監視の眼をどうにかしないといけませんからねぇ』

『あれらでなんとかならないの?』

『あれら・・・疫病の狂天使は破壊の象徴、魔法国へたどり着くには少し遠いんですよねぇ』


  そう言って少し考え込むマリアティアスだが、いい案が浮かび上がることはなく結局は疫病の狂天使が進撃するしかないとルーシャに告げる。

  そして、次第に疫病の狂天使は増え続け、バルエラ竜王国へと侵入してくると。

  その事を聞いてもルーシャは驚かなかった。

  いや、むしろ満面の笑みを浮かべ楽しそうにしている。


『ねぇ!僕のこの退屈を紛らわしてくれるような強い疫病の狂天使はいたの?』

『私も全部の疫病の狂天使を知っているわけでは無いですが・・・数体はいるはずですね』

『そうなんだぁ!』


  キラキラと自分が欲していた玩具が手に入ったようにはしゃぐルーシャ。


『それでルーシャ・・・私の言っていた要件は叶いそうですか?』

 

  マリアティアスの問いかけににっこりと笑みを浮かべ頷くルーシャ。

  マリアティアスがルーシャに頼んだ要件とは・・・


『竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジとマリアティアスが合わせるって要件は大丈夫だと思うよ。なんたってこの帝国を覆っていた結界を破壊してくれたんだから』

『そうですかそれは良かったです』


  マリアティアスが安心したのか深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

  どうやらマリアティアスの要件は叶ったが・・・どうやら問題もあるようだ。


『まぁ・・・人間であるマリアティアスが僕達の国、バルエラ竜王国に来る方法はただ一つ・・・僕の奴隷としてなら連れて行ってあげるよ』

『・・・私を奴隷にすると?』

『そうだよ!マリアティアスは使える人間だからさぁ・・・この帝国での出来事が成功したら絶対に奴隷にするって決めたんだ!人間のような愚かな種族は全員滅びるべきなんだけどマリアティアスだけは例外として許してもらえるように頼んでみるよ』


  マリアティアスは苦虫を噛み潰した表情でいると不意にルーシャが近づく。

  何か不思議そうな・・・感じであり、マリアティアスが何故そのような表情をしているのか分からないというような雰囲気だ。


『どうしたのマリアティアス?』

『いえ・・・何も・・・』

『そうなの?でも、何だか・・・不満があるような顔しているねぇ』


  息がかかりそうな程の近さに近づくルーシャ。

  ルーシャの金色の瞳にマリアティアスが映るその表情は・・・不機嫌と言っても過言ではない表情だ。

 

『まぁいいや・・・それじゃはいこれ!』


  そう言ってルーシャが取り出したのは手錠と首輪であり、その手錠と首輪にはバルエラ竜王国の紋章が掘られている。


『その首輪は私が破壊してあげるよ!』


  ルーシャは手錠と首輪を持っている方とは別の手に腰に差しているレイピアに手をかける。

  レイピアは白薔薇と金色の茨が描かれていて、刺殺に特化した作りになっているのがわかる。

  そしてルーシャはマリアティアスが発言するよりも早く、マリアティアスの首輪に向かって攻撃する。

  小柄とはいえ西の浮遊大陸最強のルーシャの突きは、魔導銃(エンチャントガン)の速度よりも格段に速く・・・その速さは人間程度では目視出来ない程の速さだ。

  けたたましい音が響き渡り、マリアティアスが後方へと飛ぶ。

  空中で姿勢を制御したマリアティアス。

  しかし・・・マリアティアスのその首輪が壊れることはなかった。

  それどころか傷一つさえついていない。


『・・・なに?その首輪?』


  不思議そうにマリアティアスの首輪を見つめ、攻撃したレイピアを見つめるルーシャ。

  そのルーシャのレイピアには微かに凹みが出来ていた。

  圧倒な速度で攻撃し、そして竜人(ドラグニル)の間でも有名なルーシャが放った化け物じみた突き。

  その化け物じみた突きで攻撃したのにも関わらずに傷一つ、凹みさえ出来ていないマリアティアスの首輪は一体どんな物質で出来ているのか理解出来ないルーシャ。

  しかしながら思い通りに事が進まなかったのは確かだ。何故ならルーシャが明らかに不機嫌な顔をしているからである。


『僕のレイピアが傷ついたんだけど・・・どんな物質からできてるの?』

『それは私にも分からないので困っているんですよね・・・これがあるから少し人から変な目で見られるので』


  マリアティアスが苦笑しながらやれやれというような雰囲気で首輪をつつく。

  それに対してルーシャの機嫌がよくなることはなかったが・・・ルーシャの考えが変わる事はなかった。


『まぁいいや・・・首輪と手錠するから来てよ』

『いやですね・・・私は奴隷になるつもりはないですの・・・』


  その言葉を言い終えるよりも速くルーシャが攻撃を仕掛ける。

  無論命を狙う攻撃ではなく、マリアティアスに対して竜人(ドラグニル)の、ルーシャの力を思い知らせる為の攻撃であり、狙うのはマリアティアスの肩だ。

  その攻撃に対してマリアティアスは防御魔法を直ちに展開して応戦する。

  間一髪でルーシャの攻撃を防ぐことに成功したマリアティアスだが、展開した風の防御魔法に皹が入る。


『肩を抉るつもりだったのですか?』

『いや、そんなつもりは・・・僕はただマリアティアスが言うこと聞いてくれないから少し痛めつけるつもりだったんだよね』

『私は奴隷になるつもりはないので・・・』

『我が儘だなぁ・・・マリアティアスは使える人間だから奴隷として使ってあげるって言ってるの』


  子供が我が儘言ってるようも聞こえるが、マリアティアスにとってはかなり重要なことでありそれは譲れないのだ。


『少しは手加減してあげるよ・・・』


  その言葉を呟き、首輪と手錠を捨て右手にもう一つのレイピアを手に取りマリアティアスに向ける。


『このレイピア覚えてる?』

『もちろんです。私が貴女に送った物ですから』

『そうだよぉ・・・このレイピアはマリアティアスから貰った物。あの時の事は今でも覚えているよ』

『だったら・・・』

『名のある竜人(ドラグニル)の鍛冶士も驚くような技法で作られた・・・未知の刀と言って過言ではないほどの技術で作られたこのレイピア』


  ルーシャはもう一つレイピアを地面に向かって振るうと地面に斬られたような傷がつく。

  先ほどのレイピアよりも長く、黒薔薇と銀の茨が装飾、持ち手の部分には何やら奇妙な文字が彫られているこのレイピアこそマリアティアスがルーシャの為だけに作った世界に一つしかない武器だ。


『こんな武器が作れる人間やあんな技術を持っている人間は多分マリアティアスしかいない・・・だから僕は手に入れる』

『その事が可能でしょうか?』

『むっ!生意気だなぁ』

『だったら一つ・・・勝負をしましょうか?』

『勝負?』

『そうです。私が負けたら貴女の言う通り奴隷になって差し上げます。私が勝った場合・・・私の物になってくださいね』

『へぇ・・・この僕に勝負するの?この僕に!』

『引き受けてくださいますか?』

『いいよやってやるよ・・・人間と竜人(ドラグニル)、同じ属性でも竜力と魔力では決定的な差があることを教えてあげる!』


  そう言ってルーシャの身体から溢れでる竜力。

  眼には見えないが巨大な圧力がマリアティアスに向けられているのは理解できる。

  しかし、マリアティアスは平然としている。

  それは絶対に負けないという自信からなのか?それとももっと別の・・・何かがあるからなのか?


『それで勝負の方法なのですが、今から日がくれ、日が登り、今と同じような位置に日が再び登ったら終了といたしましょう』

『いいよそれで、まぁそんなに時間は必然ないと思うけど』

『では決まりですね。私がその時間まで耐え忍んだら私の勝利、それまでにルーシャが私を気絶、もしくは降参と言わせたら勝利と言うことで』

『いいけど・・・なにマリアティアス?反撃しないつもりなの?』

『私は反撃しませんよ。聖職者なのですから』

『よく言う・・・外道のくせに』

『それは心外ですね・・・』


  マリアティアスが空中に手をかざすと・・・空中に皹が入る。

  何事かと身構えるルーシャに対してマリアティアスは『まだ開始していない』と告げ、皹の入った空中に穴が空き、マリアティアスの右手が中に入り何かを取り出す。

  その取り出した物は奇妙な文字が掘られた杖を取り出す。

  見事な杖であり、一級品の調度品のような杖で、金と銀の薔薇が装飾され杖の先端には捻れた茨の装飾、持ち手の部分には右側が金色で左側が銀色の蝶々が飾られている。

  そしてその杖を取り出した後には空中に入った皹も何事もなかったかのように元に戻る。


『・・・それは?』

『私が作り上げた・・・世界に一つしかない杖です』

『へぇ・・・さっきのは何なの?』

『私の・・・オリジナル魔法です』


  そう言うとルーシャはにっこりと満面の笑みを浮かべる。

  とても楽しそうに、欲しかった玩具が手に入った子供のように楽しそうにしている。


『やっぱりマリアティアスは面白いなぁ・・・ますます僕の物にしたくなったよ』

『ルーシャには出来ませんよ・・・私は強いですから』

『言うねぇ』

『それではこのベルが落ちた開始としましょうか?音はそれなりに大きい筈ですので』

『いいよ。不正なんてしないでね』

『ルーシャこそ』


  そうに言い終えるとマリアティアスが取り出したベルを地面へと投げ捨てる。

  ベルの音が響き渡ると同時にルーシャが爆発的な加速と共にマリアティアスに斬りかかる。

  風の竜力を利用して、一気に加速したルーシャはまるで弾丸のようであるが・・・マリアティアスは紙一重でかわすことに成功する。

 

『速さだけ・・・』


  ルーシャの攻撃をかわした筈のマリアティアスであったが・・・もう一つの攻撃はかわせていなかったようであり、その衝撃によって吹き飛ばされてしまった。

 

『あははは!かわしたと思った?』

『尻尾は予想してなかったですね・・・不覚』

『でも凄いねマリアティアス・・・私の攻撃速度に反応できるなんて・・・本当に人間?』

『さぁ・・・どうでしょうか?』


  ルーシャと話している内にマリアティアスは魔力を溜め・・・魔法を解き放つ。


偽霞(ディレイミスト)虚庭園(ホロガーデン)!』


  マリアティアスの放った魔法偽露(ディレイミスト)虚庭園(ホロガーデン)とは、マリアティアスの得意とする結界魔法ではなく、周囲一体を霞で覆い尽くす魔法だ。

  風の魔力により拡散して行き瞬く間に周囲の光景が一辺してしまう。

  ルーシャとマリアティアスとの距離はそれほど離れてはいなかったが・・・濃霧のようにして広がる。

  そしてそれだけではなく、この魔法・偽露(ディレイミスト)虚庭園(ホロガーデン)は風の魔力によって周囲をゆっくりと旋回しており平行感覚を狂わせる。

  更に驚くべきはその範囲で、範囲は半径5㎞にも達する。


(さて・・・この濃霧の中でルーシャはどうするのでしょうか?)


  マリアティアスが次の魔法を放つ為に魔力を溜め始める。


(なにこの濃霧・・・水の魔法の応用?にしても凄い濃度・・・さっきまでマリアティアスがいたのに見えないなっちゃた)


  ルーシャは濃密に広がった霞の海の中、マリアティアスがいた方向に向かって風の竜法を撃ち放つが・・・その先にマリアティアスはいなく、そしてせっかく払った霞も瞬時に元通りになってしまった。

 

(やっぱりただの霞じゃないね・・・斬り開いたと思ったのに瞬時に元に戻っちゃうなんて)


  ルーシャは不思議そうにレイピアを振るい、風の竜力によって生じた斬撃で霞斬るがやはり無意味だったようだ。

  濃密に広がる霞の海・・・このままではマリアティアスに時間稼ぎをされてしまいルーシャの負けになってしまう可能性が高い。

  マリアティアスはこの霞の海の中で息を潜め、潜伏していればいずれ時間がきてマリアティアスの勝ちになってしまう。


(仕方ない・・・多少竜力は消費するけど仕方ないか)


  決心したルーシャは勢いよくこの霞の海を脱出するために上空へと飛んで行く。

  平行感覚は狂わされてしまいかねないこの霞の海の中だが、賢明なことにルーシャは無駄に動く事はせずにいたために、どちらが上か下か程度は把握出来ている。

  上空へと飛び、霞の海から逃げることに成功したルーシャ。

  天高くマリアティアスの作ったレイピアを掲げ・・・竜力を溜める。


(ルーシャが偽霧(ディレイミスト)虚庭園(ホロガーデン)を抜け出した・・・何か仕掛けてくるつもりね)


  マリアティアスが警戒していると、突如として巨大な暴風が吹き荒れる。

  意思を持つかのような暴風はマリアティアスの魔法・偽霞(ディレイミスト)虚庭園(ホロガーデン)を振り払って行く。

  自動的に霞の海は修復してゆくが、それでも修復が間に合わず暴風によって霧散してしまった。

  無論この暴風はルーシャが偽露(ディレイミスト)虚庭園(ホロガーデン)を払う為に放った竜法であり、天候を変えてしまう程の暴風は周りの瓦礫も根こそぎ吹き飛ばされてしまった。

  マリアティアスは水の結界魔法でガードし、更に吹き飛ばされてされないように風の魔力と水の魔力混合させアンカーの様な物を生成して吹き飛ばされないようにしてしていた。


(なんて暴風・・・流石はルーシャ)


  マリアティアスがルーシャのことを感心していると、上空から何かが飛来してくる音が聞こえてくる。

 

『風流蓮盾・水輪花盾x3!』


  そのことに気がついたマリアティアスは瞬時に練り上げていた魔力を解放し、風と水による盾を生成する。

  風の盾が蓮の葉のようにして広がり、続いて水の盾が蓮の花を作り上げる。

  大きく花開いた蓮の一つはマリアティアスを守るようにその花びらで包み込み、残りの二枚は上空へと伸びて行く。

  すると一番最初の蓮に衝撃が生じたと思った瞬間、一枚の風流蓮盾・水輪花盾が硝子細工のように粉々に砕け散る。

  そしてもう一つの蓮にも衝撃が伝わり・・・皹が入る。

  しかし、皹だけで終わる事はなく、次第に皹が広がり・・・池に張られた氷のようにゆっくりと壊れる。

  二枚の蓮が破壊されてしまったが、それでもマリアティアスは平然としている。

  なぜなら・・・ルーシャの上空からの攻撃を見事に防いだからだ。

  お互いに言葉は発しないが表情を見るかぎりではマリアティアスの方が一歩、上手だったようだ。

  マリアティアスは得意気に、ルーシャは悔しそうな顔をしているのだから。


『流石はマリアティアス・・・やっぱり最高だよ!』

『随分と余裕ですね・・・流石の貴女も竜力が無くなってきたのでは?』

『確かにあの霞の海は厄介だったから多少の竜力の消費は仕方ないよ・・・でもまだ僕は本気じゃないんだよね』

『なるほど・・・でもルーシャが得意なのは奇襲でしょうし、自慢の速度も私の防御魔法が相手ではあまり相性が悪いようで』

『確かにね・・・マリアティアスのその防御魔法は人間にしては最硬クラスだと思うよ。竜人(ドラグニル)でもそれほどの防御魔法を作れるのはいないと思うよ』

『お褒めに預り光栄です』


  マリアティアスが防備魔法で守られながら優雅にお辞儀をする。

  とても優雅であるが・・・ルーシャにとっては不快なお辞儀に他ならないからだ。


『じゃ・・・少し本気で行っていいかな?』

『・・・まだ本気じゃなかったと』

『そうだよ』


  そう言い終えるよりも速くルーシャがマリアティアスに向かって突撃する。

  レイピアによる刺殺攻撃だが、マリアティアスの防御魔法・『風流蓮盾・水輪花盾』によって防がれてしまう。

  先ほどの『風流蓮盾・水輪花盾』よりも更に強度が増しているからなのか傷一つ付いてはいない。

  何故ルーシャが無意味突撃したのか?そんな事をマリアティアスが考えていると、ルーシャは地面を思いっきり踏みつける。


(発勁か!だがその程度では・・・)


  ルーシャを震源に局地的な地面が発生するが、その程度ではマリアティアスの防御魔法を破壊する事は出来なかった。

  そう・・・ただの発勁程度では。


『竜術奥義・風震発勁!』


  ルーシャが発勁で抉れた地面に向かって風の魔力を叩き付け、地面に皹が入ったようになり皹割れた大地が地割れのようになってしまい・・・地面から暴風が吹き荒れる。

  突如として発生した暴風のような上昇気流によってマリアティアスが防御魔法と共に宙を舞う。


(しまっ・・・)


  マリアティアスが風の属性魔法によって姿勢を安定させようとするが・・・マリアティアスが魔法を発動するよりも速くルーシャが攻撃を直撃する。

  マリアティアスの防御魔法『風流蓮盾・水輪花盾 』とルーシャの風の竜法がぶつかり合い当たりが暴風辺りを吹き荒れる。

  しかしながら姿勢を安定させる事ができず、更に空中では踏ん張ることの出来ないマリアティアスが更に上空高々に打ち上げられてしまった。


(なんという竜力・・・まさか雲より上に飛ばされてしまうなんて)


  上空高々に打ち上げられたマリアティアスが辺りを見渡すと、そこには雲が所々に存在しており地面から遠く離れてしまったようだ。

 

『さて・・・ルーシャは一体何をするつもりなのでしょうか』


  マリアティアスが空中で姿勢を安定させ、周りを見渡すが・・・ルーシャの気配はなく近づいて来る気配も感じられない。

  一体何がしたかったのか?ルーシャの放った竜法は確かに強力であり、並大抵の人間であれば吹き飛ばされてバラバラになっていたかもしれない程の竜法だが、『風流蓮盾・水輪花盾』によって守られているマリアティアスにとってはそれほど強力な竜法ではなかった。

  先ほどのルーシャの刺殺攻撃のような一点集中の貫通攻撃ならいざ知らず、広範囲によって吹き荒れる竜法では堅牢なマリアティアスの防御魔法は破壊する事が出来ないようだ。

  しばらくマリアティアスが空中を漂っていると、不意に何かが近づいて来る気配を感じ・・・気がついた時にはマリアティアスの視界は一辺してしまった。

 

『何がおきて・・・』


  周りを見渡すと、そこは地上でありマリアティアスを守っていた『風流蓮盾・水輪花盾』が無くなっていた。

 

(さっきの衝撃・・・まさかルーシャが!?しかし一体何が・・・)


  マリアティアスが困惑したように周りを見渡していると、笑い声が上空から聞こえてくる。

  とても楽しそうな笑い声、その声の主はルーシャ・ルビー・イエウエスト・アリードライブその人なのだが・・・その容姿が変わってしまっていた。

 

『ルーシャその姿は?』


  困惑したようにマリアティアスがルーシャに問う。

 

『竜法秘伝・覚醒竜血・・・』

 

  ルーシャの姿は先ほどまでとは違い、鎧を纏っているのだ。

  いつの間に鎧着たのか?

  そんな事よりも両腕に装備しているガントレットは禍々しく、それは竜の骨格を連想させるような作りであり、ガントレットにはルーシャの瞳と同じ金色の紋章が血管ようになっている。

  そしてルーシャの両足が猛禽類のような鉤爪のように変化し、両足にも鎧のように変化している。

  しかしながら鎧を纏っている筈のルーシャだが先ほどよりは露出が多いが。


『その姿・・・まさか貴女も血の覚醒を?』


  そう言ってマリアティアスが思い浮かべた人物はただ一人・・・バルエラ竜王国最強の竜人(ドラグニル)・オール・ディストピア・バルフロン・マリッジである。

  そしてそのマリアティアスの問いかけにルーシャは笑って答える。


『一時的にだけど僕も竜王と同じ覚醒(エルダー)古代(エンシェント)竜人(ドラグニル)になれるんだよね・・・その名も暴竜妖精(カタストロフィ・ティターニア)。この姿で相手してあげるよ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ