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黄金世界の優夢都

  そこは全てが綺麗だった。

  周りには綺麗に刈り揃えられた芝生が広がり、植えられている木々には美味しそうな果実が実っている。

  咲き誇る満開の花々からはよい匂いがしており、匂いを嗅ぐだけで幸せな気分にしてくれる。

  そんな楽園のような場所には様々な装飾が施された純白の壁。

  金や銀によって施され、様々な物が描かれている。

  硝子細工のような極め細やかに描かれた金と銀の蝶々。

  今にも動き出しそうなほどに繊細に彫られており、傷一つないと断言できる。

  そしてそんな傷一つない・・・金と銀の蝶々や刻まれた染み一つない純白の壁よりも目を見張るのは、この場所の中・・・中央にそびえ立つ大きな城だ。

  とても大きく、王国、帝国に存在する城よりも大きい。

 

『ここは・・・何処?』


  そんな楽園のような場所に一人、少しばかりこのような場所には似つかわしくない少女が周りを見回している。

  少女の身体には所々に傷痕があり出血してしまっていて、身に付けている服もボロボロになってしまっている。

  何処から来たのか?此処が何処なのか?

  少女は何も分からないまま一人辺りを歩いていると、城の方から何かが少女に向かって来る。


『なに・・・あれ・・・』


  少女は自分に向かって来た人物を見て驚く。

  何故なら・・・


『女神さま・・・?』


  その人物は人ではなかった。

  何故なら人間には無い六枚の翼に天使の輪があり、そして何よりも・・・この世の人とは思えない程の絶世の美女だからだ。

  六枚の翼全てが純白であり、何者にも、何人たりともその純白な翼を染め上げる事は出来ないと思えるほど白く、無垢な・・・純粋な美しく翼だ。

  そしてそんな女神の着ている衣服もまたとても綺麗である。

  女性としての色気を、母性を最大限に表しているような服装で、その服装はまさしく物語に登場しそうな感じだ。

  全身を包み込む薄い透き通った衣服に金色と銀色の糸で織り込まれた装飾、天女の羽衣のような布はどのような力が働いているのかは不明だが、空中に漂っている。

  少女が見とれていると、視界に入った女神が微笑む。

 

『うっ・・・あぁ・・・』


  絶世の美女の微笑むに思わずたじろいでしまう少女。

  あまりにもその笑顔が眩しすぎる為に少しばかり驚いてしまったらしい。

  そして女神にばかりに目を奪われていたが為に、女神の周りを取り巻いている人々・・・天使達に気がつくのが遅れてしまい、声を掛けられるまで気がつかなかった。


『こんにちは!』

『ひぇ!?あ・・・あ・・・こ、こんにちは』


  突然声を掛けられてしまったことに驚いてしまった少女。

 

『そんなに驚かなくても大丈夫ですよ』

『そうそう!僕達も君も同じ仲間!』

『仲間!仲間!』


  少女に話しかけてきた一人の少女天使に、少女の事を仲間だと言ってはしゃぐ少年天使達。

  何を言っているんだ?そんな考えが少女に浮かぶなかで、女神が少女の前に降り立つ。

  近くで見るとより一層美しく見え、その肌は赤子のように艶やかで年齢がまるで分からない・・・

  そもそも女神自体に年齢的な事を考えるのがおかしいかもしれないが。


『あの・・・貴女様は・・・』

『私の名前はセラフティアスと言います』

『女神様だよ!』

『とっても優しいんだよ!』

『絶対に怒らないんだ!』


  自身の目の前に降り立った女性の正体が女神であると聞いた少女。

  女神のような美貌を持っているから女神と言われているのか・・・それともこの女性が本当に女神なのか・・・少女には何も分からない。

  何故なら自分自身の名前すら分からないのだからだ。

  どうやら敵意はないようで、周りの天使も楽しそうに、少女に話しかけて来る。


『あの・・・その・・・私、名前を思い出せないのです自分の・・・』


  少女は自分自身の名前を思い出せないだけではなく・・・何も・・・自分自身の名前や今の今まで何をしていたのか全く持って思い出せないのだ。

  自分の名前、自分の出身、自分の親のすら思い出せないのだ。

  そんな少女に対して女神セラフティアス、天使達は笑いながら答える。

  『無理をして思い出す必要はない』っと。


『で、でも・・・』


  その問いかけに不安になってしまう少女。

  それもそのはずだ。自分が何者なのか?自分が何処から来て、何処に向かっていたのか知らなくても問題無いと言われても不安になってしまうのは仕方のない事なのだ。

  そんな少女の気持ちを察したのか女神セラフティアスは少女を優しい包み込む。


『大丈夫です。何も心配することはありません』

『え、でも・・・』

『大丈夫です。貴女を襲う全ての厄災、恐怖、そして・・・死からも守って差し上げますよ』


  そう言って女神セラフティアスは少女に対して癒しの力を発動する。

  すると先ほどまで傷付いていた少女の身体が癒え、出血が収まり傷痕が消える。

  何事もなかった・・・それほどまでに少女の身体からありとあらゆる傷、傷痕が消えてしまう。

  そして着ている衣服も破れた箇所や、穴の空いた箇所がふさがり元通りに・・・埃一つすら付いていない程に綺麗になる。

  それだけでない・・・女神セラフティアスから発せられる母性、圧倒的な癒しの力によって先ほどから不安に思っていた少女の心も落ち着く。


『う・・・うあぁぁぁぁ』


  不安から解放された少女が思いっきり泣き叫ぶ。

  何が悲しくて泣いているのか?そんな事は分からないが、少女は泣いてしまう。


『よしよし。もう大丈夫ですよ』

『う、うぁ・・・ひっく』

『ここは全てが優しい世界・・・誰も貴女の事を虐げることもなく、誰も貴女を苦しめない。みんながみんな幸せな世界ですよ』

『ひっく・・・女神様・・・』

『泣き止みましたか?それじゃ・・・お城に向かいましょうか?みんなが待っています』

『みんな?』

『そうだよ。お友達!』

『お友達!お友達!みんな優しい』


  そう言って天使達は少女の腕掴み引っ張る。

 


  そして少女は天使達に導かれるように巨大な城へと入って行く。

  城の城門を開けた先には真っ赤な絨毯が敷かれていて、その周りを綺麗な・・・大人の天使達が出迎えてくれる。

  数にして50名前後の大人の天使達。

  よく見ると男性の天使もおり、優しそうな笑顔を少女に向けれいる。

  数は女性の天使の方が多く、まだ若いのか肌にはシミやシワ等は見られない。


『すごい・・・』


  少女が思わずたじろいでしまうと、女神セラフティアスと一緒に来ていた天使の一人が少女の腕を引っ張り、真っ赤な絨毯を一緒に歩く。

  最初は戸惑っていた少女だが次第に緊張が解けたのかぎこちなさが無くなる。


『すごいでしょ!この場所全てセラフティアス様が創造されたんだよ!』

『この大きなお城を!?』

『お城だけじゃないよ。この場所・・・この世界そのものを女神セラフティアス様がお造りになられたんだ』

『本当に?・・・でも』


  この巨大な城だけでなく、この世界そのものが女神セラフティアスによって創造されたと言われて信じられずにいる少女だが・・・少女は自分の身体に起きた事を思い出す。

  女神セラフティアスに包まれ、癒しの力に癒されただけで自身の傷、傷痕が消え、衣服すらも元通り・・・以上になってしまった事を。


『まずは何をする?』

『なにする?なにする?』

『ご飯にする?』

『お風呂にする?』

『それとも・・・』


  二人の天使達が少女を取り囲み何をしたいのか問いかける。

  しかし少女は戸惑ってしまう・・・何をされてしまうのか分からなく、食事をした後に金額を請求されるのではと思ったからだ。


『どうやらまだ戸惑いがあるようですね・・・』

『は、はい・・・あの・・・その本当に私は・・・』


  天使達やこの城の雰囲気には少し慣れたが、それでもどうすればいいか戸惑ってしまう。

  そんな少女に対して横に並んでいた天使一人が問いかける。

  その天使もまた女神セラフティアスには遠く及ばないながらも、他の天使達と同様に顔には一切のシミやシワがない。

  可憐と言うよりはおしとやかな雰囲気の天使だ。


『そうですね・・・であればこの子をお願いできますか?』

『もちろんです。セラフティアス様』


  そう言って優雅にお辞儀をした天使。

 

『さぁ・・・こちらにどうぞ』


  そう言って少女を案内しようと手を差し伸べる。

  その手を少し躊躇しながら手に取ると・・・天使は先ほどセラフティアスがしたように少女を抱き締め、頭を撫でる。


『それでは私達はこれで・・・この子が落ち着きを取り戻したらみんなと一緒にお食事をしましょうか』

『わかった!』

『わかったよ!』


  ここまで付き添ってくれた子供天使達が元気にこの場を去り、城の中を飛んで行く。

  少女達を出迎える為に来ていた周り天使達も各々に飛び立ち、女神セラフティアスもまた少女に別れを告げてこの場を去る。


『さて・・・では私達も行きましょうか?』

『は、はい!』


  天使と共に歩いている少女。

  城の中身はとても・・・言葉では言い表せない程のきらびやかで、華やかな壁画が所々に飾られ、時折少女は足を止めて見とれてしまう。

  その事に対して何も言うことはない・・・我が子を見守る母親のように少女を見守る天使。

  どちらとも何も話す事はなく、とある扉の前にたどり着く。


『どうぞこっちに入ってください』

『この扉ですか?』

『はい。この扉は私には開けられないので』


  そう言って天使が指を差した先にあるのは両開きの・・・少女にとっては少し大きな扉だ。

  少女ば疑問に思う・・・何故自分よりも体格の大きな天使の方が開ける事が出来ないのかを。

  特段少女だけにしか開けられないような細工は目視では見つける事が出来ず、疑問は深まるばかりだ。


『で、でもなんで私にしか開ける事が出来ないのですか?』


  少女が疑問に思いながら扉に手を掛け扉を開ける。

  少女が思っていた程扉は重くは無く、何不自由なく開く事が出来た。


  そして少女は扉の光景を見て息を呑む・・・

  何故なら扉の向こうには夢のような空間が広がっていたのだから。


『す、すごい・・・』


  その光景に思わずと中に入るのを拒んでしまう少女に対して天使は、少女の背中を押して優しく中に入れる。


『あ、あの・・・その・・・こ、これって?』


  戸惑う少女を他所に天使はその翼、両手を広げて周りを見渡すように促す。

  何故少女がこんなにも感動し、言葉失ってしまったのか?

  その理由は・・・


『貴女の心の奥底に存在する理想の部屋・・・ですよね!?』


  少女に対して満面の笑みで微笑みかける天使。

  そう・・・天使の言う通りにこの部屋・・・この空間には少女の理想の部屋が広がっていた。

  まるでお姫様が住んでいるような部屋には少女が好きな・・・好きだった花や、小物。

  ふかふかのぐっすりと眠れるような大きなベッド。

  少女にはまだ少し早いような化粧品が置かれている。


『これも全てセラフティアス様がなさった事なのです・・・自分の記憶がなく不安になる気持ちは私も、そしてみんなが理解しています』

『え・・・』

『私も、そしてこの城に住む全ての者達は過去・・・自分という存在が何なのか理解出来ませんでした』


  少女に対して天使が話始める。

  この世界・・・この城に住む者達の事を・・・


『そ、そうなのですか・・・』

『だから何も心配する事はないですよ。そうですね・・・まずは自分の名前を決めましょうか?』

『名前・・・』

『名前が無いのは何かと不便ですので・・・ちなみに私の名前はクリスと言います』

『クリス様・・・』

『クリスで結構ですよ。私達は皆平等・・・さすがにセラフティアス様は違いますが、全員平等です』

『そうなのですか・・・では、クリスさん』

『まぁ・・・いいでしょう。なんですか?』

『名前を決めなければならないのですよね・・・あの・・・その・・・どんな名前にしたらいいのか分からないです』

『何でもいいんですよ!例えば・・・そうですね自分の好きなお菓子や花の名前もいいですね。自分が何者であったかっと言う記憶は無いかもしれませんが、お菓子や花の名前は思い出せますよね?』


  そう言って天使・・・クリスは部屋に置いてあるお菓子を手にする。

  そのお菓子はカップケーキに乗ったお菓子で、焼きたてなのかとても良い匂いがしてくる。

  そのお菓子の名前はスフレ・・・そして今この瞬間少女の名前もスフレと決まる。


『それでは行きましょうかスフレ』


  スペルオーネ帝国首都ダグマオーネにあるとある砦にて・・・


  帝国騎士団、帝国魔導団と疫病の狂天使との戦闘が激戦になるにつれて次第に砦に連れて来られる負傷者も増加していき、治療に必要な治療液(ポーション)の数も、消毒に必要な薬品、包帯の数も徐々に無くなっていく。

  このままでは数年前・・・帝国に五体同時に疫病の狂天使が出現した時の再来になってしまうかもしれないのだ。

  しかも今回は未だに戦闘は続いており、負傷者は増え続ける一方でもある。

  そんな中、一人の野人(レンジャー)が入ってくる。

  全身に血を浴びているが、足取りはいたって普通で何処にも怪我をしている様子はない。

  なのにも関わらずこの野人(レンジャー)が砦に来たのかというと・・・


『ここの責任者は何処にいる?』

『貴女は・・・』

『こう言う者だ・・・』


  そう言って野人(レンジャー)が看護師に見せたのは帝国中央本部のロゴが刺繍された手帳であり、これは帝国内において身分を保証するものだ。

  極秘の任務や、潜入捜査、そして暗殺等を生業とする野人(レンジャー)にとってこの手帳は絶対に手離せない物であり、死んでも離すなと言われている。

  何故ならこの手帳を見せるだけで絶大な信頼を得られるからだ。

  もちろん帝国の軍部限定ではあるが・・・


『こ、これは失礼しました!』

『いや、大丈夫だ。それよりも案内してくれ』

『わかりました』

 

  そう言って看護師がこの砦の最高責任者の元まで野人(レンジャー)を案内する。

  野人(レンジャー)が案内されたのはこの砦の一角にある個室で、この砦の最高責任者と一人の治療薬剤師、そして一人の少女がベッドで寝ている。

  看護師が血まみれの野人(レンジャー)を連れて来たことに不快感を隠せないこの砦の最高責任者と治療薬剤師。

  当然である。この砦は今は緊急治療の施設として使っており、帝国騎士団の面々であれ最低限血の着いた衣服や、鎧は脱いでもらっている。

  ここには動けず、重傷者もいるので血や、汚れによって傷を悪化させかねないからだ。

  しかしその不快感も、野人(レンジャー)が取り出した帝国中央本部のロゴが入った手帳を見せると、急に態度を変える。


『それでは私達これで・・・』


  そう言い終えるとここまで野人(レンジャー)を案内した看護師がこの場を去る。

  扉が閉まられた事を確認し終えると、野人(レンジャー)が自分が何故この砦に来たのかを告げる。

  その事を聞いたこの砦の最高責任者の表情が一気に曇る。

  何故なら・・・


『・・・本当なのですか?』

『信じたくない気持ちも分かる・・・しかし私の告げた事は事実です』

『北西の砦が陥落・・・そしてそこにいたであろう数万人が犠牲に・・・』

『そうだ。数十体の疫病の狂天使の攻撃によって砦自体が崩落してしまったよ・・・私には何もすることは出来なかった』

 

  そう言ってその顔にから涙が流れる。

  任務の為とはいえ、助けられるであろう数名を犠牲にして自分が生きる事を優先してしまったからだ。

  情報という物は時にどんな人物よりも、どんな宝石、魔導石よりも価値の高い値になることもあるからであり、野人(レンジャー)はその事を理解しているので何よりもその情報をこの砦に知らせに来たのだ。


『今は騎士団・・・重歩兵部分と弓兵、騎士団の混合部隊が応戦しているところですが・・・芳しくはなく、増援が見込まれなければ・・・厳しいでしょうね』

『そのあたりは参謀本部の采配でしょうね』

『とりあえずこの事は伝えました・・・負傷者より一層増えると思いますが何卒お願いします』


  そう言ってこの砦の最高責任者に頭を下げる野人(レンジャー)

  この砦の最高責任者とはいえ、地位的に考えれば帝国中央本部の直属である野人(レンジャー)の方が地位は上であるが、礼儀として頭を下げたのであろう。

  それに対してこの砦の最高責任者もまた頭を下げる。


『ところで・・・この少女はどうしたのですか?』


  そう言って野人(レンジャー)が眠っている少女を指を差す。


『あぁ・・・この少女ですね。それが・・・なんとも不思議な少女でして』

『不思議?』

『はい。この子を治療していました治療薬剤師によりますと何故目を覚まさないのか不思議と言っております。致命傷と見られる傷は無く、何処にも怪我をしている雰囲気がないんですよね・・・治療液(ポーション)を使おうにもこれでは・・・』

『なるほど・・・疫病の狂天に何かされたのでは?』

『どうでしょうか?素人の私には何も・・・』


  この砦の最高責任者と、野人(レンジャー)が話していると、微かに少女の指が動く。

  一瞬・・・ほんの一瞬ではあるが動いたのだ。


『動いた・・・』

『動きましたね・・・しかし目覚める気配は・・・』


  そう言って野人(レンジャー)が少女を覗き込もうとした時・・・悲劇が起こる。

  いや・・・誕生すると言った方が正確なはずだ。


  それは一瞬・・・爆発的に広がった。


『なっ!?』

『何が・・・』


  爆発的に広がる白い物・・・目を凝らして見ているこの砦の最高責任者と野人(レンジャー)がその白い物の正体が布で理解した時には時既に遅く・・・この砦の最高責任者と野人(レンジャー)は命を落とす。

  高速で放たれた布と言う物は、布ではあるが鋭利な刃物のように斬れ、二人の首を斬り飛ばしたのだ。

  しかし・・・それだけでは収まらず広がった布はその質量が多かったようで、煉瓦作りの壁を破壊してしまう。

  何事かと急いで駆けつけたこの砦の警備兵と騎士団が目にした先にあったのは・・・この世界の絶望の象徴、疫病の狂天使が産まれる瞬間であった。

  爆発的に広がった布が収まり一体の小型の疫病の狂天使が其処にはいた。

  血を固めて出来たような真っ赤な枯れ枝のような翼に、天使の輪。

  世界そのものを怨んでいそうな眼は無数の包帯によって目隠しされていて見ることは出来ないが、それでも禍々しい気配は目線を合わせなくても分かるほどだ。

  そして全身を包み込む無数の布は意識を持っているか、周囲を漂いながら警戒している。


『え、疫病の狂天使・・・何故?』

『ま、まず・・・』


  騎士団の一人が剣を抜いた瞬間・・・ボールのように飛ばされ壁に激突し、轢かれた蛙のようになる。


『ぎぃぃぃぎゃぁぁぁぁ!』


  疫病の狂天使は咆哮を上げて暴れ始める。



  名前を変えた少女スフレが身支度を整え、自分の好きな物だけ・・・好きなお菓子や花々が咲いている部屋から出て行く。

  スフレに追従するように天使クリスもまた部屋から出て行く。

  彼女達が向かう場所それは女神セラフティアスが造ったと言われている大食堂。

  豪華絢爛・・・その言葉そのものが具現化したようなきらびやかな大食堂。

  天井から吊り下がった大きなシャンデリアは豪華な装飾が施され、大きな・・・少女の握り拳程度の大きさの赤い宝石に、黄色い宝石。

  全部で七色の宝石が装飾され、硝子で作られた様々な花や綺麗な蝶々もまた目を奪われるほどだ。


『あれ?クリスさんあの子達って・・・』


  スフレ達の向かっている先、大食堂の中には女神セラフティアスと複数の天使と子供達。

  子供達の中にはまだ小さいながらも天使の翼が生えている。

  そしてそんな女神セラフティアスと天使、子供達に囲まれているのは二人の少女。

  一人は年齢的に考えてスフレと同じか少し上の年齢の少女と、スフレよりもまだ幼い・・・年齢的に十歳前後の少女だ。

  二人の少女の背中・・・天使達と同様の翼があるのだが少し違っている。

  少女達の翼には女神セラフティアスと同程度の大きさの翼があり、まだ小さい少女の方の翼はその体格に合っていないのか地面についてしまっている。

  しかしそれだけならまだただの翼の大きな、立派な天使だと言えなくもないが・・・その翼は少女達の片方しかついていない。

  スフレと同じような年齢であろう少女の右側に翼、スフレよりもまだ小さいで少女の翼には左側に翼がある。

  二人の少女の翼の無い方・・・左側と右側には血で出来たような真っ赤な枯れ枝の翼。

  少女達の天使の輪には白と赤い二重の輪がある。

  そして二人の少女の左右の瞳が背中の真っ赤な枯れ枝の翼のように 、瞳が真っ赤で人間の白目に当たる部分が黒くなっている。

  明らかにこの楽園のような場合では異常な存在の二人だ。

  スフレが不思議に思っていると二人の少女が女神セラフティアスにお辞儀をしているのが見れる。

 

『さぁ?私にも分からないですね・・・何かあったのでしょうか?』


  クリスがそう話していると・・・女神セラフティアスが空中に手を掲げる。

  すると空中の空間に皹が入り・・・砕け散る。

  空間の先には真っ暗な世界が広がっており、その空間からは嫌な・・・魂が嫌悪するような感覚に襲われてしまう。

  思わずスフレはクリス腕を握ってしまっており、その手からは嫌な汗が、スフレの身体が震えていた。


『い、嫌・・・クリスさん私の先に行きたくないです』

『スフレ・・・私も行きたくないです』


  スフレがクリスの事を見るとクリスもまたその額から汗が流れており、顔色が優れていない。

  スフレ達だけでは無く、女神セラフティアスを取り巻く天使、子供達も顔色は優れず・・・しまいには子供達の中から泣き出す子供や、その場から逃げ出す子供もいるほどだ。

  そしてスフレ達が見ていると・・・二人の異業の少女達がその空間に入っていき、女神セラフティアスが再び手を掲げると何もなかったかのように元通りになる。

  先ほどまで嫌な、魂が嫌悪する感覚も無くなり、スフレ達が女神セラフティアスの元までたどり着く。


『女神セラフティアス様先ほどのは・・・』

『先ほどの二人なのですが・・・まだやり残した事があるようです』

『まだやり残した事?』

『彼女達はまだ此処には来ないそうです・・・残念ですが彼女達が選択した事なので仕方ないですね。しかし、あの子達は必ず此処に戻って来ます。その時は皆さん歓迎してくださいね』


  女神セラフティアスの問いかけに元気よく返事をする天使、子供達。

  先ほど泣いていた子供も、逃げ出した子供も笑顔になっていて誰も不幸そうな、ネガティブな表情をしていない。

 

  ここは黄金世界の優夢都・・・純粋無垢な、女神セラフティアスを信仰する者のみが来ることが許される永遠の理想郷。

  この黄金世界の優夢都に行く条件とは・・・

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