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不幸連鎖のその先に・・・

  スペルオーネ帝国・・・南部とある村


  帝国首都ダグマオーネとは違い魔法による街灯等もない村では、日が昇ると同時に人々が活動して日が沈むと同時に眠りにつく。

  そのような規則正しく生活をしているが・・・村民の顔は優れていない。

  その理由はここ最近による日照りによる農作物の不良にある。

  農作物に必要不可欠である水が枯渇してしまっているのだ。

  しかも農作物だけではない・・・度重なる日照りの影響によって村の井戸水が残る少なくなってしまっているのだ。

  いくら天を仰いでも雨雲がくる様子もなく、村ではどのようにすればよいのか今議論している最中だ。

  辺りは静まり返り、ランタンを囲んでの会議は村の重要人物を含めて総勢十名以上が村長宅へと集まっている。

  平屋であり、大して豪華でないが大人十名程度であればおさまる家屋だ。


『・・・やはり都市へと赴き魔導師協会へ水の属性魔導師の派遣を要求するのが一番だと思うのじゃが』


  この会議の場で最も年齢の高い老人がしぶしぶ答えを出す。

  しかしこの会議に参加している者の顔色は優れていない。

  この村では水の属性魔導師はおろか、魔法を使える者はおらず魔法石の道具等も存在しない。

  仕方ないのだ。このような特産物も農作物を作る為の充分な量の田畑もない村で暮らそうという、物好きな魔導師などいないのだ。

 

『しかし村長・・・我々が魔導師を雇うにしても』

『分かっておる・・・皆が言いたい事は分かっておるつもりじゃ』


  何故この場にいる面々が渋い顔をしているのかと言うと・・・水の属性魔導師を雇うというからにはそれなりのお金がかかるからである。

  無論いくら村が貧しいからと言っても水の属性魔導師を雇うだけのお金はある。ただそれが不幸が続かなければ雇うだけのお金があったということだ。

  この村を襲った不幸・・・例年以上の日照りが続き、作物が駄目になる可能性があること。

  不幸その弐・・・水が枯渇してしまうと危惧した村長達によって数日前に数名の村人を派遣したが、行方不明になってしまってということ。

  噂によれば疫病の狂天使の襲撃にあってしまったらしいのだが、真意は不明だ。

  不幸その参・・・村から都市へと向かう道中に奇妙な噂が流れている為に、都市へと行ったとしても村へ水の属性魔導師を雇えるのかということだ。

  その嫌な噂というのは夜になると不気味な人物が徘徊していると言われている。

  特徴としては深々と被ったローブに緑色の瞳をした人物であり、性別は不明である。

  何故この人物に不気味な噂が流れているのかと言うと・・・この人物の周りには等しく狂ったような、悲痛な悲鳴が聞こえるからだ。

  必ず聞こえるその悲鳴は聞くに耐えず、聞いているだけで精神を病んでしまいしまいかねないらしい。

  そのような不安要素がある道中を率先して行こうと言う者好きが見つかると良いのだが・・・どの道この世界は金であり、困っているから助けてくれと言っても助けてくれる者は稀だ。


『しかし手段がないのも事実・・・このままではこの地を治める貴族であるセカロン伯爵への納税も儘ならないだけではなく、我々の生活すら危ういのじゃよ』

『そう・・・でよね』


  そう言いながら最早それしか手段ないというように村人達も顔を見合わせる。

  どの村人からも良いアイディアがないのようで、意見が出てこない。


『それで・・・セカロン伯爵への納税なのじゃが』


  村長が一拍置いて重々しく・・・悲しい目をして喋り始める。

 

『彼女達を使おうかと思うのじゃ』


  その言葉を聞いてこの場にいる村人が天を仰ぐようにしてみたり、目を瞑る者、俯き深いため息をする者などどの村人も気分を害している様子だ。

  それもその筈・・・村長の言った彼女達とは数日前に都市へと向かった者達の子供であり、親を失ってしまった者達のことだ。

  『彼女達を使う』っというのは・・・彼女達、親を失った者達をセカロン伯爵への奴隷として売ってしまおうということだ。

  この村では村の誰もが家族ぐるみの付き合いをする中であり、親を失ってしまったからと言っても見棄てることや、奴隷に出すなどはして来なかった。

  しかし・・・不幸が重なり、このままでは村人の半数以上が飢え死にの可能性が出てしまったのだ。

  誰も我が子を奴隷など出す気もない。

  当然家族ぐるみで生活しているので他の家の子供であっても出したくはないが・・・大多数を生かす為には少数を切り捨てなければならない。

  少しの犠牲で終わるのであれば切り捨てる覚悟も必要なのだ。それが上に立つ者の役目であり使命だ。

 

『伯爵からは良い噂を聞かない・・・特に伯爵の・・・奴の趣味に関しては』


  そう言われ再び深いため息をつく村人達。


  エヌジィ・ジェルマン・セカロン伯爵・・・この村を含め数個の土地を持っている貴族であり、上手い物をたらふく食べたからなのか腹が出ており、頭皮の薄さと嫌な笑みをしている貴族だ。

  表面上では何事もなく、村人達に対しても無理な増税や金品の没収する事はない貴族と知られているが・・・彼の私物である奴隷に関しては嫌な噂が流れている。

  奴隷はその人物の所有物であり、どのような扱いをしても問題がない。

  それをいいことにセカロン伯爵は夜な夜な買った奴隷達を使いある商売をしているとの噂だ。

  その商売とは・・・ 娼館経営であり。

  奴隷達を使っての商売なので、言うのも憚れるような趣味の者達が夜な夜な集まっていると言われている。



『だがしかし村の財政をどのようにして確保するのじゃ?最早これしか手だては無いのじゃよ』

『・・・娘と同じ年齢の子供達を売るのか?』


  村長に対しても睨みを聞かせる男性。

  まだ若いがこの場の会議に出席しているのは、彼が彼女達の世話をしているからであり、男性の娘と今売られそうになっている彼女達が友達だからだ。

  自分の娘と同じ年齢の子供を売るのに抵抗があるのであろう・・・

  当然である。友達が奴隷として売り出されたと知ったら自分の娘がどのような心境になるのか、どのような思いで自分を見るのか・・・何故助けてあげなかったのか?何故彼女でなければならなったのか?

  その時どのようにして娘に話してやればよいのか分からないのだ。


『君の言っている事は理解している。そして君も聞いておるじゃろ・・・彼女達の親が金を盗んで逃げたのではないのかと』

『村長!言葉が過ぎる!まだ推測の域を出ない状況での判断は早計だぞ!』


  激昂し、怒鳴るような早口で喋る男性。

  行方不明になった者達の事はよく知っており、お金を盗むなどするような人間でないのは理解している。

  しかし・・・どんなに信用していたとしても時に人間は躊躇無く裏切るのだ。

  自分自身の為に、自分よりも大切な者の為に・・・

  しかしながら未だに行方不明であり、尚且つ愛娘二人を置いて裏切り、姿を眩ませるのは考えにくい。

  それに行方不明の者の中には妻とまだ幼い乳飲み子の父親もいるのだ、やはり何かしらの事件に巻き込まれたと判断した方が妥当だが・・・何も手がかりのない状況では何も決められない。


『・・・多数決で決めようじゃないか』


  今まで黙っていた男性が苦虫を噛み潰したような顔立ちで決断を迫る。

  つまり今この場で今後の村について・・・彼女達の今後について多数決で決めるというのだ。

 

『了解した・・・』


  村長の決断によって多数決がとられ・・・結果は彼女達をセカロン伯爵に売ると結論をくだす。

  重々しい空気は場を支配し、彼女達をいつ売るのか日程を決めるべく再び議論が始まる・・・


  村長宅外部木々が生い茂る果樹の上にて・・・


  村人達が会議をしている最中であり、外の雰囲気を気にも止めている雰囲気はない。

  それをよいことに彼女は今まで村人達の様子を伺っており、村人達もまた彼女の事を気づいている雰囲気はない。

  年端もいかないような、少女とも言えないような顔立ちの女性は苦虫を噛み潰したような顔をして果樹から飛び降りその場を去る。

  その手には小さな炎を灯しながら・・・


  『はぁ・・・はぁ・・・』


  息を切らせながらゆっくりと扉を開けて家に入る少女。

  玄関を通り、居間を通りすぎて寝室へと向かう。

  そこには何も知らずに眠りにつく二人の少女と一人の女性。

  少女達は手を取り合うように、不安を和らげるように互いに抱き付くようにして眠っている。

  その少女達をゆっくりと揺すり起こす。


『お・・・お姉ちゃん?』

『し、静かに・・・アイカそっとこっちへ来て』

『どうしたの?』

『いいからはや・・・』


  二人の少女の片割れが目を覚まし、姉に促されるようにして起きて姉の方へと行こうとするが・・・どうやら眠っていたもう一人の少女も目を覚ましてしまったらしい。

 

『アイカちゃんどうしたの?トイレ?』


  眠そうに目を擦りながら起き上がる少女。

  まだ意識がしっかりしいないのか、言葉がたどたどしい。


(まずい・・・リアエちゃんも目を覚ましちゃった)


『リアエもいっしょに行く』


  (な・・・これじゃリアエちゃんのお母さんも)


  そう言いながら妹であるアイカと、アイカの友達であるリアエがエリカの元まで歩みよってくる。

  どちらも年齢は十歳もいかず、姉であるエリカの年齢は十五歳でまだ思春期真っ盛りの恋も知らない乙女なのだが・・・これからエリカとアイカはこの村を離れ何処か別のところで暮らして行かなければならないのだ。

  セカロン伯爵に奴隷として売られた場合自分たちに未来はなく、恋も知らないまま一生を終えてしまうのは嫌なのだ。

 

『リアエちゃんも一緒に来る?』

『うん。リアエも一緒』


  そう言い終えるとリアエの母親も目を覚ましてしまう。

  まだ完全に目が覚めていないのか寝ぼけた様子だが。


『リアエのお母さん。ちょっとトイレに行かせて来ますね』

『ありがとうエリカちゃん。エリカちゃんは偉いねぇ・・・』


  そう言いながら再び眠りにつくリアエの母親。

  早くこの場を離れなければ怪しまれるのでエリカはアイカとリアエと共に寝室を後にする。


『リアエちゃん先にどうぞ』


  エリカに言われて先に入るリアエ。そしてその事を確認し終えるとエリカはアイカに向かって話始める。

  この村を離れて何処か別のところに向かう事を・・・


 

  翌朝村の村長宅にて・・・


  昨日の会議が終わり各々が家へと帰った後、リアエの父親がエリカ達を確認しようとしていると置き手紙があり内容は『今までお世話になりました』っと書いていた。

  今リアエの父親はその手紙を持ち、村長宅へと集まっている面々に説明をしている最中だ。

  しかし・・・皆からの視線は冷たく、決して好意的な目線でない。

  むしろ怨んでいるような瞳だ。


『なるほど・・・それでお前さんが言うには自分はあの子達を逃がしはおらず、あの子達に話してもいないと言うのじゃな』

『あぁ・・・俺はあの子達に話してもいないし、あの子達を逃がしてはいない』


  再び問われたことに対して力強く断言する。

  あの子達が自らこの村を去ったと今この場に集まった面々に伝えるが・・・どうやら信用は獲られていないようだ。

 

『どうします村長・・・このままでは』


  そう言われて少し考え込む村長。


『捜索隊を結成して探すしかないのでは?』

『確かにそうじゃな・・・早朝に出掛けたのであればそう離れてはおるまい。お前さんにも協力してもらうぞ』


  そう言われて気まずそうに頷くリアエの父親。

  もし彼女達を探しだせなければリアエが売り出されるかもしれないからだ。


 

  村から離れた森林にてエリカとアイカは休憩している。

  村から残り少ない水を汲み出し、父親が残してくれたお金・・・銅貨六十枚を握りしめながら家を出てきたのだ。

  誰にも頼れず、誰にも相談出来ないアイカは隣で朝食を食べているエリカ髪を撫でる。


『アイカはお母さんそっくりだねぇ・・・』

『そうなのお姉ちゃん?』


  姉に髪を撫でられ照れたように、エリカを見つめるアイカ。

  その瞳は純粋で何も知らない瞳だ・・・これからどんな苦難が待っているとも知らずに。

  アイカは自分の母親の事を覚えていない。 アイカが産まれて数日後に流行り病にかかってしまい亡くなってしまったのだ。


『ねぇ・・・お姉ちゃん。お父さんのところまではあとどのくらいなの?』


  アイカの純粋な瞳に罪悪感が生まれる。

  エリカはアイカに対して父親の元まで一緒に行こうと誘い、夜遅くに村から出ていったのだ。

  夜の危険性は理解している。しかしもしあの話が本当であるのならばいち早く村を離れなければならない。

  少しでも希望がある内に・・・


『まだまだ先にかなぁ・・・』

『アイカ頑張る。お父さんに会いたいもん』

『そうだね・・・私も会いたいよ』


  アイカの事を抱き締めるエリカ。

  その瞳には涙が流れていた・・・


  スペルオーネ帝国南部森林区画にて・・・


  スペルオーネ帝国の南部に広がる森林区画の一部を縄張りしている盗賊軍団・・・死刀の黒狼の面々は宴をしていた。

  総数四十名以上からなるならず者集団であり、全員が躊躇わずに暴力を振るう。そのような面々が肉を貪り、酒を飲みどんちゃん騒ぎをしている。

 

『頭はやっぱすげぇなぁ!頭の思い通りに事が進むんだからよ』

『確かに、魔導師としてだけでなく俺らが考えつかねぇことをやってのけるのは流石だぜ』


  乾杯しながら自分たちで勝ち取った事を喜び。

  そしてその作戦を立案した死刀の黒狼の頭であるゼオ・マグザスに称賛の言葉を掲げている。

  死刀の黒狼頭ゼオ・マグザス・・・火の属性魔導師であり元々は帝国魔導団に属していた人物で、不祥事を働いてしまったが故に帝国魔導団を追放されてしまったのだ。

  行く宛もないマグザスは帝国魔導団に居たときの情報を頼りに死刀の黒狼の縄張りへと踏入、死刀の黒狼の頭とに戦いを制して今の地位にいるのだ。

  帝国魔導団に居たときと比べて快適とは言えないが、それでも一人で傭兵をやるよりは収入がある。

  何より・・・これだけ人数がいるのだ不用意に戦いを挑む愚か者も少ない筈だ。

  襲撃するのであれば複数人いる時よりも一人の時を優先するのは当たり前だ。

  だが、帝国が本気で死刀の黒狼を潰すのであれば双方共に大きな損害を被る筈であり、マグザス一人で傭兵をしていた場合は殺される可能性が高いからだ。


『そう誉めるなよ・・・俺はただ・・・お前達を信用しているだけだ』


  そう言われて照れたように互いの顔を見合わせる死刀の黒狼の面々。

  どうやら自分たちが頭であるマグザスから信用されていると告げられ満更でもないようだ。

 

『頼りにしているぜお前達』


  マグザスの言葉を聞き、歓喜が爆発したのか一斉にマグザスに対して称賛の言葉を言い始める。


(全くチョロい連中だぜ・・・前の頭は恐怖と力でこいつらを統率していたが俺は違う。確かに恐怖は優秀な手段ではあるが・・・一度でも敗北した場合その力は弱ってしまう。その事を理解出来ていなかったあいつには感謝しないとなぁ)


『頭!次はどんなに事をするんだ!?』

『俺たちは何時でも頭について行くぜ』

『・・・そうだなぁ』


  マグザスが次の獲物について考えていると、根城にしていた屋敷の扉が開かれ数名の面々が入ってくる。

  この面々は街などで情報収集と、依頼等を請け負う事をしている面々でありこの根城に来るというは、どうやら何かしらの動きがあったようだ。


『頭!依頼の話なんだが・・・』


  依頼の話を聞き終えた死刀の黒狼の面々が何とも言えない雰囲気でマグザスの方を見ている。

  その理由はもちろん依頼内容なのだが・・・依頼の内容は理解できる。しかし問題なのは依頼者が貴族であるということなのだ。

  死刀の黒狼に依頼して貴族の名前はエヌジィ・ジェルマン・セカロン伯爵。

  死刀の黒狼が縄張りにしている南部を納めている貴族であり、マグザスが帝国魔導団に居たときに何度か都市で見かけたことのある男性だ。

  そしてその男が死刀の黒狼に依頼してきた内容とは、とある人物の誘拐でありその人物は今旅をしているとのことだ。


『どうします頭?貴族からの依頼なんて俺らは受けたことが無いぜ』


  そう言ったのは情報収集と、依頼を請け負う面々を統率している男であり、やせ形だがその眼光は鋭くナイフ術を得意としていて、街では雑貨店を営みながら情報を集めている。


『確かに貴族からの依頼はした事がねぇし・・・それに誘拐する相手が貴族や王族であった場合だと下りるしかねぇぞ』

『それなら安心してくれ頭。拐う相手は貴族でも王族でも無いぜ』

『なるほど・・・それでそいつを請け負うにあたって報酬額はどれくらいなんだ?』


  マグザスに問われて一拍置き、周りの面々の表情を確認しながら答える。


『前金で金貨三十枚。誘拐に成功して金貨七十枚だそうだ』


  報酬額を聞かされ唖然となる死刀の黒狼の面々。

  それもその筈である。合計で金貨百枚の誘拐依頼など聞いた事がないからだ。

  それも貴族、王族でもない者の誘拐に金貨百枚など正気の沙汰ではない。何か裏がある可能性が高いと考えるのが妥当だが・・・


『ど、どうする頭?』

『そんな金額聞いた事がねぇぜ』

『なんかヤバい気がするな』


  口々に不満や、金額に対しての驚きの声があがる。

  そんな中でマグザスは必死に考えていた、リスクと報酬が釣り合うかどうか・・・


『金額に対しては文句はねぇ。ただ・・・拐う相手が問題だ。そいつは何者なんだ』

『特徴としては・・・長い黒髪に白い肌、赤い瞳の女だ。どうやらこいつは聖職者らしく聖職者のような服装をしているぜ。服の色は髪の色と同じ黒色。スカートに十字架の刺繍がしてあるそうだ。目的は不明だが・・・南の街にいるらしくそこから移動しているかは不明だ』

『黒髪に赤い瞳の女ねぇ・・・確かに特徴的だがそれではフードで顔を隠されたりしたら確認が難しいぞ』

『大丈夫だせ頭。その女なんだが何故か首輪をしているから直ぐに分かると思うぜ。それにその女ってのはかなりの美人らしくスタイルも抜群だって噂だぜ』


  その言葉を聞き目の色を変える男達。欲に餓えた・・・野獣のような眼光をしている。


『元奴隷・・・いや・・・未だに奴隷なのか?』

『その事に関しては未だに分かってはいないぜ』

『それで拐うにしても日程はどのような感じだ?』

『まだその女についての情報が集まってないからな・・・セカロン伯爵が言うには早ければ早いほど良いそうだ。どうします頭?もっと情報が集まってから仕掛けますか?』


  そう言われて考え込むマグザスだが・・・数秒考えた後に答えを告げる。

  内容は出来るだけ早く拐うということだ。

  その事を告げ、各々の準備する死刀の黒狼の面々。



  スペルオーネ帝国・・・南部都市エルセオーネ


『ありがとうございます』

『え、えぇ・・・こちらこそ』


  帝国南部の都市エルセオーネにてマリアティアスは買い物を済ませ、帰宅している最中だ。

  薄暗い路地へと入っていくマリアティアス。

  その後ろには何時間にか追従するローブを着込んだ人物がいる。

  マリアティアスはその人物の事を気にする様子もなく歩いている。

  それもその筈である。マリアティアスの後ろにいるのはマリアティアスと志しを同じくする者エールだ。


『マリアティアス様の言っていた通りに奴らに動きがありました』

『そうですか・・・それではもう一つの方もよろしくお願いしますね』

『了解しました。アリセスにも伝えておきます』


  話終えるとエールの方を向くマリアティアス。

  エールの顔は伺う事が出来ないが、何やら良くない雰囲気を醸し出している。


『あの・・・下衆な野郎はどうしますか?』


  そう言われて思い当たる人物が一人存在する・・・この都市に入って直ぐにマリアティアスへと近づいてきた貴族であり、下衆な下心が丸見えな人物。

 

『確かにアレは見るに耐えない存在ですね・・・しかし私達が手を下す必要はありません。アレに怨みを持つ者は多いですからね』


  そう言われて何処か遠くを見つめるマリアティアス。

 

『力無き者達を私達が導いて差し上げましょう。その願いが届くように・・・』

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