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周辺諸国4

 バルエラ竜王国浮遊都市の下、僅かに日の光が差し込む場所に彼らは生活していた。

  竜人(ドラグニル)という圧倒的な力に支配され、表面上は平和的に暮らしている者達翼無き(ボロクロ)と呼ばれる亜人は日々、竜人(ドラグニル)に貢献するように奴隷のように生活していた。

  ある亜人は竜人(ドラグニル)の為に鉱石を掘り出す作業、またある亜人は竜人(ドラグニル)達が食べる為の食物、果物等を生産している者等はいるが・・・弱者である亜人達の不満は積もるばかりである。

  そして今回、バルエラ竜王国に支配させている亜人達の長は自身の住んでいる地域を離れ中央浮遊都市の下、非戦闘区域へと集結している。

  この非戦闘区域はかつて竜人(ドラグニル)達が暮らしていた区域で、今でもそのかつて暮らしていた建物や、宮殿などが残っている。

  長い年月の末に風化、朽ちている建物も見られるが・・・

  何故この都市が廃棄されたのかと言うと・・・女神セラフティアスと嘗ての竜王が戦いその余波で破壊されたと言われている都市だ。

  その戦いにより数多くの竜人(ドラグニル)が死亡してしまい一時期は世界から滅んだと言われていたが、数百年の時を経て復活し、竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジと同じように血を覚醒させた竜王によって浮遊都市が築きあげられたと言われている。

  そして今現在において浮遊都市は発展し、各地方にある浮遊都市には中央浮遊都市を守る為の竜法陣によって結界を造り上げられている。

  そして各地方浮遊都市は城塞のようになっており、攻め込むのは難攻不落だ。

 

  バルエラ竜王国・廃棄都市・・・旧バルエラ竜王国首都

  至るとことに風化した建物があるが・・・その風化し、廃棄された都市の中でも異彩を放つ建物が存在する。

  周りの建物が風化し、朽ちているのにも関わらずにこの建物はつい最近立てられたのか真新しい感じのする建物だ。

  城のようなのだが・・・この城には人々が暮らすような家具、寝具等が存在せず、人が暮らしている雰囲気はない。

  何故この廃棄都市にこのような建物があるかというと・・・この城には竜人(ドラグニル)と翼無き(ボロクロ)達の長と面会するために使われている城だからだ。


  その城の扉が開けれられ中に入っている一匹の亜人。

  二足歩行の蟻のような亜人であり、四本腕に三本指で、全身が黒く鎧のような外骨格に覆われている。

  非常に強力な顎をもち、自身の体重の倍以上の物質を軽々と持ち上げ運ぶ事が可能で、土を掘って生活していることから魔法石、鉱石の発掘を任されている。

  文明レベルが他の亜人より低く、金属を使う事は稀な種族で肉食であり同族同士の共食いも見られる亜人・蟻人(キールアント)と言われている亜人だ。

  彼が城に入ってくると他の亜人も見られ、お互いに話し合ったり、他の亜人とは関わりたくないのか一人出いる亜人もいる。


『遅かったなガント』


  ガントと言われている蟻人(キールアント)は話しかけてきた方へと振り向く。

  そこには顔は人間だが、首から下は蠍のような亜人が柱に寄りかかっている。

  顔は人間で、首から下が二足歩行の蠍のようなであり、腕の数が蟻人(キールアント)より多いがその内の四本は蟻人(キールアント)より少し小さい。

  蠍人(ピオンウラギ)と言われている亜人で、蟻人(キールアント)と同じく南部で生活している亜人だ。

  この亜人は普段は邪魔なので私生活では使う事がないが他の四本の腕より大きく、長くそして鋏のようになっている腕と、同じようにして太い尻尾を駆使して戦う。

  戦闘能力、そして尻尾の毒が厄介な亜人で、その身に纏う鱗も金属以上の硬度を持っている。

  しかしながらこの亜人も他の昆虫型の亜人と同様に火や冷気系統の魔法に弱い。


『スコルピオン・・・どうやら南側では俺が一番遅かったようだな』


  そう言いながら辺りを見回すガントの先には他の昆虫型の亜人である蝶々(ロッソバタフライ)蜘蛛人(トローアラクネ)が談笑というよりは互いに軽口を叩いたりしている。

  その他にも蛙型の亜人、兎型の亜人、そして猿のような亜人が座っている。


『さぁ座ろうぜ。予定通りに揃っていなければ政導竜様に何て言われるか』

『そうだな』


 

  廃棄都市・中央部会議場


  先ほど亜人達が談笑していた場所よりさらに奥にある会議場では各亜人達の長と、この地の管理を任せられている竜人(ドラグニル)、ストレイブ・ネザー・ポリティキア。

  またの名を政導竜と言われている竜人(ドラグニル)が鎮座している。

  燕尾服を着用し、頭にはモノクロのシルクハット。

  右手に杖を持った竜人(ドラグニル)で、片側が白く、もう片方が黒の双角に同じようにして翼も左右で色が違い、そしてその顔には笑っているような不気味にな二色の仮面を着けている。

  彼はこの土地・・・竜人(ドラグニル)達が見棄てた都市を管理する竜人(ドラグニル)で、彼の横には数名の武装した竜人(ドラグニル)達が控えている。

  ストレイブの役目は翼無き(ボロクロ)達の監視で、彼らが規定通りに献上品を治めているのか経過状況を確認するために今回来たのだ。

  無論ストレイブを含めてこの場にいる竜人(ドラグニル)は全員、例外なく彼ら亜人のことを見下している。

  なので会議とは名ばかりであり、この場は竜人(ドラグニル)達からの一方的な要求の場だ。

  そして各亜人達を束ねる長達が座っている。

 

  東側を住みかにしている亜人。

  二足歩行の蜥蜴のような生物・蜥蜴人(リザードレイン)

  大人になれば身長は2m以上になり、筋肉質な体格と強靭な鱗を持っている亜人だ。

  そして大人になるにつれて大きくなる尻尾は強者の証であり、今この場にいる蜥蜴人(リザードレイン)は通常の蜥蜴人(リザードレイン)より大きく、またその身体には無数の傷が刻まれている。

  この亜人の名前はリザイ。蜥蜴人(リザードレイン)達を束ねる者だ。


  人間の上半身に蛇の下半身が付いたような亜人・蛇人(グロウスナーガ)

  先ほどの亜人・蜥蜴人(リザードレイン)とは仲が悪く、主に森林等で暮らしている種族だ。

  大人になれば全長は5m以上にもなる種族で、今この会議場に出席している蛇人(グロウスナーガ)は種族の中でも異常種と言われるている。

  その理由は体格は普通ながらもその全身の鱗が漆のよう漆黒で、その闇に紛れる鱗を利用し、数多くの成績を修めているからだ。

  その者の名はカルガ。蛇人(グロウスナーガ)達を束ねる者だ。

 

  二足歩行の蛙のような姿の亜人・蛙人(バイストード)

  東側を住みかにしている亜人の中でも中々の頭脳を持ち、策略に長けた種族と言われる。

  その理由の一つに一部の者が魔法を使えるからであり、水の属性魔導師が多く土の属性魔導師も数名ながら存在するからだ。

  そして魔導師となった蛙人(バイストード)はサリーのような布を巻いているのが特徴だ。

  基本的には昆虫系を食し、昆虫系の亜人も食べるので昆虫系の亜人である蟻人(キールアント)や、蠍人(ピオンウラギ)等とは仲が悪く時折争っている。

  種族を束ねる者の名はトルード。


  ずんぐりむっくりな体格をしている亜人・山椒魚人(サラーベリアル)

  この亜人は香辛料的な匂いが特徴的な亜人で、蛙人(バイストード)と同じように二足歩行の亜人だ。

  全身に何かが塗ってあるように光っており、体液には毒があると言われる種族だ。

  長く身長半分程度あるヌメヌメした尻尾を持っており、魔法は使えないが意外に怪力でありスタミナもある。

  両手両足水掻きがあり、そのお陰で水中を自在に活動することが出来る。

  基本的に雑食であり、人間も他の亜人も丸呑みにしてしまう。

  この種族を束ねる者の名は、マルガマンダと言われる。


  西側を住みかにしている亜人。

  人間のような容姿をした亜人であり、牛と人間を掛け合わせたような亜人・牛人(バイタウロス)

  姿形は人間と変わらず、人間に牛の角と尻尾が生えたような姿だ。

  男女両者共に筋肉質になるのが特徴で、女性は他の亜人に比べて胸も大きくなりやすい。

  かなりの怪力の種族で、スタミナも豊富なことを利用して森林等の伐採作業等の力仕事を生業としている。

  その見かけとは裏腹に草食で、フルーツも好みでありよく他の亜人からフルーツを買っている。

  この種族を束ねる者の名は、スロウスと言われる。


  人間のような姿形に獣の耳と尻尾を持つ亜人で、種族名を狼人(ウルフェンズ)

  聴覚、嗅覚が優れており、夜でも月明かりを頼りに辺りを見渡せる眼を持っている亜人だ。

  身体能力が高く、岩山等でも僅かな段差に手足をかけて登ることが出来る。

  この種族の特徴として手足の途中から体毛に覆われていて、毛並みだけでなく人間にはない鋭い爪も脅威であり、文明レベルも他の亜人より高く今この場にいる狼人(ウルフェンズ)はスーツのような物を着ている。

  男女共に同じような服を着る傾向にあり、種族を束ねる狼人(ウルフェンズ)の族長・ギャングもまた同じような服を着ているが彼女が着ている服は族長の証なのか白色になっている。

  魔法を使える種族ではないが、その身体能力を生かした奇襲を得意とする種族だ。


  人間の上半身に馬の下半身の亜人・馬人(シーノホース)

  主に平原を住みかにする亜人で、馬力、スタミナ、スピードに特化した亜人であり、竜人(ドラグニル)の支配下になってからは確認地方から物資を運搬するために働いている。

  比較的大柄な亜人であり、単純な移動速度では他の亜人より速く長を決める上では体格も然る事ながら、移動速度も重要である。

  種族を束ねる者の名はポニー。 上半身に鎧を着込み白馬のように白色の亜人だ。

  攻撃手段は主に体格に見合うような大斧や、弩を用いて戦闘をする。


  二足歩行の虎のような亜人であり、名を虎人(タイファンガー)

  狼人(ウルフェンズ)と同様に嗅覚、聴覚に優れた亜人で、眼も同等に優れている。

  狼人(ウルフェンズ)と比べてパワーとスタミナは優れているが、スピードが劣っているのが特徴である。

  しかし狼人(ウルフェンズ)と違いこちらの亜人は全身が体毛に覆われているので、多少の冷気に対して耐性があるだけでなく、狼人(ウルフェンズ)と一対一で戦った場合であれば虎人(タイファンガー)の方に軍配が上がる。

  強者が族長の地位を獲得するので今この場にいる虎人(タイファンガー)は種族の中でも最も強いと言える。

  その身体には無数の古傷があり、特に目を引くのは顔の半分にまで斬られている大きな傷だ。それにより片眼を失っているのか眼帯をしている。

  まぁ・・・それ以上に彼の体毛が鮮やかな白と黒であるのも目立つ理由だ。

  そして彼の名前はライガーと言われる。


  南側を住みかにしている亜人。

  蟻人(キールアント)蠍人(ピオンウラギ)の他にも二名の亜人が座っている。


  人間の女性の上半身に蜘蛛がくっついたような身体をしている亜人・蜘蛛人(トローアラクネ)

  その女性の上半身にはパーカーのような物を着込んでいて、人間の眼にあたるところとは別に複数の球体がある。

  これは彼女達、蜘蛛人(トローアラクネ)達の持つもう一つの眼であり、それにより通常の亜人より視野が広い。

  主に森林で生活していて、蜘蛛の巣を使っての待ち伏せや、弓等での遠距離攻撃や奇襲攻撃を生業としている亜人だ。

  その反面接近戦や、一対一の戦いが弱い。

  オスが産まれる確率が非常に稀で、産まれた場合は公にする事はなく最も安全な場所で生活している。

  なので今この場いる彼女は蜘蛛人(トローアラクネ)の女王にあたる。

  名をアラクノと言い、彼女は種族としては珍しく風の属性魔法が使える。

  そして彼女の種族は雑食であり、人間も他の亜人も必要であれば躊躇無く殺す種族だ。


  人間に蝶々のような羽根と触角のある亜人・蝶々(ロッソバタフライ)

  飛行可能な珍しい亜人なのだが、竜人(ドラグニル)よりは速度が遅く飛行能力も低い。

  羽根の色が多種多様で今この場にいる蝶々(ロッソバタフライ)の長であるフロスロートは、その中でも一際綺麗な色をしている。

  髪色と同じように眩い青色の羽根の蝶々(ロッソバタフライ)であり、比較的小型で成長しても1m程にしかならない。

  オスとメスの区別が難しく、オスもメスも同様に幼い顔立ちをしている。

  ちなみにフロスロートはオスである・・・少女のような見た目と格好をしているが。

  オスであろうとメスであろうと、同じような服装をしていてセーラー服のような物を来ている。

  戦闘は不向きであり戦闘を好まない種族の亜人で、蜘蛛人(トローアラクネ)とは仲が悪い。

 

  北側を住みかにしている亜人。

  人間に兎の耳と尻尾が生えているような姿の亜人・兎人(ラビットペトル)

  亜人の中でも珍しく争いを好まない性格の種族で、蝶々(ロッソバタフライ)と同様にオスとメスの区別が難しく、オスとメス同様に同じような・・・バニースーツのような物を着ている。

  オスであっても筋肉が付かず、成長しても幼い顔立ちのままである。

  聴覚が亜人の中でも最も優れていて、ジャンプ力も高い。

  暮らしている場所の影響からのか耳と髪色が白く、肌も色白だ。

  基本的に草食であり、フルーツ等も好み蝶々(ロッソバタフライ)とも仲が良く交流をしている。

  兎人(ラビットペトル)達の長の名はベルド。

  幼い顔立ちをしているがこれでも成人している女性だ・・・胸は大きくはないが。


  人間と猿の中間的な亜人・猿人(コギルエイプ)

  人間よりも長い手足が特徴的な亜人で、狼人(ウルフェンズ)と同様に両手両足が毛に覆われていて、尻尾も長くそれで体重支える事も可能な亜人だ。

  比較的手先が器用であり、金属だけでなく衣類も編むことた可能だ。

  魔法を使える者も存在し、今この場にいる猿人(コギルエイプ)は火の属性魔法を扱える。

  仲間意識が高く決して同族を見棄てることがないと言われている。

  住みかは森林等であり戦闘に関しては素早い動きと、木々を利用してのテクニカルな戦闘を得意とする亜人だ。

  今この場にいる猿人(コギルエイプ)の名はジャルと言われている。


  白銀の毛並み持つ二足歩行の熊のような亜人・熊人(グルーベアーズ)

  その全身を覆うけ白銀の毛並みは鉄以上の硬度を持つとされている亜人で、身体は大きな者で3m以上にもなる大型の亜人だ。

  亜人の中でも最も北に住んでおり、寒さに非常に強い種族で、攻撃力・防御力ともに高く、その体格に似合わず移動速度も高いのが特徴的である。

  その巨体を活かしたゴリ押し戦法を得意としており彼らのホームベースである、北の山脈での戦いでは他の亜人ではまず勝ち目がない。

  しかしながら体毛に覆われているからなのか火に非常に弱く、火の属性魔法を扱える者ならば勝つのは容易だ。

  しかしながら熊人(グルーベアーズ)の長であるベリアスは火の属性魔法に対抗する為なのか、身を守る巨大なタワーシールドを持っているとされている。

  今この会議場へは持ってきていないが・・・


  人間に狐の耳と尻尾が生えている亜人・狐人(ベルフォック)

  人間と同等の知性を持っている亜人であり、今この場にいる狐人(ベルフォック)の長・フォーゼは特に頭脳明晰として知られている。

  一族代々培ってきた火の属性魔法の他にも、水の属性魔法を扱える二重属性魔導師(デュアルエレメンティア)を使える亜人だ。

  ブラウスとスカートを着ており、耳と尻尾も含めても多くの人々が振り向く美人である。

  長い黒髪に整った顔に金の瞳は美しく、妖艶な雰囲気を醸し出している。

  基本的に人間と大差ないが・・・狐人(ベルフォック)は全員魔法が使えるのが特徴的だ。

  兎人(ラビットペトル)と仲が良く、良く交流をしている。

 


  今回集まったのは竜人(ドラグニル)達への献上品についての経過報告であり、このようにして何度か報告する機会がある。

  しかしどの亜人達の顔色は優れず、先ほどのように談笑している者はいない。

  何故ならこの場での報告でストレイブの、竜人(ドラグニル)達の望むような成果を報告出来なかった場合粛清されかねないからだ。

 

『さて・・・今回なのですが、まず第一に魔導石の発掘は順調ですか?』

『は、はい。政導竜閣下に言われていた魔導石の発掘は順調とは言い難く・・・貴重魔導石の発掘にいたっては未だに発掘出来ておりません』

『ふむ・・・やはり南では魔導石の採掘は難しいのでしょうかねぇ・・・どう思います』

『どう・・・と言いますと?』


  ストレイブに話しかけられたガントはだしろいでしまう。

  その理由はガントに話しかけたストレイブの瞳がまるでゴミを見るような眼をしているからだ。


『採掘する場所が悪いのか・・・それとも貴方が発掘出来ていないのか』


  そう言われて口ごもるガント。

  ガントを含む土の中でも活動が可能な亜人達はここ最近、竜人(ドラグニル)達から魔導石の発掘を命令され、発掘作業を行っているのだが思うように進んではいない。

  そもそも南部は森林に覆われており、余り魔導石の発掘には向いてはいない。

  しかしだからと言って採掘量がゼロという訳でもなく、地下空洞に当たった場合は多数の魔導石の採掘も可能だ。


『これ以上成果を得られないのでしたら・・・』


  そう言いながらガントに向かって杖を突きつけ・・・竜法を放つ。

  咄嗟に右手で防いだのだが、その防御した右手が燃え盛り焼け焦げ、辺りに焼け焦げた匂いが充満する。

  苦痛で顔を歪め痛みで身体が震えてしまうが、不満を一切漏らすことなく無言で耐えている。


『腕一本・・・まぁこれでよしとしましょうか』

『か、寛大なるご慈悲ありがとうございます』


  腕一本を失いながらも苦痛に耐え、お礼の言葉を述べるガント。

  本当であればストレイブに対して激怒し、殴りかかりたいがそんな事は無駄だと理解しているからガントは耐え、ストレイブの機嫌がこれ以上悪化しないようにするだけだ。

  もし・・・この場で逆らってしまった場合、ガントの眷属達が竜人(ドラグニル)達によって酷い仕打ち、もしくは見せしめとして殺害されかねないからだ。


『と、ところで政導竜閣下、一つよろしいでしょうか』


  そう言って手を上げて発言の許可を求めて来たのは狼人(ウルフェンズ)の長である だ。

  ストレイブに促され発言を許可された はつい先日の出来事をはし始める。

  狼人(ウルフェンズ)達の住んでいる地区に竜人(ドラグニル)が落ちてきたことを。


『ポリティキア様?』


  その報告を聞いて頭を抱えるストレイブ。

  報告ではその竜人(ドラグニル)は死亡してしまったので今からではどうしようもないので仕方ないが・・・その死亡してしまった竜人(ドラグニル)はストレイブの後輩であり、ストレイブと知り合いだったのだ。

 

『あいつが死んだのか・・・』

『・・・申し上げにくいのですがアリードライブ様を怒らせてしまったからではないでしょうか?』


  控えて竜人(ドラグニル)の言葉を聞き、自分の考えも同じだと頷くストレイブ。

  西の浮遊都市・ウエストゲェルを統べる竜人(ドラグニル)である、ルーシャ・ルビー・イエウエスト・アリードライは実力はかなりのものなのだが、気分屋として知られており彼女の機嫌を損ねると流暢する事なく攻撃してくるからだ。

  それにルーシャは竜人(ドラグニル)としては珍しく仲間意識が薄いとも言われている。

 

『もう過ぎてしまったことを考えても仕方ないです。運がなかったと嘆きましょうか』

『その方がよろし・・・』


  控えてていた竜人(ドラグニル)が同情の言葉を投げ掛けようとした時・・・この建物の近くに何かが衝突したのか大きな音と、振動が伝わってくる。

  何事かと確認しにこの場を離れた竜人(ドラグニル)が外に出て数分後・・・一人の竜人(ドラグニル)をこの会議場へと案内する。

  会議場に入ってきた竜人(ドラグニル)を見て驚愕するストレイブ達。

  その会議場に入ってきた竜人(ドラグニル)の名は・・・ルーシャ・ルビー・イエウエスト・アリードライ。


『やぁ・・・ポリティキア少し話しをしようか?』


  そうに言いながらにっこりと笑い会議場ストレイブに詰め寄るルーシャ。

  何故自分が来たのか、そして何故この場にいるのかについて・・・


『と言うわけで多少亜人を借りたいんだよねぇ・・・ねぇいいでしょ?』


  ルーシャはストレイブに向かって好意的な笑みを向けるが・・・その瞳は笑ってはいなかった。

  そしてルーシャに言われたストレイブの答えは決まっている。この場でルーシャの頼み・・・要求を断った場合どのようなことになるのか分かっているからだ。


『もちろんでございますルーシャ様。この翼無き(ボロクロ)どもを存分に使ってください』

『ありがとうポリティキア。さて・・・じゃ行こうか』


  そう言いながらルーシャはギャングと共にこの場を後にする。

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