全ては優しき世界の為に
バルエラ竜王国は数多の竜法、竜法陣、魔導石を使用して空中に浮いている。
これはオールより以前の竜王の政策により、地上からの攻めに対抗する為だ。
空中にあるということは必然的に攻め込むには空を飛ぶ必要出てくる。
その時代は竜人意外にも空を飛ぶことができる亜人もいたのだが・・・竜人との戦争により全滅してしまっている。
なので風の属性魔法を扱う者しか攻め込むことが出来ず・・・大抵の者は竜人と戦ったとしても勝つことはありえない。
なので数百年の間攻め込まれることはなかった。
だがしかし、女神セラフティアス率いる天軍の出現によって状況が変わり・・・そしてセラフティアスが完全復活したことにより更に状況は変化する。
セラフティアスがバルエラ竜王国に降り立ち、魔法陣を作り出す。
大きい物から、小さい物まで様々の魔法陣がセラフティアスに中心に展開され・・・各方面に飛んでゆく。
『地に落ちろ・・・』
各方面に飛んで行った魔法陣が起動し、魔法が炸裂する。
すると数百年間浮遊していたバルエラ竜王国に地に落ちる。
比喩ではない・・・セラフティアスの繰り出した魔法により、竜法国を浮遊させる為に使っていた全ての物が破壊されてしまったのだ。
突如として地面が落下してゆく感覚に襲われた地上にいた竜人は、何事かと思い空へと飛び立つ。
元々空を飛んでいた竜人もまた、突如として飛び交う魔法陣に困惑している間に魔法が発動してしまい・・・バルエラ竜王国が落ちてゆくのを見ているしか出来なかった。
『な、なにが起きて・・・』
『バルエラ竜王国が!?』
『うそ・・・でしょ・・・』
『そんなありえ・・・ありえない』
『落下・・・した?』
バルエラ竜王国が地上へと落下したことにより、轟音が響き渡る。
無論轟音だけではなく、バルエラ竜王国が落下したことによって襲い掛かる衝撃波が周辺に拡散する。
巨大な浮遊都市であるバルエラ竜王国が落下した衝撃は魔法、竜法で放つことができる威力よりも格段に強く・・・そして自然が起こす災害、大災害よりも遥かに強力。
落下したバルエラ竜王国の中で原型を止めている建物は数件程度・・・
残りの住宅や、商業施設、研究施設までもが見るも無惨な瓦礫と化してしまった。
そしてもちろん落下した場所、翼無き者が住まう場所はそれ以上悲惨なことになってしまっているが・・・そんなことは今は関係ない。
それよりも問題なのは女神セラフティアスが完全復活したということこそが問題なのだ。
『これで少しは数は減らせたでしょうかね』
何の感情もこもっていない口調で話すセラフティアス。
セラフティアスがバルエラ竜王国に降りたってから数分後、騒ぎを聞きつけた天使が集まり始める。
『セラフティアスさま!?』
『そんなどうして・・・』
『あ、あれを・・・』
集まった天使達は一直線に、一目散にセラフティアスへと集まる。
どの天使達も驚き、戸惑ってしまってはいるが・・・一様に言えることは全員、セラフティアスが降臨したことに喜んでいるということだ。
そんな天使達に対してセラフティアスは温かく包容し、そして女神の神眼を発動させる。
しかしながら今までの女神の神眼とは違い・・・その能力は全ての天使達へと及ぶ。
今までの女神の神眼の効力は、セラフティアスが指定した天使に対してのみ効果が発する。
全ての天使に効果を付与させるのであれば、いくらセラフティアスと言えども膨大な量の魔力、神力を一度に消費してしまい・・・後々に影響してしまい兼ねない。
だがしかし・・・完全復活を果たしたセラフティアスであれば、そんな心配など無用となる。
例えるのであれば、不完全な状態・・・風邪や体調不良の時に一定距離を走った時と、万全な・・・何も体調不良がない時に同じように一定距離を走った時とでは時間が違うのは明白だからだ。
『全天使に通達します・・・私は完全復活をしました』
セラフティアスのメッセージを受け取る天使達。
今まさに竜人と戦闘中の天使もいるのだが・・・そんなことは関係ない。
一度戦闘を止め、全員、全ての天使達がセラフティアスが降臨したであろう場所へと一直線に向かって行く。
突如として先ほどまで戦闘を繰り広げていた天使達が戦闘を止め、逃げるようにして移動してゆく様子に一瞬、呆気にとられてしまった竜人であったが直ぐ様に追撃の攻撃を喰らわせながら追従する。
逃げる天使に追う竜人。
必死に追いかける竜人であったが、天使達の全速力に追い付けるはずもなく・・・徐々に距離を離されてしまう。
『く、くそ・・・速い!』
『どうなってるんだ・・・』
『なんかあったのは分かるが・・・あの速さは後先考えている様子はねぇぞ!』
『ど、どうします・・・一旦引きますか』
徐々に距離を離されてしまう竜人。
それもその筈だ。
天使達はセラフティアスの元にたどり着く為に全速力・・・持てる全ての魔力を推進力に変えて移動している。
それに対して追いかける竜人は全速力とは言えない。
竜人も、自身の持てる全ての竜力を推進力に変えれば追い付けないこともないのだが・・・全竜力を推進力にした場合どうなるのか理解できない竜人はこの場にはいない。
竜力の低下は竜法の威力、射程距離の弱化につながり・・・過度に失えば移動能力が低下してしまう。
そのような失った状態で追い付いたとしても、その先に天使達が待ち構えているのであれば返り討ちにされかねなく・・・どう考えても全速力は出せないのだ。
そんな竜人が躊躇していると・・・遠方から天使、そしてその天使を追いかけるように竜人が移動しているのが視界に入る。
『あれは・・・』
『別部隊ですね。どうします?』
『合流した方が良さそうだな』
『そ、そうですね・・・合流しましょう』
天使達を追いかけるのは止め、別部隊の竜人と合流する。
『まさかお前達のところも?』
『そうだぜ・・・あいつら急に逃げ出したんだ?』
『一目散に全員か?』
『あぁ・・・』
一体何が起きているのか理解できない竜人の面々。
合流し戦力は増大したが、とりあえず天使達を追いかけることに決定し、そして再び追いかけるが・・・全員、追いかけていた全ての竜人がその動きを止める。
その理由は天使達の向かっている先に今までに見たことのない人物がいたからだ。
『な、なんだあれ・・・』
『天使?』
『翼が多い気が』
『いや、それよりも問題なのは・・・』
『そうですね。多分雰囲気からするに敵の親玉ですね』
『そうだろうよ・・・だが何故今になって現れたんだ?』
『考えてたとしてもわからないですよ。それよりもどうします?』
敵の親玉・・・司令塔が自らの目の前現れたとことにより同様してしまう竜人。
倒さなければならない宿敵であるのだが・・・周りにいる天使の数は竜人の倍以上。
攻撃したとしても倒せれるのかは不明であり、そして何よりも初めてみるセラフティアスの目に見えない圧力に当てられてしまい、怯んでしまったのだ。
それにセラフティアスは竜人から見ても絶世の美女としか言えず、敵とはいえ躊躇してしまうほどの美貌を持っている。
そんな・・・竜人が躊躇していると、セラフティアスを取り巻いていた天使達が一斉に、息を合わせたようにして上空へと飛び立つ。
『飛んだ・・・』
『逃げた?』
『いや・・・どうやら違う気がするなぁ』
一斉に飛び立つ天使達であったが、そんなことよりも竜人はセラフティアスの展開した魔法陣を見て息を呑む。
展開された魔法陣の数はそれほど多くはなく、そして大きくもないのだが・・・付与された魔力が桁違いの純度なのだ。
これはセラフティアスの展開した魔法陣が魔力の他にも神力を纏っているからであり、神力という物を知らない竜人にとっては驚愕に値する物となっている。
そんな、純度の高い魔法陣から放たれるのは何かというと・・・
『天使?』
『魔法陣からか?』
『でも・・・何か・・・』
『あぁ・・・生気が感じられないな』
魔法陣の中から出てきたのは魔法ではなく、天使の姿をした何かが出てくる。
しかしながら生気という物が一切感じられず、人形のような感じではあるが。
この天使達のようなのが何かというと・・・
『救ワレシ英雄ノ魂』
嘗て女神セラフティアスを慕い、そして竜人との戦争の果てに死んでしまった者達の魂。
しかしながら魂と言っても最早感情や、五感などは存在していない。
存在するのは竜人を倒すという感情と、セラフティアスを守るという感情。
その双方の感情に支配された者達の成れの果てであり・・・セラフティアスは彼らを導いた。
『さぁ・・・今こそ宿願を果たすのです』
セラフティアスが指示を出すと同時に一斉に飛び立つ。
彼らは天使でも、人間でもなく・・・聖霊という存在であり、明確な自我という物は存在していない。
ただ彼らの行動理念はただ一つ・・・竜人の殲滅。
そのただ一つの理念を遂行するために攻撃が開始される。
『来るぞ!』
『この状況はまずいんじゃないのか?』
『そうだろうな・・・』
『お前はみんなに知らせろ!』
『了解・・・』
セラフティアスの放った魔法、救ワレシ英雄ノ魂によって状況が悪化してしまったことを知らせる為に移動する竜人。
しかしながらまだ竜人は理解していなかった・・・完全復活したセラフティアスの力を。
今、竜人がどのような状況に置かれているのかを・・・
女神セラフティアスが完全復活したことによって状況が激変してしまった。
まず第一にバルエラ竜王国の落下。
これにより逃げ遅れた竜人達や、防御竜法を発動する前に瓦礫などで押し潰されてしまった竜人おり・・・その被害は甚大。
バルエラ竜王国最大の大損害と言っても過言ではないほどの被害になってしまった。
そして更に追撃するようにセラフティアスの放った救ワレシ英雄ノ魂との戦闘。
救ワレシ英雄ノ魂によって召還された聖霊達は魔法を使うことができなく・・・接近戦しかできないが、それでも脅威であることには変わらない。
『うーん・・・まだ決着がついていないようですね?』
先ほどからセラフティアスは女神の神眼を使用してバルエラ竜王国全土を監視しているのだが・・・まだマリアティアス、そしてアリセスやエールは戻って来ていない。
セラフティアスがこの戦いにおいて最も警戒していたのは竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジであり、その懐刀である竜導六刀だ。
だがしかし・・・今、完全復活したセラフティアスであればどうなのか?
その答えは実際に戦わなければわからない。
『時期に戦争は終わりますが・・・絶望を竜人に叩きつけましょうか?』
そう言い終えると、セラフティアスは魔力と神力を混ぜ・・・右手に集め、繰り出す。
眩いばかりに光輝くその姿はまさに神の鉄槌。
空中・・・何も無い青空に皹が入り、そしてその皹にセラフティアスの集めた魔力と神力を注がれる。
『さぁ・・・現れ出なさい!』
更に皹が入り・・・皹はまるで薄氷が割れるが如く、バルエラ竜王国全土に広がる。
そして皹はマリアティアスや、アリセスやエールがいる筈の漆黒の塊へと伝わり・・・漆黒の塊が破壊されてしまった。
『・・・何が起きて?』
いったい何が起きたのか理解出来ていないアリセス。
突如として世界が破壊され、バルエラ竜王国へと引き戻されたことに驚きを隠しきていないのだが・・・そんな驚いている矢先に足元に魔法陣が展開する。
『この魔法陣は・・・』
凍てつく鋏刀との戦闘により傷を負ってしまっていたアリセスは、そのまま魔法陣へと取り込まれてしまった。
そして魔法陣に取り込まれてた先にあったのは・・・見慣れた仲間の姿と、女神セラフティアスが目の前にいた。
『貴女は・・・』
女神セラフティアスを目の前にしたアリセスは硬直してしまう。
その圧倒的な、魔力と神力に気圧されてしまったのだ。
そしてそれはアリセスだけではなかった。
アリセスの他にもエールを筆頭に勢揃いしていて、全員が全員硬直してしまっている。
『何故いないのです?』
セラフティアスの言葉に我に返るアリセス達。
何故いない・・・その言葉を確認するように周囲をもう一度見渡すと、マリアティアスがいないことに気がつく。
だがいないのはマリアティアスだけではない。
マリアティアスの他にもルーシャもいないのだ。
先ほどの言葉から自分達をこちらに戻したのは間違いなく、セラフティアスだと理解したアリセス達。
何故、何の目的で自分達が集められたのかはわからないが、ただ一つだけ言えることは、目の前の女神・・・セラフティアスが不機嫌であるということだけは言える。
(みんな無事・・・とは言えないけど、どうやら命に別状はないようですね)
(そうだろうけど・・・この状況はいったい?)
(私にもわからないで・・・)
ひそひそ話をしているアリセスとディライを一瞬睨むセラフティアス。
しかしながら数秒程度考えて・・・何処かに飛び立って行ってしまった。
『皆さん無事ですか!?』
セラフティアスがいなくなった瞬間、時でも動き出したかのように一斉に集まるアリセス達。
直ぐ様に狙われやすい空中ではなく、地面に降り立ち治療を開始する。
命に別状がないからと言っても、そのまま放置して傷が悪化してしまうのは愚の骨頂。
治療できる時に治療したいというのは全員同じなのだ。
『とりあえず状況を整理しましょう』
『状況ねぇ・・・いったい何がどうなっているのやら』
『確実にあの・・・女神が原因でしょうね』
『たぶん』
治療している最中に今自分達が置かれている状況を整理するアリセス達。
そして全員が全員、自分たちの意識でこの場に来たのではない。
状況から考えると先ほど居たセラフティアスが原因であるのは間違いないのだが・・・当の本人のセラフティアスがいないので聞くに聞けない状況になってしまっている。
戦闘中、戦闘直後での強制転移であったので先ほどまで戦っていた竜人、竜導六刀であるオロ達がどうなってしまったのかは知るよしもなく・・・歯痒いのだが、それは仕方ないことなのだと割り切る。
確実に止めをさせていないのも中にはいるのだが・・・今から戻って戦闘するわけにもいかない。
再び戦闘するにしても戻ったとしても、もう一度侍女竜達がいるとは限らない。
まぁ・・・十中八九いないのは容易に予想ができる。
先ほどまで戦っていた場所はバルエラ竜王国上空であり、竜人にとっては自らの庭と言ってもよい場所だ。
そんな場所であれば傷つき、負傷した場合何処に行けばよいのか当然わかっており・・・実際オロ達は移動していた。
バルエラ竜王国上空・・・
先ほどまでソイルと戦闘を繰り広げていたオロは今、とある医療施設にてい傷を癒していた。
手元の治療液は既に底を尽き、回復する手段がなかったオロは傷を癒す為には何処かで治療液を調達する必要があったのだ。
そんな中、運良く近くに医療施設があったのは幸運だと言える。
しかしながら医療施設は戦いによって傷ついた竜人で溢れ返ってしまっており、ソイルが求めていた即効性の強い治療液はなかった。
『歯痒いな・・・他の連中はどうなっているんだ?』
治療を終え、治療施設の上空へと飛び立つオロ。
傷はまだ完全に癒えてはいなく、身体を動かすごとに節々が痛む。
本来であれば安静にしておいた方が良いのだが・・・やはりクリティアス達のことが気になる。
上空を覆っていた超巨大な魔法陣はいつの間にかなくなってしまっていた。
誰かが破壊したのかは不明ではあるがオロには理解出来た。
姿は見えなくても、あの超巨大な魔法陣を破壊をできるのはただ一人・・・竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジをおいて他にはいないのだから。
しかしながら疑問は残る・・・
まず第一に何故、どのようにして生命リンクの竜呪法で守られていた巨城から抜け出したのか?
そして何故今オールの気配が感じられないのかという疑問だ。
オール程の竜力を持っている竜人の気配が感じられない・・・常日頃から仕えているオロですら感じられないのはどう考えてもおかしいのだ。
『辻褄が合わ・・・なんだあれは!?』
突如としてこちらに向かってくる一体の影。
しかしながら今いるオロよりもかなりの高度、速度だ。
最初は天使かと思ったオロであったが・・・今までの天使達は全員群れで行動していて、単独行動をしているのは稀だと聞いている。
『天使・・・じゃないのか』
目を凝らし、必死に接近してくる者の正体を暴こうとするオロ。
距離が近づくにつれてその姿は次第に露になってくる。
天使を彷彿させる純白の翼。
しかしながらその純白の翼は六枚あり・・・そして何よりも美女であった。
オールとは違う美しさを兼ね備えた美女は、敵であるオロでさえも息を呑む美しさで終始見とれてしまいそうになったが、オロは気がついてしまう。
こちらに接近して来る者の正体を・・・
『まさかあれは・・・女神セラフティアス!?』
接近して来る者の正体がセラフティアスだとわかった瞬間、表情が一気に変化する。
実際に見たことはなく、伝承程度しか聞いたことはなかったが・・・それでも理解出来た。
あの絶対的・・・全てを超越した存在はセラフティアスだと。
『何故あいつが・・・いや、今そんなことを考えている暇はないか!』
何故セラフティアスがいるのかは置いておいて、オロは竜力を溜め・・・解き放つ。
ソイルとの戦闘で傷を負い、竜力を消費してしまったオロであったが、それでも攻撃しなければならないと思ったからだ。
しかしながらオロが放った竜法はセラフティアスに直撃することはなかった。
当たる直前、セラフティアスが手をかざした瞬間に、一瞬にして防御魔法が展開しオロの攻撃を防ぐ・・・
その光景はまるで飛んで来る虫を煩わしく思っているような感じで、一切速度を緩めることはなかった。
『相手にすらならないのか・・・』
攻撃を防がれてしまったオロ。
もう一度攻撃をしようとしたオロであったが、攻撃するよりも先に先手を打たれる。
魔法陣が展開し、放たれる閃光の魔法。
速度が速く、かわそうとしたオロであったが閃光の魔法によって貫かれてしまった。
しかしながら致命傷は避けることは出来たのだが・・・もうセラフティアスを追うことができなくなるほど離れてしまっていた。
『くそ・・・このまま・・・じゃ・・・』
弱々しく嘆くオロ。
セラフティアスの背中を眺めながら力なく、オロは落下してしまった。
バルエラ竜王国上空・・・マリアティアスとオールとの戦闘を繰り広げている場所へとたどり着いたセラフティアス。
上空には似つかわしくない漆黒の塊が漂っており、その場所だけが異質な雰囲気を醸し出している。
『この中にいるのですか・・・』
セラフティアスが漆黒の塊に手を触れようとしたその時・・・漆黒の塊が弾けるように拡散し、中からマリアティアスが現れる。
しかしながら現れでたのはマリアティアスだけであり、オール、そしてルーシャは何処を見渡してもいなかった。
『セラフティアス様・・・完全復活なされたのですね』
『えぇ、そうです・・・貴女のお陰で完全復活することができました』
『おめでとうございます。ならばこれで・・・』
『そうです。これで貴女の目的も果たせる筈です・・・私を倒すという目的も』
そう言い終えるよりも速く一気に距離を取るマリアティアス。
その表情は殺意と共に狂気に支配されてしまっていた。
『いつから気がついていたのです?』
『いつからでしょうね・・・それは別にいいのではないでしょうか?』
『そうですね・・・それよりも良いのですか?』
マリアティアスは上空・・・黄金世界の優夢都を指差す。
すると同時に黄金世界の優夢都で爆発が発生し、業火に呑まれる。
『・・・あの竜人ですか。どうりで此処にいないわけですね』
『このままでは天使達は全滅してしまいますよ?』
『・・・貴女が何をするのかは知りませが受けて立ちますよ。まぁ・・・あの竜人を殲滅してからですが』
黄金世界の優夢都に向かうのを見守るマリアティアス。
マリアティアスとセラフティアス・・・その出会いは突然にして一方的なものであった。