頂上決戦
マリアティアスから身体の支配権を譲り受けたルーシャ。
これはマリアティアスが最強の竜人であるオールと接近戦はルーシャの方が得意だと判断したからだ。
魔法や相手の攻撃を防御するにあたってはマリアティアスの方が優れている。
これはマリアティアス、ルーシャともに戦った経験からであり、今のルーシャであればこの身体を十全に扱えるのも確認している。
『今日・・・ここであんたを越える』
『できるかな?』
『できるさ・・・』
そう言い終えるや否やルーシャは風の属性竜法と魔法を組み合わせ身に纏う。
そして身に纏うと同時にオールの視界から消える。
(速い!?)
爆速・・・音すら置き去りにしたルーシャはそのままオールを斬りつける。
最速の竜人の最速の剣撃。
更にレベルアップした剣撃に対応することが出来なかったオールから血が出てくる。
竜力、魔力が強化されたことにより、黒銀の斬妖で纏うことができる風の属性竜法、魔法も同じく強化され格段に切れ味も上がったから成せる芸当なのだが・・・オールもまた最強の竜人としての実力を見せつける。
斬れた瞬間に全身から竜力を爆発的に放出することによって深々と斬られる前にルーシャを吹き飛ばしていたのだ。
竜力の爆発により、一旦距離を取るルーシャ。
その顔は幸福に満ちており、そして興奮していた。
それもそのはずである。
ルーシャにとってオールは最強の竜人であると同時に、今までは絶対に倒すことができない相手だったのだから。
そんな絶対に倒せない、対抗できないと思っていた人物に対抗できたのだ、興奮しない方がおかしいと言える。
『反応出来なかったでしょ?』
流れ出る血を見ながらルーシャを睨み付けるオール。
傷は深くはなく、行動に支障が無いが・・・それでもオールの身体を傷つけたことには変わらない。
反応することが出来なかったという事実、更に最強の竜人である自身が傷つけられたことを再確認したオールは一度深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
(確かにルーシャが言っている通り、私は反応することが出来なかった)
気持ちを落ち着かせたオールは女神の右腕を天に掲げると同時に振り下ろす。
すると竜力の塊が斬撃となり、ルーシャに襲い掛かる。
だがしかし、オールの斬撃は余裕でかわされ・・・もう一度オールの視界からルーシャが消える。
(今度は首をもらう!)
最速でオールの背後へど移動したルーシャは、そのままオールを斬り伏せようと斬撃を繰り出す。
『やっぱり狙うよな!』
先ほどまではルーシャの速度に反応することが出来なかったオールだが、今度は反応すると同時にそして攻撃をかわして見せた。
空を斬るルーシャの黒銀の斬妖。
その隙を見逃さずにオールはルーシャに向かって拳を繰り出す。
(速度が上がった!それにこの拳って)
迫り来る拳を空中で身をよじり、かわすルーシャ。
だがしかし、避けた筈の拳が直撃でもしたかのようにルーシャは吹き飛ばされてしまった。
(やっぱり!)
吹き飛ばされてしまったルーシャだが、先ほど何故攻撃がかわされ、そしてかわしたと思っていた拳が当たったのかをたったこの数回のやり取りで看破してしまう。
天性の戦闘スキル、そして直感。
類い稀な才能を有しているルーシャであるからこそ成せる技であり、常人では何が起こったのか今でも理解出来ていないだろう。
ルーシャは空中で翼を広げ、勢いを殺すと同時に黒銀の斬妖を高速で振るう。
すると黒銀の斬妖に組み込まれているルーンと、魔導石が起動し黒銀の斬妖から無数の斬撃がオールへと向かって飛んで行く。
『風斬閃乱!』
風の属性魔法・竜法をで強化された無数の斬撃がオールへと襲い掛かる。
『無駄なことだ!』
迫り来る斬撃に対して女神の右腕を振るうオール。
先ほどと同様に竜力を圧縮し、斬撃を飛ばし・・・ルーシャの放った風斬閃乱と激突する。
たった一度の攻撃によって大半を半壊させたオールであったが、風斬閃乱は一撃の威力よりもその手数が売りの技。
まだ半数以上残っており攻撃を掻い潜った斬撃がオールへと直撃する。
(当たるとわかっていればガードすればいいだけのこと・・・)
風斬閃乱の斬撃が直撃したオールであったが・・・当たる直撃に鎧を変化させ、ダメージを最小限に抑える。
(そしてこの攻撃は囮・・・本命は)
周囲を見渡すとルーシャがいないことに気がついたオール。
どこに行ったのか探す・・・ことはせずにその鎧を変化させ、頭上に分厚い盾を作り出すと同時に、最速で奇襲を仕掛けたルーシャの白金の刺妖がぶつかり合いけたたましい音が響き渡る。
『その攻撃は読めていたぞ!』
よほどの威力があったからなのか、作り出した盾が軋む。
そんな中でもオールは高らかにルーシャの攻撃を防いだと叫ぶが・・・ルーシャからは想像とは違う答えが飛んで来る。
『知ってるよそんなこと・・・』
平坦な、何の驚きも戸惑いも感じられないルーシャ。
盾ごしなのでその表情を伺うことはできないが・・・確実に何か仕掛けてくると直感する。
『冥衝・鎧通し!』
ルーシャが盾となっている鎧に向かって拳を繰り出す。
しかしながらその拳は堅牢で、白金の刺妖の攻撃すら防いだ盾に対して端から見ればあまりにも無謀な攻撃に見えた。
だがしかし・・・ルーシャが繰り出した拳が盾に触れた瞬間、オールに想像だにしない衝撃が襲い掛かる。
『ぐっ・・・あぁぁ・・・』
冥衝・鎧通し・・・それは水の属性魔法・竜法を纏い攻撃する接近戦用の技で、防御している者に有効な攻撃だ。
拳である必要はないのだが、ルーシャはあえて先に白金の刺妖で攻撃することによってオールに自身の攻撃を防御させることを促したのだ。
白金の刺妖の攻撃力、貫通力はバルエラ竜王国ではかなり有名。
ルーシャもオールと数回手合わせした時には必ず使用しており、敵に回った時の危険性はオールも十分に知ってる。
しかしながら知ってるということが仇となってしまった。
あの時のルーシャの攻撃は防ぐのではなく、かわすことが正解なのだ・・・時既に遅いが。
ルーシャはオールが竜力を使い鎧を自由自在に変えていることを見抜いての攻撃を繰り出したのだ。
冥衝・鎧通しは盾や鎧などに対して攻撃をすると同時に、瞬時に水の属性魔法・竜法を張り巡らせて鎧を貫通して衝撃を伝える。
そしてその攻撃は魔法、竜力を展開していてると更にダメージが増加する。
魔法、竜力というのは水の通り道に似ており・・・その水の通り道にルーシャは冥衝・鎧通しを通じて水の属性魔法、竜法を流し込みダメージを与える。
更に冥衝・鎧通しは敵を吹き飛ばすような攻撃ではなく、強い衝撃によって身動きを封じる技。
盾で防ぎきれると油断していたオールはその衝撃によって、身動きを封じられてしまった。
(ま、まずい・・・動きが・・・)
盾を展開したままのオールに対してルーシャは回り込み・・・そして一突き。
オールの心臓に向けて白金の刺妖が突き刺さる。
『終わった・・・』
心臓を一突きし、オールを殺したルーシャ。
白金の刺妖を引き抜こうとするが・・・
『お、終わり・・・そんな・・・わけ・・・ないだろうがぁぁぁぁ!』
白金の刺妖がその心臓に突き刺さっているのにも関わらず咆哮をあげるオール。
咆哮は見た者を萎縮させ、至近距離で浴びてしまったルーシャが一瞬怯む。
その瞬間にオールの蹴りがルーシャに炸裂し、吹き飛ばされてしまった。
『ま、まだ生きて・・・』
腹部の痛みに耐え、空中で姿勢を元に戻したルーシャはありえない物を目撃する。
突き刺さった白金の刺妖を引き抜き、治療液を飲み干すと同時にオールの傷が徐々に癒え始め・・・傷が塞がる。
致命傷・・・というよりも確実に即死の攻撃なのにも関わらず数秒間生きていたオール。
どのようなことをしたのかは不明だが、ルーシャは絶対的な好機を逃してしまった・・・
『化け物が・・・』
あまりの出来事に唖然となってしまっていたルーシャが我に返った時には時既に遅く、オールは完全回復してしまった。
心臓が止まったとしても数分程度であれば生きてはいける。
だがしかし・・・心臓を破壊された者がルーシャを蹴飛ばすほどの力を発揮できるのかというと、ルーシャ、マリアティアスともに不可能だと断言するだろう。
ましてやルーシャの冥衝・鎧通しの衝撃が残っている間なのにも動けるのは、ありえないとしか言いようがない。
まさに化け物・・・
そんなことを思っているとオールは先ほど抜いた白金の刺妖を空中へと投げ捨て、女神の右腕で斬り伏せる。
『・・・破壊されたか』
自身の武器が破壊されてしまったのにも関わらずに落ち着いた様子のルーシャ。
あの距離では取り戻すことが不可能だとわかっていたからだ。
愛刀であり、世界に一つしかない白金の刺妖・・・はっきり言って失うのはかなりの痛手ではあるが、無闇に攻撃を仕掛けたからと言っても返り討ちにされてしまったら元も子もないのだから。
(あと何回、回復できるのかわかりますか?)
(流石に知らないよ)
即死させた筈のオールを回復させた治療液が残り何個あるのかルーシャに問いかけるマリアティアスであったが、オールとあまり親しい仲ではなかったルーシャは知らないようだ。
マリアティアス自身も治療液を生成していたので、その性質はよく理解している。
単純に傷を癒す程度の治療液であれば、マリアティアスほどの実力があればかなりの数は量産できる。
しかしながら作るにしても材料は必要であり、傷を癒す速度、傷の度合いによって材料は異なり・・・オールの飲んだ即死級の攻撃を即座に癒すことができる治療液は更に貴重な材料を使う。
マリアティアスは作れるには作れるが・・・材料の問題から少しの量しか生成出来ていなく、今は一つも持っていない。
根本的にマリアティアスには他者の傷を癒すことができる力を持っているので持つ必要がなく、アリセスやエールに持たせている。
そんな貴重な治療液をオールが何本持っているのかによって攻め方が変わるのは言うまでもない。
戦争、戦闘において持久戦となってしまった場合、その補給源を叩くのは鉄則。
致命傷、即死級の攻撃を与えたとしても再生され、カウンターされてしまったら意味がないのだ。
いくらマリアティアスが傷を癒せるからと言っても対処することはできる。
例えば、マリアティアスに致命傷を与え、再生している最中に更に攻撃を加え続ければいずれ再生出来なくなってしまう可能性がある。
まぁ・・・実際にはやられたことがないので何とも言えないが。
『油断していたよ・・・』
冥衝・鎧通しの効力が完全に切れたオール。
感覚を確かめるように鎧を変化させ・・・右腕がガトリング砲の変化する。
『あれは!?』
ルーシャ自身はガトリング砲というのも見たことも、聞いたこともないが・・・それでも直感で危険だと判断する。
(ガトリング砲です・・・多分この世界であれば竜力の弾丸が飛んでくるはずです!)
マリアティアスの警戒し終わるや否やルーシャに向かって放たれるガトリング砲。
けたたましい音を響かせながら数秒程度で、数え切れないほどの弾丸が飛んでくる。
『力を使わせてもらうよ!』
マリアティアスと一つになったルーシャは、自身では扱うことの出来ない水の属性魔法を扱うことできる。
しかしながら自身の扱う風の属性竜法よりは弱く、奇襲などに使っていて温存していたのだが・・・この弾丸にはあの魔法が有効だと判断しそして放つ。
『呪泡・押シ寄セル泡波ハ全テヲ止メル!』
魔法陣が展開すると同時に、無数の泡が津波のようにしてオールへと押し寄せるが・・・その前にガトリング砲の弾丸が直撃する。
発射された弾丸と泡・・・通常であればどちらの方が強いのか言うまでもない。
断然誰が見ても弾丸の方が堅く、泡など弾丸が直撃する前に風圧によって吹き飛ばされてしまうのは目に見えている・・・それが普通の何の変哲もない泡なのであれば・・・
ルーシャの放った呪泡・押シ寄セル泡波ハ全テヲ止メルによって作り出された泡は、弾丸の風圧をものともせずに吹き飛ばされもしなかった。
そして泡に弾丸が触れた瞬間・・・弾丸が止まる。
まるで水中にでも入ったかのようにして止まってしまった弾丸。
しかもオールが放った全ての弾丸が呪泡・押シ寄セル泡波ハ全テヲ止メルによってしまったのだ。
『流石ルーシャだな・・・だがこいつはどうだ!』
ガトリング砲へと変わっていた右腕はいつの間にか元に戻っていて、再び女神の右腕を振るう。
『同じ手が通じるとでも?』
圧縮した竜力がルーシャに襲い掛かるが、一度攻撃を見ているルーシャにとってかわすのは容易であり余裕でかわす。
『やっぱりかわされたか?』
『当然・・・だけどさっきよりスピードが落ちていない?』
『さっきので体力を消費してしまったからな』
『だろうね・・・』
そう言い終えるや否やルーシャは加速し、一瞬でオールとの距離を縮め・・・黒銀の斬妖で斬りつける。
『この程度・・・』
黒銀の斬妖の攻撃を鎧を変化させて防ぐオール。
しかしながら先ほどとは違い一度攻撃を防ぐと、また鎧へと戻す。
『当然反応するよね?』
『当たり前』
『だけどわかったよ』
『何がだ?』
『最速の竜人である僕の攻撃にどうやって反応出来ているのかを・・・』
最速の竜人であるルーシャの攻撃に対して何故反応出来ているのかを見抜いたルーシャ。
最速の竜人であった時よりも更に速くなっているのにも関わらずに、反応出来たことに疑問を持っていたルーシャはあることを思い出していた。
嘗てマリアティアスと戦った時は周辺に薄い魔力の膜を展開させ、ルーシャの攻撃に反応していたことを。
最初は単純にオール自身も強化されているので反応することが出来ているのだと思っていた・・・しかしながら死角となる上空からの攻撃に反応したことによってその仮説はなくなった。
いくら自力で反応することができるとしても上空からの・・・死角からの攻撃に反応することなどまず不可能。
反応出来たとしてもピンポイントで攻撃を防ぐのは至難なはずなのだが、オールはいとも容易く攻撃を防いだ。
そう・・・まるで何処から攻撃が来るのかを事前にわかっていたかのように。
そのことからオールがマリアティアスと同じように竜力を薄く展開させ、その竜力に反応した箇所に鎧を変形、盾を作り出せば死角であろうと最速の攻撃であろうと防げるのだ。
『種がわかれば突破することはできる!』
マリアティアスの魔力と竜力を融合させ更に速度を上げるルーシャ。
オールに攻撃するのかと思いきや、何故かオールに攻撃することはなくオールの周囲を回り始める。
『それがお前の突破方法なのか?』
『あぁそうだよ!』
『何か楽しくで回っているの・・・』
自身の周りを回っているルーシャに対して嘲笑うオールであったが・・・その考えは一瞬にして吹き飛んでしまう。
『偽りの世界・霞に支配された亡国!』
『この魔法は!?』
『もう・・・遅い!』
ルーシャ、オールを中心にして霞が発生し、オールに纏わり付く。
纏わり付く霞みによって視界を完全に塞がれてしまったオール。
この霞は通常の霞とは違い、魔力を帯びていて吹き飛ばそうとしても直ぐ様に元通りになる。
『この霞はまずい!』
偽りの世界・霞に支配された亡国の能力を身をもって知っているオールは、竜力を爆発させ吹き飛ばそうとするが・・・一瞬視界が晴れるがが直ぐ様また視界にのまれる。
『くそ、視界を防がれたしかもこの霞は・・・』
『当然強化されてるよ!更にこの霞には僕の竜力とマリアティアスの魔力が混ざってるから感知も妨害するんだよ!』
ルーシャの言っている通りこの魔法・・・偽りの世界・霞に支配された亡国もまた当然強化されている。
更にオールがルーシャの攻撃に対して感知するのに使用していた展開していた竜力の膜。
その竜力の膜は周囲の魔力や竜力に反応して展開していたので、魔力を纏う偽りの世界・霞に支配された亡国によりルーシャの攻撃が何処から来るのかが分かりづらくなってしまっている。
精度を上げれば感知することも可能だが・・・その前にルーシャが先に仕掛ける。
オールの周囲を旋回しながら風の属性竜法を放ち攻撃を仕掛けるルーシャ。
ノコギリのように回転する風の刃に、圧縮した風の属性魔法。
鋭く鋭利になっている風の槍、逆巻く竜巻に、黒銀の斬妖の飛ぶ斬撃。
今のルーシャが放つことができるありとあらゆる種類の攻撃がオールへと襲い掛かり・・・そして直撃する。
『この・・・程度で!』
様々な攻撃を喰らっているはずなのだが・・・どうやらオールの命を奪うまでには到達していなかった。
何故ならオールは反撃することもなく、防御竜法を展開し、そして鎧を変化させ何重にもガードしているからだ。
無闇矢鱈に攻撃したとしても、オールの攻撃速度ではルーシャの反応速度を上回ることは不可能。
かといって周囲全体を広範囲に竜法を放ち攻撃したとしても、マリアティアスの扱う堅牢な防御魔法によって防がれてしまう可能性が高い。
目に見えない敵に対して攻撃したとしても空振りに終わり、竜力を無駄に浪費してしまうのは愚の骨頂。
オールにはまだ倒すべき相手が残っているので極力竜力は消費したくないのが本音だ。
(誘い込めるか・・・)
攻め続けるルーシャに対して、一瞬、攻撃の合間に竜力を爆発させ纏っている霞を払うオール。
守られている鎧の隙間から攻撃を繰り出すが・・・その方向にルーシャはいなかった。
『何処に向かって撃って・・・』
自身とは真逆とも言える方向に攻撃したオールに困惑しているルーシャ。
しかしながらルーシャの困惑をよそにオールの放った攻撃は急に角度を変え・・・ルーシャへと襲い掛かる。
(追尾弾です。ルーシャ気をつけて!)
(だったら撃ち落とすまで)
放たれたのが追尾弾だと分かるや否や竜法を放ち迎撃する。
(さっきの見た?)
(えぇ・・・見ましたよ。随分と堅牢に守ってますね)
(持久戦じゃ分が悪いと思うんだけど・・・突破できる?)
(可能だと思いますね・・・そしてそろそろあの宝石を起動させてもいい頃合いかと)
(あの宝石をいつ使うかは任せるよ・・・それで勝てるでしょ?)
(少なくとも戦況ば変えられると思いますよ・・・まぁ、問題なのはタイミングだけです)
(一度限りの一番勝負・・・時間もかけたくないから行ってもいい?)
(こちらはどうぞ・・・準備はできました!)
黒銀の斬妖に対して竜力を注ぎ込む。
すると淡い緑色をした薄い膜が出来上がり、黒銀の斬妖を包み込む。
(いくよ!)
一気に加速し、偽りの世界・霞に支配された亡国の動かすと共に冥衝・鎧通しを食らわせる。
『かかったな!』
冥衝・鎧通しの効果によって動けない筈のオールなのだが・・・その手に持っているは女神の右腕でルーシャに斬りつける。
『何で動け・・・』
何故動けるのな疑問に思っているルーシャだがそんな余裕はなく、女神の右腕によって斬られる・・・直前にマリアティアスがルーシャとの融合を解除し、女神の右腕を真剣白刃取りをする。
『な、なにぃぃぃぃ!?』
あまりの予想外の出来事に思わず声をあげてしまったオール。
しかしながらマリアティアスに気を取られている間に、女神の右腕に対して水の属性魔法が使われているのに反応が遅れ・・・オールの手から女神の右腕が離される。
『な・・・すべ・・・』
いつの間にかヌメヌメした物がオールの手に付着してしまっており、その滑りによって手放してしまったことに気がついたオールは即座に尻尾を使い取り戻そうとするが・・・
『ルーシャ今だ!』
オールの手からも、マリアティアスの手からも離れた女神の右腕に対して風の属性竜法を放ち吹き飛ばすルーシャ。
『小癪な真似を・・・』
最早手を伸ばしても、尻尾を使ったとしても届かないとわかったオールはダメージ覚悟で女神の右腕を取りに行こうとするが・・・
突如として、純黒の光が溢れだし・・・オールを包み込むのであった。