目覚めし竜王
最強の竜人オール・ディストピア・バルフロン・マリッジの目覚めの時が来た・・・
繭が破れ、蒸せるような竜力が霧散し、現れ出るオール。
本来竜人には二本の翼に尻尾、そして個人によって異なるが頭部からは角が生えているのが一般的だ。
しかしながら繭の中から現れ出たオールの姿は、繭の中に入った時とは違っていた。
長い黒髪に白い肌、赤く異常に開いた瞳孔に魅惑的なボディラインに変化はないが・・・背中から生えている翼は二枚から合計六枚に。
尻尾も一本から三本に増え・・・まるで鎧のように堅牢に変化している。
頭の双角にはあまり変化はないが・・・オールの身に纏う鎧もまた更に分厚く堅牢に、そして禍々しくなっており・・・例えるなら暴力の化身。
力を一点に凝縮したのが今のオールと言える。
『・・・この力、これなら殺れる!』
殺意と共に高らかに宣言するオール。
そして宣言すると同時にオールは自身の竜力を周囲に放つ。
竜力その物が破壊力を持ち、衝撃波が周囲を駆け巡ると同時にオールの住まう巨城に次々と皹が入り・・・崩壊し始める。
『おっと・・・城を破壊するのは流石にまずいね』
そう言い終えるとオールはゆっくりと手を掲げ・・・竜力を放つ。
すると女神の心臓が放ったような閃光の魔法と同じように閃光が天井を貫く。
しかしながら女神の心臓の閃光とは色が違い、赤黒く輝く閃光だが・・・
威力は絶大であり、堅牢な巨城の防御力がまるで紙切れのようになってしまっている。
天井に穴を空け上空へと飛び立ったオールが目にしたのは、中央浮遊都市上空にある超巨大な魔法陣。
既に魔法陣の四分の三が完成しているが・・・オールが目撃するや否や急速に未完成の部分が作り始められる。
『この大きさ・・・流石にまずいぞ』
危険だと判断したオールは、最強の刀である女神の右腕を構え・・・竜力を注ぎ込む。
すると女神の右腕にオーラのように竜力が周囲に纏わり、竜力で作り上げられた刃が出現する。
『今までの私とは違うのだよ!』
女神の右腕を構え・・・圧縮、増幅した竜力を斬撃として飛ばす。
『竜気・魔斬波!』
オールの竜力が魔法陣に当たり・・・切断される。
魔法陣という物は本来破壊することができない。
魔法陣を展開させた本人を倒すか・・・もしくは抵抗魔導弾などで破壊するしか方法がない。
しかもこの超巨大魔法陣は、女神セラフティアスが魔力と同時に神力を使って作り上げた特別の魔法陣なのだが・・・斬られたのだ。
『やはり今の私なら扱える!』
歓喜と共に更に斬撃を飛ばすオール。
無数に斬撃は全て直撃し・・・そしてボロボロと魔法陣が崩壊し始める。
黄金世界の優夢都・・・
女神セラフティアスは自身の作り上げた魔法陣が崩壊し始めるのを眺めていた・・・
長い年月・・・というわけではないが完成間近の魔法陣が崩壊してしまう。
普通ならば今までの努力がなくなってしまったことで、落胆、怒りといった感情が芽生えてもおかしくはないのだが・・・セラフティアスにとってはどうでもよかった。
魔法陣が完成し、放たれれば確実に戦闘が優位になることは確実だが・・・セラフティアスにとっては超巨大魔法陣よりもオールの持っている大剣に凝視している。
オールの持っている大剣は元々はセラフティアスの右腕。
つまり身体の一部であり、失った物の一つ。
姿形はかなり違っているが、あの大剣は手に入れなければ・・・取り戻さなければならないのだ。
『私の右腕を・・・崩壊していますが、まだ完全に破壊されたわけではないのですよ!』
一拍置き、純粋なる殺意と怒りを爆発させたセラフティアスは崩壊している魔法陣に急速に魔力を大量に注ぎ込む。
魔導師が体内に許容できる魔力の量は限られており・・・許容量以上に溜め込めは身体に異常が出始め・・・限界以上に注ぎ込まれれば身体が内部から崩壊し始める。
そしてそのことは魔法陣にも言える。
魔法陣で放つことができる最大上限を越えた魔力を急速に、大量に流し込むとその魔法陣に溜め込んでいた魔力が暴走し・・・爆弾となってしまう。
魔導師達と同じように崩壊も始まるが・・・溜め込んだ魔力は崩壊し霧散する前に中央浮遊都市に降り注ぐ。
『この魔力・・・』
異常な魔力を感じ取ったオールは女神の右腕に再び竜力を纏わせ斬撃を飛ばす。
斬撃はそのまま魔法陣の破片に直撃するや否や爆発四散してしまった。
それほど威力はないが・・・それでも爆弾なのには変わらなく数発、数十発も喰らえばいくら竜人だとしても命を落とすのは確実だと直感する。
それと同時に降り注ぐ全ての魔法陣の破片を破壊するのも不可能だと理解する。
『いくら力を得たとしてもこの量は・・・』
降り注がれる魔法陣の破片を眺めながらため息を溢すオール。
『すまない・・・』
そう言い終えるとオールは自身の周囲に竜法陣を展開する。
夥しい数の竜法陣は全方位に展開し、数えるのも嫌になるほどの数になり・・・オールの竜法が放たれる。
拳ほどの大きさの結晶で、この結晶もまた当たると同時に爆発するようになっている。
その爆発する結晶が直撃した魔法陣の破片もまた爆発し・・・周囲が爆炎に呑み込まれる。
連鎖するように起こる爆発。
中央浮遊都市上空に響き渡る爆発音・・・そしてなくなる魔法陣の破片。
中央浮遊都市上空から降り注ぐはずであった魔法陣の破片は、軒並み爆炎に呑まれなくなってしまった。
しかしながら全ての魔法陣の破片がなくなった訳ではない。
オールの攻撃範囲外になる魔法陣の破片は爆炎に呑まれることなく地上に降り注ぎ・・・爆発する。
爆発、爆炎に呑み込まれる中央浮遊都市。
『今度はこちらから行こう・・・』
オールが上空にある黄金世界の優夢都に行こうとしたその時・・・暴風が吹き荒れる。
突如として吹き荒れる暴風の正体は風の属性魔法であり・・・その風の属性魔法を操る者がオールの目の前に現れ出る。
『お前は・・・』
オールの目の前に現れ出た者の名はマリアティアス。
既にルーシャと一つになりその姿は以前オールと出会った時とは姿形が違っていて、オールと戦った時とも姿形が変わっていた。
しかしながらオールは直感で理解する。
目の前の人物がマリアティアスであると・・・
『見た目は変わったが・・・これはこれで』
マリアティアスを舐め回すような視線で見るオール。
黒曜石を思わせるような黒髪に、対称的な金色の瞳の左目とルビーを思わせるような赤色の右目。
金色の角に、頭の上には天使達と同じような天使の輪があるが・・・その天使の輪は機械仕掛け。
ルーシャを象徴する妖精のような四枚の翼の他に、その後ろに新たな機械仕掛けの四枚の翼・・・
しかしながら機械仕掛けの四枚の翼は直接背中から生えている訳ではなく、背中の真後ろに存在する金属質な輪に繋がれていて・・・何故か宙に浮いてしまっている。
そしてルーシャの鎧のような尻尾の他にも、背中の真後ろに存在する金属質な輪からは鎖のような細長い・・・尻尾というには少し変わった物が自由自在に動いている。
全身を覆う機械仕掛けの鎧は更に強化されていて・・・より複雑になってしまっている。
容姿はマリアティアスと似ているが・・・少々ルーシャとも似ている容姿をしているような感じだ。
『目線が気持ち悪いのですが・・・』
オールに対してマリアティアスが嫌悪の視線を送り・・・金と銀の魔蝶杖を構える。
そんなマリアティアスに対してオールもまた女神の右腕を構える。
『久しぶりですね・・・あの時とは違い倒しに来ました』
『久しぶりだな・・・会えて嬉しいぞ!』
そう言い終えるや否や圧縮した竜力を放つオール。
赤黒い閃光が襲い掛かるが・・・その攻撃をマリアティアスは容易にかわしてみせる。
(赤黒い閃光・・・)
(やっぱりオールも強化しているんだ・・・)
(そうでしょうね・・・あの姿に竜力、強化されているのは間違いないでしょうね)
オールの見た目が変わっており、そして身に纏う竜力も違うのを感じとるマリアティアスとルーシャ。
マリアティアスとルーシャもまた強くなってはいるが・・・オールもまた強くなっているのは予想外だったようだ。
まぁ・・・女神セラフティアス率いる天軍が攻め込んで来たのにも関わらずに、姿を現していないのも疑問に思っていたところなのだが。
『この惨状は貴様がやったのか!?』
『違いますよ。まぁ・・・信じてもらえないでしょうけどね!』
攻撃を繰り出すオールに、かわし、ガードするマリアティアス。
絶対防御・・・が自慢であったマリアティアスの防御魔法が一度攻撃を防いだだけで崩れ始める。
しかもお互いに様子見程度の力で・・・
『どうしたどうした!?お前の力はこの程度か!』
『まだまだ・・・様子見ですよ!』
今度はマリアティアスが攻撃を仕掛ける。
風の属性魔法を圧縮させ、高速に回転する風の刃。
けたたましい音を響かせながらオールに向かって飛んで行く。
『この程度か!?』
迫り来る風の刃に対してオールは拳を振るう。
すると拳に纏っていた竜力が弾丸のように飛んで行き・・・風の刃と激突し、爆発する。
残りの風の刃もオールに向かって飛んで行くが・・・残念ながらオールが放つ竜力の弾丸によって撃ち落とされてしまった。
『全部撃ち落とすなんて・・・やりますね』
感心しているマリアティアスだが、風の刃が通じないと理解すると今度は水の属性魔法を圧縮させ・・・放つ。
噴水、間欠泉の如く勢いで放たれる高圧水流。
怒涛の水流によってオールの放つ竜力の弾丸すら呑み込んでオールへと直撃する。
『邪魔・・・だぁぁぁぁ!』
怒涛の水流によって吹き飛ばされそうになるが・・・オールはその圧倒的な竜力を後方へと噴射させその場に止まる。
『力業・・・ですが足元がお留守ですよ!』
オールが高圧水流に気を取られている最中にマリアティアスは、先ほど放った風の刃の残りの一つを操りオールの足元から奇襲を仕掛ける。
もう既に全て撃ち落としていたと思っていたオール。
しかしながらまだ残ってようであり・・・オールが気がついた時には時既に遅く、反応することが出来なかった風の刃が直撃する。
『・・・なんだ?この程度か?』
風の刃が直撃したのにも関わらずオールは無傷。
その身に纏う黒き鎧によって弾かれてしまったのだ。
『硬い・・・』
(流石オールの鎧・・・)
(いったいどんな鉱石で作られているんですかね?)
(それはルーシャも知らないよ)
オールの身に纏うその鎧の硬度なのだが・・・実際のところどれ程の強度を持っているのかはオール自身も知らない。
オールの鎧はというと・・・元々はバルエラ竜王国で取れた高純度の鉱石や、貴重鉱石を大量に使って作り上げられた鎧なのだが、オールの竜力と合わさることによってその性質が変わってしまい未知の鉱石になっている。
更にオールのその身に纏う黒き鎧は秘密がある。
その秘密はというと・・・
『今度はこちらから行くぞ!』
オールが竜力を集中させると同時に鎧が変化する。
両肩と双方の腰から砲台のような物が出現し・・・圧縮された竜法が放たれる。
戦艦の主砲のような音が響き渡ると同時に放たれる四つの竜法。
突如として予想外の攻撃を繰り出してきたオール。
これがオールの鎧に隠されたもう一つの秘密。
攻撃や防御、行動する時などにオールが思い描く通りに鎧が変化し、そしてサポートしてくれる。
これにより、予想外の行動ができ・・・マリアティアスに竜法が直撃する。
『いっ・・・くぅ・・・』
オールの竜法が直撃したマリアティアス。
爆炎によって皮膚が焼かれたが・・・マリアティアスのその身に纏う聖職者の衣装が燃えたり、破れたりなどしている様子はない。
即座に治癒の魔法により再生し始めるマリアティアスに対して、オールは竜力を圧縮、そして解放することによってジェット飛行機の如くマリアティアスへと近づき・・・その女神の右腕を振り下ろす。
(あれはまずい!)
オールの持っている女神の右腕が危険だと直感したマリアティアスは、懐に忍ばせていた魔導石を取り出し起動させる。
すると女神の右腕が振り下ろされる直前に起動した魔導石が爆発。
その衝撃によりマリアティアスが後方へと吹き飛ばされる。
『爆発で・・・離れたか!』
魔導石の爆発といってもそれほどまで高い威力ではない・・・
人間ならば至近距離、そしてノーガードであれば致命傷に成りかねないほどの威力だが・・・人間よりも遥かに強靭な肉体を持っている竜人であれば何も問題はない。
多少の痛みはあるだろうが生命の危機になることはあり得なく・・・ましてや最強の竜人であるオールならば、かすり傷一つ負うことはなく、吹き飛ばされることもなかった。
しかしながらマリアティアスは自ら風の属性魔法を瞬時に解除することによって、爆発で吹き飛ばされることを選んだのだ。
『あの刀は流石に危険過ぎます・・・』
距離を取り体勢を立て直したマリアティアス。
金と銀の魔蝶杖を手にし・・・今度はマリアティアスから攻撃を仕掛ける。
風の属性魔法を発動させ、オールへと突撃するマリアティアスに対してオールは自身の竜力を操り鎧を変化させる。
両肩に身の丈ほどのタワーシールドを作り、攻撃を防ぎながら女神の右腕で攻撃する算段だ。
(あの刀の他にもあの鎧も厄介そうだよ・・・大丈夫なの?)
(手段が無いわけではないです・・・まぁ、成功させるためには接近するしか方法はありませんが)
『風の鎖よ・・・オールを捕らえよ!』
まだ距離はあるが、オールに対して風の属性魔法で作り上げられた鎖で拘束しようと魔法を放つ。
放たれた風の鎖の数は全部で十個。
マリアティアスを中心に四方八方からオールを拘束しようという算段だ。
(風の鎖。よけ・・・いや・・・)
拘束されることを嫌ったオールであったが・・・その考えは一瞬。
避けるよりも、鎖を断ち斬るよりも、素直に拘束されることを選んだ。
『避けない!?』
『勿論・・・避ける必要が無いからなぁ!』
風の鎖がオールへと巻き付き拘束する。
両腕、両足、翼や尻尾に至るまで拘束されてしまったオールであったが・・・不適な笑みを浮かべる。
明らかによからぬことを考えているような雰囲気なのだが・・・マリアティアスは更に金と銀の魔蝶杖を発動させ雁字搦めに拘束しようと試みる。
だがしかし・・・金と銀の魔蝶杖が拘束するよりも早くオールは息を大きく吸い込み・・・竜法を咆哮として放つ。
『竜王ノ咆哮!』
拘束されていたが口までは防いでいなかったがために放たれる高濃度に圧縮した竜法。
純粋な竜力の結晶は閃光となりマリアティアスに襲い掛かる。
起動させていた金と銀の魔蝶杖はその熱量に耐えることが出来ずに融解し始める。
『この距離はまずい・・・本当は温存したかったけど仕方ない!』
このままでは危険だと判断したマリアティアスは今まで温存していた魔法を放つ。
その魔法の名前は『女神が造り出した結界の片鱗』。
オールの持っている最強の刀である女神の右腕ですら破壊することが出来なかった最強最硬の結界魔法だ。
竜王ノ咆哮とぶつかり合う女神が造り出した結界の片鱗はけたたましい音と響かせ周囲に拡散する。
(その・・・結界魔法は!)
オールもマリアティアスの放った魔法の正体に気がついたようであり・・・明らかに先ほどよりも威力が上がる。
(威力が更に上がった!?)
威力の上がった竜王ノ咆哮。
強化するために展開した竜法陣はオールよりも巨大で、見るからに危険だと判断できる。
それに対してマリアティアスは、作りあげた女神が造り出した結界の片鱗を強化しようとはしなかった。
何故強化しなかったのかというと・・・
マリアティアスには女神が造り出した結界の片鱗で防ぎきれるという確信があったからだ。
絶対防御の結界魔法・・・その名の通りオールの放った竜王ノ咆哮はその威力を上げたのにも関わらずに破壊することは出来なかった。
しかしながら女神が造り出した結界の片鱗は最早使い物にならないほど皹割れてしまっていているが・・・
『防いだ・・・だと!?』
自身の攻撃が防がれてしまったことに驚きを隠せないオール。
どうやらいくら強化されたからと言っても女神セラフティアスの力を破壊するまでには至らなかったようだ。
落胆するオールだが・・・マリアティアスもまた急激に魔力を大量に消費してしまったが故に、額からは汗が滲み出ている。
双方ともに竜力、魔力を著しく消費してしまったことにより一瞬の沈黙が訪れるが・・・オールは自身を拘束している風の鎖を力任せに引きちぎる。
『竜力は消費しているはずなのに・・・』
『消費したさ・・・だけどこの程度の鎖を引きちぎれないほど消耗したわけじゃないんでね』
自由になったオールは再びその身に纏う鎧を変化させる。
鎧を変化させた理由は女神の右腕を扱いやすくするためであり、肩から二の腕の装甲を無くした鎧へと変化する。
『接近戦・・・』
オールの武装が接近戦用の鎧へと変化したのを目の当たりにしたマリアティアスは、懐にある禍々しい色を放つ宝石を取り出し風の属性魔法で宙に浮かせる。
(なんだ・・・あの禍々しい色をした宝石は?)
マリアティアスが取り出した宝石が気になるオール。
それもそのはずだ。
今は戦争中であり、オールとマリアティアスは他とは比べ物にならないくらいの激戦をしている。
・・・のにも関わらずにマリアティアスが禍々しい色の宝石を取り出したということは、明らかに意味のあることだとオールは直感する。
はったりだという線も捨てられないが、それでも警戒するのは仕方なくオールは数秒程度考えてしまう。
(考えても仕方ないか・・・)
オールが考えている合間にもマリアティアスはルーシャの使っていた武器・・・白金の刺妖・黒銀の斬妖を取り出す。
女神の右腕に比べて小型ではあるが、それでも強力であることには変わらない。
白金の刺妖・・・刺殺特化の武器であり、形状としては刺殺しか出来ないレイピアなのだが攻撃、貫通力は抜群。
刺殺に特化しているのでかわされる可能性が非常に高く、斬撃とは違い範囲攻撃は狭いのだが・・・当たればほど確実に刺さった部分から再起不能になるのは間違いない。
黒銀の斬妖・・・マリアティアスの持っている技術、この世界ではありえない技術によって作られたレイピア。
持ち主であるルーシャの風の属性竜力を増幅、強化する魔化と魔導石を組み込み、切れ味を上げるルーンが刻まれているレイピアとなっており・・・ルーシャと同じく風の属性魔法を扱うことができるマリアティアスも当然使える。
更に今のマリアティアスはルーシャと融合したことによって、より強力な風の属性魔法、竜法を扱うことができ・・・ルーシャ以上に強力な攻撃ができと断言できる。
まぁ・・・先ほどの攻防で魔力は急激に減ってしまったのだが。
『この私と接近戦をしよう言うのか?』
『そうですね・・・確実に貴女を倒す為には仕方ないのですよ』
そう言い終えるとマリアティアスの雰囲気が変化する。
その雰囲気の変化に気がつくオールは懐かしい、部下であった竜人の名を呼ぶ。
『久しいな・・・ルーシャよ』
『久しぶり・・・今度は僕が相手になるよ!』
マリアティアスと入れ替わったルーシャとの接近戦が幕を開ける。