エール&獣ずる牙刀VS帯電する左刀
エールと獣ずる牙刀が天使に案内されている途中それは起きた。
何処にも、空を見渡しても雷を発生させるような雲がないのにも関わらずに突如として雷鳴が響き渡る。
『雷鳴!?』
『・・・何か嫌な予感がします。まだ着かないのですか?』
『流石にまだで・・・』
『どうしました?』
案内役である天使は、女神セラフティアスからエールとネスクが戦う手筈の竜人への道筋を女神の神眼によって伝えられている。
なので自分がその場所に行ってきたかのように案内できるのだが・・・
何故か再び女神の神眼が発動される。
もうすでに案内する為の道筋を理解したのにも関わらずに、何故女神の神眼が発動したのかと疑問に思っていると、女神セラフティアスから身体の主導権を交代するに言われ、天使は支配権を譲り渡す。
女神セラフティアスと交代したことによって雰囲気が変わる天使。
『・・・女神セラフティアスさまですか?』
『えぇそうです。少し厄介なことになりました』
『どうしたのですか?』
『先方で足止めをしていた天使達が絶滅してしまいました・・・』
『それは残念で・・・』
女神セラフティアスとエール、ネスクが話していると・・・突如として遠方から地に響く地鳴りのような声が響き渡る。
『この声は!?』
『感ずかれた・・・そして想像以上に速いです!』
そう言い終えるや否や轟音と共にこちらに近づく巨大な影・・・
それは竜の姿をした化け物。
姿形は伝承の竜その物なのだが・・・その身体は無数の機械で形作られている。
しかしながらその機械は疎らであり、統一とは遠い存在だ。
翼の部分には配線のように無数に張り巡らされており、所々に歯車が見られ翼が動くと同時に動いている。
有り合わせの材料で作られた感じは否めないが・・・異様な雰囲気が醸し出されていて、独特な不気味さが出ている。
『あれが・・・』
『そうです。あの機械の化け物の正体は侍女竜帯電する左刀・・・竜王オール・ディストピア・バルフロン・マリッジの懐刀の内の一振りです』
『とんでもなく大きいですね・・・』
『あの中に帯電する左刀がいます・・・どうなっているのかは知りませんが』
『あの中・・・』
そう言いながら迫りくる機械の竜・帯電する左刀を見つめるエールとネスク。
明らかにこちらに向かって来ており・・・このままでは否応なしに激突してしまう。
『どういう理屈かは知りませんが、あれを倒さない限り活路はないようですね』
『エールさん殺れるのですか?』
『殺らなければならないのですよネスク・・・あれを倒さない限り私達の宿願がなされることはないのですから』
エールが懐から禍々しい宝石を取り出し、そして迫りくる機械の竜に向かって突撃を開始する。
『心の準備はいいですか?』
『問題ないです・・・殺れますよ』
迫りくる機械の竜の攻撃範囲に入ったエールとネスク。
すると機械の竜に付いている機械が目まぐるしく動きだし・・・そして機械の中から無数の砲台が現れる。
『砲台!?』
『しかもこの数は・・・』
まるで全身から刺のように出現した無数の砲台を見て驚愕するエールとネスク。
即座に移動速度を上げて急接近をしようとするが・・・それよりも先に機械の竜は動き出す。
エールが禍々しい宝石を発動するよりも速く、砲台から弾丸が放たれる。
上下左右前方後方・・・全方位に向かって放たれた弾丸。
エールは何とか回避することに成功したが・・・ネスクは弾丸の餌食となってしまった。
『ネスク!』
機械の竜を自分一人の力だけでは倒すことができないとわかっているエールは、飛んでくる弾丸の間を掻い潜りながら落ちているネスクの元にたどり着き・・・何とか救助するとそのまま地上へと降りたる。
『ぎぃぃぃぃぎゃぁぁぁぁぁ!』
『うるさ・・・少し小さくなっている?』
叫ぶ機械の竜。
大音量の叫び声に、地上に降り立ったネスクは思わず耳を防いでしまう。
先ほど弾丸を放った直後、何故か少し小さくなってしまった機械の竜のことも気になるのだが・・・それよりも大音量の叫び声はネスクの骨を軋ませる。
すると、機械の竜の叫び声に反応するように周囲の瓦礫から何かしらの機械の部品や、多数の武器が巻き上げられ機械の竜へと集まってゆく。
そして集まったは武器や機械の武器を取り込み・・・機械の竜は先ほどよりもより一層大きくなる。
身体を構成する機械はバラバラだが・・・
叫び声が終わると同時に周囲を見渡す機械の竜。
エールとネスクを探しているようなのだが・・・数分間辺りを見渡した後に飛び立つ。
『何処に行・・・まさか!?』
ネスクに治療液を飲ませながら機械の竜が何処に行くのかを見ていたエールは驚愕する。
あの機械の竜が向かっている先にあるのは黄金世界の優夢都。
女神セラフティアスが住まう理想郷だ。
あまりエールとネスクには縁はないのだが・・・それでも守るべき場所であることにはかわらなく、守らなければならないと思っていた。
『がぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!』
吠える機械の竜はそのまま黄金世界の優夢都へと突撃する。
黄金世界の優夢都・・・
女神セラフティアス率いる天使達が住まう理想郷に異形の怪物が降り立つ。
黄金世界の優夢都にある重力によって体勢を変えた機械の竜は地面に降り立つと同時に、周囲に向かって攻撃を開始する。
平和な黄金世界の優夢都に襲い掛かる凶弾・・・
美しく幻想的であった周囲の光景が一変する。
地面は抉られ、周囲の木々は軒並み破壊され、炎と黒煙が立ち込める。
そんな中で機械の竜の本体・・・帯電する左刀は静かに眠っている。
しかしながら眠っていると言ってもウォルニル自身は竜力を消費していて、ウォルニルは自身の能力である雷と共に発生する磁力を使い、周囲にある機械を動かし戦っている。
だがしかし、戦っているといってもウェルニル自身の意思で動かし戦っているわけではない。
機械の竜の攻撃、防御、移動に関して全ての動作を本能的に動かして戦っているのだ。
ウォルニルの身体に巻き付く無数の管によって、自身の竜力を機械の竜の全身に張り巡らして動かしているので・・・ウェルニルを機械の竜から切り離せれば機械の竜全ての動きを止めることができる。
まぁ・・・何重にも堅牢に守られているのでたどり着くのは容易ではないが・・・
『ぎぃぃぃぃぃがぁぁあぁぁぁぁ!』
叫ぶ機械の竜に近づく影が一つ・・・圧倒的な殺意と苛立ちと共に女神セラフティアスは向かっていた。
『あれか・・・』
この場に似つかわしくないき機械の竜を目視したセラフティアスは、周囲の状況を見るや否や更に殺意を露にする。
『平和な・・・完成された世界である黄金世界の優夢都を荒らした罪は思いぞ!』
感情を抑えきれていないのか激昂するセラフティアス。
そんなセラフティアスに対して機械の竜は、周囲の機械を動かし・・・巨大な砲台を作り出す。
先ほどまでエールやネスクを攻撃していた砲台の五倍以上の大きさであり、その砲台の先にはセラフティアスがいる。
十中八九にセラフティアスを葬り去る為の砲台であり、衝撃を抑えるためであろう・・・機械の竜は四つん這いになり、そして周囲にアンカーを射出して身体を固定し・・・そして放つ。
爆音と共に放たれる弾丸。
たった一撃で巨城すらも崩壊させるほどの威力を持つ弾丸だが・・・この黄金世界の優夢都では無力であった。
弾丸が直撃するよりも速く、弾丸と同程度の巨大な魔法陣を作り出すセラフティアス。
流石に今作っている魔法陣ほど巨大ではないが、それでも普通の人間、天使が作り出す平均的な魔法陣に比べてかなり大きくなっている。
この魔法陣は転移の魔法陣であり・・・弾丸が魔法陣に触れるや否や直ぐ様転移してしまったのだ。
そして弾丸が転移した先は黄金世界の優夢都上空・・・弾丸の向きは中央浮遊都市に向いており、弾丸は転移すると同時に放たれた。
放たれた時よりも重力が加えられたことによって更に速度をあげた弾丸は、そのまま中央浮遊都市に着弾し・・・街一つが爆炎に呑み込まれる。
『・・・脅威的な威力ですね。まぁ・・・次はありえないでしょうが』
爆炎に呑まれる街を見ながら接近するセラフティアス。
弾丸の威力は強力・・・しかしながら転移の魔法を扱うことができるセラフティアスにとって、遠距離からの攻撃では脅威とはなりえないのだが・・・機械の竜はそのまま次の弾丸を放った。
『学習する様子がないのですか?』
呆れたようにセラフティアスは転移の魔法陣を描く。
再び弾丸を中央浮遊都市に転移させる為なのだが・・・弾丸が魔法陣に直撃するよりも速く、弾丸が弾けた。
爆発・・・というよりは周囲に飛び散るように拡散した弾丸の破片。
弾丸の破片の中には無数の機械の部品があり・・・セラフティアスを囲い込みようにして動き出す。
『先ほどとは違う!』
先ほど放った弾丸とは違う弾丸に驚くセラフティアス。
自分が倒されることなど毛頭考えていないが・・・自らの統べる世界である黄金世界の優夢都が破壊されるのを懸念したのだが・・・機械に部品はセラフティアスを囲い込むと同時に一斉に電気で作り上げられた鎖が放たれる。
上下左右に放たれた鎖はそのまま別の機械の部品に繋がり・・・周囲に漂う全ての機械の部品が雷の鎖で繋がれセラフティアスを捉える牢獄が作り上げられる。
『牢獄・・・驚いてみたけどこの程度だったなんて』
作り上げられた牢獄を見て呆れるセラフティアス。
電気で作り上げられた牢獄でセラフティアスを拘束しようとしたのだが・・・セラフティアスは魔法陣を周囲に展開する。
『冥水・純明水波!』
セラフティアスが魔法陣を展開すると同時に魔法陣から水が波動のように発生する。
そして発生した水の波動は周囲にある機械の部品を水浸しにすると同時に吹き飛ばす。
その威力は圧倒的で雷で作り上げられた鎖は数秒程度しかもたなく、引きちぎられるように切断されてしまった。
『あまり時間もかけていられないですし・・・速攻で倒しますよ!』
風の属性魔法を発動させると同時にセラフティアスは機械の竜との距離を縮め・・・機械の竜の中心部分に向かって拳を繰り出す。
女神セラフティアスの拳・・・それは普通の人間や天使達の拳とは違い神力を纏っている。
その神力は他の、他人からも見ることができ、薄黄色のオーラが包んでいるように見える。
神力を纏うことによって硬度に、そして強度に強化された拳の一撃は重く、速く機械の竜に直撃する。
『がぁぁぁぁぁぁぎぃぃぃぃぃ!?』
セラフティアスの拳が直撃したことによって叫ぶ機械の竜。
痛みがあるのか?痛覚や触感などの感覚があるのかは不明だが・・・機械の竜を構成していた機械の部品がボロボロと崩れ落ちてゆく。
『以外に硬い・・・しかし問題ない!』
一撃で破壊することが出来なかったセラフティアスは更に攻撃を繰り出す。
一撃、一撃が破格の攻撃力のセラフティアスの拳。
繰り出される拳を耐えきれることが出来なく部分から徐々に崩壊して行き・・・そしてついにウォルニルをセラフティアスは視界に収める。
『お前が操っていたのか・・・本来私自身が粛清することはないのですけどね』
そう言いながら呼吸を整え、終わらせる為に拳が繰り出される・・・よりも速く、機械の竜を構成している機械の部品が一斉に吹き飛ぶ。
ウォルニルと直接接触している部分以外全ての機械の部品が吹き飛んだことによって周囲に飛散し、そしてセラフティアスにも襲い掛かる。
『自爆。だがこのてい・・・』
自爆したと思っていた機械の竜であったが、ウォルニルと直接接触している機械の部品から圧縮された竜力が放たれる。
その竜力は炎と熱となり、上空へと飛び立った。
『逃げがす・・・』
逃げようとしたウォルニルに対して逃がすまいと魔法を放とうとしたセラフティアスだが・・・周囲に飛び散った機械の部品が動き出しセラフティアスに向かって襲い掛かる。
それはまるで機械の津波・・・
怒涛の物量によって攻撃を放とうとしていたセラフティアスの攻撃は、機械の津波によって阻まれてしまう。
いくらセラフティアスの実力が桁外れだとしても限度というものは存在し、そして倒すことに固執するのではなく、妨害に特化すれば数十分、数時間程度は足止めできる。
『・・・逃げたか』
女神の神眼を使用してウォルニルが黄金世界の優夢都から出ていったのを確認するセラフティアス。
怒涛の機械の津波に呑まれながらもマリアティアスに匹敵する強固な防御魔法で凌ぐと同時に、別の魔法陣を展開する準備に入り・・・そして数分後に大規模な転移魔法を発動し、機械の津波を一つ残らず中央浮遊都市へと送り返す。
『全くもって不愉快ですね・・・完全ではないとしてもこの私が遅れを取るなんて』
やるせない気持ちのセラフティアスは、周囲を確認し敵がいなくなったのを確認し、自らの住まう巨城に戻って行くのであった。
中央浮遊都市上空・・・
回復し終えたエールとネスクは驚愕していた。
空から何か降って来たと思った矢先に空に浮かぶ大量の機械・・・
一目で危険だと分かる質量であり、エールとネスクではどうしようもできないと理解した。
『せっかく回復したのにこれは・・・』
『流石に・・・』
『申し訳ございませんマリアティア・・・』
絶望し、マリアティアスに謝罪の言葉を口にしようとしたエール。
しかしながら言い終えるよりに速く、エールとネスクの横を風が通り過ぎ・・・そして緑色をした宝石が嵌め込まれた杖がいつの間にか地面に突き刺さっている。
『これは!?』
『まさかマリアティアスさまが・・・』
そう言い終えるや否や緑色の宝石が嵌め込まれた杖から魔法陣が出現し・・・魔法が発動する。
エールとネスクを覆い隠すようにして展開する魔法、風流蓮盾・水輪花盾。
そして風流蓮盾・水輪花盾が展開してから数秒後・・・機械の雨が降り注ぐ。
けたたましい音と共に風流蓮盾・水輪花盾に機械の部品が叩きつけられるが・・・数分後に機械の雨が止んだ後には少し皹が入る程度であった。
周囲を機械の雨で覆い尽くされてしまったエールとネスクであったが、そんな不安も直ぐに解決する。
まるで植物が成長するように風流蓮盾・水輪花盾が伸び・・・周辺の機械の山から脱出しすると花が咲くように花開く。
『機械の山・・・』
『ですけど・・・これではもうこの機械は使い物にならないですね』
『確かに・・・あの機械の竜を操っていた奴はもう死んだのかな?』
『そう簡単に・・・』
エールとネスクが話し合っていると瓦礫となってしまった機械の山が蠢く・・・
何事かと思ったエールとネスクは直ぐ様に上空に飛び立ち、戦闘準備に入るとほぼ同時に機械の山からウォルニルが出てくる。
いつの間にか目覚めたウォルニルは不機そうに周囲を見渡し・・・上空にいるエールとネスクの姿を捉える。
『違う・・・』
エールとネスクを視界に捉えたウォルニルであったが、一見した程度で別方向に飛び立とうとする。
『攻撃して来ない!?』
『逃げるつもりです!』
エールとネスクとは戦おうとはせず、飛び立とうとしているウォルニルに対して短剣を投擲するエール。
しかしながらエールの投擲した短剣はウォルニルによって弾かれてしまった。
『・・・なに?別に相手にする予定じゃないんだけど?』
更に不機嫌になっているウォルニル。
そんなウォルニルに対してエールは間髪容れずに別の短剣を取り出すともう一度投擲する。
『・・・予定変更。先に潰す!』
殺意を強めたウォルニルは抜刀すると同時にエールに向かって突撃を開始する。
雷鳴が轟くと同時に一気に距離を詰めたウォルニルは、そのままエールを斬り伏せる・・・よりも速く、エールは回避し、ネスクは牙刀を発動すると同時に刀を防ぐ。
『残念・・・防ぐのは悪手』
そう言い終えるとウォルニルは不適に笑い、そして刀に竜力を込める。
ウォルニルの竜力は雷・・・その雷の性質を帯びた刀はもちろん帯電する。
『何が残念なのですか?』
『えっ・・・』
帯電しているウォルニルの刀を掴んだネスクであったが・・・感電することはなく、牙刀がウォルニルに喰らいつく。
至近距離であり、尚且つ反撃されるとは思っても見なかったウォルニル。
咄嗟に首に喰らいつこうとした牙刀を腕でガードするが、残り四つの牙刀を防ぐことはできずに噛みつかれる。
『そのまま潰せ!』
エールの掛け声と共に力を込め、噛み砕こうとする。
『ぐっ・・・がぁぁぁぁぁぁ!なめるなぁぁぁぁ!』
絶叫し、竜力を爆発させるウォルニル。
それにより一瞬怯んでしまったネスクは蹴りを入れられ離されてしまった。
『ネスク!?』
『大丈夫・・・問題ない!』
ネスクの安全を確認したエールは攻撃をしようとするが、その前にウォルニルはエールの攻撃範囲外へと逃げる。
『はぁ・・・はぁ・・・』
エールの攻撃範囲外に逃げたウォルニルは懐からウェルニルの竜力の結晶・・・竜導石を発動させる。
するとウォルニルの不揃いな翼や角を補うように、雷のエネルギーで作り上げられた翼と角が重なり大きくなる。
『まだ・・・殺れる!』
ウェルニルの竜力を得て力を回復したウォルニルは、周囲に散らばる機械を操り・・・自らに纏う。
融解、そして結合・・・組み合わされた機械は鎧のように変化する。
しかしながら鎧というよりもパワードスーツに近く、各部分にウォルニルの行動を補うような武装が施されている。
『ウォルニルが・・・ウォルニルが・・・あんな雑魚相手に負けるわけないんだよ!』
激昂と共に抜刀し、目標をネスクに絞るウォルニル。
負傷してしまったので本調子ではなく、先ほどよりもスピードは出ないが・・・それでも、そんじょそこらの竜人よりは速い。
接近してくるウォルニルに対して短剣を投擲するエールであったが・・・残念なことに直撃することはなく、かわされてしまう。
『あ、当たらない!?』
エールの短剣をかわしたウォルニルは、そのままエールを置き去りにしてネスクに攻撃を繰り出す。
その攻撃を先ほどと同じように受け止めたネスクであったが・・・
『先ほどと同じだと思うなよ!』
ウォルニルの刀を受け止めた牙刀に皹が入る。
『まさか!?』
『もう・・・遅い!』
驚いている隙に、尻尾を使いネスクの首を締め付けるウォルニル。
あまりの力強さにネスクの意識が朦朧としてしまう・・・
『このままへし折って・・・』
ネスクを殺す為に更に力を加えるウォルニル。
しかしながらウォルニルがネスクを殺すよりも先に、純黒の光が後方から溢れだす。
『何が・・・起きて・・・』
純黒の光に包まれたウォルニル。
あまりの眩さに目を細めるが・・・それでもネスクを殺そうとするが、斬られた痛みと共に入れていた力が緩むのを感じとる。
(なにが・・・)
何故力が緩んだのか不思議に思ったウォルニルであったが、自分が今不利だと即座に理解し、後方へと飛び退く。
だんだんと視界が慣れてきたウォルニル。
しかしながら目の前に広がっている光景は先ほどとは違っていた・・・
複雑に絡み合った異形な形をした複数の柱に、空を覆い尽くす蜘蛛の巣状のケーブル。
周囲が半球状になっていて三百六十度全方位覆っていて、逃げ出さないようになっている。
『これは・・・』
『貴女を確実に倒すために作り上げたのですよ!』
そう言い終えるや否やウォルニルに攻撃を繰り出すエール。
血を覚醒させた銀狼の姿で・・・
先ほどとは打って変わって別人へと変わったエールなのだが・・・攻撃速度、そして力も変化する。
(さっきと見た目が変わってますが、この程度ならまだ余裕)
エールの攻撃を受け流し、反撃するウォルニル。
血を覚醒させたからと言っても、力業ではウォルニルの方に軍配が上がる。
エールの得意分野は奇襲や、自慢の速度を生かしての戦いなのだから・・・
『余裕だと思っていますか?』
徐々に押されはじめているエールなのだが・・・負けるつもりは毛頭考えていない。
何故ならまだ奥の手を使っていないのだから。
ウォルニルが油断した瞬間に牙刀を発動するエール。
突如として六つの牙刀が現れると同時にウォルニルに喰らいつく。
『な・・・に・・・』
『これで終わり!』
牙刀に仕組まれていた短剣で更に追撃するエール。
作り出した機械の鎧が砕かれ、そして各種属性魔法を使うことができる短剣が突き刺さる。
『やっと終わ・・・』
ウォルニルとの勝負が決着したと思ったエールであったが・・・何処から徒もなく光が溢れだす。
『何が起きて・・・』
何が起きたのか理解出来ていないエールはそのまま溢れだす光に呑まれるのであった・・・